ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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夢見る少女の成長

H社8区 黎明事務所・リビング兼応接室

午後4時半、窓から差し込む西日が木製のテーブルをオレンジに染める。

 

扉を勢いよく開けて、スペシャルウィークが飛び込んできた。

 

「スズカさん! ただいま任務完了しましたー!」

 

サイレンススズカはキッチンから顔を出し、優しく微笑む。

 

「お疲れ様、スペちゃん。今日は問題なく出来たかしら?」

 

スペシャルウィークは両手を腰に当てて、胸を張った。

「もちろんです!

 最近は仕事にも慣れてきましたし、スズカさんが色々教えてくれたおかげですよ!」

 

サイレンススズカはクッキーの皿をテーブルに置きながら、くすりと笑う。

 

「ふふっ、そうね。

 最初のスペちゃんは危なっかしくて、ちょっと心配だったもの」

 

スペシャルウィークは顔を真っ赤にして手をぶんぶん振った。

 

「あわわ! あの頃のことはあまり言わないでください〜!」

 

「ごめんね?

 とりあえずおやつでも食べましょうか。

 クッキーとコーヒー、用意したから一緒にどう?」

 

スペシャルウィークの目がキラキラと輝く。

 

「本当ですか!? やったー!」

 

「ふふ、スペちゃんはいつも元気ね」

 

その時、玄関のドアが静かに開いた。

 

「今帰ったわ」

 

サイレンススズカとスペシャルウィークが同時に振り返る。

 

「キングヘイロー所長、おかえりなさいませ」

 

「所長! おかえりなさい!」

 

キングヘイローはコートを脱ぎながら、軽く手を上げた。

 

「ええ、ただいま」

 

「所長、実は今からおやつにしようとしていたところなんですが、

 良ければご一緒にいかがですか?」

 

「あらそうなの? ならいただくわ」

 

三人でテーブルを囲む。

クッキーの甘い香りとコーヒーの苦い匂いが部屋に広がる。

 

「所長、今回の任務はいかがでしたか?」

 

キングヘイローはクッキーを一口かじり、得意げに微笑んだ。

 

「大したことなかったわ。

 都市疾病の案件の鎮圧だったけど、

 このキングにかかればあっという間に片付いたわよ」

 

スペシャルウィークは目を丸くする。

 

「都市疾病……! 凄いです所長!」

 

サイレンススズカも感心したように頷く。

 

「ええ、単独で都市疾病を鎮圧できるなんて、

 流石3級フィクサーですね」

 

キングヘイローはコーヒーをすすり、目を細めた。

 

「そう?でも、私はさらに上を目指すわ!

 一流の1級フィクサー、そして……最上位の特色をね!」

 

スペシャルウィークは首を傾げる。

「1級フィクサー……!

 所長ならなれますよ!

 でも……特色ってなんですか?」

 

キングヘイローはクッキーを食べる手を止め、呆れた顔でスペシャルウィークを見た。

 

「……ってスペシャルウィークさん!

 貴方まさかフィクサーの階級のことも覚えてないの!?

 一応7級フィクサーでしょ!」

 

スペシャルウィークは耳をぺたんと倒して縮こまる。

 

「うう……ごめんなさい……」

 

サイレンススズカは優しくフォローする。

 

「良いスペちゃん?

 特色というのは、1級フィクサーの中でもさらに優秀な人達に与えられる、

 全フィクサーの夢とも言える称号なの。

 フィクサーの頂点に立つ、エリート中のエリートの人達のことよ」

 

キングヘイローは腕を組み、誇らしげに続ける。

 

「何しろ上位の特色は、都市の星クラスの案件も単独で鎮圧できると言われているわ!

 いつか私もその領域にまでたどり着くのだから!」

 

スペシャルウィークは目を丸くして、ぽかんと口を開けた。

 

「ええ!? そんな凄い人達がいるんですか!?」

 

「そうよ!

 と言っても、この広大な都市で特色フィクサーは数十人程度しかいないから、

 会うのも難しいでしょうけどね」

 

「数十人程度……それって少ないんですか?」

 

「当然じゃない!

 この都市に全部で何人のフィクサーがいると思ってるの?

 数百万人よ!

 その中で特色はたった二桁人数程度しかいないんだから!」

 

スペシャルウィークは両手を握りしめ、キラキラした目で叫んだ。

 

「へー! 特色の人達って凄いんですね!」

 

キングヘイローは少し呆れつつも、優しく諭す。

 

「そうよ!

 だから貴方も1級以上になりたかったら、

 勉強したり経験を積んで、早く昇格しなさい!」

 

スペシャルウィークは元気に立ち上がった。

 

「分かりました!

 私、がんばります!」

 

サイレンススズカはクッキーを頬張りながら、微笑みながら呟いた。

 

「スペちゃんが昇格できるまでは……まだまだ遠そうね」

 

スペシャルウィークは耳をぴくりと動かして、振り返る。

 

「スズカさん、今なんか言いましたか!?」

 

「い、いえ、何も?」

 

キングヘイローは二人のやり取りを見て、ふっと笑った。

 

夕陽が事務所を優しく染める。

まだまだ未熟な夢見る少女は、

今日も少しずつ、確実に成長していた。




スペシャルウィーク
H社8区のフィクサー事務所 「黎明事務所」所属の7級フィクサー。
正直まだまだ未熟なフィクサーだが誰よりも明るく、仕事に取り組む、ディストピアな都市ではかなり珍しい元気いっぱいな性格のウマ娘。
その純粋さが黎明事務所の雰囲気を和らげている。
とはいえまだ都市怪談クラスの案件しか担当したことがないので経験は少ない

サイレンススズカ
黎明事務所所属の4級フィクサー。
単独で都市伝説の案件を片付けるなど、優秀なフィクサーでスペシャルウィークの先輩として彼女の面倒を見てる。
ちょっと危なっかしいスペシャルウィークのことが心配。

キングヘイロー
黎明事務所 所長 3級フィクサー。
都市疾病の案件を解決出来るかなりの実力者で、常に上を目指してる向上心の塊。
スペシャルウィークのことを未熟と思いつつも素質はあると思っているため彼女の成長を楽しみにしている。
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