ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

22 / 193
暁事務所

ハナ協会北部支部・支部長執務室

 

窓の外は雪混じりの風が吹き荒れ、ガラスを細かく鳴らしている。

室内は暖炉の火が赤く揺れ、香ばしい紅茶の香りが漂っていた。

 

エクリプスはカップを傾け、満足げに息を吐く。

 

「ふふ、この間ステイゴールドから送ってもらった茶葉を使ったけど、この紅茶、本当に美味しいわね」

 

メジロラモーヌは優雅にカップを置き、小さく頷いた。

 

「本当ね。ここまで香り高い紅茶は中々ないわ。

 一体どこの茶葉かしら?」

 

「確か図書館のビナーからもらったって言ってたわね」

 

メジロラモーヌは興味深そうに目を細める。

 

「図書館ね……不純物に指定されて外郭に放逐されたと聞いてるけど、

 一体どんなところかしら」

 

エクリプスは微笑み、カップを置いた。

 

「結構良さげな場所らしいわよ。

 良ければ今度一緒に行ってみましょうか」

 

「あら、それはいいわね。楽しみにしてるわ」

 

コンコン ガチャ

 

「失礼します、エクリプス支部長」

 

扉が開き、白いコートに身を包んだセントライトが入ってきた。

 

「セントライト、どうしたの?」

 

「エクリプス支部長に来客が来ていますわ」

 

「来客? 分かったわ、通してちょうだい」

 

「分かりました」

 

 

数分後。

 

扉が勢いよく開き、鹿毛のショートカットにウーフィ協会のコートを着たウマ娘が入ってきた。

 

「失礼する」

 

エクリプスは目を丸くし、すぐに笑みを浮かべた。

 

「あら、貴方だったのね」

 

「久しぶりだな、エクリプス」

 

メジロラモーヌは興味深そうに首を傾げる。

 

「支部長、知り合いなの?」

 

「そうね、昔の同僚といったところかしら」

 

ヘロドは軽く敬礼し、名乗った。

 

「私はヘロド、ウーフィ協会の北部支部長をしている」

 

メジロラモーヌは優雅に立ち上がり、一礼する。

 

「ウーフィの北部支部長? そうなのね。

 ハナ協会北部1課所属のメジロラモーヌよ」

 

「ああ、よろしく。

 エクリプス、貴様の活躍は聞いてるぞ。相変わらずの実力だな」

 

エクリプスは苦笑しながら肩をすくめる。

 

「まあね、支部長になった以上は真面目にやってるわ。

 そういう貴方はどうかしら?」

 

「ウーフィの方もそこまで大きな問題は起こっていない。

 基本的には順調だ」

 

二人の会話は、どこか懐かしさと温かさに満ちていた。

 

メジロラモーヌは微笑みながら呟く。

 

「エクリプス支部長、ヘロドと話す貴方は随分楽しそうね。

 私たちと任務の話をしてる時とは別人みたいよ、特別な相手なのかしら?」

 

エクリプスは紅茶を一口飲んで、静かに頷いた。

 

「そうね、ある意味ヘロドは私にとって特別な関係の相手よ」

 

ヘロドは少し照れくさそうに咳払いし、語り始めた。

 

「私とエクリプスは協会所属のフィクサーになる前、

 事務所所属のフィクサー時代の同僚なんだ。

 出会った当時はエクリプスの階級が新人の9級、私が8級。

 あともう一人、マッチェムという7級フィクサーがいて、三人で色んな案件を解決したな」

 

メジロラモーヌは目を丸くする。

 

「意外ね、支部長にも事務所時代があったなんて」

 

「エクリプスの実力は当時から凄くてな。

 階級こそ9級だったが、実力だけなら私たち三人の中で一番だった。

 その後、10年で1級まで昇格したんだ」

 

「1級になってからも事務所にしばらく所属していたんだけど、

 ある時ハナ協会からスカウトが来てね。

 協会所属になることになったの」

 

「その後、私とマッチェムもそれぞれの道を歩んだ。

 というわけだ」

 

エクリプスは遠くを見るような目で呟く。

 

「そういえばマッチェムも久しく会ってないけど、

 今は何をしているのかしらね?」

 

「マッチェムは最近、都市の地下遺跡の探索をしているらしいぞ。この間連絡が来た」

 

「そうなのね、元気にやってるなら良かった」

 

二人は同時に微笑んだ。

 

「あの頃は本当に楽しかったわ。

 目先の任務をただひたすらに片付ける日々は忙しかったけど、

 あれこれ考えずに気楽に仕事出来て、充実していたわ」

 

「覚えてるかエクリプス。

 初めて三人で都市疾病の案件を担当したあの任務」

 

「ええ、覚えてるわ。

 確か『オイスターソースの秘術』とかいう名前だったわね」

 

ヘロドは苦笑しながら続ける。

 

「そうだ。あの時は任務そのものは楽に片付いたが、

 その後の貴様が興味本位でソースを舐めてしまって起きた一悶着……。マッチェムと二人がかりでようやく抑え込めたんだからな」

 

エクリプスは顔を赤くして笑った。

 

「あはは……その件は本当にごめんなさい。」

 

セントライトが微笑みながら呟く。

「エクリプス支部長とヘロドさんは本当に仲のいい友人なのですわね」

 

「友人か……まあ、私たちが所属していた『暁事務所』は、

 私たち三人でほとんどやっていたようなものだったからな。

 それだけ親密な関係にはなったよ」

 

エクリプスは静かに頷く。

 

「私が隠居したあと、貴方やマッチェムも特色になったんでしょ?

 風の噂で聞いたわ」

 

「ああ、貴様が所属していたのは10年だったが、

 その10年で元は零細事務所だった『暁事務所』の実力は大幅に上がった。

 貴様のおかげで、私もマッチェムも色々学べた。

 それが特色になれた要因の一つだろうな」

 

エクリプスは優しく微笑んだ。

 

「貴方たちの助けになってたなら、私も嬉しいわ」

 

ヘロドは立ち上がり、コートを整える。

 

「ふっ、貴様らしいな。

 それじゃあ私はそろそろ行く。また何かあったら会おう」

 

エクリプスは立ち上がり、珍しく柔らかな声で言った。

 

「ヘロド……久しぶりに貴方に会えて嬉しかったわ」

 

ヘロドは少し照れながら、軽く手を上げた。

 

「今度はマッチェムも連れてくる。

 久々に三人で集まるのも悪くない。

 それではな」

 

扉が閉まり、静寂が戻る。

 

エクリプスはカップを見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

「ふふ、私としたことが、つい話しすぎちゃったわ」

 

メジロラモーヌは優しく微笑み、新しい紅茶を淹れ始めた。

 

「貴方が楽しそうで何よりよ、支部長。

 それじゃあ、新しい紅茶を入れてくるわ」

 

暖炉の火が、

緋色の髪を優しく照らす。

 

暁事務所の灯は、

今も、

どこかで、

静かに灯り続けている。




ヘロド
ウーフィ北部支部長 特色フィクサー「青黄の戦人」
エクリプスの友人でウーフィ北部支部長
かつて存在した暁事務所での同僚で、様々な任務を一緒にやり遂げた盟友。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。