南部リウ協会支部 支部長室
第6協会、リウ協会。
都市でも屈指の戦闘特化協会であり、正面からの大規模戦争において真価を発揮する組織だ。
その南部支部長室では、エルコンドルパサーが本部から訪れた協会長ヤエノムテキと向かい合っていた。
「エル支部長、南部支部の様子はいかがですか?」
「問題ないデスよ! この間も1課が都市悪夢や都市の星をいくつか討伐しましたし、2年半前の残響楽団の事件の影響からも立ち直りつつありマス!」
ヤエノムテキは、うなずいた。
「それは良いことですね。シャオ部長がいるなら、南部支部も安泰でしょう。2課のロウェル部長との結婚生活も順調のようですしね」
「エルとしては、あの2人は惚気が多いから苦手なんデスけどね。あの2人がイチャつき出すと、いつも甘ったるい雰囲気になりマスので」
「だからといって、あまりからかい過ぎないようにしてくださいね。この間もエル支部長がシャオ部長から追いかけられていたと噂になっていましたよ」
「うっ……そ、そこは気をつけるので心配しないでほしいデース!」
ヤエノムテキは静かに目を細める。
「分かりました。なら良いでしょう」
その時だった。
コンコン。
「失礼します」
「失礼します」
南部1課部長のシャオと、2課部長のロウェルが入室する。
「シャオ部長にロウェル部長、どうしましたか?」
「はっ、今月1課で担当した都市災害の報告書がまとめ終わりましたので、渡しにきました」
「2課も同じくです」
「ありがとうございます。確かに受け取りましたよ」
シャオは一礼し、ロウェルもそれに続く。
この二人は戦場では恐ろしく頼もしいが、普段は驚くほど理性的で、部下たちの信頼も厚い。
するとロウェルが、ふと口を開いた。
「……あの、協会長。少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「何でしょう?」
「リウ協会の幹部の中で、1番強いのは誰なんでしょうか?」
「リウ協会の幹部で1番強いですか?」
ヤエノムテキが問い返すと、ロウェルが少しうなずく。
「ええ。先程まで、シャオの1課と俺たち2課のフィクサーたちの間で、支部長クラス以上の幹部で誰が一番強いのか、という話題になっていたんですよ。1課は協会長、2課はエル支部長という意見が多かったですね」
「なるほど、そういうことでしたか」
エルコンドルパサーは腕を組んで考える。
「難しいデスね。リウ協会の性質上、幹部に求められるのは戦闘力よりも統率力や指揮能力、戦場の状況把握能力と判断力デスから。もちろんエルたち幹部は全部兼ね備えていマスが、総合力ではやっぱり協会長デスかね」
「しかしエル支部長も、戦闘中の協会員たちの士気を高める手腕についてはとても高いですしね。基本は適材適所といったところでしょうか」
「なるほど……勉強になります」
シャオが短く感心する。
リウ協会では、ただ強いだけでは足りない。
戦場において必要なのは、前線を押し切る力と、全体を勝利へ運ぶ統率力だ。
ヤエノムテキは静かに頷いた。
「そうですね。リウ協会は戦争専門の協会です。部長や支部長に求められるのは、個の武勇だけではありません」
エルコンドルパサーが少しだけ笑う。
「……あ、でも単騎性能でなら、間違いなくリウ協会最強と言えるのは居マスよ」
「そうですね。単騎でなら、あの人以外いませんね」
「リウ協会の単騎最強? 誰なんですか?」
「ノーリーズン支部長デスよ」
「西部支部のノーリーズン支部長です」
ロウェルが目を見開く。
「ノーリーズン支部長? あの方、そんなに強いのですか?」
「ええ。単騎性能だけなら、彼女に敵うフィクサーはリウ協会にはいません」
エルコンドルパサーは、はっきりと言い切った。
「エルたち幹部の間でも、時々模擬試合をしたりしマスが、支部長間では今のところノーリーズン支部長の全戦全勝デスね。一応協会長だけは何度か勝ったことはありマスが、それでも負け越していマスからね」
「協会長が負け越しているのですか……!?」
ヤエノムテキは苦笑する。
「ええ、お恥ずかしながら」
「シャオ部長も、E.G.Oを開花させてからは実力がとてつもなく上がっているのは間違いないデスけど、それでもノーリーズン支部長と戦って勝てるかは怪しいデスね」
「今のシャオでもですか……」
「ええ」
その時、ヤエノムテキがふと思い出したように言った。
「そういえばエル支部長、次の週末、ノーリーズン支部長と模擬試合の約束をしていましたよね?」
「そうデスね」
「せっかくですし、その模擬試合を1課と2課のフィクサーたちにも見てもらいましょうか。フィクサーたちの参考になれば幸いですしね」
ロウェルが目を輝かせる。
「良いんですか?」
「エルは構いませんよ! 今回こそはノーリーズン支部長に勝ってみせマスけどね!」
シャオが静かに、しかし確かに頷く。
「ありがとうございます。部下たちにも知らせておきます」
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西部リウ協会支部 支部長室
その頃、西部支部ではノーリーズンが昼食をとりながら休息していた。
「にゃはは! やはり餃子にはコーラが合うのう!」
一見すると、のどかな食事の風景。
だが、その瞳の奥には、協会らしい鋭さが宿っている。
ノーリーズンは箸を置き、少しだけ口元を緩めた。
「そういえば、次の週末はエルとの模擬試合じゃったのう。エルの奴も最近はかなり訓練を積んでおるようじゃし、油断は出来ぬのう。まっ、勝ちを譲ってやる気はないがな」