Muv-Luv Alternative ~Sunset of Liberty~   作:tonkacchi

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「こちらはカリフォルニア陸軍州兵第208機械化歩兵中隊!西でも東でもどっちでもいい、誰でもいいから聞いてくれ!こんな……こんな戦いはばかげている!……善悪なんてもので推し量れるもんじゃない、ここは……ここは地獄だ!」

―2000年代初頭、太平洋諸州連合軍並びに米国本土防衛総軍が傍受した通信より―





プロローグ

 

 

2001年9月21日、この日のユーコン基地は酷く騒がしかった。防衛線にBETAが迫ってるだの、避難する車だのでごった返していた。時折銃声や爆発音が鳴り響き、普段見ない戦術機も多数空を飛びまわっていた。

 

その喧騒は一日中続いた。夜の9時ごろになると警報音がいつものとは異なったものが発令された。

 

『こちらは国連軍ユーコン基地です。この放送を聞いている方は落ち着いて最後までお聞きください』

 

いつもにも増して不気味な重低音の警報と共に、震えたような女性の声が続いた。

 

『ただいま当基地に対するBETAの侵攻が発生中です。しかし奮戦虚しく、先頭集団が最終防衛線を突破されてしまいました。これを受け、当基地は基地防衛要綱第3項による権限により、基地から半径300km圏外への退避命令を発令します』

 

基地に未だに残っていた人員は我先にと滑走路にいる輸送機に飛びついていった。だが、飛び立った輸送機のほとんどは光線級により撃墜されていった。

 

 

 

 

 

そして、23時58分

 

一瞬昼間のような明るさと共に爆音と爆風がアラスカの海岸地帯を包んだ。アラスカの地中深くに埋められていた無数の水爆群、レッドシフトの発動である。

 

 

 

 

レッドシフトは、水爆地雷群の一斉起爆による第2ベーリング海峡の生成、それによる北アメリカ大陸への上陸阻止が目的だった。

 

だが、計画は失敗に終わった。

 

実際に起爆した水爆地雷は総数の1/5にも満たない数だったのだ。そのため、一部の地域が核汚染されたクレーターを生成したのみにとどまり実質的な効果は全くと言っていいほどなかった。

 

さらに運の悪いことにより、BETAは大量にベーリング海峡から上陸し始めた。本格的な北アメリカ大陸上陸である。

 

これを受け、アラスカに政府主要機関を置いていたソ連は速やかに周辺国家に新規移転先の要請をした。だが、混乱の影響もあり正式な認可がなかなか下りず時間を浪費していった。

 

この間に、ユーコン基地はその後侵攻したBETA群により壊滅的な被害を受け陥落。米軍の援護もあり一時は最初期の防衛線まで押し上げるも、無数に湧いて出てくるBETAに対して最終的には撤退を選択することになった。

 

ただ、この一連の戦闘により時間を稼ぐことには成功した。そのため交渉がカナダ政府と成立し、ソ連の国家基幹機能はカナダのバンクーバーに移ることになる。この交渉には数々の取引があり、その一つにソ連軍技術の一部開示があった。

 

軍事バランスにおいては最悪の選択ではあったが、ソ連を存続させるための致し方ない選択だった。

 

「共産主義は決して土地の消失に屈することなく、その時を静かに待っている」

 

その時の国家元首であるヴォイテク・ニキータがそう発言しているように、彼らは決して諦めてはいなかった。

 

だが、今度は米国内での動乱が発生した。

 

10月2日、ホワイトハウスにて会見を行っていたウィンストン・クリストン大統領が射殺される事件が発生したのである。

 

彼は死ぬ直前の会見でソ連とカナダに対する支援の意思を表明したばかりだった。一時的に副大統領のアルバート・ヒルが政権を引き継ぐが、すぐに対立政党の共和党に政権が移動する。

 

選ばれた大統領はジョンストン・ウォーカー、彼は根っからの米国第一主義(アメリカ・ファースト)だった。彼の政策方針により、カナダとアメリカの国境沿いに巨大な防護壁が建設されることになった。

 

通称『ノースカーテン』こと米国本土防衛用防壁は高さ20m厚み5mからなるコンクリート製防壁だった。十分に対BETA用途で使えるが、カナダやそこに居座るソ連からの流入を防ごうというのが本当の目的だった。議会で承認されてからたったの1週間で建設は完了した。

 

無論反対意見はかなりあった。特に民主党勢力からはすさまじいほどの反対を受けた。デモも各地で発生した。だが、それに対してのカウンターデモも発生した。

 

それから1か月間に及ぶ動乱の末、ロッキー山脈を隔てて国家が分裂した。

 

東側は米国第一主義を掲げる共和党政権であるアメリカ合衆国連邦政府を、西側が協調路線をとる民主党政権の太平洋諸州連合政府を名乗ることとなった。

 

連邦政府は『強く美しいアメリカの復活』を、太平洋連合は『人類の勝利のために』を掲げており、真っ向から対立していくこととなった。

 

 

 

この時彼らは予想もしなかった、いやしたくなかったのだろう。

 

自らの選択が愚かで、無駄で、クソのような結末をもたらし、命をもって償うことになることなど。

 

 

 

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