ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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情報と約束

セブン協会 西部支部 支部長室

 

紫紺のハットを軽く傾けながら、フォーエバーヤングは机に肘をつき、報告書を眺めていた。

 

フォーエバーヤング

「オグリさん、まじで“指”とも繋がったんだ〜……」

 

くすり、と笑う。

 

その笑みは、好奇心と計算が綺麗に混ざり合ったものだった。

 

フォーエバーヤング

「まあ予定調和かな」

 

指先で机を軽く叩く。

 

フォーエバーヤング

「これで親指との接点は完成。オグリさん経由なら、情報交換も交渉もできる」

 

一拍。

 

フォーエバーヤング

「つまり――向こうが干渉してくるなら、こっちも“中身”を覗けるってこと」

 

ゆっくりと背もたれに体を預ける。

 

フォーエバーヤング

「関わらないのは簡単。でもそれじゃ均衡は生まれない」

 

視線が細くなる。

 

フォーエバーヤング

「関係を保ちながら、壊さない。……それが一番難しいんだよね」

 

そして、小さく笑った。

 

フォーエバーヤング

「だからオグリさんは――潤滑剤」

 

間を置いて、ぽつりと。

 

フォーエバーヤング

「……便利すぎて、ちょっと怖いぐらいの♪」

 

---

 

セブン協会 本部

 

書類の山に囲まれながら、トランセンドが軽く笑う。

 

トランセンド

「ヤン子さん、ガチで“情報媒体”として見てるね〜」

 

向かいで資料を整理していたフリオーソが小さく頷く。

 

フリオーソ

「……事実ですから」

 

トランセンド

「で、今どんな感じだっけ?」

 

フリオーソ

「複数の特色フィクサー、協会幹部……加えて親指のアンダーボスとも接触済みです」

 

トランセンド

「やっば」

 

楽しそうに笑う。

 

トランセンド

「でもさ、やばいのって“そこ”じゃないよね」

 

フリオーソ

「……ええ」

 

一瞬、言葉を選ぶように間を置く。

 

フリオーソ

「オグリさんが食事ひとつで、お願いを聞いてしまう点です」

 

トランセンド

「あー……それね」

 

肩をすくめる。

 

トランセンド

「つまり親指が“ご飯あげるから手伝って〜”って言えば成立する可能性があるってことね」

 

フリオーソ

「はい。情報取得、交渉補助、場合によっては戦力としても」

 

トランセンドは少しだけ目を細めた。

 

トランセンド

「……とんでもないね」

 

そして、静かに笑う。

 

トランセンド

「これ、そのうち“翼”も来るよ」

 

フリオーソ

「……でしょうね」

 

トランセンド

「そうなったら――」

 

少し間を置いて。

 

トランセンド

「オグリさん、都市の情報の“中心”になるかもね」

 

---

 

ヂェーヴィチ協会 西部支部 食堂

 

その頃。

 

オグリキャップは――

 

オグリキャップ

「もぐもぐ……ふふ、美味しいな」

 

ただひたすら、幸せそうに食事をしていた。

 

隣で頭を抱えるタマモクロス。

 

タマモクロス

「……はぁ」

 

深いため息。

 

タマモクロス

「もういっそずっと食わせといた方が安全ちゃうか……?」

 

オグリキャップ

「?」

 

きょとんとした顔で振り向く。

 


 

フォーエバーヤング

「……ほんと、最高だよね」

 

机の上に並んだ端末。

そこに映るのは――オグリキャップの行動ログ。

 

フォーエバーヤング

「協会、特色、幹部……それに“指”まで」

 

くすり、と笑う。

 

フォーエバーヤング

「普通さ、ここまで繋がったらどっかで止まるんだよ」

 

指で軽く画面をなぞる。

 

フォーエバーヤング

「怖くなるとか、疑うとか、利用されてるって気づくとかさ」

 

一拍。

 

フォーエバーヤング

「でもあの子、全部スルーするんだよね」

 

椅子の背にもたれ、天井を見上げる。

 

フォーエバーヤング

「純粋っていうか……バグってるっていうか」

 

小さく笑う。

 

フォーエバーヤング

「だから“壊れない”」

 

静かに、声のトーンが落ちる。

 

フォーエバーヤング

「いや――違うか」

 

首を傾ける。

 

フォーエバーヤング

「“壊れても気づかない”の方が正しいかもね」

 

沈黙。

 

---

 

フォーエバーヤング

「オグリさんってさ」

 

軽く指を組む。

 

フォーエバーヤング

「情報の塊なんだよね」

 

端末を叩く。

 

フォーエバーヤング

「誰と会ったか、何を食べたか、どんな話をしたか」

 

フォーエバーヤング

「全部が“価値”になる」

 

目が細くなる。

 

フォーエバーヤング

「しかも本人は、それを価値だと思ってない」

 

小さく、息を吐く。

 

フォーエバーヤング

「最高の媒体だよ」

 

---

 

フォーエバーヤング

「でもさ……」

 

少しだけ、表情が変わる。

 

フォーエバーヤング

「こういうのって、だいたい壊れるんだよね」

 

椅子を止める。

 

フォーエバーヤング

「どっかの組織が欲張るか」

 

フォーエバーヤング

「誰かが一線越えるか」

 

フォーエバーヤング

「……あるいは、本人が気づくか」

 

静かに笑う。

 

フォーエバーヤング

「まあ最後はなさそうだけど」

 

---

 

フォーエバーヤング

「都市ってさ」

 

窓の外を見る。

 

フォーエバーヤング

「バランスでできてるじゃん?」

 

フォーエバーヤング

「協会、指、翼……全部が牽制し合って成り立ってる」

 

指先でガラスを軽く叩く。

 

フォーエバーヤング

「そこに“例外”がひとつ入るとどうなると思う?」

 

間。

 

フォーエバーヤング

「崩れるか」

 

フォーエバーヤング

「……新しくなるか」

 

振り返る。

 

フォーエバーヤング

「どっちにしてもさ」

 

口元が歪む。

 

フォーエバーヤング

「めちゃくちゃ面白いよね」

 

---

 

フォーエバーヤング

「アタシはさ」

 

少しだけ声が柔らかくなる。

 

フォーエバーヤング

「壊す側でも、守る側でもないんだよ」

 

フォーエバーヤング

「ただ――“動かす側”」

 

端末を閉じる。

 

フォーエバーヤング

「オグリさんがどこまで行くのか」

 

フォーエバーヤング

「都市がどこで歪むのか」

 

ゆっくり立ち上がる。

 

フォーエバーヤング

「全部、見せてもらうよ」

 

---

 

フォーエバーヤング

「……ねえ、オグリさん」

 

最後にぽつりと呟く。

 

フォーエバーヤング

「キミが壊れる時ってさ」

 

ほんの少しだけ楽しそうに笑った。

 

フォーエバーヤング

「どんな味がするんだろうね?」

 


 

静まり返った執務室。

山のような資料、その中心で、トランセンドはペンを止めた。

 

トランセンド

「……ふーん」

 

軽く息を吐く。

 

机の上に広がるのは――

オグリキャップの関係図。

 

協会、特色、幹部、そして“指”。

 

無数の線が、ひとつの点に集約している。

 

トランセンド

「ほんと、綺麗に繋がるね」

 

指先でその中心をなぞる。

 

トランセンド

「普通はさ、こういうネットワークって“偏る”んだよ」

 

 

「力のあるとこに寄るか、安全なとこに固まるか」

 

小さく首を振る。

 

「でもオグリさんは違う」

 

「強いとこも、危ないとこも、関係なく繋がる」

 

一瞬の間。

 

「……だから“歪まない”」

 

---

 

トランセンド

「情報ってさ」

 

ペンをくるくる回す。

 

トランセンド

「偏った瞬間に価値が落ちるんだよね」

 

トランセンド

「でもあの子は違う」

 

トランセンド

「全部を同じ温度で受け入れる」

 

少しだけ目を細める。

 

トランセンド

「だから“純度が高い”」

 

---

 

トランセンド

「ただ――」

 

ペンが止まる。

 

トランセンド

「それってさ」

 

静かに笑う。

 

トランセンド

「一番“危ない状態”でもあるんだよね」

 

---

 

トランセンド

「だって」

 

資料を一枚めくる。

 

トランセンド

「誰でもアクセスできる情報ってさ」

 

トランセンド

「つまり――誰でも書き換えられるってことじゃん?」

 

視線が鋭くなる。

 

トランセンド

「ちょっとした誘導」

 

トランセンド

「ちょっとした報酬」

 

トランセンド

「……例えば、食事とかね」

 

くすっと笑う。

 

---

 

トランセンド

「そうやって積み重なった“微小な選択”が」

 

トランセンド

「気づいた時には大きな流れになる」

 

トランセンド

「本人の意思とは関係なくね」

 

---

 

トランセンド

「オグリさんってさ」

 

少しだけ声が落ちる。

 

トランセンド

「“選んでない”んだよ」

 

トランセンド

「ただ受け入れてるだけ」

 

トランセンド

「でも――」

 

間。

 

トランセンド

「その結果は、全部“選択”として残る」

 

---

 

トランセンド

「……怖いよね」

 

ぽつりと呟く。

 

トランセンド

「自分の知らないところで、自分の立場が決まっていくって」

 

---

 

トランセンド

「でもさ」

 

すぐに軽い調子に戻る。

 

トランセンド

「それって都市じゃ普通なんだよね〜」

 

肩をすくめる。

 

トランセンド

「むしろオグリさんは遅い方かも」

 

トランセンド

「今までが自由すぎた」

 

---

 

トランセンド

「これからは――」

 

関係図を見つめる。

 

トランセンド

「誰かが“方向”を与える」

 

トランセンド

「協会か、指か、翼か……」

 

トランセンド

「あるいは――」

 

少しだけ笑う。

 

トランセンド

「全部か」

 

---

 

トランセンド

「ウチはさ」

 

椅子にもたれる。

 

トランセンド

「別に壊したいわけじゃないんだよ」

 

トランセンド

「ただ――」

 

トランセンド

「どう動くか、知りたいだけ」

 

---

 

トランセンド

「均衡ってさ」

 

指で空中に線を描く。

 

トランセンド

「崩れる瞬間が一番データ取れるんだよね」

 

---

 

トランセンド

「オグリさんが中心になって」

 

トランセンド

「都市がどう歪むのか」

 

トランセンド

「それとも――」

 

少しだけ目を細める。

 

トランセンド

「都市の方がオグリさんを飲み込むのか」

 

---

 

トランセンド

「どっちでもいいよ」

 

あっさりと言う。

 

トランセンド

「結果が取れればね」

 

---

 

トランセンド

「……でも」

 

ほんのわずかに、声が柔らぐ。

 

トランセンド

「できればさ」

 

トランセンド

「壊れないでほしいな〜」

 

一拍。

 

すぐに笑う。

 

トランセンド

「せっかくの“最高のサンプル”だし」

 

---

 

トランセンド

「ね、オグリさん」

 

最後に、静かに呟く。

 

トランセンド

「キミがどこまで耐えられるか――」

 

トランセンド

「ちゃんと最後まで見届けるからさ」

 


 

フォーエバーヤング

「ふふ、やっぱりオグリさん面白い♪」

 

トランセンド

「都市が壊れるか、オグリさんが壊れるか……」

 

フォーエバーヤング

「想像するだけで――」

 

トランセンド

「激ヤバで」

 

二人は同時に笑った。

 

「「ゾクゾクする♪」」

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