原作でも基本的に新キャラの楯無回だったからなかなか出番を見いだせずにいます!ホント、どうしよう……
それと何気に簪がニュータイプロードを突っ走りがちになってしまうのはどうしよう。まあ、それはいいか。
予告ですが、お気に入りが二千五百を超えるかネタが詰まったら、番外編でセッシールートでも書こうかなって考えてたりします。このままだとセシリア可哀想だから。
前置きが長くなりましたが、本編をどうぞ。
一夏達がISの特訓を行っていた頃、将輝はIS学園の整備室へと赴いていた。
だが、その足取りは整備室に近づくにつれて、どんどんと重くなっており、本来なら五分程度で着くはずの場所に十分もかかっていた。そして整備室の扉の前でかれこれ三分。将輝は思考していた。
(あー、今すぐ帰りてぇ。留守でしたが理想的なんだけど、あのシスコンの情報だから絶対にここにいるのは確定なんだよな。それにあの子もまだISは開発途中だ、って言ってたし………はぁ、マジで帰りてぇ)
とは思っているものの、その依頼の代償として生徒会長が絡んでこないというのが条件ではあるので、しませんでしたとなるとまた付きまとわれるのは目に見えていた。
将輝は数度、深呼吸をすると整備室の扉の開閉ボタンを押した。
「………いらっしゃい」
「うわっ⁉︎」
扉を開いた直後、目の前に簪がいた事に将輝は驚きの声を上げた。
「い、何時からそこに?」
「貴方が来た三分前から」
(何、この子、ニュー○イプか何かなの?)
物の見事に自分が来たタイミングと同じタイミングで立っていたというカミングアウト。
脳内で「実は楯無より簪の方が凄いんじゃね?」と思いつつ、将輝は本題に入ろうとする…………が、それよりも先に口を開いたのは簪だった。
「ここに来たのは私に会いに来て好感度上げ?或いは私と前世の事について語りに?それともやっぱりお姉ちゃんの差し金?」
「やっぱりって、前の二つは願望かい」
しかもそれすらもピンポイントで当たっていた。ここまでくるとニュータ○プすら超越したナニカである。
「そうだね。シスコン生徒会長様の依頼で君のコミュ症を治しに来た」
「私はコミュ症なんかじゃ「それは知ってる」……じゃあなんで?」
「さっきのはあくまで建前。本当は簪さんがコミュ症じゃない事くらいは話してればわかる。本当にコミュ症なら夏休みのあの馬鹿が開いたイベントに参加なんて真似は出来ないから。簪さんの場合は話せないんじゃなくて、本当に話したくないんだろ?
もし理解してくれる者だけであれば、それはただの個性となってしまう。逆に理解出来ない者だけでは、それは奇人変人の類となってしまう。理解出来る者がいて、出来ない者がいるからこそ厨二病は厨二病として成り立つのだ。厨二病患者の矛盾した望みは自身の存在認識の為であるといっても過言ではない。
「でもまあ、簪さんが理解出来ない人達と壁を作っているっていうのはそれはそれで心配らしいから、皆と仲良くしてくれると俺も簪さんのお姉さんも気が楽になるんだけど」
「………貴方は何か勘違いしている」
「うん?」
「私は何も他人と壁を作っているわけではない。証拠を見せる、ついて来て」
簪は将輝の手を引くと早歩きでとある場所へ向かう。
簪にしては殊の外強引であった為、将輝は無抵抗のまま、連れて行かれる。
「着いた」
「ここは……四組?」
将輝が簪に連れてこられたのは四組の教室だった。先日の楯無の発言が影響しているのか、四組の教室内ではまだ喧騒が聞こえており、教室に相当の人数の人間が残っているのがわかった。
簪はおもむろに教室の扉を開けると将輝の手を掴んだまま、教壇まで連れて行く。
四組の生徒達は簪と本来ならここに来る事はまずないであろう二人目の男子の入室にピタリと時が止まったかのように視線だけは追いながら動きを停止させていた。
「え、えーと……こ、こんにちは」
入学初日に匹敵するであろう女子達の視線に取り敢えず挨拶をしてみた。
「何で挨拶?」
「俺、こういうの苦手なの。一夏なら爽やか〜にいけるけど」
「一夏?ああ、あのライトノベルの主人公オーラを放つ小姑みたいな人の事?」
「また凄い設定だな、それ」
強ち、というよりも結構的を射た発言に将輝は苦笑する。もっとも一夏は元よりライトノベルの主人公オーラを放つのは本当にライトノベルの主人公だからである。
「ところでそろそろ俺ストレス性胃痛になりそうなんだけど……」
「少し待ってて」
簪は教壇を降りると席の最後列で固まっていた数人の女子と話す。静寂に包まれている教室ではその会話は良く聞こえ、簪と数人の女子が自身の事を話しているのがわかった。
数人の女子は頷いた後、簪に引き連れられて将輝の元に来た。
「……連れてきた」
「は、初めまして!つ、鶴屋恭子です!あの……えと……よ、よろしくお願いします!」
「かかか貝塚瑞穂でしゅっ!よ、よろしくおねぎゃいしましゅっ!」
まさか男子と話すことが出来るとは。茶髪を短く切り揃えたボーイッシュな雰囲気の女生徒鶴屋恭子と何処か簪と同じ雰囲気のあるピンク色の長い髪に猫マークのヘアピンをつけた女生徒貝塚瑞穂は突然の事態に全力でキョドっていた。
しかしそれも仕方のないことで、一組の生徒と一組と合同授業のある二組の女子達は男子達と少なからず接する機会がある。その為、ある程度は十代乙女の覚悟があるのだが、三組と四組は違う。合同授業をする事もなければ、男子達が訪れる事はまず無い。その為、男子が入学と聞いた時、大半の女子達は酷く嘆いたものだがらそれも最近達観したような落ち着きを取り戻していた。そんな時に突然の男子訪問。そしてその男子と話す機会を得たのだ。棚ぼたなので心の準備が出来ていなかった二人はそういう反応なのは当然だ。将輝としてもいきなり見知らぬ女子と話すというのは難易度が高い事だったのだが、二人が思いの外キョドっていた事とその二人の他にもう一人いた人物が知っている人物であった為、心に幾分か余裕が出来た。
「おお〜、フジモンだぁ〜」
「のほほんさんか。今日ものほほんって感じだね」
「えへへ〜、褒められたちゃった〜」
本音は垂れた制服の袖をパタパタとさせながら照れたようににへらと頬を緩ませる。
女子達は「今の褒めたの?」という疑問を感じるが、本音がどういう人物であるかというのは既に知っている事なので最早突っ込む事はしない。そしてそれ以上に将輝と本音が親しそうに渾名で呼び合っていることの方が気になっていた。
「フジモンはどうして此処に来たの〜?しかもかんちゃんと一緒に」
「諸事情で言えないな。まあ紆余曲折があったとだけ言っておく」
「ふぅ〜ん。大変だね〜、フジモンも」
「それは激しく同意」
「……今の発言は私の相手が大変だという意味と捉えられる為、撤回を要求する」
「いや、簪さんの相手が大変というより今の状況が大変というかなんというか」
「………ならいい」
((((((((((なんかあの三人凄く仲よさげ………羨ましい!))))))))))
羨望と嫉妬の感情が入り混じったオーラを放つ四組女子勢だが、向けられているのはそういった感情を全く意に介さない。簪と本音である為、不発に終わる。
「えーと、鶴屋さんと貝塚さんは簪さんのお友達って事で良いのかな?」
「は、はい!簪ちゃんとは仲良くさせてもらってます!」
「時々何を言っているのかわからなくなりますけど、簪ちゃんは頭良いし、面白いですから!」
「そっか。それは良かった」
それを聞いた将輝はホッと胸を撫で下ろす。だが、それと同時に疑問が脳裏をよぎった。それでは何故楯無は簪を頼むと依頼してきたのか?
原作では専用機を自身の力のみで製作しようとしていた為、周囲からは完全に孤立していた。その為、本音以外に友人と呼べる人物は一夏達と会うまで存在せず、重度のコミュ症だった。そして性格こそ違えど簪は初対面で話しかけてきた箒を拒絶した為、将輝はこちらもコミュ症だと踏んでいた。だが、実際は普通に友人を持ち、クラスから孤立している様子は全くと言っていいほどなかった。
(じゃあ一体なんなんだ?俺にしかできない事って……)
「………これは私の予想。きっとお姉ちゃんが貴方に頼んだ事は別の事」
「別の事?」
「そう………それは多分貴方にしか理解出来ない」
「?」
意味がわからず、将輝は首を傾げる。
簪は空中投影ディスプレイを呼び出すと凄まじい指さばきで操作し、更に複数の画面を呼び出し、将輝に見せる。それを見た将輝は思わず息を呑んだ。
「ッ⁉︎こ、こいつは‼︎」
「………流し見しただけでその反応。貴方はやはり私の半身」
驚愕の声を上げる将輝に簪は満足そうに表情を綻ばせる。
将輝が驚くのも無理はない。
ディスプレイに表示されていたのはISの設計図。だがその設計図はどれもぶっ飛んでいるところの騒ぎではなかった。何故ならどれもリアルロボット、スーパーロボット達を結集させた「篠ノ之束も無理なんじゃね?」とすら思った。
「え、何?これ作るの?」
「理論的にはどれも不可能ではない。でも、それには私と思考を共有出来る人間が最低でも一人必要。出来ればもう一人か二人欲しい」
「………成る程な」
将輝は楯無が簪を自分に任せた意味を理解した。
難易度ハードどころの騒ぎではない専用機を簪は作ろうとしている。それがただ設計する事が難しいだけであれば楯無も手伝い様はあった。原作と違い、簪は一人で組み立てあげようなど微塵も考えていないからだ。
だが、作る専用機は難しい上にそれに対する知識が必要だ。それは楯無が持ち得ていないものであり、将輝が豊富に持ち得ている知識であった。それ故、楯無は将輝にしか頼めないと称したのだ。
「手伝ってくれる?」
「交換条件だし、ここで手伝わないって選択肢はないさ。それにこれはこれで面白そうだ」
将輝とて元々簪と同じ人種だった人間だ。幼い頃からアニメを見て育ったといっても過言ではない。ロボットは男のロマンである事は当然将輝にも当てはまった。
「俺に出来る範囲でだけど手伝わせてもらうよ。ついでに手伝ってくれそうな人には心当たりがある」
「……それは頼もしい」
そう言って将輝と簪は固い握手を交わした。
「………これから末長くよろしくお願いします」
「それ、何か違くね?」