ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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偽りの平等と今後

ディエーチ協会南部支部

 

マンブリーノの兜の分析結果が出てから、ディエーチ協会はすぐにセントサイモンとダイヤモンドジュビリーを呼び、協議の場を設けていた。

 

部屋の中央には、厳重に封印された遺物保管ケース。

その中に、あの額当て――**マンブリーノの兜**が収められている。

 

ゼンノロブロイは、資料を手に静かに説明する。

 

「……改めてご説明します。マンブリーノの兜は、被ると周囲から“同じ身分の存在”だと認識されるようになる遺物です。少なくとも、血鬼社会においては致命的すぎる効果と判断されました」

 

アグネスデジタルも、少し緊張した面持ちで補足する。

 

「はい……この遺物は、上下関係そのものを曖昧にしてしまうんです。血鬼の掟や本能が通用しなくなる、非常に危険な品です」

 

セントサイモンは腕を組み、低く息を吐いた。

 

「ほう……認識阻害効果の兜か」

 

隣に控えるダイヤモンドジュビリーも、少しだけ目を細める。

 

「なるほど……確かにこれなら、ラ・マンチャランドで反乱が起きたことも納得出来ますね。そして、我々では持っておくにはあまりにも危険すぎるということも……」

 

セントサイモンは、珍しく即答で認めた。

 

「ああ。もし何かの間違いで被れば、規律が乱れかねない。俺を含めた第一眷属といえども、下位眷属全員から反乱されれば多勢に無勢で負けが濃厚だ。……やはりこれは、ディエーチ協会に預けるのが得策だな」

 

ダイヤモンドジュビリーも静かに頷く。

 

「そうですね。ディエーチ協会なら信頼も出来ますし、それが一番でしょう」

 

ゼンノロブロイは、保管ケースを見やりながら問う。

 

「……ではサイモンさん、この遺物の情報についてはどうするのです?」

 

セントサイモンは、少しだけ視線を落とした。

 

「下位眷属の血鬼に伝われば、反乱の道具にされかねない。万が一のために他の区の長老血鬼には伝えるが、それ以外には徹底的に秘匿する」

 

ダイヤモンドジュビリーは、やや柔らかい口調で締める。

 

「ではゼンノロブロイ協会長、マンブリーノの兜の管理、お願いしますね」

 

「もちろんです。決してフィクサー協会外には漏らさないとお約束します」

 

「任せたぞ」

 

セントサイモンとダイヤモンドジュビリーは、それ以上余計な言葉を残さず退室した。

 

---

 

静寂が戻った支部長室で、ゼンノロブロイは遺物のケースを見つめたまま、結論を下す。

 

「……ではデジタルさん、マンブリーノの兜については本部預かりということにしましょう。流石にこれは支部で管理するのは荷が重いでしょうし」

 

「もちろんです、協会長にお任せします」

 

アグネスデジタルも、ようやく肩の力を抜く。

 

こうしてマンブリーノの兜は、ディエーチ協会本部へ移されることになった。

 

---

 

ディエーチ協会東部支部、支部長室。

 

メジロドーベルは、今回の件をラヴズたち4人に説明していた。

 

「……とりあえず、マンブリーノの兜についてはライスシャワー本部長とゼンノロブロイ協会長の元で管理されることになったわ」

 

クロノジェネシスは、少し安心したように息を吐く。

 

「そうですか……分かりました」

 

グランアレグリアは、ようやく緊張から解放されたように椅子にもたれた。

 

「なんか、どっと疲れたね……」

 

カレンブーケドールも、静かに頷く。

 

「初日は本当に大変でしたね……」

 

メジロドーベルは苦笑する。

 

「あはは……お疲れ様、4人とも……」

 

ラヴズオンリーユーは、少しだけ様子をうかがうように尋ねた。

 

「支部長、ひとまずこの件はこれで終わりですか?」

 

「そうね。流石にしばらくは危険な仕事もないだろうし、各々それぞれの仕事に戻って」

 

「分かりました」

 

4人はそれぞれ礼をして退室していった。

 

メジロドーベルは、部屋に一人残ると、小さく息をついた。

 

「ふぅ、あの4人も災難だったわね。しばらくはあまり難しい任務は与えないようにしましょう。さて、それじゃあ私も仕事に戻らないと……」

 

机に向き直り、再び溜まっていた書類仕事を片付け始める。

東部支部は、静かに、だが確実に日常へ戻っていった。

 

---

 

数時間後。

ディエーチ協会本部、協会長室。

 

ゼンノロブロイは、ライスシャワーへ確認を取っていた。

 

「ライスさん、マンブリーノの兜は無事に保管出来ましたか?」

 

「うん、本部の遺物庫に厳重に保管したよ」

 

「よろしいですね。では、あれに関しては一切外に出さないように」

 

「うん、分かった」

 

ゼンノロブロイは満足そうに頷いたあと、少しだけ考え込む。

 

「……それにしても、デジタルさんの護衛での様子を見る限り、ラヴズさんたちの実力は意外と高いかもしれませんね」

 

ライスシャワーは、少し首をかしげた。

 

「ラヴズちゃん……?」

 

「ええ。彼女は第一眷属を前にしても怯まなかったそうですし、流石は特色フィクサーといったところでしょうか。……思い切って、遺跡調査やエイト協会と合同の外郭調査に向かわせても良いかも知れませんね」

 

ライスシャワーは、思わず不安そうに顔を曇らせる。

 

「遺跡や外郭かぁ……結構殉職する子も多い任務だけど、大丈夫かな……」

 

ゼンノロブロイは、落ち着いた口調のまま答える。

 

「確かに、外郭や遺跡深部は都市の禁忌も適用されない文字通りの理外の領域です。それでも、ディエーチ協会の一員として、いずれ彼女たちには行ってもらうことになるでしょうね。……まあ、まだディエーチに来て日も浅いので、しばらくは雑用を通してディエーチの空気に慣れてもらいましょう」

 

ライスシャワーは少しだけ安心したように目を伏せる。

 

「うん……それなら、少しは良いのかな……」

 

---

 

マンブリーノの兜は、単なる遺物ではなかった。

血鬼の秩序を崩し、上下関係を壊し、反乱を誘発しかねない――偽りの平等をばら撒く危険物だった。

 

だからこそ、ディエーチ協会が預かる意味がある。

知識を集め、記録を残し、危険なものを危険なまま封じる。

それがこの協会の役目だ。

 

そしてラヴズたち4人にとっても、この一件は初仕事にしてはあまりにも重かったが、同時に「ディエーチ協会の一員としてどう動くか」を知る最初の試練でもあった。

 

メジロドーベルは、少しだけ疲れた顔で報告書の最後にこう記した。

 

> 依頼は完了。

> マンブリーノの兜は本部預かり。

> ラヴズオンリーユーたち4人は、初仕事を通して協会の空気に順応しつつある。

> しばらくは無理をさせない方が良い。

 

そして、その行の末尾に、小さくひとこと。

 

> ……でも、あの4人なら、いずれもっと大きな仕事も任せられるかもしれない。

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