ディエーチ協会本部・書庫
夕暮れのオレンジ色の光が、埃の舞う書架の間をゆっくりと這っていく。
分厚い古書が山積みのテーブルで、二人の新米フィクサーが顔を突き合わせて勉強していた。
「ツルちゃん、今日のお勉強は終わった?」
「はい! 今日も一日、知識をしっかり蓄えましたよ!」
テイオーはにっこり笑って、ツヨシの頭をぽんぽん撫でる。
「さすがツルちゃん! この調子でどんどん昇格して、
早くママに会えるフィクサーになろうね!」
ツルマルツヨシは少し俯いて、小さく呟いた。
「うん……私、お母さんに酷いこと言っちゃったから……
早く謝りたくて……」
「もう〜、ツルちゃんったらなんであんなこと言っちゃったのさ〜?」
「うっ……あの時はテイオーちゃんが死にそうだったから……つい……」
トウカイテイオーは優しくツヨシの肩を抱いた。
「でもさ、ママが鎮圧してくれなかったら、
多分ツルちゃんもボクも死んでたんだよ。
……今はちゃんと分かってるよね?」
ツルマルツヨシはこくこくと頷いた。
「うん……今はちゃんと理解してる……」
「ならいいよ! ちゃんと反省してるし、
ママだって絶対許してくれるって!」
ツルマルツヨシは不安そうに指をもじもじさせた。
「でも……お母さんが会いに来てくれないから……
もしかして、まだ怒ってるのかなって……」
トウカイテイオーは胸を張って、にやりと笑った。
「ママってば、実は結構臆病なところあるんだよ。
きっとボクたちに会うのが怖いだけ!
だったら、こっちから会いに行っちゃうもんねー!」
ツルマルツヨシの瞳が、ぱっと明るくなる。
「テイオーちゃん……うん……!
なんとしても、もう一度お母さんに会うんだ……!」
「その意気だよツルちゃん!」
「よーし、頑張るぞー!」
「おー!!」
二人の小さな拳が、ぽんとぶつかり合う。
書庫の外、廊下の陰。
ライスシャワーがそっと覗き、くすりと笑った。
「ふふ……二人とも、本当に頑張ってるね」
隣に立つゼンノロブロイは眼鏡を押し上げ、穏やかな笑みを浮かべる。
「ウーフィ協会のシリウスさんが預けてきた時は心配でしたけど……
あんなに前向きなら、いつかルドルフさんと会っても大丈夫そうですね」
「二人がルドルフさんとちゃんと会えたらいいな……」
「きっとすぐに会えますよ。
テイオーさんはフィクサーになったばかりなのに7級、
ツヨシさんも8級ですから。
二人の努力は、必ず報われます」
夕陽が、書庫の奥深くまで差し込んでいく。
娘たちは今日も、
一ページ、また一ページと知識をめくりながら、
遠くにいる“皇帝”に届く日を夢見て、
静かに、でも確かに、
成長していく。
いつか必ず、母の前に立って、
「もう大丈夫だよ」と、
笑顔で言える日を信じて。