ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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頭とハナ

ハナ協会本部 本部長室

 

都市の中心に最も近い協会。

 

それがハナ協会だった。

 

統括。

 

調整。

 

均衡。

 

都市が都市であるために必要な「秩序」を扱う協会。

 

その執務室もまた、過剰な装飾を避けた静かな空間だった。

 

機能的で。

 

整然としていて。

 

そして――政治的だった。

 

机の向こう側に座る人物が顔を上げる。

 

ドリームジャーニー

 

その視線の先には、もう一人の来客がいた。

 

白い衣装。

 

豪奢な装飾。

 

そして揺るがない威圧感。

 

オルフェーヴルだった。

 

---

 

ドリームジャーニー

「オル」

 

少しだけ微笑む。

 

「ハナ協会に来るなんて久しぶりじゃないか、なにか用かい?」

 

オルフェーヴルは腕を組んだまま言う。

 

オルフェーヴル

「A社の意を伝えろと言われた、余を使い走りにするとはな」

 

ドリームジャーニーは軽く肩をすくめた。

 

「A社専属特色フィクサーという立場は便利だけど、不自由でもあるからね」

 

オルフェーヴル

「……まあよい」

 

少しだけ間が空く。

 

「問題はあやつだ」

 

ドリームジャーニー

「灰色の怪物だね」

 

オルフェーヴル

「そうだ、A社としては無視出来ないほどではない。

だが興味を引かれる存在ではある」

 

視線がわずかに細くなる。

 

「特に調律者の一部がな。内心では連絡先を交換したがっておる」

 

ドリームジャーニーは少し驚いたように笑った。

 

「それはまた、罪作りだね」

 

オルフェーヴル

「もっとも禁忌以外ではA社は介入できぬ。もどかしい気配がこちらにまで伝わってくるわ」

 

ドリームジャーニー

「なるほど」

 

オルフェーヴル

「いざという時は余が接触する。A社専属とはいえ余はフィクサーだからな、その立場を使えば間接的に連絡は取れる」

 

ドリームジャーニーは頷いた。

 

「分かった、必要なら私が場を用意しよう」

 

オルフェーヴル

「感謝する姉上」

 

短い沈黙。

 

その後、ドリームジャーニーが静かに言う。

 

「頭まで目をつけるなんていよいよだね、

オグリさんも選ぶ時期が来ている」

 

オルフェーヴル

「何をだ」

 

ドリームジャーニー

「情報インフラになるか、フィクサーであり続けるか」

 

その言葉には重みがあった。

 

オルフェーヴル

「ハナ協会はどうする」

 

ドリームジャーニーは少し考えた。

 

「スピードシンボリ協会長も、珍しく迷っている。五本指と翼には牽制を入れているけど

ヂェーヴィチ協会の保護者たちをどう宥めるか、それが難しいらしい」

 

オルフェーヴル

「当然だろう、部下で、親友で、家族なのだからな」

 

ドリームジャーニー

「今の状況は耐え難いよね。本人の意思と関係なく、全部が進んでいる」

 

オルフェーヴル

「しかも本人は無自覚」

 

ドリームジャーニー

「拒否という概念が薄い」

 

オルフェーヴル

「都市は見逃さぬ」

 

そして静かに続けた。

 

「意思が希薄な者は必ずどこかに染まる」

 

ドリームジャーニー

「へぇ、どこにだい?」

 

オルフェーヴル

「母親との約束だ」

 

空気が変わった。

 

「あやつの唯一の行動原理。上書き不可能のな」

 

ドリームジャーニー

「……なるほど」

 

オルフェーヴル

「あやつは母親だけを基準に生きてきた。裏路地では友など保証されぬ。

ゆえに友も、母に言われたから守っているだけだ。無自覚にな」

 

ドリームジャーニーは静かに問う。

 

「じゃあ、母親が死んだら?」

 

---

 

オルフェーヴルは即答しなかった。

 

珍しいことだった。

 

「分からぬ。

暴れるか、意思が生まれるか、変わらぬか、どれもあり得る」

 

ドリームジャーニー

「……注視しておくよ、6区の裏路地は特にね。」

 

オルフェーヴル

「あやつの出自を考えると6区のF社が動かぬとは思えぬが……」

 

ドリームジャーニー

「まだ接触は確認されてない。母親も相変わらず裏路地で住み続けている。オグリさんの今の状況を考えると巣からは引く手あまたのはずだけどね」

 

オルフェーヴル

「ならば帰れる場所を残しているのだろう。

どこにも行けなくなった時、戻れる場所として」

 

ドリームジャーニーは静かに微笑んだ。

「本当に、いい母親だね」

 

オルフェーヴル

「非凡だ。人差し指の指令に従いながら、女手一つで特色を育てたのだからな」

 

ドリームジャーニー

「……そうだね」

 

---

 

都市の最上層に近い部屋で。

 

二人は静かに理解していた。

 

灰色の怪物の中心にあるのは

 

都市でも

 

協会でも

 

翼でも

 

情報でもなく

 

ただ一つ。

 

母親だった。

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