憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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セカンド幼馴染みは代表候補生

 

「ということで、一年一組代表は藤本将輝くんに決定です。はい、拍手〜」

 

真耶の言葉に同調するように周囲からはパチパチと拍手が聞こえ、大いに盛り上がっている。その中心で一人暗い顔で哀愁漂うオーラを纏っているのはつい先程クラス代表に任命された藤本将輝だった。

 

クラス代表決定戦にて、セシリアと一夏を下した将輝が代表になるのは当然なのだが、本人になる気など全くなかった。なら何故勝ちに行ったのかというと、勝った者がクラス代表になるという事実を完全に失念していたからだ。

 

因みに将輝は他薦された者なので辞退は出来ない。それは一週間前に実証済みだ。となると最早クラス代表をする以外の道は残されていなかった。

 

「藤本。何か不満がありそうだな」

 

「それはもう。あり過ぎて困るというか……」

 

バシンッ。

 

隠しても無駄だと悟り、真っ向から不満を打ち明けると頭部には出席簿が降り注いだ。因みに隠しても頭部には出席簿が…………。結論何方も頭上注意。

 

「負けなかったお前が悪い。まあ、わざと負けようものなら無理矢理させていたがな」

 

(流石の鬼教官。理不尽すぎて涙が出ーー)

 

「今から物理的に出してやろうか?」

 

「すみませんでした」

 

相手を問わず、ブリュンヒルデは心を読めるようだ。繰り出される言葉と拳は殺人級。彼女の本気をその身に受ければ天国への片道切符を手に入れる事が出来るだろう。

 

「クラス代表は藤本将輝。異存は無いな」

 

はーいと将輝を除くクラス全員が一丸となって返事をした。団結は良いことであるが、必ずしも全員満場一致でない辺りがかなり現実的でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふうん、ここがそうなんだ……」

 

夜。IS学園の正面ゲート前に、小柄な身体に不釣り合いなボストンバッグを持った少女が立っていた。

 

まだ暖かな四月の風に靡く髪はそれぞれ高い位置で結んであり、肩にかかるかかからないかくらいの髪は、金色の留め金がよく似合う艶やかな黒色をしていた。

 

「受付は…………」

 

上着のポケットから折り畳まれた一切れの紙を取り出す。其処には本校舎総合事務受付と書かれているが、少女は何処にそれがあるのかを知りたい訳で、その折り畳まれた紙をぐしゃっと握り、ポケットに入れる。

 

「結局、足で探す事になるのよね。やれやれって感じだわ」

 

ぶつくさと言いながらもその足はとにかく動いている。思考よりも行動。そういう少女なのだ。良くいえば『実践主義』悪く言えば『よく考えない』であるが、これでも多少は改善された方である。釘を刺される中学時代よりも以前は考える考えない以前にそもそも人の話を聞かない。取り敢えず動いてから考える体力馬鹿のような思考回路だった。

 

(出迎えがないって聞いてたけど、せめて道案内くらいは欲しかったわね。政府の連中も異国の地に年頃の少女を放り込んでおいて、特に何もしてくれないし)

 

少女の見た目はよく見ると日本人に似ているが違う。その鋭角的でありながら何処か艶やかさを感じさせる瞳は中国人のそれだった

 

とはいえ、この少女にとって日本は第二の故郷であり、思い出の地であり、因縁の場所でもある。

 

(都合よくそこら辺に転がってないかなぁ。案内出来そうな人)

 

学園内の敷地をわからないなりに歩きながら、キョロキョロと人影を探すが、今は八時過ぎ、どの校舎も灯りが落ちているし、当然生徒は寮にいる時間だった。

 

いっそISを使って空から探そうかな?と考えた少女だったが、あの『あなたの街の電話帳』×3くらいある学園内重要規約書を思い出してやめる。まだ転入手続きが終わっていないというのに学園内でISを起動させようものなら、事である。最悪外交問題にも発展する。それだけはやめてくれと何回も懇願していた政府高官の顔を思い出してやめる。

 

(あたしも随分考えるようになったわね〜。前までなら起動させた後に考えてたけど)

 

我ながら自身の成長具合に感心する少女。昔はその性格故に周囲を巻き込んで騒動を起こしたものだ。そしてその最たる被害者は彼女が日本に帰ってくる最大の理由になっている人物だ。

 

(元気かな……あいつ……)

 

それは不要な心配というものだろう。あれだけ振り回されてもいつもピンピンしていた友人の元気のない姿など一度とて見た事がなかった。何処か達観視している節もあったが、それはそれ、これはこれだ。

 

「だから………」

 

ふと声が聞こえる。視線をやると、女子がIS訓練施設から出てくるようだった。何処の国でもIS関係の施設は似たような形をしている為、すぐにそうだとわかる。

 

(丁度良いや。場所でも聞こっと)

 

声を掛けようと小走りにアリーナ・ゲートへと向かう。

 

「うーん。わかることにはわかるんだが、イメージが難しいんだよなぁ」

 

不意を突かれて、少女の身体はビクンと震え、足が止まる。

 

男の声ーーーそれも、知っている声に凄く似ている。いや、おそらく同一人物だ。

 

予期していなかった再会に、少女の鼓動が加速する。

 

一年ちょっと振りの再会とはいえ、やはり相手が自身の想い人ともなればとかなり緊張する。それにもし自分だとわからなかったらどうしようという不安もあったが、超ポジティブ思考に切り替えて、少女は何故か準備運動を始め、それが終わるとクラウチングスタートを切った。

 

「昔から一夏は難しく考え過ぎ「いっっっちかぁぁぁぁ‼︎」」

 

「ん?ぐへぇ⁉︎」

 

全速力から繰り出されたタックルに一夏は身体をくの字に曲げて、そのまま地面に転がり、腹部を襲った衝撃に何事かと思うと同時に嫌な懐かしさを覚えた。

 

「この感じ………鈴か‼︎」

 

ニュータイプさながらの発言と共に自身の腹部に頭を埋めている少女を見やる。

 

「一夏の匂いだ〜」

 

「だあああ‼︎匂いを嗅ぐな‼︎ていうか、は・な・れ・ろぉぉぉぉ‼︎」

 

鈴と呼ばれた少女を引っぺがそうと試みるもその小さな身体の何処からか湧いてくる馬鹿力の所為で引っぺがすどころがどんどん離れなくなっていった。

 

「箒も手伝ってくれ!」

 

「わ、わかった!」

 

一人では無理だと悟った一夏は箒に助けを求め、二人掛かりで引き剥がそうとするが、一向に離れる気配はない。数分間何とか引き剥がすのを試みてはみたものの、結果は二人の疲労が増加したのみに終わった。

 

「な………なんなんだ、この馬鹿力は……」

 

「わ…わからん………昔は……二人掛かりでなら……引き剥がせたのに」

 

「ところで其処の変た………もとい女子は誰だ?見た所顔見知りのようだが」

 

「まあな。顔見知りというか幼馴染みというか俺の白昼夢というか……」

 

「それはあたしから説明させてもらうわ!」

 

『うわっ⁉︎』

 

先程までどれだけ引き剥がそうとしても微動だにせず、反応すらしなかった少女がガバっと顔を上げる。因みに回された腕は未だに離れていない。

 

「あたしの名前は凰鈴音。一夏の幼馴染みにして、心の友と書いて心友よ!ついでに中国の代表候補生で専用機持ちだけど、まあそれはどっちでもいいか」

 

((どっちでも良くはないと思う……))

 

「ん?幼馴染み?私は知らないぞ」

 

「ああ。鈴は箒と入れ違いで転校してきたんだよ。箒は小学四年生の終わりだっただろ?鈴が来たのは小学五年生の頭だ。箒がファースト幼馴染みだとすると鈴はセカンド幼馴染みってとこだな」

 

「また意味不明な事を………」

 

「て事は貴方が篠ノ之さん?よろしくね!」

 

回していた腕を離し、鈴は握手を求めて手を出した。展開があまりにも早すぎて一瞬理解するのが遅れたが、箒もその握手に応じた。鈴はその手を握るとキョトンと首を傾げ、思案顔になった。

 

「あれ?一夏から聞いてた話と違うなぁ……」

 

「何の事だ?」

 

「ああ、気にすんな。鈴て初対面の人間の時、偶にこんな感じになるんだ。何か握手したら大体の事がわかるとか言ってたから、想像と違った事でもあったんじゃないか?」

 

「そういうものなのか?どの辺りが違ったのか気になるが、凰だったか?そろそろ手を離してくれると助かる」

 

「………あ、ごめんごめん。こんなに違う人は初めてだから。つい長引いちゃった。何はともあれ、これからもよろしくね!あたしの事は鈴でいいから」

 

「ああ。よろしく頼む、鈴。私の事は箒で構わないぞ」

 

「じゃあまたね、一夏、箒!あたし行くところがあるから」

 

ピューッと走り去った鈴を見届けて、箒は苦笑し、一夏もまた同じような表情を浮かべる。

 

一夏と箒と別れてすぐ、総合事務受付は見つかった。アリーナの後ろにあるのが、本校舎だったからだ。灯りもついていたので、其処だと確信した。

 

「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、凰鈴音さん」

 

愛想の良い事務員の言葉に鈴も笑顔で返し、一番気になる事を事務員へと聞いた。

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

 

期待を込めて問うた質問。彼女にとって、それはこの学園生活で最も重要視している事だ。また一夏と同じ場所で馬鹿騒ぎ(一夏は巻き込まれているだけ)がしたいな、という少女の願いはあっけなく潰えた。

 

「ああ、織斑くん?一組よ。凰さんは二組だから、お隣ね」

 

ピシッという音共に鈴は後ろで何かが崩れるような音を聞いた。隣りというのはいい。だがそれは隣の席だった時で、誰も隣のクラスが良いなど言っていない。しかし、文句を言った所で変えられないのが現実だ。だが諦めきれなかった鈴は初めて頭をフル回転させる。そして一つの結論に至った。

 

「二組のクラス代表って、もう決まってますか?」

 

「決まってるわよ」

 

「名前はなんていいます?」

 

「え?ええと………聞いてどうするの?」

 

鈴の態度に少しおかしなところを感じたのか、事務員は少し戸惑ったように聞き返す。

 

「代表を譲ってもらおうかと思って」

 

 

 

 

 





と言うことで鈴ちゃん初登場回でした。

当初は原作通りにしようかと考えていましたが、皆性格変わってるから鈴も変えちゃおうという試みでした。

そして千冬さんの読心術は一夏だけにとどまらず、万人通用するチートぶり。最早心の中ですら文句は言えません。
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