憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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織斑一夏【主人公】の弱点

明朝。

 

まだIS学園の生徒達も朝練をしている部活動の人間くらいしか行動していない頃、一夏と楯無は第二アリーナに集まっていた。

 

「寝坊せずに来たわね。感心感心」

 

「朝は結構強いんで」

 

中学時代に少しでも姉に負担をかけまいと新聞配達などのアルバイトをしていたり、学園に入ってからは朝稽古などをしていた一夏は朝早くた起きることはそれほど苦ではない。

 

何より誰かを護る為に強くならなければならない。

 

一夏の心の中にはその言葉が深く根付いていた。

 

「それじゃあ早速特訓を始めましょう……………と言いたい所だけど。その前に一夏くんにはどうして君が彼に実力差をつけられているのか、その確認から始めましょう」

 

「確認………ですか?」

 

「ええ。どうして君が彼に劣っているのか、私にはそれがわかるわ。けれどね、一夏くん。それを私が指摘するだけでは君自身が実感を持てない。だから、君が答えを導き出して、納得した上で特訓をする。やっぱり当事者が理解していないと効率悪いもの」

 

そう言われ、一夏は考える。

 

まず思い至ったのは知識量。こればかりは先に勉強を始め、互いに真剣に勉強をしている以上、早々埋まる差ではない。次に応用力。得た知識を実力向上の為に様々な形で応用している。その何れもが理にかなっていて、直感で無茶苦茶な動きをすることはかなり稀だ。最後はやや精神論のようになってしまうものの、その気迫だ。明らかに致命傷を負ったまま、戦闘を行える精神力。それを特に感じたのは福音戦での激闘だ。もし将輝がいなければ箒は死んでいたかもしれない。第二形態移行した福音を止められなかったかもしれない。

 

「知識とか柔軟性とか、精神力とかだと思います」

 

一夏は先程考えついた事を片っ端から言う。もっと時間があればその他にも色々と思いつくことがあったのだが、今はすぐに思いつくものを全て挙げた。

 

「うん。まあ、当たりだけどハズレだね」

 

「はい?」

 

苦笑していう楯無に一夏は首を傾げる。それもそうだ。当たりでハズレなど前後で発言が矛盾している。

 

「確かに知識で劣るのは確実だね。柔軟性に関して言えば五分五分って感じかな。意外性で言えば一夏くんの方が圧倒的に上だけどね。最後のは精神力が、っていうよりも意識の違いかな?」

 

「意識の………違い?」

 

「そう。例えば一夏くんはもしかしたら助かる人間と助からない人間がいたらどうする?」

 

「両方助けます。やってみないとわからないじゃないですか」

 

「うんうん。迷いのない一言ね。おねーさん、そういうの好きよ。そして其処が君と彼の違いでもあるわ」

 

楯無は僅かに目を細めて言い放った。

 

「彼は迷うことなく、助からない人間を切り捨てるわ。助かるかも?なんて都合の良い可能性は考慮しない。もしその可能性に賭けて両方が死ぬのなら確実に助けられる方を救い、その可能性に危険を及ぼすもう片方を切り捨てる。例えそれが自らの命だとしてもね」

 

「そんなの………っ!」

 

「ええ。それではどちらかしか救われないし、状況次第では片方を自らの手で排除ーーーつまり殺す事になるわね。けれど、彼の考えはとても現実的。この世遍く全ての生物を自分の手で救えるだなんて考えていない。だから救えるものだけを救う。余計なものは救わない。だから、行動に迷いがないのよ。一夏くんはどう?」

 

「お、俺は………」

 

一夏の脳裏にフラッシュバックするのはあの時のーーー福音戦の光景。密漁船を庇い、最大の好機を逃し、剰え箒も危険に晒した。後者に関しては箒自身に問題が多分にあったが、今の一夏にはそれすらも自身が悪かったのだとすら錯覚していた。

 

「一夏くん。君は今悩んでいる。何方も助けたい。けれどもし助けようとして両方が助からないかもしれない。なら片方を切り捨てるのか?でもそれじゃ結局誰も救われない、とね。だから行動に迷いが生じる。今悩むのはいいけど、状況次第ではそれは命取りよーーーーーというわけで一夏くん。君の悩みは今のうちに解決しておきましょう」

 

そうでないと君は何れ死ぬわ。と人の良さそうな笑顔を浮かべたまま、楯無は一夏にそう告げる。

 

「だからまずはーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日。放課後。

 

整備室にて将輝とラウラと簪、そして意外にもその場には箒がいた。

 

「お約束通りの助っ人連れてきたよ」

 

「ひ、久しぶりだな………か、簪さん……」

 

「こうして話すのは初めてか。私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。いまいち要領を得ていないが、手を貸してくれと言われたのでな。宜しく頼む」

 

簪に対して若干トラウマのある箒は将輝の服の裾を掴みながら、恐る恐るそう言い、ラウラは腕組みをしたまま、不遜な態度で自己紹介をした。

 

「……宜しく。一応聞くけど、ラウラが好きなものは?」

 

「私か?好きなもの………というわけではないがな。日本のアニメーションには深く感心させられる。特にフル○タやコード○アスなどは素晴らしい。見ていてとても参考になる代物だ。この国は些か戦場とは離れた国だが、未だその深層意識にある闘争本能は衰えてはいない、ということだろうな」

 

「何か凄く深読みしてる感があるけど、こんな感じにラウラはリアルロボット方面に関しては結構知識は豊富だよ。しかも軍人としての意見も聞けるから助っ人にしては申し分ないと思うよ」

 

「……うん。でも、その、篠ノ之さんは?」

 

明らかに場違いであると言わんばかりに簪の視線が箒を攻め立てる。もうそれだけで箒のライフはガリガリと音を立てて削られていたのだが、それでも何とか箒は声を絞り出した。

 

「私は………どちらかというと幽○白書とか……だな。ロボット物は○ッターとかガオ○イガー辺りだな。うん、ロボット物よりもこう人間対人外のバトルの方が燃えるのだ」

 

「……………箒。私は少しあなたを勘違いしていた」

 

「な、なにが?」

 

「私はてっきりあなたはアニメーションには否定的な人間だと捉えていた。けれど、あなたも私達と同じく同志だった。これまでの無礼な発言を許してほしい」

 

「い、いや、別に……その、なんだ。気にしていない」

 

実際、箒は中学の時点までは全くと言っていいほどアニメや漫画に興味はなかった。事の発端は将輝と中学時代の同級生の女子がアニメの事について親しく話しているところを偶然目撃したところだった。自分の知らない将輝の様子に箒の乙女パワーが覚醒。会話を合わせられる程度でもと思い、深夜アニメを見始めたものの、これが思いの外面白く、どハマりしてしまい、結局自分自身も見たい為にアニメを見るようになっていた。

 

「俺も最初はびっくりしたよ。箒がアニメ好きだったって知った時は」

 

「最たる原因はお前なのだがな」

 

「でも手段も目的にクラスチェンジしたから、一概に俺のせいとはいえなかったりするんじゃない?」

 

「ぐっ、否定できない……」

 

「………二人は付き合ってるの?」

 

「ああ。この二人は付き合っている」

 

仲良さげに話す二人を見て、ただならぬ関係であると感じた簪はどストレートにそう問いかける。その問いに答えたのは将輝でも箒でもなく、ラウラだった。

 

「そう。とてもお似合いだと思う」

 

「因みにこの男は先日女子を一人振ったのだが、さらに好意を加速させるという鬼畜な諸行を行っている」

 

「ちょっ⁉︎それ凄い人聞き悪いんだけど⁉︎」

 

「それは初耳だな…………まあどういう状況だったかは想像に難くないのだが。はぁ………全くお前というやつは。一体どんな特殊能力を持っているのだ」

 

魅了(チャーム)の呪いを常時発動している説が濃厚」

 

「俺は何処のランサーなんだよ。大体、それは一夏の特権だから」

 

「確かに。織斑教官も『あれは未熟な癖に妙に女心を刺激する』と言っていた。そういった事は私にはよくわからないのだが、まあお前が言うならそうなのだろうな」

 

出生や人生経験上、そう言った事には疎いラウラはどうでも良さそうにそう呟く。

 

「それはともかく、だ。私達は一体何の為に連れてこられたんだ?」

 

「ああ、その事だけど…………簪さん」

 

「………これ見て」

 

「な、なんだこれは⁉︎」

 

「こんな化け物じみた機体を私達だけで作ろうというのか?馬鹿げているぞ」

 

以前、将輝が見た設計図を見た箒とラウラはそれを見て、リアクションの大きさは違えど似たような反応を見せる。

 

「……正確には私達じゃない。主な事は整備課の人達に手伝ってもらう。私が三人にお願いしたいのは意識共有と戦闘経験。私と趣向が近く、かつISの戦闘経験が豊富なあなた達三人の手助けが私のIS完成にとっては最も重要」

 

「そういう事ならなんとかならなくもないが……」

 

「私の見立てならそのスペックで作るのはかなり厳しいと思うぞ」

 

「………わかってる。これはあくまで最初に思いついたもの、本当に作るのはこっちで四割は私だけでなんとか創った」

 

「創った⁉︎簪さんがか⁉︎」

 

「………とは言ってもまだ大まかな部分くらい。重要な細部はまだ全然触っていない」

 

「そうはいうが……」

 

箒の反応は当然と言える。新しく自分達で作る事を念頭に置いた機体ですら性能は第三世代の中でも高い。各国の研究者が必死になって作っているというのに簪は大まか部分だけとはいえ、一人で組み立てているのだ。その凄さは天才を姉に持つ箒だからこそ、よりその凄さがわかった。

 

「整備課のアテは?」

 

「………既に手は回してある」

 

「ならば問題はあるまい。完成までの大体の見通しは?」

 

「一ヶ月前後」

 

「一ヶ月前後か……………まぁ、何とかなるか」

 

ふと将輝の脳裏に浮かんだのは二度目のゴーレム襲撃とキャノンボール・ファスト。後者はともかく、前者では簪の奮闘もあって倒せるものだ。いくらかイレギュラーが起きていて、原作よりも専用機持ちの実力が高いため、倒せなくはないだろうが、それは相手の強さもそのままの場合だ。何よりどのイベントでもイレギュラーは起きている以上、楽観視することは出来ない。もしまた襲撃してくるであろうゴーレム達が自爆でもしようものなら今度こそIS学園は消し飛びかねない。

 

(流石に其処まではしないと思うが…………一応釘差すかな)

 

そう思い、将輝が携帯を手にした時、電話が鳴る。

 

その相手はーーーーー更識楯無だった。

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