セブン協会本部 協会長執務室
都市における情報を司る第七の協会――セブン協会。
その中枢、協会長室。
トランセンド「ふぅ……そろそろ昼休みにしよっか。フリオも休憩していいよ〜」
フリオーソ「はい、ありがとうございます、協会長」
セブン協会長トランセンド。
就任以降、協会の業績を従来の二倍、三倍へと押し上げた立役者だ。
その傍らに控えるのは秘書兼護衛のフリオーソ。彼女は膨大な情報の整理と伝達を担っている。
トランセンド「それにしてもさ。最近はE.G.Oを扱うフィクサーとか、遺物に手を出す実力者が増えてきてるよね。裏路地の組織にも特色級クラスがちらほらいるし。セブンにも情報収集の依頼が山積みだよ」
フリオーソ「ええ……ここ数年で、都市全体の“実力基準”が跳ね上がっているのは間違いありません」
トランセンド「……近いうちに大きな出来事が起きるかもね」
フリオーソ「大きな出来事、ですか?」
トランセンド「都市の人口が三億人くらいドーンって減るとか?」
フリオーソ「脈絡がありませんよ……」
トランセンド「ほら、最近W社の業績がかなり悪いでしょ? 翼が折れれば戦争が起きることだってある。かつての“煙戦争”みたいにさ」
フリオーソ「……協会長の“勘”は妙に当たりますから、笑えませんね」
トランセンド「だから一応、心構えだけはね。都市じゃ何が起きても不思議じゃない」
軽い雑談の空気を破るように、ドアが勢いよく開いた。
フォーエバーヤング「邪魔するよ〜!」
紫紺のハットにサングラス。
軽やかな足取りで現れたのは、セブン協会西部支部長フォーエバーヤング。
トランセンド「お、ヤン子さん」
フリオーソ「お久しぶりですね、支部長」
若くして幹部職に就いた天才フィクサー。
トランセンドに匹敵する情報収集能力を持ち、“都市にイノベーションを起こす”と公言するウマ娘だ。
フォーエバーヤング「さっきさ、ついにアレを手に入れたからさ! 協会長にも見せたくて!」
トランセンド「前から欲しがってたアレ?」
フォーエバーヤング「そうそう! じゃーん!」
机の上に置かれたのは、黒と銀に輝く二丁拳銃。そしてショットガン。
フリオーソ「……ロジックアトリエの銃、ですか」
都市には数多の“工房”が存在する。
その全ては第三協会――トレス協会の管理下にある。
ロジックアトリエは、その中でも銃器を専門に扱う希少な工房。
都市では銃と弾丸に莫大な税が課せられているため、扱う者は少ない。だが、その性能は一級品だ。
トランセンド「なんでそこまで欲しかったの?」
フォーエバーヤング「昔さ、“黒い沈黙”の戦闘を見たんだよ。あの人がこの銃を撃ってる姿、マジで痺れてさ」
フリオーソ「黒い沈黙……アンジェリカさんですね」
フォーエバーヤング「そう! アタシ、あの人に憧れてフィクサーになったんだ」
トランセンド「多種多様な武器を使うのが特徴だったよね。その中にロジックアトリエ製があった、と」
フォーエバーヤング「同型モデル探して買った! 弾薬もバッチリ!」
弾薬箱を開く。
フリオーソ「……随分な量ですね。お値段は……」
フォーエバーヤング「あはは……しばらくもやし生活かな」
トランセンド「しかも高速粉砕弾まで。よく買えたね」
フォーエバーヤング「憧れのためなら安いもんでしょ? これは投資! 使いこなせれば特色も夢じゃない!」
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セブン協会訓練所
フォーエバーヤングが拳銃を構える。
正面には厚いコンクリート壁。
フリオーソ「装填した弾は……?」
トランセンド「最高級の高速粉砕弾。“壁を貫通する銃を作ってはならない”って禁忌があるでしょ? だから“貫通する前に破壊する”って理屈で作られた弾」
フリオーソ「……一発で何ヶ月分の給料でしょう」
フォーエバーヤング「よーし……!」
引き金が引かれる。
放たれた銀の弾丸は空中で分裂。さらに加速。
――轟音。
命中と同時に壁は粉砕され、跡形もなく崩れ落ちた。
トランセンド「……噂以上だね」
フリオーソ「さすがはロジックアトリエ……」
フォーエバーヤング「……っはぁ〜……最高……!」
トランセンド「完全に悦に浸ってるね〜」
フリオーソ「憧れの武器ですから」
粉塵の向こうで、フォーエバーヤングは満足げに銃を撫でる。
その瞳には、憧れだけでなく――確かな野心が宿っていた。
都市は常に変動する。
情報も、武器も、憧れも。
そしてセブン協会は、そのすべてを記録し続ける。
次に崩れるのは、壁か。
それとも、都市そのものか。