セブン協会西部支部 支部長室
薄暗い室内。
壁一面に並ぶモニターとデータ端末。
その中心で、紫紺のハットを傾けながら
フォーエバーヤングが通信を受けていた。
フォーエバーヤング「へー……」
画面に映るデータを指でなぞる。
フォーエバーヤング「“灰色の怪物”の連絡先、もう取ったんだ。やるじゃん、ノーリーズンさん♪」
ノーリーズン『にゃはは!まあな!繋がっておくに越したことはないじゃろうて!』
フォーエバーヤング「デメリットもあるけど、メリットの方が大きい……ってやつ?」
ノーリーズン『そういうことじゃ。扱いは間違えるでないぞ』
フォーエバーヤング「任せてって。アタシ、そういうの得意だから」
軽く笑いながら答えるが、その目は冷静に細められている。
ノーリーズン『では共有は任せるぞ。ワシはヤエノに報告せねばならん』
フォーエバーヤング「りょーかい。こっちもトランさんに上げとくね」
通信が切れる。
ぴっ――
静寂。
---
フォーエバーヤング「……ふふ」
椅子に深く腰掛ける。
フォーエバーヤング「“怪物の人脈”ねぇ……」
指先で端末を軽く叩く。
フォーエバーヤング「これ、ただの連絡先リストじゃないじゃん」
画面には並ぶ名前。
特色、幹部、そして異質な存在たち。
フォーエバーヤング「都市の“裏回線”みたいなもんでしょ、これ」
少しだけ口角が上がる。
フォーエバーヤング「だったら――使わない手はないよね♪」
(……にしても)
一瞬、思考が止まる。
フォーエバーヤング(ほんとに選ばないんだ、この人)
敵も、味方も、生者も、死者すらも。
フォーエバーヤング(……そのうち“翼”とかとも繋がりそう)
一瞬だけ、沈黙。
フォーエバーヤング「……まさかね」
---
セブン協会本部 協会長室
大量の資料に囲まれた部屋。
トランセンド「で?」
フリオーソ「はい。フォーエバーヤング支部長は“積極活用”の方針です」
トランセンド「だよね〜」
椅子をくるりと回しながら笑う。
トランセンド「ウチでも同じことするもん」
フリオーソ「……やはり“利用”ですか」
トランセンド「うーん、ちょっと違うかな」
指を立てる。
トランセンド「“共有して最適化”って感じ」
フリオーソ「最適化……」
---
トランセンド「オグリさんってさ、放っておいても勝手に繋がるじゃん?」
フリオーソ「……否定はできません」
トランセンド「なら、その“結果”だけ全部拾えばいい」
机の上にデータを投影する。
トランセンド「12協会で全部共有して――」
・誰と繋がったか
・どの順番で繋がったか
・どの関係が強いか
トランセンド「これ全部、情報資産になる」
フリオーソ「……確かに」
---
トランセンド「で、多分そのうち来るよ」
フリオーソ「何が、ですか」
トランセンド「翼と指」
空気が少しだけ重くなる。
トランセンド「特に“五本指”は確実に来る」
フリオーソ「……理由は?」
トランセンド「簡単、“制御不能な強者”だから」
---
トランセンド「取り込むか、壊すか。どっちか選びに来るでしょ」
フリオーソ「……」
---
フリオーソ「それでは都市の均衡が崩れるのでは?」
トランセンド「逆だよ」
即答。
トランセンド「繋がるからこそ、“見える”ようになる。今まで見えなかった翼や指の動きがね」
フリオーソ「……なるほど」
トランセンド「全員が“オグリ経由の情報”を持つようになれば。全員が全員を牽制できる」
フリオーソ「均衡が維持される……」
トランセンド「そ、希望的観測だけどね〜」
---
トランセンド「ま、結局のところ」
軽く笑う。
トランセンド「オグリさんには頑張ってもらうよ」
フリオーソ「……本人の意思とは無関係に」
トランセンド「もちろん♪」
---
一方その頃
屋台
オグリキャップ「……この肉まんも美味しいな」
タマモクロス「さっきから食い過ぎや!!」
さらに上層
A社本社 調律者執務室
高層。静寂。
都市を見下ろす窓。
その前に、一人のウマ娘。
クモハタ「……ふむ」
手元の報告書に目を通す。
クモハタ「“灰色の怪物”……ね」
ページをめくるたびに、情報の密度が増していく。
人脈、戦闘力、精神性。
クモハタ「……これはまた」
小さく笑う。
クモハタ「随分と“人間らしい”ね」
---
クモハタ「強い個体は珍しくない
でも――“繋がりで影響力を持つ個体”は希少だ」
窓の外を見下ろす。
クモハタ「都市の歴史でも、ほとんど例がない」
---
クモハタ「排除対象ではない。現時点では禁忌にも抵触していない……なら」
一拍。
クモハタ「観察対象だね」
---
クモハタ「できれば――」
少しだけ柔らかい声になる。
クモハタ「失いたくないな、ああいう子は。この都市では貴重だ」
---
だが次の瞬間、その表情は消える。
クモハタ「……とはいえ、私は調律者だ。ルールには従わないとね」
---
クモハタ「しばらくは……見守るとしよう」
---
情報は巡る。
協会を渡り、組織を越え、
やがて“都市の上層”へと届く。
誰もがそれを利用しようとし、
誰もがそれに警戒する。
その中心にいるのは――
ただ、人と繋がり、
ただ、食事を楽しむ少女。
だがその“何気ない行動”こそが、
都市の均衡を静かに揺らし始めていた。