バイトが忙しくて、投稿が遅れてしまいました。
バトル回は基本的に作者が慣れていないので、投稿スピードが普通よりも遅くなってしまいますが、どうかご勘弁を。
「藤本くん。お疲れ様です」
「でも、この後またすぐあるんですよね。一夏、一次移行は終わってる?」
「ついさっき終わった。何時でもやれるぜ」
「藤本。初の試合で連戦は酷だと思うが、時間がないのでな、悪いが頑張ってくれ。それとシールドエネルギーが回復するまでの間、短い時間だが休んでおくといい」
「はい」
ピットに帰ってきた将輝はISを待機状態にして、すぐにシールドエネルギーを回復させていた。本来ならセシリアと一夏がこの後戦う事になる筈だったのだが、ブルー・ティアーズの武装は軒並み将輝が破壊した所為ですぐに戦闘する事は不可能になってしまい、結果将輝は連戦する形で一夏と戦う事になった。
ドサリと壁に背中を預ける感じで腰を下ろした将輝は強烈な睡魔に襲われた。何せ初の戦闘という事もあり、かなり緊張していたし、動きもそれなりに激しかった。眠くなるのは当然であったが、それもかけられた声によって、意識が落ちる事はなかった。
「こんな所で寝ては風邪をひくぞ」
危うく寝落ちしかけた将輝に話しかけてきたのは箒だった。此方のピットに帰ってきてから、ずっと話しかけるタイミングを伺っていて、やっと二人で話せるような状況になった為、こうして将輝の元へと来ていた。将輝は箒の言葉に懐かしさを感じて、つい笑った。
「懐かしい響きだ。中学の時、いつも箒は俺にそう言ってたね」
「それは毎度毎度、将輝が外でなんか寝るからだろう」
模擬試合をした後、何時も疲れたといって剣道場を抜け出し、外で寝ていた将輝を起こす役目を担っていたのは箒だった。一カ月を超えたあたりから、「篠ノ之さん、藤本を呼んできてくれ」と言われる程に。将輝が寝る場所は決まって剣道場を出て、少し離れた芝生の上だった。将輝が抜け出してから一時間経てば箒が起こしに行く。それが半ばデフォルトと化していた所為か、箒が転校した後、最初のうちは寝過ごして気づいたら部活動が終わっていたという事がザラにあった。もっとも、その後は後輩の女子部員が起こしに行く事で寝過ごす事はなくなっていたが、初めのうちはそれに慣れるのにも苦労したものだ。
「ここは中だけどね………って、睨まないでよ。ごめんごめん、俺が悪かった」
ジトリと睨んできた箒に将輝は苦笑しながら謝るが、それはそれで可愛いなと思ってしまう自分もいた。
「と、ところで先程の試合の事だが……」
「ごめんね。箒にちゃんと教えてもらってたのに、凄い無様な試合になっちゃって」
「そ、そんな事はない。第一、私は知識としてしか教えられなかったし、そ、そ、それに…………最後はかっこよかったしな……」
「最後の方が声が小さくてよく聞こえなかったんだけど、もう一回言ってくれる?」
「い、いや!何でもない!うん、何でもないぞ!気にするな!」
「そ、そう……?」
あまりに箒が何でもないと連呼する為、逆に何かあるのは明白となるが、あまり突っ込むとまた睨まれかねない上に不機嫌になるので、追及するのは止めた。
「まあ、セシリアが初めからビット使ってたら瞬殺だったろうけど、勝ちは勝ちだし、今は取り敢えず喜んでおくかな」
「相変わらず、自分を過小評価しているな」
「そう?妥当な評価だと思うけどね」
実際、ビットを使われていたら、一次移行する前に敗北していたのは明白であるし、そもそも攻撃に一度も移れないまま、エネルギー切れで終了という可能性は大いにあった。原作の慢心が人を為して歩いているようなセシリアならば兎も角、此方のセシリアには慢心がない。挑発も無意味で、慢心に漬け込む事も不可能。おまけにビットを誘導したと思いきや、誘導されていたのは自分であったりと本当に何故勝てたのか不思議なくらいセシリアは強かった。
(セシリアがあれだけ強いのは、憑依する前の俺が原因なんだよな。はぁ…………思い出しかけてるんだけど、どうもいまひとつ何かが足りないんだよなぁ……)
「はぁ…………どうすっかなぁ」
「急に溜め息なんかついて、どうしたんだ?」
「あ、いや、一夏とどうやって戦うか、悩んで「嘘だな」」
「最近、オルコットの奴と何かあったのだろう?その事で悩んでいるのではないか?」
「うっ……!」
箒の鋭い指摘に言葉を詰まらせる。全くもってその通りだった。一夏の時といい、箒はかなり鋭い。一瞬、将輝がキョドった事もあるが、普通はわからない。なのに箒はピタリと将輝の胸中に渦巻く問題を言い当てた。
「箒はさ…………もし、久しぶりにあった幼馴染みが二年より前の事を覚えてなかったとしたらどうする?」
「急な質問だな。…………………それはもちろん悲しいな。私はそいつと過ごした時間を覚えているのに、向こうは何も覚えていないというのは」
「やっぱりそう思うよね「だが」うん?」
「もし相手が何も覚えていないというなら、これからまた新しい思い出を作っていけばいい。無くした分は返ってこないとしても、また新しく人間関係を築いていけばいい。私としてはそういう道もあると思う。ただ、もしそいつが記憶を失くした事を私に隠そうとするなら、寧ろそちらの方が嫌だな」
「なんで?」
「信用されていないみたいではないか。ああ、そういえば相手は記憶を失くしているのだったな、それでは信用も何もあったものではないな。すまない、今のは忘れてくれ」
「いや、参考になったよ………………ありがとう、箒」
「え?」
「さて、試合に行くとしますかね」
将輝はスッと立ち上がり、一夏と対戦すべく、ピットゲートへと向かう。その表情は先程よりもかなり晴れやかで、其処に最早悩みなどなかった。
(取り敢えず今は一夏を倒す。その後でセシリアと話さなきゃな)
「山田先生。エネルギーは回復しましたか?」
「はい。ちょうど今、出来たところですよ。藤本くん、あんまり無理しないでくださいね。もし体調が優れないようであれば、試合の途中でも言ってください」
「了解です。もしもの時は開放回線で自己申告します」
口ではそう言っているが、もちろん将輝にその気はない。迷いを箒が断ち切ってくれた以上、先程のような無様な姿は見せられない。ましてや相手が一夏であるなら、尚の事かっこ良く勝ちたいと柄にもない事を思っていた。
(何はともあれ、絶対に勝つ)
「藤本将輝。夢幻、行きます」
本日二度目の展開となる無色透明の専用機を纏った将輝は一夏の待つ上空へと飛翔した。
「来たな、将輝」
「ああ。ここで一つ、IS学園男子同士の本気ってやつを皆に見せてやろうぜ」
「いいな、それ。じゃあ…………行くぜ!」
一夏の右手に現れたのは長さ1.6メートル程の刀剣の形をした近接武装。名は『雪片弐型』。かつて彼の姉である織斑千冬が使っていた専用機の武装『雪片』の後継であり、白式唯一の武器だ。
雪片をその手にもった一夏は加速して、将輝へと斬りかかる。将輝もそれに対抗すべく、手には先程セシリアとの戦いで使われた細い日本刀のような刀身が特徴的な近接武装『無想』を呼び出し、受け止めた。
「おおおおおっ!」
一夏は雪片を手に攻め立てる。太刀筋は慣れていないため、かなり粗いが、将輝とてそれは同様で、いくら先に戦ったとはいえ、一夏に毛が生えた程度の稼働時間でしかない為、受け流すと言った器用な真似は出来ず、防御や回避をしながら、しのいでいた。
「やるな将輝!」
「一夏こそな。次はこっちの番だ!」
受け止めていた雪片を押し返し、今度は将輝が斬りかかる。一夏もそれを防御したり、回避したりしているが、防ぎきれず或いは回避しきれずにじわじわとシールドエネルギーを削られていく。例え、毛程の差だとしても僅かな経験値の差が此処には出ていた。しかし、
「もらった‼︎」
確実に当たると思っていた一撃が空を切る。無理矢理身体を捻った一夏は肉体にかかるGに苦悶の表情を浮かべるが、その勢いのまま、回し蹴りを放ち、将輝を横に三メートル程蹴り飛ばす。
「グッ……⁉︎」
「おらぁっ!」
ガンッ!
振るわれた雪片を将輝は左腕で受け止めた。正確には受け止めたというよりもダメージの少ない方を犠牲にしたと言った方が正しい。左腕で防いだ所為で、装甲には罅が入り、折れてはいないが、折れるかと思う程の痛みが走る。
「痛えな、この野郎!」
反撃とばかりに無想を一夏の腹部に向けて打突を放つ。横薙ぎに振るわなかったのは、回避される可能性も考慮してだ。流石に身体の中心部への攻撃を避けるのは不可能で、一夏は打突によって後方へと弾き飛ばされた。
(セシリアの時よりもっと余裕があるかと思ったけど、蓋を開けてみたら、今の俺にはどっちも強敵だったな)
別にセシリアが弱い、というわけではない。彼女は代表候補生の中でもかなりの実力者だ。一夏とでは比べ物にならないだろうが、彼には既存の枠組みを叩き壊す意外性と何より姉に負けず劣らずの才能がある。あと数年と経たない内に彼は国家代表になれる素質もある。天才で努力家でもある彼が原作で急激に力をつけたのはある意味当然といえる。精神的に未熟な部分は多々あるが、それも経験で如何にかなるだろう。天才には遠く及ばない、百歩譲って才児くらいのものだ。天才と才児とでは大きく違う。スタート地点がそもそも違う。
ガギンッ!ギン!ギィン!ギィィィンッ!
激しい鍔迫り合い。互いにIS戦は素人でも、剣筋はまさしく経験者のもの。鋭い太刀筋は見る者を魅了する…………とまでは流石にいかない上、途中で何度か無茶な動きを見せる二人は素人そのもの。観客席で見ている一組のクラスメイト達はともかく、管制塔で見ている千冬は頭を抱えていた。
「あの、馬鹿者どもが。身体への負担を無視しているな」
「一旦、止めさせましょうか?」
「いや、好きにやらせるさ。後で何と喚いても聞く耳を持たんがな」
ククク、と何処かラスボス染みた笑みを浮かべる千冬に横にいた真耶は苦笑する。だが、その会話を横で聞いている箒は心中穏やかではない。まだIS戦においてのノウハウに詳しいとは言い難い箒自身はわからないが、教員である二人がそう断言するのであれば、二人の動きはかなり無茶苦茶で、おそらく上級者ですら殆どしない動きであろう事が予想できた。にもかかわらず、二人を止めようとしない千冬と真耶には箒は何か言おうとは思わなかった。それは自身もまた、二人を止められる程の理由を持ち合わせていないからだ。故に彼女はただただ二人の無事を祈る事しか出来ないでいた。そしてちょうどその時、戦況が大きく変動した。
「「はぁ………はぁ………」」
十分にも及ぶ激しい戦闘。それはIS戦においてはよくある事で、其処まで激しい息切れをする程ではない。
では何故、肩で息をする程、二人が疲労しているのかというと、それは偏に彼等が戦闘中に度々見せているでたらめな動きにあった。慣性やGなどを無視した攻撃や回避の所為で身体にはとてつもない疲労感を与えていて、おまけにところどころには内出血したかのような青い痣が出来ていた。身体のダメージを無視したまま戦い続けていた二人だが、流石に自身の限界とISのエネルギーの限界が近い事を悟っていた。
「次で……終わりだな」
「ああ。俺の最高の一撃で将輝を倒すぜ」
「それはこっちも同じだ、一夏」
激しかった今までとは打って変わって、二人は大きく深呼吸をしてから、静かに構える。その構えとは裏腹に二人の瞳には凄まじい闘志が宿っている。そしてそれに呼応するかのように、一夏の握る雪片の形状が変化した。
一夏の手の中で雪片の刀身の中心の溝から外側に向けて、凄まじいエネルギーの光を帯び、元の刀身よりも一回り大きいエネルギー状の刃を形成していた。
『零落白夜』。雪片の特殊能力であり、白式のワンオフ・アビリティー。相手のバリアー残量を無視し、それを切り裂いて、本体に直接ダメージを与える事で強制的に絶対防御を作動させて大幅にシールドエネルギーを削ぐ事が出来る特殊能力。早い話がバリアー無効化攻撃であり、斬れないものも殆どない。かつて彼の姉たる千冬が世界一の座にいたのも、その特殊能力によるところが大きい。代償としてシールドエネルギーを使用するものの、その威力は間違いなく全IS中トップクラスの破壊力だ。
(土壇場で零落白夜を発動させやがった…………流石主人公)
零落白夜の発動さえなければ、将輝は肉を切らせて骨を断つつもりで攻撃をしようとしていた。だが、一夏が零落白夜を発動させてしまった以上、その作戦は愚行以外のなにものでもない。鍔迫り合いも下手をすれば、無想ごと斬られる可能性があり、正直言って逃げ回ってエネルギー切れを待つのが得策だ。だが、そんな勝ち方をした所で全く嬉しくない。勝つなら正面から打ち倒したいそう思っていた。
(セシリアの時は俺の剣も似たような事になってたんだけどなぁ。どっちかって言えばビームサーベル的な零落白夜よりもガ◯バーの高周波ソード的な………………ん?)
その時、将輝の持つ無想にも変化があった。元々細かった刀身が更に細くなったかと思うと、刃の部分のみがエネルギーで覆われ、高速で振動し始めた。
「どういう理屈か知らないが、都合が良い」
上段で構える一夏と剣先を下げて、下段の構えを取る将輝。
周囲が静寂に包まれる。先程まで騒いでいた観客達も固唾を飲んで、二人の戦いの行方を見ていた。数秒間、それが続いた後、二人は同時に仕掛けた。
「「おおおおおっ‼︎」」
高速で行われる激しい剣戟戦。お互いに当たれば即終了の一撃を受け止め、或いは回避し、敵を斬り伏せんと得物を振るう。身体にかかる負担もダメージも今は気にならない。相手を倒す為、ただひたすら突き進む。
何度目になるのかわからない二人の激突だったが、其処で再度戦況が大きく変動した。
この試合、幾度となく剣戟戦を行った一夏は将輝に決定的な隙を作れずにいた。このまま何度同じ事をしても、ダメージが与えられるとは思わなかった一夏はぶつかり合う一歩手前で急停止をする事でタイミングをずらした。もちろん加速した直後の急停止は一夏の身体にさらなる負担をかけるが、それでもタイミングをずらされた将輝はかなり大きな隙を作ってしまったのだ。それを確認した一夏はすぐさま急加速して、隙だらけの将輝へと肉薄する。
この瞬間、誰もが一夏の勝ちを予測した時、将輝も打って出た。
防御は間に合わない。通常の回避も同様。故に将輝が取ったのは一夏と同様の無茶極まる動き。雪片が当たるよりも早く、真下への急加速を行った。九十度直角に真下へと加速した将輝は一夏と同等或いはそれ以上の負担を身体に受け、視界がブラックアウトしそうになるが、ISのおかげでブラックアウトする事はなかった。
隙を作った将輝にトドメをさすために振るわれた雪片は相手が消えた事で空を切り、一夏は絶対的な隙を作ってしまった。それは先程の将輝とは比較にならない程の戦場であればどう足掻こうが死を免れない程の隙を。そしてそれを見逃がす程、将輝はお人好しでも馬鹿でもない。急加速から振るわれた渾身の一撃が白式の装甲を大きく切り裂き、絶対防御を作動させた。
『試合終了。勝者━━━藤本将輝』