憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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原作六巻〜未来からの来訪者〜
カワルミライ


「ごめん。全部俺の責任だ」

 

学園祭の終わった翌日。

 

生徒会室に集まった一年の専用機持ちと楯無の前で将輝は頭を下げた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで将輝が謝るんだ?別に何も悪くないだろ?」

 

一夏は戸惑いの声を上げるものの、それとは対照的に他の専用機持ちは沈黙を貫いていた。

 

「今回の作戦。主導権は殆どこっちにあった。もっと慎重に事を運ぶべきだった」

 

「いや、でもーー」

 

「まったくだ。今回の一件はお前にしてはいささか功を焦りすぎたと私は思う」

 

一夏が二の句を告げる前に、ラウラがピシャリと言い放った。

 

「……私もそう思う、かな。何時の将輝なら、多分もっと慎重にやってたと思う」

 

「……今回の作戦。穴は無かったのは事実。けれど、一つのイレギュラーで壊れるリスクがあった。その対策をせずに作戦を決行したのは、確かにミス」

 

そしてラウラに続くようにシャルロットと簪も言う。

 

「それもそうね。あんたにしては、ちょっと今回雑じゃない?ゲームでもねちっこい事してくる癖に今回はなんだかんだ実力行使だったわけだし」

 

時々ゲームをしては、将輝に上手い具合に嵌められる鈴からしても、将輝の今回立てた作戦がやや杜撰であった事は感じ取れていた。

 

箒やセシリアは目を伏せて何も言わずにいた。

 

想い人であるがゆえに擁護したい気持ちもあり、また作戦に参加した身としてはやはりラウラ達と同じ気持ちである為に発言するのを控えたのだ。

 

特にセシリアはわかっていた(・・・・・・)事とはいえ、敵のテロリストが姉妹機である《サイレント・ゼフィルス》を使用していた事にショックを受けていた。

 

「まあまあ。彼にも事情があるんだから、その辺りを聞いてみましょう」

 

やや重たくなっていた空気を変えるように楯無が仲裁に入る。

 

別に彼等の間で空気が悪くなっていたわけではないが、それでも多少は居心地の悪さもなくなるだろうと思っての計らいだ。

 

そして、楯無の言葉を皮切りに将輝が口を開く。

 

「前に言ったよな?俺はこの世界の事を知ってるって」

 

確認するような言葉に全員が頷く。

 

「でもさ、それにも限りがあるんだ。俺は全部知ってるわけじゃない。少なくとも、俺の持つアドバンテージは後二ヶ月しかない(・・・・・・・)

 

『っ!?』

 

全員が驚きの表情に包まれた。

 

それはまるで、いつかの再現のように。

 

「正確に言えばもう少し短いか。これから起きる出来事に先手を打てるのは後少しの間だけなんだ」

 

「……それが将輝が作戦を急いだ理由なのか?」

 

「うん。……でも、そのお蔭でミスるようじゃ、元も子もないけど」

 

自嘲気味に将輝は笑う。

 

自らのアドバンテージを活かそうとした挙句に、それを失うようでは元も子もない。

 

全ては早計だった。

 

或いはもっと早くに秘密を打ち明け、一つの綻びもない作戦を立てるべきだった。

 

何もかもが中途半端。

 

これでは必要以上に相手を警戒させるだけの行為でしかなかった。

 

「待て……二ヶ月程度だと?どういうことだ?」

 

「うん、それは私も気になるかも。将輝はこの世界の事を知ってるって言ってたよね?それって全部知ってるって事じゃないの?」

 

「それなら良かった。でも、そう都合の良いことばかりじゃない。俺がまだあっちにいたとき、インフィニットストラトス(この物語)は完結してなかったんだ」

 

「……って事は、あんたが知ってるのは途中までで、そこから先は何もわからないって事じゃない」

 

「そうなる。まぁ、前にも言ったように知ってても、俺がいる分相違点はいくつもあるわけだから、この後の展開はあんまり期待しないでくれ」

 

将輝がいる事で生まれた最大の相違点。

 

それは篠ノ之束が、完全に味方であること。

 

もちろん、手助けをするわけではないにしても、面白半分で彼女が敵に回らないという事は何より大きい。

 

姉妹間の関係を鑑みて、それはあえて口にしないものの、その分この後の展開が予測不可能になった事もまた事実であった。

 

「……大丈夫。こういう設定(能力)はよくあること。完全に未来を予測することは誰にも不可能」

 

「……一瞬、感銘を受けかけた俺が恥ずかしいよ」

 

どんなルビを振っているのか、予測出来た将輝は溜息を吐く。

 

真剣な場面でさえ、真剣な表情で平常運転の簪だが、実はそれなりに真面目に励ましたつもりだったりする。

 

「簪さんは置いておくとして……では、将輝さん。わたくしの姉妹機……《サイレント・ゼフィルス》についてですが……」

 

「……ごめん。俺が知る限り、こっちに戻ってきてはいなかったし、あくまでも俺の予想になるけど改造(・・)されてる可能性が高い」

 

「っ……そう、ですか……」

 

将輝の答えにセシリアの表情が曇る。

 

ある意味予期していたことだ。

 

あれだけ手際よくISを強奪した輩だ。そう簡単に取り返せるはずもない。

 

しかし、いざそう言われると、やはり来るものがあった。

 

何と言っても《サイレント・ゼフィルス》は《ブルー・ティアーズ》の妹であり、将輝の両親が手がけた機体なのだから。テロリストに好き勝手に使われて気持ちが良い筈などない。

 

「うーん……そうなると、将輝くんからの情報をアテにするのは、ちょっと難しいわね」

 

「今回の一件をあっちがどれぐらい警戒しているかにもよるけどな」

 

「まぁ、元々降って湧いたような話だったし、頼みの綱だったわけじゃないけど。なかなか痛いわね」

 

「だから、皆に謝らせてくれ。危険な目に遭わせておいてこのザマなんてーー」

 

「こーらっ。なんでも自分のせいにしないの」

 

楯無は手にしていた扇子で将輝の頭を軽く叩いた。

 

「確かに今回の作戦は少し急ぎすぎたのかもしれないけれど、元々私達は知らなかった(・・・・・・)のよ?それにこちらを警戒して、なりを潜めてくれるってことは当分来ないってこと。そう悪いことじゃないと思うわよ。ね?みんな?」

 

楯無の言葉に間を置かずして全員が頷いた。

 

確かに今回は色々と早すぎた。作戦が失敗した主な理由はそれだろう。

 

しかし、亡国機業が警戒心を高めるということはその分、襲撃してくる確率も下がるということに他ならない。

 

そして、遅れれば遅れるほどに専用機持ちは強くなっていく。予定通りに来ようが、それを遅らせようが、IS学園の人間にとっては好都合なのだ。

 

「はい、この話はここでおしまい。そろそろ生徒会の仕事もしたいから、後の事はこの強くて可愛いお姉さんに任せておきなさいな♪」

 

開かれた扇子には『才色兼備』の文字。

 

どちらにしろ、これ以上悔やんだところで仕方がないのも事実である。

 

どれだけ悔もうとも過去には戻れないのだから。

 

お開きになったということで、いつも通りの雰囲気に戻った事を確認して、楯無は一年の専用機持ちを生徒会室から退室させる。

 

扉が閉まる直前に『これからはさらに猛特訓が必要だな』というラウラの声が聞こえた事に苦笑しつつも、次いで聞こえた明るい声に気持ちの切り替えはできている事を確認する。

 

(そうよ。あなた達は強くおなりなさいな。ここから先は裏の人間(私達)の仕事なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?一夏の誕生日って今月なの!?」

 

「お、おう」

 

数日が経過した頃。

 

寮での夕食を、いつもの面々で摂りながら、何気なく言い放った一夏の一言にシャルロットが大きな声を上げた。

 

一夏としては何のことはないと思っていただけに、シャルロットのリアクションにやや驚いていた。

 

「い、いつ!?」

 

「九月の二七日だよ。それより、ちょっと落ち着けって」

 

「う、うん。ところで、それって日曜日だったよね?」

 

「日曜日だな」

 

「そっか……うん、そうだよね」

 

呟きながら頷くシャルロットを不思議そうに眺める一夏。

 

すると、斜め前でビーフシチューを食べていたセシリアが一旦食事の手を止めて、口を開いた。

 

「一夏さん。そういう大事なことはもっと早くに教えてくださらないと困りますわ。同じ専用機持ちであり、級友なのですから」

 

「お、おう。すまん」

 

「いえ、別に謝る必要はございません。わたくしも、もっと早くに聞いておくべきでしたし」

 

セシリアは純白の革手帳を取り出し、二七日の欄に二重丸を描く。

 

その他のところにもびっしりと予定が書かれていのだから、セシリアの几帳面さが見て取れる。

 

「そうか、貴様の誕生日か。未熟ではあるが、一応は戦友だ。私も祝ってやろう」

 

ラウラのやや上から目線の物言いにも一夏はさして気にしない。これもなんだかんだと言っても、いつもの事だからだ。

 

因みに将輝、箒、鈴の三人は既に知っているので話に食いつく事はないし、簪は割とどうでも良さそうにしていた……が、ある事に気付いた。

 

「……二七日って、『キャノンボール・ファスト』の日じゃ……」

 

「ああ、だから四時くらいからするんだ」

 

全員が「そういえば」という顔をする。

 

ISの高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』。

 

本来なら国際大会として行われるそれだが、IS学園では少し状況が違う。

 

市の特別イベントとして催されるそれに、学園の生徒達は参加する事になる。

 

とはいえ、専用機持ちと一般生徒の差は歴然であるため、訓練機部門と専用機部門に分かれている。

 

学園外でのIS実習となるこのイベントでは、市のISアリーナを使用し、臨海地区に作られたそれは二万人以上を収容できる。

 

「ん?そういえば、明日から『キャノンボール・ファスト』のための高機動調整を始めるんだよな?あれって具体的には何をするんだ?」

 

「基本的に高機動パッケージのインストールないしスラスターの増設とかだな。まぁ、俺の『夢幻』と一夏の『白式』、箒の『紅椿』にはそんなもんないけどな」

 

「うむ。だからすることと言えば、せいぜい駆動エネルギーの分配調節や各スラスターの出力調整ぐらいだろう」

 

「無くたって、あんた達のは十分に速いでしょうが……」

 

鈴はげんなりしつつ、そんな事を言う。

 

と言うのも、実は鈴の『甲龍』用高機動パッケージはこのままだと間に合わず、現状のまま挑むしかないのだ。

 

そうなった場合、ほぼ確実に負ける。

 

バトルでは機体の性能差はあまり関係なくとも、今回はある意味スピード勝負のチキンレースじみている。全員倒せば同じ、などという事はできないのだ。

 

「私のところは増設ブースターで対応するかな。元々速度関係は増設しやすいようになってるしね。『疾風(ラファール)』の名前は伊達じゃないって感じかな」

 

「っ……今の台詞、いい。今度、使わせてもらう」

 

シャルロットの言葉に何かを感じ取った簪は忘れぬようにとすぐにメモを取る。

 

その様子に将輝は『きっと大人になって羞恥に悶えるんだろうなぁ』と未来の簪に向けて心の中で合掌した。

 

「ラウラのところはどう?第三世代だけど」

 

「姉妹機である『シュヴァルツェア・ツヴァイク』の高機動パッケージを調整して使う事になるだろうな。装備自体はあちらの方が本国にいる分、他国よりも開発は進んでいる……いや、訂正しよう。イギリスの方が早かったか」

 

「そうですわね。『ブルー・ティアーズ』には高機動戦闘を主眼に捉えたパッケージ『ストライク・ガンナー』がございます」

 

福音戦の時にセシリアが搭載していた超高速戦闘下に特化した高機動パッケージ。もちろん、これの関係者には将輝の両親がいる。

 

「進んでいる、と言いましても、『ブルー・ティアーズ』の場合、BT適正の高いものがいなかった場合の保険と言った側面で開発当初から作成されていましたし、そう言った意味ではラウラさんの方が早いと思いますわ」

 

あくまでも作成に取り掛かるタイミングが早かっただけに過ぎない。

 

そういった趣旨を匂わせつつ、セシリアは紅茶を飲む。

 

「簪のISは……やっぱり厳しいか」

 

「……参加したいのは山々。でも、今回はパス」

 

絶賛機体開発中のため、簪は参加できない。もっとも仮に参加したとしてもおよそキャノンボール・ファストのような環境向きではない機体のため、かなり厳しい結果となっていただろう。

 

とはいえ、最も速くゴールしたものが勝つと言う性質上、この中で一番速い必要はないのでやりようはある。例えば競争相手を全員コースアウトさせるとか。

 

「みんなちゃんと考えてるなぁ……今度、楯無さんに相談してみようかなぁ」

 

「そこはあたしを頼りなさいよ。幼馴染みでしょうが」

 

「幼馴染みじゃないけど、私も、いるよ?」

 

何故か自分達をスルーして、楯無を頼ろうとした一夏を非難の目で見る鈴とシャルロット。

 

一夏としては、対戦相手に面倒を見てもらうわけにはいかないという気遣いのつもりだったのだが、案の定逆効果である。

 

とはいえ、一夏に乙女心を察しろというのが土台無理な話ではあるが。

 

「まったく……唐変木は置いておくとして。あんた達の生徒会貸し出しの件ってまだなわけ?」

 

「ん?なんか今は抽選と調整中とかなんとか言ってたよな、将輝」

 

「……ああ。出来れば、どの部活にも行きたくないんだけどな」

 

そういって、将輝は深々と溜息を吐いた。

 

結局、こっちだけは原作通りに『全部活動に男子の貸し出し』という結果に終わってしまった。

 

もちろん、抗議の声はスルー。過半数が賛成という民主主義の力に押しつぶされていた。

 

「しかも、半分ずつに分けずに俺達二人とも全部活動に行かなきゃいけないもんな。本当にあの人は何考えてるんだか」

 

「今に始まったことじゃないだろ……それより、この話に便乗して、何故か部活がやたら張り切りだした方が問題だぜ。あれじゃ、ちょっとだけお手伝い……じゃ、済まないだろうしな」

 

「「はぁ……」」

 

男二人。逃れられぬ現実にただ溜息を吐くだけだった。

 

余談であるが、部活に入っていなかった生徒はこれを機に軒並み部活動に入ったという。専用機持ちも例外ではなく、最初から剣道部にいた箒はともかく微妙に居心地が悪かった。

 

 

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