憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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おっとり中学生と襲撃者

 

将輝が過去に飛び、早くも二週間が経過した。

 

生徒会のメンバーは未だ結束しているとは程遠い状況だが辛うじて集合し、仕事をこなしている。彼女達ともそれなりに親しくはなり、辛うじて全員の下の名前を呼ぶまでには至った頃、そろそろ将輝は我慢の限界だった。

 

「お前らいい加減にしろ‼︎」

 

バンッと机を叩き、声を荒げる将輝。それに対して四人は一瞬身体をびくりと震わせるが、すぐさま仕事を再開する。仕事とはもちろん生徒会のだ。約一名を除いて。

 

「急にどうした?」

 

いきなり声を荒げた将輝に仕事をこなしながら疑問の声を上げる千冬。その疑問は他の三人も同様で何故将輝が怒っているのかわからない。そういう表情をしていた。

 

「今まで………今まで言おう言おうと思っていたが、今こそ言わせてもらう」

 

『?』

 

すぅっと大きく深呼吸をした将輝は今日まで我慢していた事を言い放った。

 

「何で俺は執事の真似事させられてんだ⁉︎」

 

数日前、生徒会室を綺麗に掃除し終えた将輝はまた暇になり、どうやって暇を潰すかと模索していた時だった。

 

またもや千冬が部屋を訪れ、将輝に頼み事をした。内容は『生徒会の手伝い』。

 

それならと快く承諾したのが先日の事。そしてその日から今に至るまで将輝がやらされてきたのは言ったとおり、執事の真似事だった。

 

掃除や買い出しに始まり、紅茶や菓子の用意、仕事の補佐にマッサージと完全に召使い或いは便利屋扱いされていた。最早最初の頃にあった「基本的に部屋から出ない」という暗黙の了解は生徒会が破棄し、おまけに着ているのは束の用意した燕尾服。はたから見れば生徒会が執事を雇っていると思われ兼ねない事態だった。

 

「別に良いじゃんか。暇だろ?」

 

「確かに暇だけど、俺は手伝うって言っただけで、仕えるとは言ってない!」

 

「文句を言う割には手を止めないな」

 

「止めるとお前らが増やすからな!」

 

「まーくん、紅茶無くなったー」

 

「お前は人の話聞けや!」

 

静の言う通り、将輝はあーだこーだと言いながらもてきぱきと仕事をこなしている。もちろん束にも新しい紅茶を淹れる。この数日間で執事としての生活が妙に身体に染み付いていた。

 

「将輝」

 

「今度は何だ!」

 

「教師達から男手が必要と将輝の貸し出し申請が来ている。すまないが、行ってくれないか?」

 

「おい、俺異端の筈だろうが、何ちゃっかり貸し出し申請出してんの?職員室に行けばいいのか?」

 

「ああ」

 

「はぁ…………ったく、どいつもこいつも人使いが荒いぜ」

 

文句を言う将輝だが、普通にその足は職員室に向いていた。ここまで来れば上司の使いっぱしりをさせられているサラリーマンのようだ。

 

職員室に入るとOL風の女性教師に荷物を渡され、多目的室まで持っていくようにと頼まれる。場所は何処かと尋ねようとするが、すぐに女性教師は別の教師に呼ばれ、将輝は渋々自分で探す事となった。

 

(この視線にも慣れたもんだ)

 

女子の近くを通過するたびに負の感情が籠った視線に晒されるが、これも数日も晒されていれば慣れるもので、受け流しつつ、校舎の見取り図を見て、多目的室を目指す。最近は何やらひそひそ話も其処に追加されたが、将輝にはそれも関係のない事だ。男に向かって悪口などISが世に広まってからは残念ながら当たり前となってしまっているのだから。

 

(確か、ここを左に曲がっ「キャッ」おっと)

 

角を曲がると同時に将輝は誰かとぶつかり、荷物を落としそうになるが、すぐに持ち直す。

 

「はわわ、す、すいませんすいません。考え事をしてたもので………」

 

「此方こそ、前方不注意で申し訳ない(はて?何処かで聞いた事のある声だな)」

 

声の主が誰なのか、顔を見ようと試みるが持っている荷物の所為でおそらく下に尻餅をついている人物の顔が見えない。仕方なく、一旦荷物を下ろす。

 

「め、眼鏡……眼鏡は何処ですか……?」

 

わたわたとしているその姿はさながら仔犬のようだ。見た事のない制服を着た少女はこれまた古風にも頭の上に眼鏡が移動しているだけなのに、手を探るようにしながら眼鏡を探していた。

 

それを見ているのも楽しくはあったが、このままでは他の誰かが来るまで永遠に探していそうな気がした将輝は彼女の頭の上に乗っかっている眼鏡を指で軽く触れて、掛け直す。

 

少女はいきなり視界のピントが合った事に驚くが、すぐにややずれた眼鏡の位置を元に戻す。

 

「あ、ありがとうございますぅ。私、眼鏡がないと駄目ですから……」

 

服の汚れを払い、立ち上がった少女の顔を見て将輝はいろいろ諦めると同時に納得した。

 

緑色の髪に幼い顔立ち。サイズの合っていない眼鏡とこれまたサイズの合っていない制服。なのにある一部分だけはその存在をこれ見よがしにアピールしていて、おそらく世の男子は確実に視線を釘付けにされる代物。おっとりとした雰囲気は年上年下に関わらず、可愛がられるだろう。

 

少女は将輝の顔を見ると…………固まった。声で気づきそうなものだが、彼女は将輝の顔を見るまでぶつかった人間が男であると知らなかったのだ。IS学園だから男はいないと思うのも無理もないが、過去も未来も天然ぶりは健在であった。

 

「君はこの学園に何か……?」

 

「は、はい!わ、わわ私は、そそそその、来年から、ここここの学園に入学するんです。ちょ、ちょうど、が、学校が休みでしたので、けけけ見学を……」

 

凄まじく動揺しながらも一度も噛まずに話せた少女に将輝は思わず感心する。しかし、過去であるせいか、男の苦手っぷりが酷い事になっていた。

 

「落ち着いて。そうか、この学園の見学か……」

 

「あ、あの…………貴方は執事さん……ですか?」

 

「へ?ああ、違う違う、諸事情で着ざるを得ないだけだから、ただの生徒会雑用さ」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「よっと。それじゃあね、俺はこの先の多目的室に用が………」

 

男が苦手な彼女と関わっては、彼女に迷惑がかかると踏んだ将輝はそそくさとその場を退散しようとするが、ちょうどその時、校内放送が流れた。

 

『これは訓練ではない!繰り返す、これは訓練ではない!学園内に武装した集団が進入した模様!教員達は速やかに生徒の安全を確保し、テロリストを無力化せよ!』

 

突然告げられた事実に将輝も少女も理解が追いつかなかったが、それも遠くで聞こえた爆発音によって、すぐさま事実だと理解する。

 

(そうだ。まだ今はISが世に知れ渡って三年しか経ってない。つまり……)

 

ISを危険視、または敵視した犯罪組織がその教育機関であるIS学園を襲撃してもおかしくはない。おまけにこの学園に配備されている訓練機は六、七機程度。数はどの国家よりも多いが、圧倒的に少なく、何より其処に行くまでの通路にはテロリストが待ち構えているだろう。専用機持ちも現時点では千冬しかいない上、彼女一人に任せても、誰かが人質に取られてしまえば何の意味もない。そしておそらく教員達はこういった事態に生身で対応する事を想定した者はいない。

 

(これ、かなり絶体絶命じゃねえか?)

 

「ど、どどどどうしましょう⁉︎」

 

割と焦っていた将輝だったが、隣にいた少女のそれ以上の焦り具合に少し冷静になる。

 

「取り敢えず、ここから移ど「いたぞ!」ッ⁉︎」

 

響き渡る野太い声に将輝は咄嗟に少女の身体を抱いて、角に身を隠した。

 

直後、銃声が響き、壁には無数の穴が空いた。

 

(人質を取るつもりがないのか⁉︎それとも服が違うから、見せしめで殺しても良いって判断したのか?どちらにしても危険度は増したな)

 

「ううう撃ってきましたよ⁉︎」

 

「静かに。作戦考えてるから」

 

呼吸を落ち着かせ、頭の中をクリアにして考える。

 

話し声が聞こえず、足音も一つしか聞こえない事から敵はまだ一人。しかし、先程の大声から増援が来るのも時間の問題。敵武装は不明だが、サブマシンガン或いはアサルトライフルを携帯している。

 

対して、此方に武装はなく、あるのは中身不明の段ボールが二つ。そして女子中学生が一人。

 

結果からいえば八方手詰まりだ。

 

痛覚がない為、急所に喰らわなければすぐに死ぬ事はないし、戦闘に支障をきたす事はない。だが、痛覚がないという事は限界を自ら知る事が出来ない。死の直前まで自身の異常に気付けないのだ。

 

(投降………する訳にはいかないよな。撃ってきたって事は俺もこの子も生きようが死にまいがどっちでも良いって事だ。となると張っ倒すかないよな、割とマジで…………せめて段ボールの中身が使えそう………じゃないな。いや、使えるか)

 

ポンと手を叩くと将輝は段ボールを担ぎ上げる。

 

「あー、ごめん。耳塞いでてくれる?聞こえても気持ちの良いもんじゃないから」

 

「は、はい………って、何処いくんですか⁉︎」

 

「ちょっと正義の味方するのさ。ま、柄じゃないけどさッ!」

 

将輝は段ボールを担いだまま、角から躍り出る。

 

案の定、敵は一人しかいなかった。距離にして僅か五メートル。装備はガスマスクに防弾チョッキ。服は野戦服とどこの戦場に行くのかと問いたい代物だ。だが、そんな事を聞いていてはその前に蜂の巣になる。故に将輝は段ボール(凡そ十キロ)をテロリスト目掛けて投げた。

 

「ぐえっ」

 

銃口を将輝へと向けようとしていたが、それよりも速く飛来した段ボールがヒットし、テロリストは短い悲鳴を上げ、床に倒れる。

 

「念のためにトドメ……っと」

 

二、三発股間に向けて拳を放つとテロリストはぐったりとし、動かなくなる。

 

将輝は倒れたテロリストからアサルトライフルと防弾チョッキ、その他諸々を強奪し、少女の元に戻る。

 

「よし、君はこれ着て。ちょっと大きいかもしれないけどないよりマシだと思うから」

 

「は、はぁ……」

 

「かなり危険だけど、ここから移動しないといけないからね…………一先ず、千冬達と合流しないと、俺だけじゃ、この子を守り切れない。てか、俺自身が危ない」

 

「さ、流石………慣れてますね」

 

「まさか、ど素人だよ。年下の女の子がいるのに、ビビってる訳にはいかないっていうただの虚栄心さ」

 

この少女がいなければ、将輝は過去の自分の特性『ステルス』を発動して、千冬達に全投げする予定だった。ISが使えるのならまだしも生身では武装集団を相手にするには無謀の極みだからだ。因みにぼっちではなかったにもかかわらず、将輝のステルス機能は異様に高い。過去には三時間目終了時まで休んでいた事にすら気付かれない程に。

 

「ところでこの銃って何かわかる?アサルトライフルっていうのは辛うじてわかるんだけど」

 

「M4カービンですね。M16A2アサルトライフルの全長を短縮して軽量化した直系の派生型でM16A2とは部品互換性の約80パーセントを持ってます。他のアサルトライフルカービンと同様にコンパクトで、フルサイズのM16よりも取り回しが良いので、戦闘車両の乗員や将校の方が使用されることが多く、また可搬性の良さから身動きの辛い都市部での近接戦及び特殊部隊における特殊任務にも幅広くしようされてます。1998年にはアメリカ陸軍でM16A2の後継に選定されて、現在もアメリカ陸軍兵士の多くがこのM4カービンを使用しています」

 

「へ、へぇ〜。詳しいんだね……で、これ素人でも使える?」

 

先程までの焦りとは打って変わって、饒舌に話し出す少女。将輝もこれには思わず口元を引き攣らせる。

 

「いえ、M14に比べれば射程も短いですし、軽量化と取り回しの良さを重視した所為で、反動・マズルブラスト、発射音が大きくなったり、命中精度も落ちていますので、いくら改良されて良くなったとはいえ、素人が扱うには無理が……」

 

「となると、牽制にしか使えないな。いや、相手がもし熟練者だと牽制にもならないか。ま、相手が腰抜けである事を祈って、一応装備しておくか。君、体力に自信は?」

 

「一応は……」

 

「じゃあ走ろうか。えーと……」

 

「あ、私の名前は山田真耶です」

 

「OK。俺の名前は藤本将輝、行くよ山田さん!」

 

「は、はい!」

 

かくして、将輝と真耶は千冬達がいると思われる生徒会室へと走り出した。





という感じで、半ば無理矢理真耶ちゃん出現。そしてなんやかんやでテロリストに襲撃されるIS学園。

何もかも無理矢理展開ですけど、まあ特別ストーリーですから良いですよね。

因みにM4カービンの説明はウィキペディア参照。詳しくない分は他の所から持ってくる!

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