ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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小噺 リウの道

リウ協会本部 協会長執務室

 

朝の陽射しが、紅葉の髪飾りを朱に染める。

 

リウ協会長 ヤエノムテキは机に向かい、書類に朱を入れていた。

「ノーリーズンさん、西部支部の様子はいかがですか?」

 

「うむ、今のところは変わった様子はないぞ。

 西部支部のフィクサーたちも平均的といったところじゃ」

 

「それは何より。では引き続き都市災害に備えておくように」

 

「承知した。では西部支部のフィクサーにもそのように指令を出しておくぞ」

 

その時、勢いよく扉が開いた。

 

「失礼しますデース!」

 

ヤエノムテキは穏やかに微笑む。

 

「おや、エルコンドルパサー支部長。如何しましたか?」

 

「こちら南部支部の現在の復興状況を纏めた書類デス!」

 

差し出されたファイルを、ヤエノムテキは丁寧に受け取る。

 

「そうですか、助かります」

 

「南部支部は1年前の図書館の事件の時は1課と2課が全滅する非常事態じゃったからの。

 その後はどうじゃ?」

 

「図書館で本にされたフィクサーたちが全員元に戻ったので、

 幸い人員被害はプラマイゼロに落ち着きましタ!

 ……ただ、同時期に発生していた残響楽団の被害は未だに甚大デース……

 南部地域では未だに残響楽団が起こした事件の被害が燻っていマス」

 

ヤエノムテキは静かに目を伏せた。

 

「そうですか……やはり残響楽団の禍根は根深いですね……」

 

「全くあやつらは死んでもなお影響を残し続けるのう……」

 

「特色の『朱色の十字』とハナ協会の南部1課を全滅させたほどですからね。

 その影響は計り知れません。

 しかし、だからといって諦めるわけにはいきません。

 エルコンドルパサー支部長、引き続き南部地域の復興をよろしくお願いします」

 

「分かりましタ!」

 

ヤエノムテキはふと思い出したように尋ねた。

 

「時にエル支部長、シャオ部長とロウェル部長の様子は如何ですか?」

 

エルコンドルパサーは一瞬、顔をしかめた。

 

「あー……いつも通りデスね。

 これでもかというくらいいちゃついていマス」

 

「にゃっはっは! まああの2人は図書館で色々あったんじゃ。

 大目にみてやるが良かろう」

 

「シャオ部長はロウェル部長との惚気を無自覚にしますし、

 ロウェル部長もシャオ部長を肯定してますからね。

 ついでにこないだは都市対抗餃子作り大会で優勝したことで

 1課も2課もお祝いパーティをしてましたヨ」

 

ヤエノムテキは苦笑しながら首を振った。

 

「シャオ部長は図書館で確かE.G.O.というものを発現して以降、ほとんどの任務で失敗しなくなったと聞きます。

 そのことを考えれば大目にみましょうか、

何しろロウェル部長や部下たちへの凄まじい想いが要因だったそうですしね。

 ……まあ餃子作り大会とやらは置いておきましょう」

 

「あの実力は信頼出来ますけど、惚気は勘弁して欲しいデース……」

 

「シャオ殿はそれまで冷徹な性格として知られていたのに、

 ロウェル殿率いる2課が図書館でやられたと聞いた時珍しく取り乱して、

 独断専行で1課を引き連れて図書館に向かうという規律違反をしたくらいじゃ。

 仕方なかろうて」

 

「でも1課も図書館で全滅したと聞いた時は南部支部の終わりを覚悟しましタ……

 まあ図書館の事件解決後に1課も2課も無事に戻ってきてくれて何よりでしたヨ……

 その代わりシャオ部長には規律違反の件で始末書と5年間の減俸処分を下しましたケドね」

 

「ふむ、それにしても危うく南部支部の精鋭たちが全滅しかけたのに、意外と寛容なんじゃのうエル支部長は」

 

「シャオ部長は優秀な人材だったので失うのは痛かったんデスよ。

 シャオ部長からも辞表を出されましたが、

 クビにするよりは南部地域の復興の手伝いをしてもらうことにしましたヨ」

 

ヤエノムテキは静かに頷いた。

 

「シャオ部長とロウェル部長の惚気はともかく、

 南部地域の復興は他の協会とも連携して、頼みましたよ」

 

「了解デース!」

彼女は敬礼し、踵を返して部屋を出て行く。

 

扉が閉まると、ヤエノムテキは小さく息を吐いた。

 

「……炎は時に人を焼き、時に人を温める」

 

「南部はまだ熱いようじゃのう」

 

ヤエノムテキは紅葉の髪飾りをそっと撫でた。

 

「それが、リウの道」

 

窓の外、

都市の空は今日も、

静かに燃えていた。




ヤエノムテキ
リウ協会長
戦争を専門とするリウ協会を率いる都市でも屈指の武闘派フィクサー
普段は無用な暴力は嫌い、他者への敬意と礼儀は忘れない規律正しいウマ娘。
しかし仕事においてはリウ協会を率いて自ら戦場に出るなど都市の実力者の風格を見せつける
実は可愛い物に目が無い

ノーリーズン
リウ西部支部長
古風な言葉を多用する戦国武将風のウマ娘。
正々堂々以外にも卑怯な手段さえ用いるやり手のウマ娘だが、全ては西部支部のフィクサーたちを守るためなので、部下からは慕われている

エルコンドルパサー
リウ南部支部長
ラテン系の明るいノリと自信満々な態度が特徴的なウマ娘
南部支部を統括しているが、南部支部は残響楽団や図書館との戦いでかなりの被害を受けたので復興に苦労している
南部1課部長シャオと2課部長ロウェルの惚気が苦手
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