憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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執筆に全力を注いでた割にテストが思いの外好感触でビックリです。僕はやれば出来る子なんだー(棒読み

感想よりも早くにいただいた評価は1と8、何とも言えません。まあ今は気にせず只管投稿ですかね。


天災出現

試合の後、将輝は疲れたと言って、剣道場を抜け出していた。

勝った事に男子のキャプテンを筆頭にしたメンツ達は馬鹿騒ぎをしていたが、やはり負けた相手の前でそんな真似は出来ないし、今後は出来れば良好な関係を築いていきたい将輝は疲労を理由に道場を抜け出して、芝の上に寝転がっていた。

 

季節は春の半ばなので、吹く風が実に心地良く、案の定、微睡みに誘われ、身を委ねようとしたその時。

 

「こんな所で寝ては風邪を引くぞ」

 

「……ん?……あ、ああ、篠ノ之さんか」

 

其処には今にも眠りそうだった将輝を見下ろすように腕組みをした箒が立っていた。

 

「何か用?」

 

「いや、これといって用は無いのだがな………………強いて挙げるとすれば、話がしたかったからだ」

 

そう言って箒は寝転がる将輝の隣に座る。将輝も流石にこのまま寝転がったままだとマズいだろうと上半身を起こした。

 

「左肩は大丈夫か?かなり強く打ったと思うのだが」

 

「大丈夫だと思うよ。折れてないし」

 

「そういう問題ではないのだが…」

 

せいぜい明日になれば青痣が出来るくらいだ。後で湿布を貼れば一応は問題ないし、生活にも支障は出ないだろう。という意味で将輝は返答したのだが、箒としては怪我の度合いを聞いたので、解答としてはズレている。

 

「それにしても、お前は強いな」

 

「強い?まさか、偶々だよ。篠ノ之さんの方が強いし、もう一回戦ったら確実に負ける」

 

それは事実だ。あれは偶然に偶然が重なった結果、起きた事象である。もう一度戦ったとして将輝が同じ動きを見せる事が叶うかはわからない上に、箒とて将輝にそれが出来るのは既に知っている為、隙など出来ない。故に戦えば将輝の敗北は必至なのだ。

 

「かもしれんな。だが、私が言っているのは腕っぷしの強さではない。心の、精神的な強さの事を言っているのだ」

 

「う〜ん。そうは言われてもよくわからないよ。俺、正直自分の精神が強いなんて思った事ないし」

 

「お前は自分の事をそう思っているのかもしれないが、少なくともあの短い時間だけだが、試合をした私にはわかる。そしてお前と同じ様な奴を私は知っている」

 

「へぇ〜」

 

誰?とは聞かなかった。それは野暮であるし、誰なのかもわかっていたからだ。彼女の想い人であり、最も信頼する相手であり、そしてこの世界の特異点たる存在━━━織斑一夏の事だと。

 

「済まないな。よくわからない話をして。ただこれだけは言っておきたかった。私に剣の道を思い出させてくれてありがとう。また今度試合をしよう」

 

これは将輝の預かり知らぬ事だが、箒にとって今日のこの試合は長らく忘れさせていた高揚と剣の道に生きるものの精神を思い出させていた。彼女が織斑一夏と別れて以降、ただの手段と成り下がっていた剣道は今日再び息を吹き返した。

 

「その時はお手柔らかに頼むよ、篠ノ之さん」

 

「……箒だ」

 

「え?」

 

「私の事は箒と呼べ。篠ノ之という苗字はあまり………好きではないんだ」

 

彼女は自分の苗字に……というよりも姉にコンプレックスを抱いている。嫌いではないが苦手。極力会いたくない人物であり、彼女はその姉と距離を置いて接している。が、それを抜きにしても彼女は彼に名前で呼ぶのを自分から許す程には心を許していた。

 

「わかったよ。箒、これからは俺の事は将輝って呼んでくれ」

 

故に将輝も同様に名前で呼んでもらうようにした。自分が名前で呼んでいるのに対して、苗字というのは些かむず痒いし、慣れていないからだ。

 

「ああ、ではな将輝」

 

そう言って箒は踵を返し、剣道場へと戻っていった。将輝はそれを見届けると次に箒に起こされるまでの間、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交流戦の件から一ヶ月が経過した頃。

 

半ば済し崩し的に剣道部へ入部した将輝は箒と共に鍛錬に励んでいた。

 

交流戦の後、親しくなった二人はあれからも互いを切磋琢磨すべく、幾度となく模擬戦をした。やはりというべきか、最初は箒の勝率の方が高かったが、最近では徐々に拮抗し始めていた。その事に他ならぬ箒も喜んでいたし、将輝自身も手応えを感じていた。

 

心を許せる人間を得た事で多少なりと余裕が出来たのか、彼女は周囲にも馴染むように努力をしていた。未だ剣道部員以外には堅いままではあったが、少し前に比べれば、かなり軟化しただろう。それは偏に将輝という肩を並べる存在が出来たからである。

 

そんなある日の出来事だった。

 

今日も己を鍛えるべく、箒と共に剣道場へと向かっていた将輝はふと視界の端に誰かが映ったような気がして、其方を見たが、其処には誰もいなかった━━━━━━のならまだ良かった。

 

「……」

 

何か恨めしそうに此方をガン見しているウサミミを着けた女性が其処にいた。隠れているつもりなのだろうが、かなり目立っている。周囲に殆ど人がいない為に騒ぎになっていないだけで、此処で将輝が「あ!篠ノ之束だ!」とでも叫べば人集りが出来るだろう。何せ彼女は全世界で絶賛指名手配中の有名人だからだ。

 

しかし、将輝は無視する事にした。関わるとかなり面倒な事になる上、今は箒がいる。箒が彼女と出会えば、それもまた面倒な事になるだろう。それを見越して、将輝は見て見ぬフリをして、そのまま剣道場へと向かったのだが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部活動が終わり、日も暮れた頃。篠ノ之束は未だ其処にいた。

 

これには流石に将輝も頭を抱えた。「どれだけシスコンなんだこいつ」はと。帰宅中も何故か箒の方ではなく、ずっと自分の方についてくる篠ノ之束に違和感を感じた将輝はチョロチョロと逆に鬱陶しかったので、呼んだ。

 

「天才さん。いい加減、普通に出てきてくれると助かるんですけど」

 

数拍置いた後、暗闇から満を持して現れた(つもり)のは、当然ながら篠ノ之束だった。

 

「やるじゃん。まさか私の完璧なスニーキングがバレるなんてね」

 

(スニーキングのスの字もなかったんだが……………それは言わないようにしておこう)

 

「それで俺に何の用ですか?てっきり妹さんにでも会いに来たのかと思いましたけど」

 

「箒ちゃんにも会いたいんだけどね。それは諸事情で今は無理なのだよ。まあ、それを抜きにしても、今日は君に会いに来たんだけどね〜。あ、取り敢えず、君の家に上がっていいかな?立ち話もなんだし」

 

それは束が決める事ではないのだが、自由奔放な彼女にそれは通用しないだろう。というか、断ったところで家に帰れば、リビングに彼女が何事もなくいるのが目に見えている。仕方ないので、将輝は家に上げる事にした。

 

一々難癖をつけられない為に将輝は取り敢えず高そうなコーヒー豆を挽いて、コーヒーを淹れる。まだ自分も飲んだ事がない為、何とも言えないが取り敢えず高ければ問題ないだろうとちゃっかり自分の分も淹れる。

 

「ほうほう。中々準備が良いですな。それでは早速……」

 

そう言って束は淹れたてのホットコーヒーを一気飲みする。ゴクゴクとまるでスポーツドリンクでも飲むように何事もなく。

 

(凄いな。超人クラスならあの熱さでも一気飲みか。ということは織斑千冬でも出来るんだろうか)

 

もちろん無理である。人として鍛えて超人の域に達した千冬は普通にコーヒーはある程度冷ましてから飲む。束が一気飲み出来るのは鍛えてではなく、細胞を自ら弄っているからだ。千冬も大概だが、それ以上に束に常人の常識は通用しない。

 

「ふぅ〜。まあ及第点かな。ダメだししたい部分はあるけど、それは置いておこう」

 

「何故俺に会いに?」

 

「理由は色々あるけど……………取り敢えず品定めってとこかな?」

 

(それが一々ジロジロ見ていた理由か。こんな正面から堂々と言われるとは思ってなかったが)

 

将輝がそう思っている間も束は前後左右に移動しながら、品定めする為にジロジロ見る。途中で触ったりもしたが、それも三分程してソファに座りなおす。

 

「ふむふむ。成る程ねぇ、うん、大体分かった」

 

「篠ノ之博士のお眼鏡にかないましたか?」

 

「凡庸って訳でもないけど、圧倒的に抜きんでているって訳でもないね。まあ、それは箒ちゃんと試合してる時にわかってたんだけどさ」

 

「お眼鏡にはかなわなかったと?」

 

「いや、それがね。一概にもそう言えなくて、私からの君への評価は「面白い」かな。凄いね〜、稀代の大天才篠ノ之束にそういう評価を受けるというのは非常に素晴らしい事だよ。理由を聞きたい?」

 

「その前に主にどれくらい凄いかを馬鹿な俺にもわかりやすく解説していただけると助かります」

 

「うんとね。十億分の一くらいの確率?」

 

「疑問系なのが気になりますが、実にわかりやすい例えですね」

 

そう言って将輝は冷ましたコーヒーを飲むが、まだ結構熱かった所為で、ほんのちょっとしか飲めず、コーヒーカップを置き、束を見る。その表情は何処か不満そうでまるで拗ねた子供のようだった。

 

「どうかしましたか?」

 

「君って周りから冷めてるって言われない?」

 

「前に冗談でそう言ったら軽く引かれた事ならありますよ」

 

前というのは憑依以前の事である。冗談交じりに言ってみれば「え、こいつマジで言ってんの?」的な視線が返ってきたのには逆にマジかと対応したのはそう古くない記憶だ。

 

「普通さ〜。もっとこう喜ぶものだよ?束さんって、基本他人に無関心だから、ISに関わる人間はそれだけで狂喜乱舞するのに」

 

「生憎、俺はISとは全く無関係の人間でして」

 

「そういう所だよ。箒ちゃんと試合してる時はもっとこう、何て言うのかなぁ〜、目から強い光が感じられたんだけどなぁ〜…………………あ!」

 

「今度は何ですか?」

 

「君って箒ちゃんの事、好き?」

 

あまりにも唐突な質問に盛大にコーヒーを噴き出し、咽せた。

 

「げほげほ………いきなり何言ってんだあんた」

 

「いやぁ〜、何となくそんな気がしていたのだよ〜。勘ってやつかな?」

 

「勘で勝手に決めつけないでくれ」

 

「で、実際の所は?私はわりかし当たってると思ってるんだけど」

 

「…………好きですよ。真っ直ぐで、不器用だけど人当たりも良い。剣道にはいつも真剣に取り組んでいるし、竹刀を振ってる時の姿はカッコいいし、惚れ惚れするくらいだ。それに本人自覚はないみたいだけど、可愛いし」

 

将輝は箒に好意を抱いている。元々気にしていた節もあったが、この一ヶ月、彼女と互いを研磨し合っていく中で彼女の剣道に向けるひたむきさとその美しさに惹かれていた。最近は時折、弱い一面を見せる事もあったが、男からすればそれは護りたくなる。寧ろポイントが高い。強い面も弱い面も含めて将輝は箒の事が好きなのだ。

 

「て言っても、本人には好きな人がいるみたいだが」

 

「だから告白しないの?もしかしたらチャンスあるかもしれないのに」

 

「良いんだよ。今はこの関係の………互いを研磨しあう仲で良い」

 

「…………ふーん。ま、それは私の知るところではないし、君の好きにすればいいよ。今日はこの辺りで帰らせてもらおうかな」

 

「また来る気?」

 

「まあね。君から感じた可能性の光を直接見てないからね。じゃあね、また明日」

 

そう言った束は普通に家に入ってきたにも関わらず、わざわざ手から丸い球を投げると周囲が数秒ほど光に包まれ、姿を消した。将輝が玄関を見ると靴も無くなっている辺り、普通に出て行ったようだ。一々演出に拘る傍迷惑な天才であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで大天災さんの出現でした。話の途中で何回も時間飛ばしてすみません。

一応、主人公が箒に惚れた理由も簡潔ながら書きました。あまり長過ぎると同じ事言い続けてるみたいでしつこいですから。

次回は今回の後半に続いて話し合いになるのかな?多分、主人公と束の本音をぶつけた会話になると思います。

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