憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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前の四話の書き直しもとい五話です。

内容は全く別物になっていますが、どうぞ。


誓い

「一つ聞いていいか?」

 

「何かな〜?」

 

「何でさも当然のように俺の家にいて、そして朝食を要求してんの?」

 

「其処はほら、束さんだから」

 

あっけらかんというのは昨日家に帰った筈の篠ノ之束だった。少なくとも朝起きて鍛錬していた時には誰もいなかった事から、彼が一度家を空けた時に何処からともなく不法侵入したのだろう。それならばまだ良いが、この天才、人の家に勝手におしかけておいて、顔を合わせた次の言葉が「お腹減った〜。何か作って〜」なのだ。だが将輝も口で文句を言いつつ、律儀に二人分の朝食を準備しているあたり、どこか手慣れた風ではある。

 

「わお、美味しそう!いっただっきまーす!」

 

束は出された青椒肉絲を凄まじい速さで食べ、ものの二十秒もしない内に完食した。

 

「食うの速えよ。もっと味わって食え」

 

「充分味わったよ?美味しかったです、ご馳走様」

 

「そうか。じゃあ帰れ」

 

美味しかったと言われて悪い気はしなかったが、それとこれとは話が別。束がいると碌なことにならない。そう確信している将輝としては早急に帰って欲しかったのだが、それを束は拒絶する。

 

「え〜、やだ〜」

 

「やだ〜。じゃない!俺の休日を奪おうとするな、とっとと帰れ!」

 

「昨日また来るって言ったじゃん。可能性の光を見に」

 

「確かにそうは言ったが、次の日に来るなよ。ていうか、来てもいいなんて許可出した覚えがないんだが」

 

「なっはっはっはー!相手の都合を考えてちゃ天災なんて名乗れないZE☆」

 

最早言っていることが無茶苦茶である。しかしながら、彼女が天才であり天災と称される所以はこのような相手の事を考えない行動と抗う余地を与えないところから来ている。人は天災に抗う術を持たない。ただ只管過ぎるのを待つだけだ。彼女の傍若無人っぷりはそれこそ人間災害レベルだ。

 

「はぁ…………もう好きにしろ」

 

言うだけ無駄だと将輝は深く溜め息を吐いた後、自室へと戻ろうとする。するとその後を束がついてきた。

 

「何でついてくるんだよ」

 

「可能性」

 

「あのなぁ………可能性可能性って、普通に考えて、そういうのが見れるわけないだろ。もっとこう特別な状況でもない限りな」

 

束を諦めさせようと苦し紛れにそう言うが、それに彼女は盲点だったと感嘆の声を上げた。

 

「ほうほう。それは一理あるね、例えば?」

 

「例えば………そうだな。命の危機だったり、大切な人を護ったり、宿命の対決だったりとかじゃないか?つってもその理論が通じるのは漫画とかの主人公くらい…………危なっ⁉︎」

 

ブオンッという音と共に振るわれたのは束の蹴り。頭の数センチ上を通過した殺人キックは壁を抉りながら、振り抜かれた。

 

「いきなり何すんだ!」

 

気づくのが後一瞬遅ければ、彼の頭は脳味噌をぶち撒けながら、ザクロのようになっていただろう。怒るのも無理はなかったが、束はキョトンと首を傾げた。

 

「何って回し蹴り?」

 

「誰も攻撃のジャンルを聞いたんじゃない!何でいきなり攻撃してきたのか、聞いてるんだよ!」

 

「え?だって、命の危機を迎えたりしたら、覚醒するんでしょ?」

 

巫山戯ていっているわけではない。彼女は将輝の言った例え話を基にこの行動に走ったのだ。大切な人を護ったりする状況を作るのは面倒だし、それでは箒が危険な目に遭う。次に宿命の対決はその宿命の相手がいない。となると消去法で残るのは命の危機。それならば今すぐにでも実行でき、かつ手間はかからない。そう思っての行動だ。因みに将輝が言った「この理論が通じるのは主人公だけ」と言った部分は聞こえていない。完全に墓穴を掘った。状況は確実に悪化していた。

 

「確かに君の言う通り、人間って死の恐怖に直面すると脳のリミッターが外れるから、ある意味、それも可能性ってやつだよね」

 

「それはそうだけど、俺が言いたい事はそうじゃなくてだな「はい、どーん」おい!マジで止めろ!当たったら死ぬだろ!」

 

「じゃあ当たらなきゃいいじゃん」

 

「殺りにくる方だからって簡単に言うな!お前のそれ、威力もスピードも殺人的だからな⁉︎避けれてるのなんて、奇跡なだけだから!」

 

実際、どうして束の攻撃が当たっていないか疑問だった。将輝の頭の中では初撃で死んでいるし、壁に綺麗な穴を開けた先程の拳も自分の身体に大きな風穴を開けていた筈だった。最も何故避けれているかと言うと生物本能が束の攻撃に敏感に反応して回避しているのだが、束の解釈は違った。

 

「新しい可能性……………ハッ!これが本当のギャグ補正ってやつだね!」

 

全然違う。いや、ひょっとしたらそうなのかもしれないが、少なくとも頭を砕かれても元には戻らないし、死にかけても次のシーンには全快しているような都合のいいものではないし、普通に考えてありえない。

 

「そんな補正、俺にはない!ないからもう止めてくれ!」

 

しかし、将輝の願いは聞き入れられる事はなく、この後も、そしてこれからも束の可能性の探求(と言う名の殺人未遂)は続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束の無差別殺人攻撃に恐ろしくも慣れ始めてしまっていた頃、それは唐突に来た。

 

「ま、将輝」

 

「どしたの、そんな改まって」

 

出会った当初のように歯切れの悪い箒は言葉に出そうとして二、三度悩みながらも将輝にだけ聞こえるようにぼそりと呟いた。

 

「こ、この後、予定はあるか?」

 

「ないよ、全然」

 

強いて言うなら筋トレをしたり、大量に積まれているゲームをしたりと予定と言えるようなものはない。将輝がそう答えると箒の表情はパァッと明るくなり、こう続けた。

 

「で、では、ま、将輝の家に行ってもいいか?」

 

「うん。いいよ」

 

特に断る理由もない将輝はそれを二つ返事で承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが将輝の家か……」

「うん。想像と違った?」

 

「あ、ああ。少しな……」

 

将輝の家はとても中学生が一人暮らしをしているとは思えないようなこの辺りでは珍しい和ではなく洋を基調とした造りだ。大きさは一戸建てくらいなのだが、いかんせん庭が広い。そのお蔭で庭でも自由に鍛錬をすることが出来るし、偶に草の上に転がっては昼寝もしている。中の部屋にも自室や書斎の他にトレーニングルームが設けられており、将輝の推測では親が造らせたのだろうと考えていた。因みに箒が想像していたのはこれでもかと言うくらいに和を全面に押し出した武家屋敷のようなものだったのだが、それは流石に言えなかった。

 

「さ、上がって上がって」

 

「お、お邪魔します」

 

姉と妹で全く正反対の反応に将輝は本当に似てないなと思った。それは別に悪い意味ではない。将輝も三兄弟の次男であったが、兄とは真逆の性格であったし、友人もまた兄とは真逆の性格だった。とはいえ将輝達三兄弟は顔も性格も何もかも似ていないというかなり特異なケースだったので、なんとも言えないが。

 

廊下を歩いてすぐ左にある扉を開けて中に入り、何時ぞやの束の時のように将輝はコーヒーを淹れようとして、止まる。

 

「コーヒーと紅茶とお茶、どれが良い?」

 

「ではお茶で……」

 

「了解…………はいどうぞ」

 

『平』と書かれた湯呑みと『和』と書かれた湯呑みに麦茶を淹れて、机の上に置く。

 

「理由聞き忘れてたけど、何で俺ん家に来ようと思ったの?」

 

「へ?あ、いや、その……だな……」

 

箒は手にしていた湯呑みに視線を落とし、言い淀む。俯いた様子から彼女が今どんな表情をしているのか、将輝にはわからない。だが少なくともそれはあまり良い事ではないというのがわかった。故に今まで言おうとしなかった将輝は箒の言葉に被せた。

 

「わ、わた、私は、「転校するの?」……何で、わかった……」

 

「箒の事は一番理解してるつもりだからね。ていっても学校の中でだけど」

 

微笑みを浮かべて、そう答える。彼の言う通り、中学の中で誰よりも篠ノ之箒を理解しているのは将輝であるし、藤本将輝を誰よりも理解しているのは箒だろう。二人でいる時間は一生という括りではほんの僅かだ。それでも彼等は他の誰よりも互いを理解していた。

 

「何となく察しはついてたんだ。最近、箒の表情が暗いし、俺と試合してた時も剣に迷いがあったから」

 

箒自身は隠していたつもりだった。他人から見ればそれは些細な取るに足らない変化でも将輝は敏感に感じ取っていた。それでも言い出さなかったのは、もしそれを自分から言いだしたとして、その後自分は彼女に何をしてやれるのか?という葛藤があったからだ。そして今もかけられる言葉を見つけられずにいた。

 

ならば。かける言葉がないなら出来る事は一つ。将輝は荷物の中から竹刀を取り出した。

 

「箒。やろうぜ」

 

「ッ⁉︎」

 

不器用な彼に出来るのは言葉を重ねる事ではなく、己が行動で示すだけ。これが織斑一夏ならば気の利いた台詞の一つや二つ吐けるのかもしれない。それが出来るのであれば、彼も彼女も救われるかもしれない。だが、彼にはそんな事は出来ないし、また織斑一夏のような存在もいない。なればこそ、これは彼が彼女にしてやれる精一杯の事だ。

 

二人は防具も着けず、ただその手に竹刀を握りしめ、素足のままに庭へと出る。

 

そよかぜすらない、全くの無風。日は傾いており、空は夕焼けに染められている。二人はただ無言で対峙する。初めて試合をした時のように。心を通じ合わせるのに言葉は不要。ただ剣で語るのみ、と。

 

仕掛けたのはほぼ同時だった。審判がいない以上、仕掛けるタイミングは自由。にもかかわらず、二人はほぼ同時に互いへと仕掛けたのだ。

 

其処に戦法はない。ただ伝えたい言葉を、伝えたい想いをぶつける為に二人は愚直に得物を振るう。何度も何度も何度も何度も。それは側から見れば奇妙な光景に見えるだろう。だが、この時、この瞬間も二人は一太刀一太刀に想いを乗せてぶつかっていた。

 

それが終わりを告げたのは辺りを暗闇が覆った頃だった。どちらにも竹刀は届かず、草の上に大の字に倒れる。長時間打ち合った二人の表情は晴れやかで肩で息をしながらも自然と笑い声が溢れていた。

 

ひとしきり笑った後、箒は立ち上がり、こう宣言した。

 

「私は明日、転校する。何処の中学か知らされていないし、おそらく今後将輝と連絡を取れる機会はないだろう。だが互いに剣の道を歩んでいれば必ず会える。それはいつかはわからない。全国大会で会えるかもしれないし、何年も先の話かもしれない。だが待っていてくれ。私はもう私を見失わない。必ず将輝と再会出来ると信じている」

 

「ああ………俺もだ!約束する。でも俺は待たないぜ、俺からお前を迎えに行く。何年かかってもだ!」

 

将輝も立ち上がり、拳を突き出して、宣言する。二人だけの誓い。二人だけの約束。それは儚くも美しい願い。

 

次の日、学校に彼女の姿はなかった。

 

だが、彼は下を向かない。必ず会えると信じ、前に向かって進むだけだ。

 

そして舞台は一年後のIS学園へと移る………。

 




告白回を消して、こういった感じに落ち着かせました。確かに無理矢理中学の時点でひっつけなくてもいいですもんね。

中学編というか、原作開始前は次回で最後です。時間がかなり飛びますが、まあ箒いないから良いですよね(棒読み
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