憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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荒ぶる生徒会

束の無神経過ぎる行動により、将輝はあっさりとヒカルノと静の二人に未来人である事が露呈した。

 

隠蔽しようという努力はした。けれど、否定するつもりはなかった。そもそも束がいる時点で、隠蔽しようが、否定しようが、すぐに事実を話されて、無駄な足掻きとなるのがオチなのは明白だからというのが理由ではある。

 

しかし、否定しなかった最たる理由は、彼女らがその事実を訝しむ事なく鵜呑みにした事だった。

 

織斑千冬や篠ノ之束ですら、疑った事実を彼女らは怪しむ事なく受け入れた。

 

情報の発信源が正体不明だった将輝ではなく、篠ノ之束であるからなのかもしれないが、どちらにしても彼女達がそれを普通に納得してしまった事で、将輝は否定する事を諦め、事情を自ら話した。

 

「ほぇ〜、第三世代ISに同化ねぇ。これまたすっごい奴が飛んできたもんだ」

 

「しかも世界で二人しかいない男性IS操縦者か、主人公体質にも程があるな」

 

事情を聞かされた二人も当然というべきか、将輝の身体を興味津々に眺める。見た目的には大した変化はないと言ったが、気になってしまうのは仕方のない事だろう。

 

「で、どうよ?リアルハーレムを経験した感想は?」

 

「精神すり減るだけだ。良いことなんてない」

 

「またラノベの主人公みたいな事を。実際は取っ替え引っ替えし放題で嬉しい癖に」

 

「誰がそんな盛りのついた犬みたいな事するか。第一、女子はあんまり得意じゃないんだ。疲れるだけだよ、本当に」

 

読者だった頃の彼なら「流石モテる奴は言う事違うな」と思っていたが、いざ自分が同じ状況に陥った結果、「やっべ、マジで女子ばっかの空間辛過ぎる。半年もしない内にクラスに順応した一夏マジパネェ」と寧ろ尊敬すらしていた。先程将輝自身も言ったが、女子校に行って「ハーレムktkr」となっている人間など盛りのついた犬と同義だ。多いに越した事はないが、幾ら何でも多過ぎる。聞いて極楽見て地獄とはまさにこの事である。

 

「その割には私達とは普通に会話は出来るのだな」

 

「うん………まあ、四人はある意味特別だから」

 

『特別……?』

 

四人は口を揃えて疑問の声を上げるが、すぐにハッとした表情になり、口々に責め立てる。

 

「ふ、藤本!お前は一体何を考えている⁉︎」

 

「なーにが『女子はあんまり得意じゃない』だ。きっちり楽しみやがって」

 

「これで本格的にラノベの主人公の仲間入りだな」

 

「色んな意味で尊敬に値するよ、本当」

 

「ごめん、皆が何言ってるのか本当にわからないから、教えてくれる?」

 

『言えるか⁉︎』

 

つい、先程まで揃った事すらない生徒会メンバーの二度目のハモりに気圧されて、将輝は意味もわからず「ですよねー」と納得しましたという返事をする。将輝にとって彼女達は特別だ。自身の所属するクラスの鬼教官に面倒事を起こしまくる恋人の姉、中学時代に何かと世話になった保険医にまだ会ったことはないが、何れ世話になる研究者。そんな彼女らを一括りに『特別』と将輝は称した訳だが、彼女らはそれはもう盛大に意味を取り違えていた。

 

(教師と生徒の間柄なのではなかったのか?いやそれよりも一体何方から告白したのだ?もしや私が…………)

 

(苦手な癖に私の名前をあっさり呼んだのは慣れてるって事か。かぁー、何やってるんだか)

 

(もしかして本当に私は将輝に貰われたのか?まあ別にそれはそれでありか………いや、問題だろ⁉︎)

 

(まさかいっくん以上の猛者が存在するなんて…………でも確かにそれならISと同化させたっていうのも頷けるね。それはそうと誰が正妻なのかな?)

 

とここに来てまさかまさかの十代乙女特有のハッピー思考へと変化している事に将輝は当然気づけるはずもない。そして束の中で『一夏以上』という不名誉なレッテルを貼られたこともだ。

 

ハッピー思考に囚われている四人を尻目に将輝は名案を思いついたとばかりに手をポンと叩くと、生徒会室の扉の鍵を閉めた。

 

「よし、これで逃げられないな」

 

(逃げられない⁉︎一体何を始める気だ⁈)

 

(まさか同い年になったのを良いことに好き放題やろうって魂胆か?)

 

(これではラノベというよりエロゲだな)

 

(事故とはいえ、とんでもない子送り込んできたね、私)

 

四人とも、焦っていたり、落ち着いていたり、妙に達観していたり、困っていたりと別々の心情ではありながらも思考は一致している辺りは凄い。ある意味では彼女達は仲良しなのかもしれない。

 

「さ、始めようか」

 

「なななな何を始める気だ?」

 

「何を?掃除だけど」

 

『掃除?』

 

「いや、やっぱり一人だけでするより、皆でした方が効率良いーーー」

 

「全員突撃っ‼︎」

 

自身達が掃除を手伝わされるとわかるや否や、千冬の号令の元、生徒会室を脱出すべく、四人が将輝へと殺到する。

 

「わおっ、素晴らしい連携」

 

四人の即興であるにもかかわらず、息ピッタリの連携攻撃に将輝を舌を巻き、驚きの声を上げる。そして四人の拳が絶妙にボディーに入る。一般人なら即失神というか、内蔵をやられているレベルだが、将輝は一応鍛えている身、そうやすやすとは内蔵をやられはしない。そして何よりISの保護機能は生きている為、ヒカルノはともかく高火力を誇る三人の拳でも将輝の意識を狩ることは出来なかった。だが、肺の空気は全て吐き出させられ、一時的に行動不能になるのも時間の問題だった。

 

それ故、将輝は千冬にデコピン(・・・・)をした。

 

普通ならデコピンを喰らったところで大したダメージはない。しかし、力のセーブが出来ない将輝のデコピンはそれ自体が凶器だった。

 

バシンッ、ボキッという凡そデコピンでは出ないような音を立て、それを喰らった千冬は軽く脳震盪を起こして、崩れ落ちる。

 

それが将輝の最後の力だったが、デコピンという動作だけで学園最強を無力化された事により、ヒカルノと静は激しく動揺する。そんな中、束だけはさりげなく窓から逃走しようとしていたが………

 

「ヒカルノ、静。束を逃がすな」

 

振り絞るようにして吐き出された言葉に今まさに逃げようとしていた束にヒカルノが何処からか取り出したロープにつかまり、静にそれを引っ張られ、あっという間にまだ掃除し終えていない書類の山の中にダイブした。

 

「ぶはっ!何で邪魔するのさ!同じ生徒会メンバーなら「ここは私達に任せて逃げろ!」っていうノリでしょ⁉︎」

 

「日頃からただでさえ仕事をしていないお前を逃がす道理なんてない」

 

「織斑が倒されてっから、諦めるしかないじゃん?それに篠ノ之だけ逃げて、私達がしなきゃいけないのは不公平ってもんでしょ」

 

「今、本音言ったよね⁉︎二人には熱い魂が無いのか!」

 

『ない』

 

「早っ⁉︎早過ぎるよ!せめて嘘でもいいから、悩む素振りを見せようよ!いや、確かに私も同じ立場なら同じ事するし、言うけどさ!其処は人情ってものがだね……」

 

「言い合うのは良いけど、その前に掃除しよっか」

 

三人があーだこーだと言い合っている内に回復した将輝はダウンした千冬を綺麗な位置に移動させると、ヒカルノと静の肩にポンと手を置いて、今までで一番イイ笑顔でそう言った。

 

『はい………』

 

笑顔の威圧に三人はただ頷くだけだった、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つ、疲れた………』

 

「やっぱり手が多いと捗るな。皆お疲れ様」

 

途中で復活した千冬も含め、五人の清掃により、あっという間に片付く事になったが、かなり汚かった事と端々でミスをしたりした事もあり、四時から始めたというのに、時刻は既に九時を回っており、食堂で食事を摂るにはかなりギリギリの時間だった。

 

「さてと皆はともかく、俺どうしようか」

 

「藤本も食堂に来ればいいだろう。幸い、この時間に食堂にいる生徒は少ないだろうしな」

 

「いや、流石に俺が行くのはマズいんじゃ………」

 

「私達に無理矢理手伝わせておいて、自分の意見がまかり通るとでも?」

 

「それは虫が良すぎるとは思わないかい、将輝」

 

「というわけで、連行」

 

右腕を千冬に左腕を静にホールドされ(腕を組んでいるとか生易しいものではなく、関節を決められている)、将輝は引きずられるように食堂へと連れて行かれる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分の早歩きで着いた食堂は、七年前とはいえ、将輝のいる時代とは大差なく、綺麗で広々とした場所であった。本来なら食券が色々ある筈だが、後数十分で閉めることもあって、買える食券はもう殆どない。

 

五人全員、日によって内容の変わる食券を買い、時間ギリギリであるにもかかわらず、やたらとドヤ顔で頼んだが、何時の時代、どこにいっても食堂のおばちゃんというのは優しい人物ばかりで「お仕事お疲れ様」と快く承諾した。その口ぶりから察するに彼女らが生徒会である事は知っているのだろう。当然つけられた名前も。

 

五分程待ったのち、出された夕食を受け取る際、食堂のおばちゃんは朗らかに笑いながら、将輝にしか聞こえない声でボソリと呟いた。

 

「両手に花で良いわね。青春を思い出すわ」

 

「はは、思い出すにはまだ若過ぎますよ」

 

「あらやだ、上手い事言うわね」

 

「事実ですから」

 

小声でやり取りをする二人を見て、千冬達は首を傾げるが、かなり空腹であった為、即座に席を選び、座ったのだが……。

 

「何で別々の席に座ってんだよ………」

 

将輝達以外誰もおらず、五人座って食事を摂る事も出来るというのに、彼女達は皆別々の席を取って、食事を摂ろうとしていた。正確には千冬と束は同じだが。

 

「あのな。仲良しごっこは嫌だっていうなら、それでもいいが、お前ら生徒の抑止力で、手本になるべき存在なんだからさ、せめて仕事中くらいは纏まれよ」

 

「今は、仕事中じゃない、からいいだろ」

 

「食べながら喋るな。ま、それもそうだけど、さっき言った事は覚えておけよ」

 

『…………』

 

「其処くらい返事しろや!食べながらでいいから!」

 

将輝の叫びが食堂に木霊する。

 

この時点で僅かに頭痛がし始めた将輝だった。




食事中ーーー。

千冬「そういえば、藤本が私にデコピンをした時、何か折れる音が聞こえたのだが」

束「折れる?まあ確かにデコピンにしてはあり得ない音出してたけど、流石に骨が折れたりは………」

将輝「折れたぞ。俺の指の方が」

四人『は?』

将輝「何せ力の加減が難しいからな。ついうっかりデコピンした拍子に指の骨が逝ったみたいなんだ。まあ痛覚カットされてるからわからないし、問題ないだろ」

ヒカルノ(それって問題ないのか……?)

静(主人公補正じゃなくて、ラスボス補正だったか)


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