センク協会 西部支部
南部出張を終え、西部支部へ戻ったアーモンドアイ。
白いハットと大きな羽根飾り。
西部所属の証。
アーモンドアイ「今戻ったわ」
「おかえりなさい、アイさん。南部はどうでした?」
アーモンドアイ「何事もなく終わったわ。依頼は全て完璧よ」
その言葉に偽りはない。
だが、ほんのわずかに――疲労が滲む。
「そういえばデュランダル本部長が呼んでいましたよ。次の交流試合の件で」
アーモンドアイ「本部長が?」
レイピアの柄を整え、歩き出す。
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本部長室
重厚な扉の向こう。
「アイさん、来てくれたのね」
金髪碧眼、騎士然とした佇まい。
センク協会本部長――デュランダル。
アーモンドアイ「お呼びかしら」
デュランダル「次の交流試合、相手はヂェーヴィチ協会西部支部よ」
アーモンドアイ「ヂェーヴィチ……」
運送専門協会。
危険地帯の配達を生業とする者たち。
デュランダル「西部1課、特色フィクサー。“灰色の怪物”」
アーモンドアイ「……オグリキャップ」
その名は都市でも知られている。
デュランダル「相方のタマモクロスと組み、任務成功率はほぼ100%。あなたでも苦戦するでしょう」
アーモンドアイは微笑む。
アーモンドアイ「望むところです。私は誰にも負けません」
デュランダルは静かに問う。
デュランダル「……E.G.Oは使うの?」
一瞬の沈黙。
アーモンドアイ「好きではありません。でも、負けるよりはマシ。追い詰められたら使います」
デュランダル「分かったわ。準備を整えなさい」
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4日後 ― 決闘場
センクとヂェーヴィチのフィクサーが見守る。
中央で向き合う二人。
オグリキャップ「君がアーモンドアイか。私はオグリキャップだ」
芦毛の長髪。
穏やかな瞳。
アーモンドアイ「今日は手加減しないわ」
オグリキャップ「もちろんだ。全力で楽しもう」
観客席。
デュランダルとヂェーヴィチ西部支部長、ナイスネイチャ。
「今日は負けないわ。アイさんはE.G.O発現者よ」
「へえ〜、でもオグリさんにも対抗手段はあるよ?」
タマモクロスが身を乗り出す。
「オグリー!勝ったら焼肉奢ったる!」
「焼肉……!」
オグリの目の色が変わる。
ナイスネイチャがため息。
ナイスネイチャ「タマモさんや、そんなことを言うとあとが怖いよ〜?」
タマモクロス「オグリが勝つほうが優先や!ウチの財布くらいどうってことないわ!」
デュランダル「...ではそろそろ始める頃合いね。2人とも、準備はいい?」
アーモンドアイ「いつでもいいわ」
オグリキャップ「ああ」
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デュランダル「――決闘開始!」
ガキン!
レイピアと巨大なハンマーが衝突。
アーモンドアイの連続突き。
オグリは最小限の動きで回避し、重い一撃を叩き込む。
ドゴォ!!
観客席がざわめく。
デュランダル「ただのハンマーじゃないわね」
ナイスネイチャ「気づきました?」
タマモが笑う。
「あれは“ミョルニル”。ディエーチから譲られた遺物や」
デュランダル「遺物ですって?」
遺物、超常の力を持つ物品。
都市の基準でもオーバーテクノロジーの物であり、並みの工房製武器を遥かに超える代物。
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互いに攻撃をぶつけ合うも、攻めてに欠け、膠着状態が続く
オグリキャップ「...中々やるな」
アーモンドアイ「そっちこそ。流石は特色ね」
オグリキャップ「ではそろそろあれを使うか」
オグリの身体に黄色いオーラ。
アーモンドアイ「シン……」
アーモンドアイも応じる。
「なら、こちらも」
心を纏い、防御を高める。
さらに――
光輪が武器を包む。
デュランダル「マン(望)まで使うなんて...お互い本気ね。オグリさんはいくつまで使えるのかしら?」
タマモクロス「ウチとオグリは3つやな。三望までなら纏えるで!」
ナイスネイチャ「まあアイさんも同じくらいのようだし、今はまだ互角勝負だね」
激突のたび、空気が裂ける。
互角。
アーモンドアイ(...ふぅ、流石にきつくなってきたわね。でも、まだ行けるわ)
だが、わずかな呼吸の乱れ。
その瞬間。
オグリキャップ「ふん!」
ミョルニルが投擲される。
アーモンドアイ「ぐはっ!?」
額を打ち、
次の瞬間、武器は自動でオグリの手へ戻る。
デュランダル「武器を投げた!?しかも今明らかに勝手に戻っていったわよね!?」
ナイスネイチャ「おお〜...オグリさんも無茶するね。ミョルニルの特性「投げても必ず持ち主に帰還する」を理解していても一瞬でも武器を手放すことを考えると中々できないよ」
ナイスネイチャが解説する。
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膝をつくアーモンドアイ。
(油断した……でも)
オグリが構える。
「これで終わりだ」
「……いいわ」
空気が変わる。
右手にもう一本のレイピア。
「これが私のE.G.O――“無窮”」
「...それが君の本気の証か」
「ええ。...次の攻撃で終わらせるわ」
「...良いだろう、相手になる」
二刀流。
時間が歪む。
「……いくぞ」
「来なさい」
衝突、直前。
世界が引き伸ばされる。
音が遠のき、
オグリの動きが遅くなる。
アーモンドアイだけが、通常速度。
「はあああああ!!」
凄まじい連続突き。
十、二十、三十。
そして時が戻る。
オグリの身体に遅れて傷が走る。
「ぐはぁ……!」
倒れる。
アーモンドアイ「...私の勝ちよ」
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デュランダル「そこまで!勝者、アーモンドアイ!」
歓声。
オグリが息を整え、立ち上がる。
「見事だった……流石だ」
「そっちも、私にE.G.Oを使わせた」
静かな握手。
「また戦いたい」
「いつでも相手になるわ」
二人は視線を交わす。
そこに敵意はない。
ただ強者同士の約束。
タマモが駆け寄る。
「オグリ惜しかったな!でも次は勝つで!」
ナイスネイチャは苦笑する。
「焼肉代、覚悟しときなよ?」
観客席でデュランダルが静かに呟く。
「……アイさん、無理をしていないといいけれど」
交流試合は終わった。
だが都市は終わらない。
灰色の怪物。
水色の女王。
いずれ再び交わるだろう。
その時は――
勝敗は、まだ分からない。