ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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ナチュラルにウマ娘の喫煙描写があります


ウーフィ協会の規律と女帝の過去

ウーフィ協会本部・協会長執務室

 

窓の外は、いつものように灰色の雨が降り続いている。

 

机の上には山積みの書類と、粛清対象者の顔写真が何枚も並ぶ。

 

ナカヤマフェスタは最後の書類にサインを入れ、大きく伸びをした。

 

「……ふぅ。今日の分もようやく終わったか」

 

彼女は椅子に深くもたれ、煙草に火をつける。

紫煙がゆっくりと天井に昇っていく。

 

「最近は規律違反も減ってきてるって言っても、まだまだ多いな…… もう少し取り締まりを増やすか……」

 

コンコン。

 

ドアがノックされる。

 

「失礼します、協会長」

 

「エアグルーヴか。どうした?」

 

エアグルーヴは無表情のまま、一歩前に出た。

 

「はい。先程、南部支部長の規律違反が発覚し、

 南部1課および2課合同で身柄を拘束いたしました。

 つきましては、協会長に裁定を下していただきたく」

 

ナカヤマフェスタは煙草を灰皿に押しつけた。

 

「……そうか。あの真面目そうな支部長がな……

 まあ、いつもの通り粛清しておいてくれ。

 空いた支部長の席は、1課部長をそのまま昇格させる」

 

「かしこまりました。

 では、新たな1課部長にはどなたを?」

 

ナカヤマフェスタは少しだけ笑って、エアグルーヴをまっすぐ見つめた。

 

「ああ、それなんだが……

 エアグルーヴ、お前やってみる気はないか?」

 

エアグルーヴは一瞬、目を丸くした。

 

「……私が、ですか?」

 

「ああ。今までお前には随分助けてもらったし、

 実質的に部長代理みたいな仕事もやってただろ?

 私としては、お前が適任だと思うが……どうだ?」

 

エアグルーヴはわずかに目を伏せ、すぐに背筋を伸ばした。

 

「……謹んでお受けいたします」

 

ナカヤマフェスタは満足げに頷いた。

 

「そうか。助かる。

 お前の実力は信頼してるからな」

 

「はっ……ありがとうございます」

 

ナカヤマフェスタは煙草をもう一本咥え、火をつけながらぽつりと呟いた。

 

「……それにしても、昔のお前は随分悩んでることが多かったよな。

 最近は晴れやかな顔をするようになったから、私としても安心してるよ」

 

エアグルーヴの肩が、わずかに震えた。

 

「……まあ、私も昔は色々ありましたので」

 

ナカヤマフェスタは煙を吐きながら、静かに言った。

 

「……ルドルフのことか?」

 

エアグルーヴの瞳が、一瞬鋭く光った。

 

「……! ご存知だったのですか……?」

 

「詳しい事情は知らない。

ただ、お前の経歴見てて気になった情報があってな。

昔マルゼンスキーの奴が運営してたフィクサー事務所にいたんだろ?

しかもそこにはルドルフや現在センク協会のナリタブライアン、ハナ協会のメジロラモーヌやマルゼンの相棒のカツラギエース、さらにA社専属のオルフェーヴルや不純物になったミスターシービーもいたみたいじゃないか。」

 

エアグルーヴは唇を噛んだ。

 

「……ええ、そうでございます」

 

「で、ある時期を境に、

 ルドルフがシ協会に異動、

 お前はウーフィ協会に、

 ブライアンはセンク協会に...他の連中もバラバラの道を歩んでいる。只事じゃなさそうだったから、気になってたんだ」

 

エアグルーヴは静かに目を伏せた。

 

「……申し訳ありません。

 そのことについては……お話しできません」

 

ナカヤマフェスタは小さく笑って、煙草を灰皿に押しつけた。

 

「……まあ、話せない過去ってんなら、無理に詮索はしないさ。

 それに、今のお前はもうルドルフとも話せてるんだろ?」

 

エアグルーヴはほんの少しだけ、表情を緩めた。

 

「……はい。今では、少しだけ……話せるようになりました」

 

ナカヤマフェスタは立ち上がり、エアグルーヴの肩に手を置いた。

 

「そうか。ならいい。

 引き留めて悪かったな。下がっていいぞ」

 

エアグルーヴは深く一礼し、踵を返した。

 

「では、失礼いたします」

 

扉が静かに閉まる。

 

ナカヤマフェスタは再び椅子に座り、煙草を一本取り出しながら呟いた。

 

「……エアグルーヴ。

 お前、自分じゃ分かってないだろうけど……

 今のお前は、本当にいい顔するようになってるよ」

 

窓の外、雨はまだ降り続いていた。

 

賭博師は一か八かを楽しみ、

女帝は規律と過去を背負いながら、

今日も、それぞれの道を歩いていく。




今更ですがこのシリーズのウマ娘たちは全員成人済みです
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