ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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一番好きなウマ娘コンビだけどこのシリーズではネタがないこともあり、あんまり出てこない...


怪物と稲妻

M社13区 裏路地・夕暮れ

 

血と油にまみれたコンテナの山の向こうで、今日も依頼は終わった。

巨大な鉄の扉を蹴り開け、タマモクロスがヂェーヴィチ協会の制服を翻して飛び出す。

 

「よっしゃー! 今日も仕事完了や!

 これで給料入ったらチビたちに美味いもんでも食わせたるかな!」

 

隣を歩くオグリキャップは、相変わらず無口に頷くだけ。

 

「ああ……」

 

「ん? どしたんやオグリ?」

 

「いや、なんでもない」

 

「いや、なんでもないわけないやろ。

 なんかあったんか?」

 

ぐぅ〜〜〜〜

盛大に鳴ったのはオグリの腹だった。

 

「って! 腹減ってたんかい!

 ったく、あんたは相変わらずやな〜」

 

「いや、お腹が減ったのはたまたまだ。

 そうじゃなくて……」

 

「ん?」

 

オグリキャップは自身の愛用する巨大なハンマーを地面に立てかけ、俯いた。

 

「……お母さんのことを思い出して」

 

「オグリの母ちゃん? どこか悪いんか?」

 

「いや、この間手紙が来たけど健康そのものだそうだ。

 でも、私に会えなくて少し寂しいって……」

 

タマモクロスはため息をつき、空を見上げる。

濁った空には、いつものようにどんよりした雲が漂っている。

 

「ああ〜……まあ仕事がある以上はしゃあないがな。

 ヂェーヴィチ協会に限らず、ウチら上級フィクサーは大概忙しいんやから」

 

「それは……分かってる。

 けど……」

 

タマモクロスはオグリの肩をポンと叩いた。

 

「ええかオグリ?

 この都市じゃあ生きてるだけで奇跡みたいなもんや。

 ただでさえ過酷なのに、最近じゃ安全なはずの巣さえヤバい。

 そんな中でオグリの母ちゃんも、ウチのチビたちも、健康に生きてる。

 そんなん、都市じゃよっぽどの勝ち組やんか。

 その幸せを当たり前と思っとったらあかんで」

 

オグリキャップは唇を噛んだ。

「タマ……そんなこと私でも分かってる。

 分かってるんだ。

 だけど……」

 

タマモクロスはニッと笑って、オグリの腕を掴む。

 

「はぁ〜、しゃあないな。

 じゃあ今からウチがなんか奢ったるわ!」

 

「えっ、いいのか?」

 

「ウチの親友が辛気臭い顔してるのをいつまで見てても気分悪いからな!」

オグリキャップの顔がぱっと明るくなる。

 

「タマ……! ありがとう、私は幸せ者だ!」

 

「あっ! 言っとくけど食べすぎたらあかんで!

 この間なんか3件も出禁になったんやから!」

 

「うっ……わ、分かってるさ……!」

二人の笑い声が、夕暮れの裏路地に響いた。

 

灰色の怪物と白い稲妻。

今日も危険な配達を終えたが、

特色の二人でも明日も生きて帰れるかどうかは分からない。

それでも、今夜だけは誰かと一緒に飯を食える。

この都市でそれがどれだけ贅沢なことか、二人ともちゃんと知っている。

 

「……チビたちにも、いつかオグリの母ちゃんみたいに、

 『寂しい』って言えるくらい平和な日が来たらええな」

 

オグリキャップは答えず、ただ隣を歩いた。

腹の虫がまた鳴る。

タマモクロスが笑い、オグリもつられて笑った。

 

今日も生きてる。

明日も、きっと。

 

「...今度アイネス協会長に休暇もらえないか聞いてみよか」

 

「ああ...そうだな」




オグリキャップ
ヂェーヴィチ協会西部1課 特色フィクサー「灰色の怪物」
F社6区の裏路地の母子家庭出身だが、母親の愛情によりたくましく育った経験を持つウマ娘。
故に母親のことを大切に思っている。どこか天然でたまにズレた答えを言うが本質は純粋そのもの

タマモクロス
ヂェーヴィチ協会西部1課 特色フィクサー「青白の稲妻」
24区裏路地の貧乏な家に生まれたので幼い頃から家族を養うために働いており、ヂェーヴィチ協会の高額報酬目当てにフィクサーとして働いている。沢山いる妹や弟たちのことをチビと呼んでいる。
機動力が特色でも上位に入る
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