憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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番外編:セシリアルート2

 

「どりゃぁっ!」

 

ガギンッ!

 

俺の振るう《無想》は金属音と共にラウラのプラズマ手刀によって阻まれる。

 

AICで拘束されないためにすぐさまその場を離れるが、回避先には既に六本のワイヤーブレードが放たれていた。なんとか五本は回避するも一本は足に絡まり、態勢を崩される。

 

「隙だらけだぞ!」

 

放たれたレールカノンの砲弾を《無想》で防ぎ、足に絡まったワイヤーブレードを断ち切り、瞬時加速でラウラへと詰め寄ろうとして、直前で真上に回避する。

 

「相変わらず敵意と殺意には敏感だな……だが!」

 

今度はラウラが瞬時加速を利用して俺に接近してくる。今までのようにそれを迎え撃とうと構えるが、構えた《無想》には何時の間にかワイヤーブレードが絡み付いていた。おまけに離そうにも手首ごと固定されている。

 

そしてそれによって判断が遅れた事でラウラへの対応が完全に遅れた。

 

「チェックメイトだ」

 

「降参だ」

 

AICに捕まった事で反撃以前に行動の術を失った俺がそう答えると拘束していたAICが解除される。

 

「これで私の七勝三敗だな」

 

「あー、また離された」

 

追いつくのは何時になるやら。

 

「常々思ってはいたが、貴様は勘が良すぎるな」

 

「そうか?一夏の方がこういう時は良い気がするぞ」

 

恋愛事情に関して言えば致命的なまでに鈍感だがな。小学生だってもうちと鋭い。

 

「あれと貴様の鋭さは違うし、あれは基本鈍いからな。お前の場合は常時だ。他人の敵意と殺意にあまりにも敏感すぎる。敵意のない攻撃や連携攻撃で片方の敵意が強すぎると明らかに反応が遅い上に混乱する。鋭いのは結構だが、それ以上の弱点がある事は問題だ。治すのは無理だろうが、それに従うのは避けた方が良い」

 

「了解。もう少し理性的に動いてみるよ」

 

とはいえ、敵意や殺意に敏感なのは元々だし、従うのは生物本能みたいなものだから結構難しいかもしれないな。

 

「今日はここまでにするが、貴様はどうする?」

 

「反省を含めた特訓かな。まだアリーナが閉まるまでは時間があるし」

 

「オーバーワークは逆効果だぞ?」

 

「わかってる。でも、俺は強くなりたいんだ」

 

「………まだ、福音の時の事を引きずっているのか?」

 

「そんな事は……」

 

ない。と言おうとしたが、多分結構引きずっている。

 

福音との闘い。物語の流れを知っていながら俺は作戦に参加出来ず、一夏の撃墜イベントを防ぐ事は出来なかった。一夏の敵討ちに向かった時も余裕を持って一度は福音を撃墜したが、二次移行した福音から辛うじて皆を助けるのが精一杯だった。原作通り一夏が二次移行した白式で参戦していなければジリ貧だっただろう。

 

あの戦いで無力感を感じた俺は模擬戦などを行った後もしばらくは特訓を一人行っている。ラウラもそれに気づいているだろうから、そう忠告してきた。

 

「………あの時は藤本将輝。貴様がいたお蔭で私達は大した怪我もなく、織斑一夏が参戦してくるまでの間、凌ぐことが出来た。それは恥ずべきことではない」

 

「でもさ。一夏がもし来なかったら、あの時、誰かが死んでいてもおかしくなかった」

 

「そうだな。それ程までに福音は強力だった。だが、だからと言ってISを起動させてたったの三ヶ月しか経っていない貴様が劣等感を抱く必要はない。それなら寧ろ私達代表候補生側に問題がある。命令違反で動いた上に不可思議な現象で回復はしていたものの、怪我人にまで出張らせたのだ。四人も代表候補生がいながら不甲斐ないばかりだ」

 

「仕方ないんじゃないか?相手は二次移行した軍用ISだったし」

 

「ならそれはお前にも言える事だ。強くなりたいと思うのはいいが、強すぎる渇望は己を滅ぼすだけだぞ。私のような空虚だった人間がそれを生きる糧としたようにな」

 

そういうラウラの表情は何処か憂いを帯びたような、懐かしむような表情していた。

 

強すぎる渇望は己を滅ぼす。それはわかっている。皆は俺が思っているほど弱くもない。代表候補生だし、勝率は相手によるが、多分微妙に負け越している。寧ろ護られるのは俺なのかもしれない。

 

それでも俺は皆を守る力が欲しい。

 

誰も泣かずに済むだなんて綺麗事は言わないが、せめて俺の手が届く範囲では傷ついたりして欲しくない。

 

特に彼女はーーーセシリアだけは命に代えても守り抜かなくてはならない。

 

「忠告はしたからな。あまり無理はするなよ。お前が無茶をするとセシリアが悲しむからな」

 

「ラウラは悲しんでくれないのか?」

 

「私か?………そうだな。悲しむ事はないだろうが、苦しむかもしれないな」

 

俺の冗談にラウラはそう答えた。

 

セシリアが悲しむか。

 

そうだな。この身は彼女にとって大切な人のもので無茶をすればするほど傷を負うのもこの身体だ。だとすればセシリアが悲しむのは当然だと言える。

 

でも、それでも俺は強くならないといけない。この命が尽きるまで俺は彼女にふりかかる邪悪全てから彼女を守り通すと決めたのだから。もし、原作とは違うイレギュラーが起きた時に手も足も出ないでは意味がないからな。

 

「どうした?浮かない顔をしているようだが?」

 

「なんでもない。ちょっと考え事してただけ」

 

「考え事と言う割にはかなり深刻そうだったが?」

 

表情に出てたか。バレないようにしないと。

 

「………話す気がないのならそれでもいいがな。せめてセシリアには言ってやれ。あいつは気がついてもお前が打ち明けるまで気が付かないフリをするだろうからな」

 

そう言い残して、ラウラはピットへと帰っていった。

 

そうだ。セシリアならきっとそうするかもしれない。例え気がついていても俺が言いだすまで何も言わないだろう。だから俺から言い出さなければならない。俺自身が抱える問題は。彼女から切り出されるまで黙っているというのは逃げでしかない。なんとなく、ラウラにそう言われた気がした。

 

……腹をくくるか。

 

セシリアに拒絶されるかもしれないが、それも致し方ない。彼女の憎悪は甘んじて受け入れよう。

 

………今は考えるのよそう。とにかく強く。ただただ強くならなくては。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけなのだ。何か心当たりはあるか?」

 

「唐突に来たかと思えば………そういうことか」

 

ピットでシャワーを浴びて寮へと帰宅したラウラの足は箒の部屋へと向いていた。

 

理由は一つ。将輝の抱えている悩みがなんなのかを知るためだ。

 

聞いても教えてくれず、考えてもわからないなら他人からヒントをもらうしかない。そして中学時代、半年間とはいえ、将輝と交流があった箒なら何か知っているのではないか?そう考えたラウラは思い立ったが吉日とばかりに箒の部屋を訪れていた。

 

「心当たりがあるのか?」

 

「残念だがわからないな。すまない、力になってやれなくて」

 

いくら誰よりも将輝といる期間が長いとはいえ、たった半年程度。おまけに将輝はあまり自分のことを話さないため、なかなか心当たりとなりそうな手がかりは得られる事はなかった。

 

「そうか………いきなりで悪いな」

 

「いや、こちらこそ力になれなくてすまない。それよりも将輝の方はそんなにも深刻なのか?」

 

「私から見れば其処まで大したものではない。だが、人の感情に疎い私ですら気づいたともなるとかなり深刻である可能性が高い。ましてや、半年間とはいえ、付き合いのあるお前がそういう素振りを見せない人間だったと言っているなら尚更だ」

 

「…………そうか。わかった。ならば私も何かわかれば聞いてみるとしよう。同じ中学のよしみだ。何か話してくれるやもしれん」

 

「協力感謝する。私からの場合は警戒される可能性もあるのでな。奴自身が自らセシリアに話すのであればそれで結構だが、それが周囲の人間全てに関わる問題か、それとも一人で完結するものかわからない以上、そちらに期待する事は出来ん」

 

「いっそストレートに訊くのもありだが、はぐらかされかねないな」

 

「そういう事だ。また何か心当たりがあれば教えてくれ。私はこの後セシリアにも少し探りを入れてみるので失礼する」

 

「ああ…………あ、そういえば一つだけ、気になる節がある」

 

部屋を出て行こうとしたラウラはその言葉に足を止めて、振り返る。

 

「如何にも将輝は自分自身を見失っているような……そんな気がするのだ。私も同じような時期があったから、なんとなくそんな気がしてならない」

 

将輝との出会いを経て、自我を取り戻した箒であるが、中学時代は荒れていた時期もあった。そのせいで人との付き合い方に四苦八苦する事もあるが、今となってはその経験があるからこそ、人の感情に少し敏感になっていた。そして将輝が或いは自分と同じような状態に陥っているのでは?と少し前から箒は気になり始めていた。

 

それを聞いたラウラは目を丸くした。箒の事についてはラウラ自身、其処まで高く評価しているわけではない。箒自身優れてはいるものの、何分精神が脆い。戦場での精神の弱さは即、死に繋がる。迷いや過信は特に顕著だ。福音戦でそのどちらも見せた箒を見て、ラウラとしてはあまり箒を評価していなかったのだが、先程の発言を聞き、少し感心していた。

 

「よく見ているな」

 

「ラウラ程ではないぞ。あそこまで穴が空くほど見てはいない」

 

「私の場合は自分という存在をこの三年で確立するという目標がある。その為にはどうしてもあの男が必要なのだ」

 

「ふふふ、其処だけ聞くとお前も将輝の事が好きだと勘違いしてしまうな」

 

「さあな。実際、私はあの男がーーー藤本将輝の事が好きなのか、わからない。だが、奴といると心が安らぐのも事実だ。私に血の繋がった人間はいないが、きっと家族とはああいう存在の集まりを言うのかもしれんな」

 

(………そうか。勘違いではないのだな。ラウラも、将輝の事が好きで………だが、それを表現する術を持ち合わせていないのか)

 

憂いを帯びた表情で答えるラウラに箒はラウラ自身の気持ちに気がついた。感情の起伏とその出自から知識を知識としてしかわからないラウラは自分が相手の事をどう思っているか、そういう表現をするのを苦手としていた。だから箒はラウラが自身の気持ちには気づいているが、それを好意であるとは認識出来てはいないとそう感じた。将輝が抱えているであろう悩みを解決したいのも友人であるセシリアに負担をかけまいと思うのと同時に想い人が悩んでいる問題を解決したいとそう自然に考えた結果なのだと。

 

(だが、それを私が指摘するのは良くないな。その気持ちはラウラ自身が気付くべきだ)

 

「む。なんだその目は?何処と無く教官に近い雰囲気を感じるぞ」

 

「なんでもない。ただ、お前が何れ自分の気持ちに気がつけばと思っただけだ」

 

「?よくわからないが、それはともかく、よく藤本将輝の心境の変化に気がついたな。私はせいぜい違和感しか感じなかったというのに」

 

それを聞いた箒は優しげな微笑を浮かべた。

 

「なに。わたしもお前と変わらないんだ。将輝の事が気になって気になって仕方がない。あいつの事は何時も見ているからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





この番外編は多分合計六話以内には終わる予定。

あくまで番外編なので特別ストーリーの時のように長くはならないようにしたいです。

この番外編では箒とセシリアは当然のこと、ラウラも一時的にヒロイン入りしていますが、本編とは別枠と捉えてくださると助かります。本編でヒロインする可能は多分ないかなぁ〜と。
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