憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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強さの意味

 

振り下ろされた《雪片》を直前で受け止めた将輝は黒いISを蹴り飛ばす。

 

「将輝さん………」

 

「ギリギリで間に合ったみたいで良かったよ。無事かい?セシリア」

 

肩に《無想》を預け、微笑を浮かべる将輝。呼吸が乱れているのは全力疾走でこの第一アリーナへと来たからだ。

 

「すぐにケリをつけてくるから、其処で待っててね」

 

将輝はそうだけ言うと身を低くして、スラスターを吹かせ、黒いISへと肉薄した。

 

激しい金属音と共に将輝と黒いISの剣戟戦が繰り広げられる。お互いに後方に退く事はなく、互いの得物が届く範囲から離れようとはしない。一見拮抗しているように見える戦い。だがセシリアには全く別の状況に見えた。

 

(やはり動きに今ひとつキレがない………まだリハビリ中ですものね)

 

先程将輝が来た時にも言っていたが、将輝はまだ勘などを取り戻すといった意味ではリハビリ中だ。傷が完治したのはつい先日の事でISの実戦訓練に復帰したのもまた先日の話だ。特訓漬けだったクラス対抗戦に比べると明らかに動きが悪い。何とか食らいついているものの、負けるのは時間の問題。そうセシリアには見えた。

 

「強いな。劣化模造品とはいえ、流石はブリュンヒルデのデータだ。どういう理由で戦闘不能状態のセシリアにトドメを刺そうとしたのかは知らないが、取りあえず時間稼ぎって訳にはいかないよな」

 

背中に嫌な汗を感じながら、将輝は黒いISを見やる。はっきり言って黒いISは強い。何故原作にて一夏があれほど単純に勝てたのか怪しい程だ。一夏の主人公補正も多分に関係しているが、この黒いISがどう考えても原作より強いというのも大いにあった。

 

おまけにどういう訳か、《無想》は形態変化こそしているが、無人機の時のような圧倒的な破壊力を見せないのだ。それは偏に将輝の精神状態が関係しているのだが、当の本人にそれはわからない為、歯痒い思いをしていた。

 

黒いISの剣戟を防ぎ、斬り返す。その行いを何度も繰り返していると黒いISは学習したのか、将輝が斬り返すタイミングに合わせて、身体を後ろに反らし、その無茶な態勢のまま、蹴りを放つ。その蹴りは見事に将輝の顎を捉え、エネルギーが削られる。仕返しとばかりに将輝も蹴りを放つが、ひらりと躱され、黒いISが距離をとった。

 

(助けに来ておいてなんだけど、もの凄く助けてほしい)

 

運良く千冬辺りが来ないものかと考えるが、もし来た場合、ラウラの安全は保障されない可能性がある。彼女は良くも悪くも教師だ。私情に流されず、確実に仕事をこなすだろう。ラウラ一人の身の安全を考えた結果、他の生徒が何人も怪我をしたでは洒落にならない。結局の所、将輝か或いは他の専用機持ちが倒す以外に道はなかったのだが、この状況下で最も助けに来たところで意味がなさそうな将輝が来たのだから運命というのはタチが悪い。

 

そうこう考えている内にも黒いISはその手を休めない。上段打突の構えを取ると将輝を貫かんとそのまま突撃する。将輝はそれを横に躱して、攻撃を仕掛けようとするが、それよりも早くに黒いISが斬り返した事で防御されてしまう。

 

(おまけにこの動きじゃ中にいるラウラの負担は半端なさそうだ…………如何にかしないとマズイな)

 

かと言って黒いISを倒せる算段はついていない。援護を求めようにも今の鈴とセシリアに頼むのは酷というものだ。そうなるとやはり自身の力のみで倒さなければならない。

 

(せめて《雪片》を押し切れるだけの力があればなんとかなる。無人機の時みたいに《無想》さえ威力が増せばなんとかなるのに……!)

 

無人機の時のようにさえいけば、《雪片》ごと黒いISを斬る事が可能だ。加減を間違えればラウラごと斬り捨て兼ねないが、それは将輝自身の匙加減で如何にかするしかない。

 

前回も前々回もある程度の思い込みで形態変化はした。今回も形態変化はしたが、破壊力が足りない。当たってから断つまでにそれなりの時間を要する。それでは相手を断つ前に将輝の方が斬り捨てられている。

 

(この際、防御力は無くていいから火力だけ上げられないかな。当たったら防御なんてあってもなかっても意味ないんだし)

 

ギュゥゥゥゥンッ‼︎

 

「え?」

 

ここで待ちに待った変化が訪れた。エネルギーが《無想》に収束していくような感覚と共に《無想》の刃が全てエネルギー状のものへと変化する。待望の変化なのだが、いかんせんタイミングが悪かった。黒いISの攻撃の途中に変化した所為で将輝の躱し損ねた剣戟が腕に掠ると案の定斬れて、血が滲む。しかもISの操縦者保護機能まで防御と認識されてカットされているのか、血も止まらない。

 

「ちょっ⁉︎洒落になってないって!これ当たったら普通に即死じゃん⁉︎」

 

そう言いながらも何とか躱し続けた将輝は何とか後方に飛び退くが、その際に額にも僅かに斬り傷がつく。

 

「はぁ〜、まさか本当に反映されるとは…………ん?て事は」

 

もしイメージ通りなら自身は今零落白夜にも勝る一撃が放てるのでは?そう考えた将輝は突進してくる黒いISに合わせて《無想》を袈裟斬りに振るう。

 

黒いISはそれを防ごうと《雪片》を構えるが、将輝はそれごと黒いISを叩き斬った。

 

何とも微妙な幕切れに将輝も微妙な表情を浮かべるが、真っ二つに割れた黒いISから無事生きて出てきたラウラを抱きとめると一つ重大な事に気がついた。

 

「これって一夏のフラグ折ったんじゃね?」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ぁ………ここは…?」

 

「気がついたか?」

 

ぼやっとした光が天井から降りているのを感じてラウラは目をさますと聞き覚えのある声が、自らの敬愛してやまない人物からの声が聞こえる。

 

「私……は?」

 

「全身に無理な負荷がかかった事で中度の筋肉疲労と打撲がある。しばらくは動けないだろう。無理をするな」

 

「何が……起きたのですか?」

 

上手くはぐらかそうとした千冬だったが、流石は教え子というべきか。その誘導には乗らず、真っ直ぐに千冬を見つめる。

 

「ふぅ………一応、重要案件である上機密事項なのだがな」

 

念の為にそう言うが、ラウラがそう言って引き下がる相手でないことは千冬も重々承知だ。千冬はここだけの話である事を沈黙で伝えるとゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「VTシステムは知っているな」

 

「はい………正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きをトレースするシステムで、確かあれは……」

 

「そう、IS条約で禁止されている。それがお前のISに積まれていた。巧妙に隠されてはいたが、ある一定の発動条件………機体の蓄積ダメージ、操縦者の精神状態、何より操縦者の強い願望。それらが揃うと発動するようになっていたらしい。現在学園からドイツ軍に問い合わせている。近く、委員会からの強制捜査が入るだろう」

 

千冬の言葉を聞きながら、ラウラはぎゅっとシーツを握り締める。その視線はいつの間にかと俯き、虚空を彷徨っていた。

 

「私が………望んだからですね」

 

織斑千冬になる事を。『強者』で居続ける事を。

 

言葉にこそ出さなかったが、それは千冬に伝わった。

 

「私からお前に言う事はない。ただ一つ、言えるとすればお前は私にはなれんぞ、こう見えてアイツの姉は心労が絶えんのでな」

 

実に千冬らしい。励ますとも突き放すとも取れない発言にラウラは思わず笑みをこぼす。部屋を出て行こうとした千冬はそれから、と付け足す。

 

「もうすぐここにお前を助けた奴が来るが、あれは私の弟では…………いや、私の口から言うのは面白味に欠けるな」

 

後半何かを言いかけた千冬は直前で言い淀み、保健室を後にした。

 

その一分後、部屋に入ってきたのは頭と腕に包帯を巻いた将輝だった。

 

「やあ、大きな怪我はないみたいで何よりだ」

 

「織斑一夏……そうか。私はお前に敗れたのだな」

 

流石は教官の弟だ。自身が負けてしまうのも無理はない。そう納得しかけたラウラだったが、次の将輝の言葉によりそれは打ち砕かれた。

 

「俺は織斑一夏じゃないよ」

 

「………何?」

 

「だから、俺は織斑一夏じゃないよ、藤本将輝だ」

 

「…………」

 

思わず言葉を失うラウラ。今の今まで敵視していた相手が実は人違いだったのだから、そうなるのは当然だ。

 

「何故そう言わなかった」

 

「君が俺の話を聞かなかったからね」

 

将輝の訂正発言に悉く言葉を重ねていたのを今更ながらに思い出す。あの時ラウラは所詮は戯言と聞く耳を持っていなかった為に続いていた勘違い。それが今解消された。

 

「ふ、ふふふ、ははははははははははっ!」

 

引きつるような痛みなどそっちのけで笑うラウラ。笑わずにはいられない。散々愚鈍や間抜け面とバカにしてきた相手が実は織斑一夏で認めていた人物の方が藤本将輝だったのだから。

 

「そうか………貴様は織斑一夏ではないのだな……」

 

「残念ながらね」

 

私闘の時は理解出来なかったが、今ではセシリアが将輝を侮辱されて怒った理由が何となくラウラにはわかった。自分よりも強い人物を貶すなど愚かな行為以外のなにものでもない。そう思うと再度ラウラは笑う。

 

ひとしきり笑った後、ラウラは真っ直ぐに将輝を見つめる。

 

「一つ、聞いてもいいか?」

 

「うん?答えられる質問なら」

 

「お前はどうして強い?」

 

素朴にして単純な疑問。けれどラウラにとってそれは何よりも重要な疑問。『力こそが全て』。その理念を元に生きてきたラウラ。それを言葉でも実力でも真っ向から否定したのが将輝だった。故に聞きたかった。本当の強さの在り処を。

 

ラウラの疑問に将輝は考える素振りも見せず、けれど恥ずかしそうに口にした。

 

「俺には護りたい人がいる。その人の為になら俺はなんだってするし、命も捨てる覚悟がある」

 

「好きなのか?その者が?」

 

「うん。だから俺はその人の事を護れるくらい強くなりたいんだ。今はまだ未熟だけど、絶対に強くなる。そういう意志を持てるから、多分俺は強くあれると思うんだ」

 

「強くあろうとする意志か…………私にはわからないな」

 

「ならこれからゆっくりと知っていけばいいじゃん。時間は一杯あるんだから」

 

「ッ⁉︎」

 

「何せ三年もあるんだ。自分探しの時間は山ほどある。その間に自分が誰なのか、強さとは何なのかを考えていけばいいさ。少なくとも、君は織斑千冬にはなれないし、力だけで積み上げてきたものはセシリアが壊した。またゼロからのスタートだ。気楽にやりなよ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

将輝はラウラの返事も聞かず、一方的にそういうと保健室を後にする。

 

(教官とあの男は姉弟ではない………そう聞いたばかりだというのに)

 

先程の台詞も去り際の様子もまるで照らし合わせたかのようにそっくりだった。言いたい事だけ言って、後は全て相手に投げる所も有無を言わせない素振りも何もかもだ。

 

(自分探し……か。それも良いかもしれんな)

 

ベッドに横たわるラウラは優しい笑みを浮かべていた。

 




戦闘描写があれですいませんでした!

あんまり暴走ラウラを強く設定したもんだから、終わらせ方に無理矢理感が凄く出てしまいました。一応伏線でありますが。

因みにこれでオリにラウラが惚れた!と言うことは無いです。どちらかというと恩人的な立ち位置ですので、断じてタイトル詐欺なんかじゃないです。本当です。
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