憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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波乱の前兆

 

翌日。SHRと一限目の半分を使っての全校集会が行われた。

 

内容はもちろん、九月中程にある学園祭についてである。

 

「流石に女子がこれだけ集まると騒がしいな」

 

「騒がしいっつーか、姦しいって感じだ。どうにもこういうのは慣れねえな」

 

そんな姦しさの中心地にいた一夏と将輝はうんざりしたように話していたが、それも生徒会役員の一声でさーっと引き潮のように引いていく。

 

「皆、おはよう」

 

壇上に立って挨拶しているのは二年生のリボンをつけた一人の女子生徒。それを見た将輝は既に知っている人物であったが、苦虫を噛み潰した表情になった。壇上の女子生徒は将輝のそれを見るとクスリと笑った。

 

「さてさて、今年は色々と立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったね。私の名前は更識楯無、君達生徒の長よ。以後、よろしく」

 

にっこりと微笑みを浮かべて言う生徒会長、更識楯無の笑みは異性同性問わず魅了するもので、列のあちこちから熱っぽい溜め息が漏れる。

 

「では、今月の一大イベント学園祭だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。その内容というのは」

 

閉じた扇子を慣れた手つきで取り出し、横へとスライドさせる。それに応じるように空間投影ディスプレイが浮かび上がった。

 

「名付けて『各部対抗男子争奪戦』!」

 

「「異議ありっ‼︎」」

 

ぱんっと小気味のいい音を立てて、扇子が開く。それに合わせて、ディスプレイにはデカデカと一夏と将輝の写真が映し出されたのだが、それに異議を唱える人物がいた。無論、男子二人である。

 

「異議は受け付けません。生徒会長権限です」

 

「横暴だ!」

 

「巫山戯るな!今すぐ会長辞めろ、このヤロー!」

 

教師達の眼前で当然のように職権乱用発言をした楯無に二人はさらに抗議の声を上げる。だが、楯無はそれに耳を傾けることはなく、ルールの解説を始めた。

 

「学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。しかし、今回はそれではつまらないと思いーーー男子を、一位の部活動に強制入部させましょう!」

 

楯無の言葉に会場が比喩ではなく揺れた。

 

「うおおおおおおっ!」

 

「素晴らしい、素晴らしいわ会長!」

 

「こうなったら、やってやる………やぁぁぁってやるぜぇぇ‼︎」

 

「今日から早速準備に取り掛かるわよ。秋季大会?放置よ、放置」

 

各場所から雄叫びが上がり、それと同時に二人は抗議を諦めた。

 

先程の抗議が華麗にスルーされた時点で殆どおしまいだったのだが、更に大衆を、というよりも二人以外の生徒を味方に引き入れられた以上、どんな策を講じた所で二人に勝ち目などなく、それどころか楯無が更に酷い事をしそうな可能性すらあった為に二人は頭を抱えて蹲った。

 

かくして、本人達は未承諾のまま、男子争奪戦が開始されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日。教室にて放課後の特別HR。クラスごとの出し物を決めるため、一組はわいのわいのと盛り上がっていた。

 

クラス代表として将輝は意見をまとめる立場にあるのだが、黒板に書かれていたことはどれも酷いなんてものではなかった。

 

(内容がホストクラブにツイスター、ポッキーゲームに王様ゲームだぁ?しかも全部俺達主導じゃん)

 

「却下。今後マトモな意見を出さない場合は俺が決める」

 

ええええー⁉︎と大音量サラウンドでブーイングが響き渡る。しかし、将輝はそれを意に介す事なく、黒板に書かれていたものを全て消した。

 

「大体、これだと来店してくるお客さんに対して、非効率すぎる。感覚的には五分〜十分くらいで回さなきゃいけないのに二人だとパンクするぞ。っていうか、俺達の体力が持ちません。なので却下」

 

単に嫌だからというものではなく、現実味を帯びた話をする事で女子達は確かに、と言って沈黙する。そして其処から普通な意見を求める将輝だが、真っ当な意見が出ず、どうしたものかと頭を悩ませていたそのとき、意外な人物が挙手した。

 

「メイド喫茶………特にコスプレ喫茶というのはどうだろうか?」

 

真顔で言うのはラウラだった。

 

「客受けはよく、飲食店なら経費の回収が可能だ。招待券制度で外部からの客も見込めるならば休憩場としても機能する。更に私達は好きなコスプレ衣装を着れば惰性的にならず、客も目の保養とやらになるのだろう?これ程効率的なものはない」

 

何時もと同じく、淡々とした口調で話すラウラ。あまりに本人のキャラとかけ離れているせいか、皆かたまっていたが、将輝だけはなんとなくそれの原因がわかった。

 

「………ラウラ。それはクラリッサさんの入れ知恵か?」

 

「ふむ。よくわかったな、藤本将輝。こういう事には私は疎いのでな。クラリッサに尋ねてみたのだ」

 

やはりか、と将輝は額に手を当てた。

 

だが、一概にそれを却下する事は出来ない。

 

原作でもご奉仕喫茶こと執事メイド喫茶という半ばコスプレじみた喫茶店ではあったものの、効率は良かった。それにラウラが言っていることは大体合っている上、他の意見と比較した場合、圧倒的に現実味があった。

 

「俺は良いと思うけど、皆はどう?」

 

「私も良いと思うよ。コスプレって日本の文化の一部分だし、楽しそうだから」

 

将輝の問いに真っ先に同意したのはシャルロットだった。言い出したのがラウラという意外も意外な人物であった為に皆、反応が微妙ではあったのだが、シャルロットが同意した事によって何時もの姦しさを取り戻し、一組の出し物はコスプレ喫茶となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漸く決まったか…………コスプレ喫茶か。まあ、予想よりはマトモだな」

 

将輝は出し物の内容とそれに必要なものを書き留め、早速千冬に提出しに行っていた。千冬は用紙に記入されているものを見ると想像よりも普通だったのか、若干意外そうな表情をした。

 

「提案者は誰だ?田島か、リアーデか。大体その辺りの騒ぎたい奴らだとは思うが………」

 

「ラウラですよ……………クラリッサさんの入れ知恵だそうです」

 

「…………成る程。ボーデヴィッヒだと聞いて一瞬あり得んとは思ったが、それなら納得出来る」

 

千冬は何処か悟ったように溜め息を吐いた。

 

ドイツ軍で教官をしていた頃、クラリッサも教え子の一人であった。優秀な人材の一人ではあったのだが、いかんせん日本文化に対する考え方が何かとズレていた。おまけにクラリッサは所謂オタクであったものの、千冬はそうではなかった為に適当な返事を返していた事でクラリッサの思い違いにはさらに拍車がかかった。

 

「ところで藤本。話は変わるが、身体の方はもう大丈夫か?」

 

「はい。昨日織斑先生に殴られたこと以外は」

 

「…………マジメに答えろ。保健室のベッドで過ごしたいか?」

 

「わかりました。痛いのは嫌なので…………と言いたいんですが、実はまだ痛覚は結構麻痺したままで昨日の織斑先生のパンチも想像よりも遥かに痛くありませんでしたし、昨日織斑先生も気づいたと思うんですけど、反射速度も速いままなんですよね。多分、二ヶ月の間に染み付いたんだろうとは思うんですけど」

 

「そうか。傷の方は完治したか?」

 

「擦り傷一つ残ってませんよ。流石は天才と言ったところですね」

 

「………………藤本。一つ聞きたい事がある」

 

「何ですか?」

 

「お前は………いや、やはり何でもない。今聞くべきことではないからな」

 

「?そうですか。では失礼します」

 

千冬は何かを言いかけて止める。それに将輝は首をかしげるが、何もないと言われたため、それ以上突っ込む事はせず、一礼し、職員室を出た。

 

「………………で?今度は何のようですか?生徒会長殿」

 

「あら?気づいちゃった?」

 

将輝は職員室の扉を閉めると自身の背後の壁に背中を預ける楯無に質問を投げかけると言葉とは裏腹に将輝が気づいた事は想定したような声音だった。

 

「ご勘弁願えますか?昼休みの時と言い、学園祭の事と言い、面倒ばかり」

 

「そう?昼休みはともかくとして、学園祭の賞品に関して言えばスリルがあって楽しいと思わない?」

 

「俺達には何のメリットもないんですけどね」

 

そう言って将輝はアリーナへと歩き出した。

 

すると楯無はその横にごく自然な流れで並んで歩き出した。

 

「…………何でついてくる」

 

「早くも敬語が抜けたわね。親しくなれて何より」

 

「ポジティブだな、ホント。流石は生徒会長様だ」

 

「その口ぶりだとこの学園において生徒会長という名が何を指し示しているのか、知っているようね」

 

「ええ。そんでもって、絶賛数メートル先から敵意撒き散らしながら接近してくるあの女子。生徒会長にご用がありそうですが?」

 

前方から粉塵でも巻き上げそうな勢いで竹刀片手に将輝達の方へと全力疾走してくる。その敵意は楯無へと向けられており、雄叫びを上げて、その竹刀を楯無へと振り下ろした。

 

「迷いのない踏み込み……良いわね」

 

楯無は扇子で竹刀を受け流し、左手の手刀を叩き込むと女子が崩れ落ちる。それと同時に今度は窓ガラスが割れ、楯無の顔面を狙い、次々と先の潰された矢が飛んでくる。見ると、隣の校舎から窓から和弓を射る袴姿の女子がいた。

 

「ちょっと借りるよ」

 

楯無は先程倒した女子の竹刀を蹴り上げて浮かせ、空中のそれをキャッチすると同時に投擲する。

 

割れたガラスから投擲されたそれは弓女の眉間にあたり、見事撃破する。

 

「もらったぁぁぁぁ!」

 

バンッと廊下の掃除道具ロッカーの内側から三人目の刺客が現れる。

 

その両手にはボクシンググローブが装着されていて、軽やかなフットワークと共に接近する。

 

「どこのどなたが存じませんが、面倒なのでおやすみなさいっと」

 

いっそこれに便乗して楯無を倒してしまおうかと考えた将輝だったが、それはそれで後が面倒だった為、将輝はボクシング女子と楯無の間に入り込むとそのままボクシング女子の頭を掴み、足を払って力任せに投げる。ボクシング女子はその場で縦に二回転したのち床に頭を打って気絶した。

 

「あら、結構強いのね」

 

「偶々っすよ。それじゃあ失礼しま「お待ちなさいな」あぐっ⁉︎」

 

そのまま立ち去ろうとした将輝の襟を掴み、楯無は止める。

 

「まだ用事が終わってないじゃない」

 

「俺は始めからありませんよ。それに生徒会長様のご用は自分の最強っぷりを見せたいからじゃないんですか?」

 

「そんなわけないじゃない。それは周知の事実よ」

 

さも当然と言わんばかりに楯無は言う。

 

この学園において、生徒会長という肩書きは即ち学園最強を示す。

 

それ故、現生徒会長である楯無を破ればその者が生徒会長へと就任する事となる。先程襲撃してきた女子生徒達は体育会系の部活動であるがゆえ、男子争奪戦に勝ち目がないと踏み、楯無を打倒する事でそれを破棄、自らの部活動に有利な条件で同じ事をしようとしていた。だが、それも先程あっさりと潰えた。

 

「じゃあなんなんですか」

 

うんざりしたように聞く将輝に楯無は扇子をパチンと閉じて、こう言った。

 

「藤本君。貴方、生徒会副会長になりなさい」

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