テロリストが亡国機業の構成員と分かり、それを将輝と生徒会、そして真耶とで撃退に成功した後、構成員はISを装備した教員達に捕獲され、日本の警察に引き渡される事になった。
生徒会メンバーは今日の事について、また後日教員達と話す事になり、当然将輝も其処に出席する事が確定した。真耶は中学生という事もあり、最後の発砲については将輝達が黙る事でそれに出席する必要はなくなったが、また後日、改めて見学に来るという事態に落ち着いた。
「あー、かったるいなぁ〜」
「私、当分ラボに籠もろうかなぁ」
「止めろ、篠ノ之も篝火もシステムクラックをしたのはお前達なんだから、出席しないとマズいだろう」
「それに初めてIS学園生徒会として仕事を一つ成したのだ。今回くらいは潔く受けるぞ」
「わぁってるよ。冗談だ冗談」
「仕方ないから、今回だけは行ってあげるよ」
とは言っているものの、やはり行きたくはないのか、やや不機嫌そうではある。ヒカルノは将輝に紅茶を頼もうとして、ふと将輝の姿がない事に気がついた。
「あり?将輝は何処行った?」
「将輝なら、見学に来ていた中学生を駅まで送りに行ったぞ。何分、ひと騒動あった後だからな」
「ッ⁉︎ヒカリん、これは……」
「ああ。盗聴するしかない!」
言うや否や、即座に束は通信に使っていた小型マイクを取り出し、専用のノートパソコンに装着する。するとノートパソコンから二人の話し声が聞こえ始め、さらには何処についているのか、映像まで流れ始めたが、おそらくそれは将輝についているようで、将輝の顔は見えず、真耶しか見えなかった。
『今日は助けていただいて、ありがとうございました』
『お礼なんていらないよ。最後は山田さんのお蔭で俺たちは死なずに済んだわけだし』
『わ、私はただ………無我夢中で……』
そう言って俯く真耶。照れているのか、僅かに見える顔は頬が赤くなっているのがわかる。
『そういえば、山田さんは来年IS学園に入学するんだよね?』
『あ、はい』
『山田さんなら、きっと凄いIS操縦者になれると思う。だから頑張ってね』
『は、はい!………………ところで』
『うん?』
『私も……その、来年入学したら生徒会に入れますか?』
『山田さん次第かな。そっちも頑張れば何とかなるよ』
『そ、そうですか…………あ、後、最後に一つだけ良いですか?』
もじもじとした後、真耶は数度深呼吸をする。その後、何かを決意したように将輝へと問いかける。
『そ、そのぅ………もし良かったら、「将輝先輩」って呼んでも良いですか?』
上目遣いで放たれた言葉に画面越しに見ている束達は声を押し殺してジタバタと悶えている。彼女にどういう意図があって、そういう呼び方をしたいと言い出したのかはわからないが、別に断る理由もなかった将輝は快く承諾する。
『わ、私の事は真耶で良いです……。その、山田さんって言われると……いっぱいいますし』
『確かに。街中で呼んだら五人くらい反応しそうだ。OK、そうさせてもらうよ』
『あ、ここまでで良いです。後はバスに乗るだけですから』
『そう。じゃあまた今度な、真耶』
『はい。また今度です、将輝先輩』
そうして将輝と真耶が別れたところで束は盗聴+盗撮を終える。その後、大きく息を吸ったかと思うと大声で叫んだ。
「年下フラグキターッ!」と。
因みにそれにヒカルノも便乗してやいのやいのと騒ぎ立ているとあまりの五月蝿さに見かねた千冬と静が鉄拳制裁する事で沈黙した。
「ですので、今回の一件はーーー」
生徒会室。向かい合うようにして座っているのは、生徒会メンバー+将輝と教員達。
昨日の一件。唯一動けるメンツであった五人は殆ど独断で制圧に乗り出し、学園側から死傷者を出す事なく、事を収めるに至った。
しかし、いくら生徒達の安全を守る為にも作られた生徒会とはいえ、昨日の行動は生徒会としての領分を超えたものだった。教員達としては、自分達がISに乗って制圧に向かうまで、如何にか大人しく出来ていなかったのかという声も上がっていた。もちろんそんな事をしていては相手の思う壺であったし、そもそもそれでは間に合わない事もあった。事実、将輝と真耶は誰よりも早く構成員と遭遇していたのだから。
そして彼女らにとって一番気に食わないのが、今回誰よりも活躍したのが将輝である事だろう。人数的には千冬や静の方が多いが、将輝がいなければ真耶はどうなっていたかわからず、そして最終的に首謀者を倒したのも将輝。そしてなんやかんやで生徒会メンバーが動くに至った理由も将輝なのだ。
ただでさえ、IS抜きの実力のみで制圧するという行為に走ったにもかかわらず、剰え、MVPが男では全員でないにしろ女尊男卑傾向のある教員達にとって心地の良いものではない。故に彼女は何とかしてその手柄を他の者に移行したいのだ。将輝としては未来の人間たる自分が過去に何らかの形で結果を残すのは嫌であったし、ちょうど良かったと思っていたが、それを生徒会メンバー全員が拒否し、事ここに至る。
「貴方達の言い分もわかります。ですが、世間への体裁も考えないとーーー」
「かといって、事実を捻じ曲げて、世間に伝えるのは些か問題のある行為だと考えます」
「ですから、私が言っているのは事実を捻じ曲げるのではなく、その功績を生徒会のみのものにするとーーー」
「今回、見返りを求めず、誰よりも危険を覚悟で動いていたのは彼です。その彼を功績を有耶無耶にするのは事実を捻じ曲げているのと変わらない行為です」
至って冷静に話をしている二人だが、このやり取りは既に四回目で、語気も徐々に強みを増している。生徒会のメンバーや教員達もこの変わらない状況に辟易していて、束に関しては「あいつ消そうか?」と小声で言ってはヒカルノや静に止められている。だが、二人もそろそろいい加減に怠くなってきたのか、止める手も段々雑になってきていた。
そんな時、教員の一人が冗談でこう口にした。
「いっそ、彼も生徒会所属にしてしまえば良いのでは?」
「佐倉先生。いくら何でもそれは……」
「それだー‼︎」
『ッ⁉︎』
机を叩いて、勢い良く立ち上がったのは束。いくら何でもそれだけはないだろうと考えていた将輝は思わずずっこけかけた。
「そんなにIS学園生徒会の手柄にしたいなら、まーくんもとい藤本将輝くんを生徒会所属にさせれば良いだけの話じゃん!先生、流石だね!私達にはない経験値を持ってるよ!」
目から鱗とばかりに束は語り出す。それに惚ける教員達だったが、すぐに束の言葉に反論しようと立ち上がる。
「篠ノ之さん。それはーーー」
「んん?私は良いって言ったよ?二度は言わせないで欲しいなぁ。それにこの学園に入る時に条件は出してる筈だけど?」
某見た目は子ども、頭脳は大人な眼鏡少年の「あれれー?」ばりに、わざとらしい戯けた調子で言う。だが、その表情は笑顔であって、笑顔でない。表面上、笑顔を貼り付けているが、目は笑っておらず、口調も諭すようでいて、命令口調のようでもあった。反論は許さない、ただ肯定しろ。そう言っていた。
本来であれば、一介の生徒の言葉など、ただの我が儘でしかない。
しかし、彼女は一介の生徒などではない。ISの生みの親であり、そのコアを生産できるのは彼女のみ。彼女が行方をくらませればコアはこれ以上増えなくなる。実際原作では束が行方をくらませて以降、他人は誰一人としてコアを生産出来ていない。彼女は十六歳の高校一年生でありながら、現在において地球上の誰にも代わりは務まらない唯一無二の存在であり、地球上の誰よりも生きる価値のある人間なのだ。世界中が彼女の顔色を伺う中で平等に意見できる人物は生徒会と将輝、そして一夏と箒のみ。それ以外の人間はただの口ごたえ。もし彼女の機嫌を損ねればどんな手段を取られるか、想像など出来るはずがない。
「………わかりました。彼の生徒会入りを認めましょう」
「やったね、まーくん。これで私達の仲間だね!」
「いや、誰も頼んだ覚えはないんだけど…………ていうか、俺の役職って何?」
「もちろん庶「副会長に決まってるじゃん」な⁉︎」
庶務と言おうとするのを割って入った束が副会長だと決める。これには教員ではなく、将輝が黙っていなかった。
「ちょっと待て、束。俺が副会長ってのはマズいだろ。どうせ一ヶ月半も経てばいなくなるし、おまけにここはIS学園だぞ?一応ISの使えない俺がなるのはどう考えても問題しかない。それに俺が入ったら、折角上がろうとしていた生徒からの信頼が無くなるぞ」
「確かに今は使えないね。けど、それを抜きにしても身体能力はちーちゃんやシズちゃんと同等か、それ以上。IS知識も私とヒカリんには劣るけど、他の生徒よりは圧倒的に豊富で、仕事をこなせて、私達の世話ーーーじゃなかった補佐も完璧。全部のステータスで見れば副会長が妥当だと思うけど?」
「え、えらく真っ当な答えが返ってきたな」
「それにその程度で無くなる信頼なら、犬にでも食わせておけばいいしね…………まあ、事実を知らせれば信頼なんて容易く取れそうだけど」
「?最後の方聞き取れなかったんだけど……」
「気にしない気にしない。で、どうする?支持率を気にするなら、生徒に投票でも取ってみる?過半数超えたら副会長になるって方向で」
「そうしてくれ。言っとくけど、姑息な手使うなよ。伝えるなら真実だけ伝えろ」
「もちろん♪(勝った!)」
どうせ落ちるだろうとたかをくくり、釘も刺した将輝はこれで生徒会庶務という楽な役職で済んだと胸を撫で下ろしたが、実は既に彼女の術中に嵌められていたとは誰も気づいていなかった。
「ふああ〜……眠い」
時刻は午前六時。早朝練習のある部活動に入っている者達以外はまだ夢の世界にいる時間。
何故だか早くに目が覚めた将輝は、適当に散歩をしていた。夏ではあるが、まだ日も完全に上がっていないという事もあり、ちょうど良い気温であった。
(かれこれ二週間以上経過してる訳だが、時間軸はどうなってるんだろうな。あっちも同じ日数経っているのか、それとも進んでいないのか、気にしても無駄なのはわかるが、気になるよなぁ〜)
芝生の上に座り込み、溜め息を吐く。
表面上は気にしていない素振りは見せているが、将輝はかなり不安だった。
束が帰れるといった手前、帰れない可能性はほぼゼロだが、帰った時間軸が来る前とは異なっていた場合、それが数日の誤差であれ、行方不明の期間があった事になり、皆に余計な心配をかけるからだ。
おまけに過去に関わったという事は、未来にも少なからず影響が出る。もし、それで自分の周囲に影響があれば、良し悪しにかかわらず、罪悪感がある。
朝日を見ながら、黄昏れていた時、不意に携帯電話がなる。
電話の相手は千冬だが、区別をつけるためか、名前の横には学生という文字が付属されている。
「もしもし?」
『もしもし。将輝、すまないが、今日は部屋に朝食を届ける事が出来なさそうだ。悪いが、食堂に自分で行ってくれ。金は生徒会の経費を使ってくれて構わん』
「了解………千冬は人気者だな」
『急にどうした?』
「いや、そっちで女子の騒いでる声が聞こえてるからな」
『ん?別に私の事で騒いでいる訳ではないのだが………まあいい。それよりも先程の件、よろしく頼む』
「おう、じゃあ切るぞ」
電話を切った後、将輝はズボンについた草を払い、食堂へと足を運ぶ。
食堂にはちらほらと朝練を終えた生徒や早起きをした生徒、食堂を借りて昼食のお弁当を作っている生徒など様々だ。将輝は朝の定食セットを頼むと女子の集団から一番離れた席に座る。
(何か、今日の女子の視線からは嫌な感じがしないな…………何というか、こっちの時代の女子達をさらに酷くしたような視線を感じる)
一人、無言で朝食を食べている将輝を遠くからチラチラと女子達が見ている。何時もとは違う視線に将輝は其方に向くと女子達は慌てて視線を逸らす。その反応といい、やはり自分のいた時代の女子達の反応を思い出した。
(ようわからん。取り敢えず千冬達に相談してみるか……………ついでに投票結果も聞かなきゃいけないしな)
もっとも投票として成立しているのか、怪しいところだがな。などと考えながら、将輝はシジミの味噌汁を啜る。
昨日、将輝は束との約束の後、束からのお願いにより、部屋から出る事はなかった。それゆえ、途中経過や束が何をしていたのかを知る事はなかったが、自身が副会長として当選するはずが無いという揺るぎない自信を持っていた。
食堂が女子で溢れかえる前にさっさと退散しようと将輝は早めのペースで食事を摂り、食べ終えると片付けに向かう。
「あ、あの!すみません」
その途中、不意に将輝は誰かに呼び止められた。
聞き覚えのない声に将輝は一瞬自分ではない誰かが呼び止められたのかと思って周囲を見回すが、自分しかおらず、将輝は自分を指差すと話しかけてきた女子生徒もコクリと頷く。
「藤本将輝さん……ですよね」
「そうだけど……君は?」
「私ですか?私は来栖川由美って言います」
「えーと、来栖川さんは俺に何か?」
面識はない筈の相手にいきなり話しかけられ、将輝は自信なさげに問う。もしかしたら「男がこの食堂に来るんじゃねえよ」とか言われるのではないかと内心焦っていたりもしたが、次の瞬間、来栖川と名乗る少女の目が少女漫画の補正がかかったかのようにキラキラと輝いた。
「この度は誠にありがとうございます!藤本さんのお蔭で皆とこうして朝食を摂る事が出来ました!貴方は私達のヒーローです!」
「え?ごめん、話が見えないんだけど……」
「あ、急に申し訳ありません。何せ文字通り命の恩人である藤本
「そ、そうなんだ…………うん?生徒会副会長?」
「あ、すみません。正式に決定されるのは今日の集会からでした。何はともあれ、これからもよろしくお願いします」
「あ!ちょっと!」
ぺこりと一礼すると由美は自分のいた席に戻り、わいわいと話している。流石にそこに割り込んで話を聞く勇気はない将輝は一先ず寮の部屋に帰り、其処から束に電話を掛けた。
『もすもす終日?』
「おい、束。お前、昨日の話覚えてるか?」
『覚えてるよ?その反応から察するにもう見たんだね』
「俺は姑息な手は使うなと言ったぞ。何洗脳してんだ」
『洗脳?人聞きの悪い事言うなぁ。私はありのままの事実を伝えただけだよ?そりゃ、所々誇張表現があったかもしれないけど、嘘なんかこれっぽっちもついてないし、洗脳もしてない。というか、寧ろ男の子が女の子の為に命を張るっていうのはかなり女子的にポイント高いよ?』
「…………本当にちょっと話を盛っただけで、洗脳したりはしてないんだな?」
『うん。命を賭けてもいいよ?』
「阿呆。そんな事で命賭けるな………………わかった。信じてやる」
『あ、一応言っておくとね。今日の集会で副会長就任式やるから、未来のIS学園の制服に着替えておいた方が良いよ?その方がかっこいいしね。じゃあバイバイ』
まくしたてるように言い放った束の言葉に将輝は人知れず肩を落とした。
時刻は九時ちょうど。
現在、俺ーーー藤本将輝は生徒会メンバーと交じって座っていた。
もちろん、他の生徒とは違う場所であるし、教師達の座る場所でもないのだが、そんな事はどうでもいい。
「それでは、この度、生徒から九十五パーセントの支持を得る事で、生徒会副会長に就任されました、言わずと知れた我が校を救った英雄藤本将輝さんの就任挨拶です!」
司会を務めている生徒の言葉に会場がどっと沸く。今日ほどそれが悪い方であれば良かったと思った日はない。はっきり言って、俺と一夏の入学式の時よりも酷い。あれは好奇心の視線だったが、これは憧憬或いは崇拝しているかのような感情が視線からでもありありとわかる。言わずと知れたって束が話してるから、言葉としておかしい気もするが、そのあたり突っ込んではダメなのだろうか。それに英雄も言い過ぎだと思う。真耶がいてくれなければ、最終的にはお陀仏だった訳だしな。しかも支持率九十五パーセントってなんだ。め○かボッ○スかよ。
そうこう現実逃避している間に俺は壇上に立つ。緊張して心臓の鼓動が加速するのがよくわかる。何せ、俺はこの手の行為はからっきしなのだ。何せクラスメイトの前で作文を読むのすら、文章をマトモに読めず、素晴らしいショートカットで短縮させるのだから。本当勘弁していただきたい。
「えー、この度、臨時ではありますが、生徒会副会長という重要な役職に就く事になりました。藤本将輝です」
早口にならぬよう噛み締めるように言う。女子達はまるでそれを一言一句聞き逃すまいと静まり返っている。
一夏ならここで「以上です」とか言って締められるのだが、生憎俺はこんな重要な舞台でそんな事をする勇気はない。だから、全部アドリブっていく!だって初めから読む紙なんてもってないもん!
「将来、IS操縦者、もしくは研究者を目指す方の為の育成機関であるこの学園に男子である私がこうして皆様から支持を得て、副会長を名乗らせていただけるというのは光栄の至りです」
もちろん光栄な訳がない。俺にこんな役職向いてない。庶務で良いよ庶務で。もしくは会計とか………あ、ヒカルノがいたから無理だ。
「私は生徒会として、皆様を守るという使命を果たすべく、日常生活においても全力でサポートしていきたいと考えています。とはいえ、ISに乗ってしまえば皆様の方が当然強くなります。ですが、先日の一件のようにISに乗る事が困難とされた場合、私達生徒会が全身全霊を持って、皆様を護り通します。ですので、皆様は学生の本分や一度しかない高校生活を充分に全う、満喫して下さい。これにて、生徒会副会長就任挨拶を終わらさせていただきます」
一礼。女子達は無言のまま、固まっている。当たり障りのない事を言ったつもりだっ『キャァァァァァッ‼︎』ギャァァァァァァ‼︎ミミガァァァァァァ!沖縄料理じゃないよ!鼓膜がやられるって意味ね!あ、ごめんわかってるよね。
「素晴らしい歓声です。女子達の心をゲットしましたね!流石、我らが生徒会副会長です。本来ならこれで就任挨拶は終わり………なのですが、生徒達の多くから「副会長について知りたい」との意見が多数寄せられているとの事で、ここで先着十名様限定の質問タイムを取らせていただきたいと思います!」
その一言でまたもや女子達の歓声が響き渡る。俺の意志はないらしい。というか、多分あの子の独断だよな。先生達も何だそれ?って顔してるし、何人かは女子達と一緒になってるけど。おいおい、落ち着けよ。
「それでは、記念すべき一つ目は…………」
あ、何か始まったよ。もういいや、答えられる事だけ答えておくか。
「ズバリ!副会長と会長は付き合っているのか⁉︎」
いきなり斜め上のド直球がキター!敬遠コースに全力投球とか馬鹿だろ⁉︎
「………付き合ってません」
「妙に間が空いた辺り、脈なしというわけではないようです。続く第二問は……」
間が空いたのは何か想像通り過ぎて、寧ろノーマークだったからだよ。つか、変なフラグ立てようとするな。後で千冬に怒られちゃうだろうが。後、束とか辺りが凄くうるさい。ほら見ろ、千冬プルプルしてるぞ、未来だったらとばっちり受けてるよ。出席簿じゃなくて拳骨で。
「好きな女性のタイプは!」
「これといって決まってません。強いて言うなら活発な子よりもクールな子の方が良いですね」
「成る程成る程。これは遠回しに会長に告白しているのか〜?いやいやもしくは書記という可能性も……」
真面目に答えただけなのに。ああ………俺これが終わったら逃げよう。全力で。
「三問目。私だけの執事になって下さい!おおっとこれはかなり大胆な質問のようです!」
それ質問なの?というか、執事になった覚えはない。
「丁重にお断りさせていただきます」
「残念!副会長は誰のものでもなく、皆のものといいたいそうです。成る程、一人に縛られたくはないと言うことですね」
誰もそんな事言ってないだろ。深読みっていうか、どういう連想ゲームで其処に至った?しかも最終的に俺ただのチャラ男になってるじゃん。俺は女を侍らせるつもりはないし、そんな器量もない。
四問目から九問目までは同じようなノリが続いたので割愛。
下心全開の質問に辟易していると最後の最後でこんな質問が出された。
「ラストを飾る質問は……………」
司会の子は読もうとした所で言い淀む。もしかして告白の類いか?と考えたが、そもそも告白される動機もなければ、今までの彼女のテンション的に普通に言いそうだ。彼女は俺の方に視線を送ってきたので、頷くと渋々といった感じで言い出した。
「本当に副会長は強いのですか?」
その質問に騒いでいた女子達もしんと静まり返り、ひそひそと話している。おそらく、誰があんな質問を入れたのか?そう言っているのだろう。
疑問はもっともだ。そもそもISを装備していない人間達が武装集団相手に勝利を収めた事自体がとても信じ難い物であるのに。一番活躍したのが男である事がより信じ難い状況を生み出しているのだろう。生身なら大抵の場合は男の方が強いんだけどね。だが女尊男卑の思考に囚われている者達ならばそれを認められないのはある意味当然の事だ。支持率だって九十五パーセントではあったが、百パーセントではない。残りの五パーセントは俺の事を認めていないのだ。
副会長の座とか信頼とかはどうでもいいが、弱いとか嘘つき扱いされるのは嫌なので、取り敢えずどう言ったものかと考えていると、壇上に我らが生徒会長織斑千冬様が上がってきた。
「その質問には私から答えよう。副会長は単純な戦闘力は私と同等或いはそれ以上だ。事実、私は二度彼に負けている」
二回?はて、二回も戦…………ああ、掃除から逃げ出そうとした時か。果たしてあれを戦いと捉えていいのかは知らないが。黙っておこう、その方が話がスムーズに進みそうだ。
「そういうわけだ。彼の力は私達が保証する。先日の集会では手は出すなと言ったが、どうしても気になるなら自分の目で確かめるといい。会長権限で三日だけ、それを許可しよう。異論のあるものはいるか?」
手を挙げる者は誰一人としていない。この有無を言わせないカリスマ性が織斑千冬って感じだよな。高校生の時点でこれなんだから、凄いとしか言いようがない。家事が出来ないだけでかなり凄腕なんだから、その気になれば総理大臣とかなれそうだな。割とマジで。
「予定外のイベントがあったが、これで集会は終わりだ。授業は十分後に開始するので、素早く行動するように。以上だ」
こうして俺の臨時生徒会副会長就任挨拶は千冬の圧倒的なカリスマ性を発揮する形で幕を閉じた。
そして俺は帰るまでの間、生徒会副会長を務める羽目になってしまった。あの時、束の挑発に乗らなければと後悔した所で後の祭りだったというのは言うまでもい。