百合に愛と書いてゆりあと言います   作:足でされたい

1 / 2
表現力が乏しい所もありますが宜しくお願いします!


出会い

 

 

季節は春。出会いと希望に溢れた季節になった。クラス替えで好きな子と同じクラスになれるかな?そんな想いを乗せて登校している学生も少なくないんじゃないかな、と私は思う。私も学生だった頃はクラス替えに心を躍らせたものだ。今年こそは好きな人を作って彼氏を作る!って何度思った事か分からなかった。そんなキラキラした想いとは裏腹に、気が付けば小学生から大学生まで彼氏はおろか人を恋愛面で好きになった事が無いまま社会人を迎えてしまった。友達と仲良く晴れた桜並木の道を駆けていく君たちに伝えてあげたい。何も行動しないと私みたいに青春の1ページ目すら開けないまま大人になってしまうんだよと。

 

「はぁ……」

 

今となっては春が憂鬱な季節に変わってるのかもしれないと心の中で思ってしまう私だった。

 

沖百合愛(ゆりあ)。私の名前だ。正直この名前のせいで彼氏が出来ないんじゃないの?って他責思考になるぐらい自分の名前が嫌いだった。キラキラネームまではいかないにしても百合愛はハードル高すぎじゃないか?小学生の時は可愛い名前でいいなって思っていたけれど、中学生の時にお父さんに私の名前の由来を聞いてみたら、某救世主が出てくる漫画のヒロインから取ったものと聞いて以来自分と比較してしまって嫌いになってしまった。だってユリアだよ?あんな美少女と毎回比べられたら自分に自信が無くなるのも無理ないでしょ。あんな綺麗なお姉さんに対して私と言ったら目は一重だし胸はぺちゃんこだし身長はちっこいしで似ても似つかない外見だもん。

 

「はぁ……」

 

今日何度目になるか分からないため息をついて、私は今日からお世話になる会社へと足を進めた。両親にこれ以上絶望されないようにするために死にものぐるいで就活だけは頑張った。その甲斐もあって1社目で内定を貰い、大学4年の時はあまり苦労せず済んだのだけは自分を褒めてあげたい。

 

勤め先は東京の新橋にある小さな文房具会社。とくにこれと言った理由は無いが、給料も良く余り人が多いところだと緊張しそうだし、馴染むのにも時間がかからなそうなところにした。私はそんなに器用に人と話せる方でも無いしね……

 

そんな事を思って歩いていたら気が付けば会社の目の前に来てしまった。

 

「相変わらず大きなビルだよねここ」

 

私が今日からお世話になるのは、新橋駅から徒歩10分程のところにある10階建てのビルの3階にある。他の階にも色んな会社があって面接に来た時は迷子になるかと思ったぐらいだ。

 

「よーし!頑張ろっと!女は度胸!先輩方と早く仲良くなって充実した社会人ライフを過ごすって決めたんだから!」

 

春は希望の季節を否定したばかりだが内心は希望に満ち溢れていた百合愛だった。

 

エレベーターで3階まで上がり、出て目の前すぐの所に事務所がある。まだ出勤時間の30分前だが先輩方はもう来ているのだろうか。私はおそるおそる事務所の扉を開けた。

 

「おはようございます。今日からお世話になる沖です」

 

扉を開け、1人だけ女の先輩がデスクに腰をかけてコーヒーを飲んでいるのが見えた。

 

「早く来て偉いねー、こちらこそ宜しくお願いします。私は山鳥。丁度沖さんの教育係になるから何かとこれから一緒にやって行くと思うし分からない事があったらなんでも言ってね」

 

「分かりました。宜しくお願いします!」

 

なんだこの綺麗な先輩。それが山鳥さんを見た私の素直な第一印象だった。年齢は私より少し上ぐらいかな?25歳ぐらいに見える。そして少し見ただけで分かる同性すら見惚れてしまうような綺麗なお顔がそこにあった。なんて表したら正しい表現になるのか分からないけどとにかく綺麗で、私が男だったら一目惚れしてたのは間違いなかっただろう。それに声もちょっと低音でかっこよくてこういう人がクールビューティって呼ばれるのかなとも思った。

 

「それじゃデスクは私の横使ってね。じきに皆来ると思うからそれまでのんびりしてていいからね」

 

そう言うと山鳥さんは事務所を出てどこかへ行ってしまった。もう少しだけ話していたかったなと名残り惜しかったが、初日で何かやらかして悪い印象をつけない為にも私は自分のデスクに座ってパソコンを立ち上げて仕事の準備を始めた。

 

山鳥さんが言うように次々に会社の人達が出勤してきた。小規模の会社ということもあり、全体で10人ぐらいしかいなかったが、新人は私だけという事もあって人が入ってくる度に同じ挨拶をずっとするのは流石に疲れるというかめんどくさくなってしまった。当たり前を当たり前にするのってほんとに大変なんだと痛感しているところに山鳥さんが戻ってきた。

 

よく見ると手にタバコの箱を持っていた。それに微かにだが山鳥さんからタバコの匂いがした。

 

うーーん……美人にタバコってホントに似合うっていうか絵になりそうだよなぁ。今度私もタバコは吸わないけど何か聞く時に一緒についていって眺めていようかな。絶対疲れてる時に見たら癒されるもん。

 

「それじゃ朝礼を始めたいと思います。全員立って貰えるかな」

 

面接の時に真ん中にいた人だ。社長さんだったのかな?その人が声を全体に届けると、今まで携帯を弄ってたりコーヒーを飲んでいた人の動きがパタリと止まり社長と思わしき人の方を向いていた。

 

「おはよう。4月に入って初めての朝礼だから今日ぐらいはちゃんと挨拶させてもらおうかな。新人も入った事だしね」

 

その人は社長にしては若く、見た目は40代前半かそこらに見えた。白髪も全く無くぴっちりとしたスーツを身にまとっていてこれが大人かぁっていう感じでしか社会人なりたての私には分からなかった。

 

「それでは改めて社長の戸崎樹(とさきいつき)です。会社としてはまだまだ小さいけどゆくゆくはこのビルぐらい大きい会社にする事が目標です。その為に皆の力を貸して欲しい。今年度は去年より2倍の売り上げを目指していこうと思います。その為には今日から入った新人さんにもたくさん頑張って貰うから宜しくね。それじゃ一言でいいから皆の前で挨拶してもらってもいいかな?」

 

「分かりました」

 

え?聞いてないんですけど……とは言えず私は渋々皆の方を向いて自己紹介をする運びとなった。

 

「今日からお世話になります。沖と言います。分からないことだらけで迷惑をおかけする事もあると思いますが宜しくお願いいたします」

 

無難な挨拶……だって挨拶とか何言えばいいか分からないしつまらない女って思われても怖くて変な事言えないもん!

 

私が話終わると周りから拍手が起き、各々からよろしくねーなど返答が返ってきた。

 

「それじゃ朝礼はここまで、沖は山鳥にしばらく色々教えて貰ってね。山鳥頼むな」

 

そう言うと皆が席に座り各自自分の仕事に入ったみたいだった。

 

「分かりました。それじゃ朝も伝えたけどこれから宜しくね沖さん」

 

「はい!」

 

優しそうにこちらを見て語りかけてくれる山鳥さんを見てこれから頑張って行く事を決意した私だった。






感想、評価など良ければ宜しくお願いいたします!
他の作品も良ければ覗いていってください!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。