一人(ソロ)を好む竜騎士とドジっ娘騎士がパーティを組む!?   作:ジャック・オー・ワンタン

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第2話:ノルドの森

 ノルドタウン西部にある森林ダンジョン【ノルドの森】・・・。俺は鬱蒼と茂るその森の中をひたすら歩きながら今回の討伐対象の魔物を確認する。

 

「討伐対象はグリフォン。カテゴリーⅥ級。経験値は6000、報酬は25万ポンドか。悪くねぇな。」

 

報酬を見てやや満足げな表情を浮かべる。これだけあれば一か月は生活できるし何より好物の寿司や魚料理を食べられるのだから。

 

この世界は食うか食われるかの二択だ。人間だけの話じゃない。今こうして入っているダンジョン内のモンスターもカテゴリーが上の奴らに淘汰されていく。だからこそ皆、群れを率いるのだろう。

 

なんて愚かな行為だ。群れを成すことそれは即ち信頼してきた者の裏切りも覚悟しなければならない。そんな苦労をするくらいなら俺は一人で戦ってみせる。

 

「だからパーティを組む気はねぇ。」

 

自分に言い聞かせるようにそう呟きながら森の中を駆け出す。道中、目の前に飛び出してきた魔物たちを得物の【鬼丸国綱】で斬り伏せながらずんずんダンジョンの深くまで潜り込む。気が付けば日の光が全く差さない所まで辿り着き、徐々に強い魔物と弱い魔物が混在する複雑なエリアへ到達した。

 

「この辺までくればグリフォンが出てくるはずだ。恐らく今このエリアの推奨カテゴリーはⅣ。これ以上奥へ進めばこっちがやられちまう。念の為、【ジョーカー】には気を付けた方がいいな。」

 

得物の刀を手に俺は口元に付いた魔物を返り血を拭うと襲い掛かってきたゴブリン達を次々と倒していく。・・・鬱陶しいゴブリン共だ。ここはちょこちょこ出てくると聞いていたが余りにも出過ぎだ。初心者の冒険者が経験を積むには持って来いだが普通なら10分も持たないだろう。

 

「粗方ゴブリンは片付けたな。このままⅤのエリアまで進めばグリフォンが出てくるはずだ。・・・ん?」

 

ひと段落着いて先に進もうとした時だった。一人の少女が迫りくるゴブリンに対して必死の攻防を続けている光景が目に映る。

 

「はぁはぁはぁ・・・!このっ!!」

 

少女は懸命に自身よりやや大きい槍と盾を使いながらゴブリンを倒しているがその動きはどうもぎこちない。見るからに冒険を始めて経験が浅い奴だな。というか一生懸命ゴブリンを倒しているのはいいがコイツ、カテゴリーはいくつだ?

 

「えい!やあ!とりゃああ!」

 

傍から見るとふざけているようにしか聞こえない声を上げながら少女はやっとの思いで最後の一体を倒しきる。

 

「よし!これで経験値が溜まって・・・えぇ・・・」

 

自身のステータスを見て少女は愕然とする。俺はふと彼女のステータス表が目に入った途端、驚きと同時に呆れも出てしまった。名前はアイン・・・カテゴリーはⅠ。冒険者を始めたてとかのレベルじゃねぇ。なんでそんな格下の冒険者がここをうろついてんだ。それに・・・

 

「ゴブリンは経験値が低いから多く倒しても無駄だ。」

「えっ?」

 

俺はなんてお節介なのだろうか?思わず少女にそう声をかけてしまう。あぁ、めんどくせぇ・・・

 

「お前、見るからに初心者だな?こんなところにうろついていたら死ぬぞ。」

「えっ?死ぬ!?お、脅しですか!?」

「そうじゃねぇよ!真面目な話だ。」

 

ダンジョンの構造を全く理解していない少女(バカ)に溜息を吐く。兎に角こんな命知らずを放ってはおけない。先ずはコイツを最下層・・・少なくとも推奨カテゴリーⅡのエリアまで連れ戻した方がよさそうだ。

 

「兎に角、ここは危険だ。Ⅱのエリアまで戻れ。」

「・・・えっと・・・Ⅱのエリアって何ですか?」

「バカかお前は!!」

 

ダンジョンのエリアも知らない少女に俺はわなわな震えてしまった。なんなんだコイツは!?何も知らないにも程がある!よくもここまで生き抜けたレベルだ!・・・どうする?こんな馬鹿、助ける義理はねぇんだがな・・・

 

「ご、ごめんなさい・・・本当に知らないんです。」

「よくここまで生きて帰れたなお前は。」

「えへへ~」

「褒めてねぇよ!!!」

 

照れる少女にまたしても俺は怒る。くそっ!コイツと話していると調子が狂う。一体何なんだ?見た感じコイツも一人(ソロ)みたいだが・・・なんでギルドはこんなバカを平気で放っておけるのか神経を疑う。・・・と思っていたその時だった。

 

「はっ!・・・おい!静かにしろ!」

「えっ?」

 

不意に聞こえた物音に俺は直ぐ反応し、少女の前に出る。直後、鷲のような不気味な鳴き声が聞こえると地面が揺れる程の足音と共に巨大な影が俺達の前に現れた。

 

「はえっ!?」

「あれは!!」

 

目を疑った。俺達の前に現れたのは今回の依頼の討伐対象である四足の巨大な鷲の魔物・・・グリフォンだった。

 

◇◇◇

 

「おいおい・・・嘘だろ!?」

 

目の前に現れたグリフォンを見て俺は冷や汗を流す。なんて事だ。まさか討伐対象が【ジョーカー】として出てくるなんてな!!

 

【ジョーカー】とは推奨カテゴリーよりも遥かに格上の魔物が出てくることを言う。このエリアの推奨カテゴリーはⅣ・・・つまり、Ⅵ級のグリフォンはこの辺の魔物より遥かに格上ということになる。

 

俺一人なら問題ないのだが状況が状況だ。

 

「お前は逃げろ!コイツにお前は勝てない。」

「えっ!で、でも!」

「早くしろ!」

 

少女に対して怒鳴る勢いでそう言うと俺は鬼丸国綱を鞘に収めて背負っていた和弓と矢を1本取り出す。

 

それを見たグリフォンは高らかに翼を広げて威嚇すると甲高い雄叫びをあげた。

 

攻撃はしてこない・・・こっちを挑発してんな?舐められたものだ!

 

矢を汲み、弦をゆっくり引くとグリフォンの眉間を見つめ、集中する。・・・よし!そこだっ!

 

放った矢はまるで風すらも斬る速さでグリフォンに迫るも直前で奴は動いてしまい、外れてしまった。

 

「チッ、外れたか。」

 

舌打ちするのも束の間、先程の俺の攻撃で怒ったグリフォンは前脚を上げながらこちらに攻撃してきた。

 

「まずいっ!下がれ!」

「ふえっ!?うわぁあっ!」

 

未だキョトンとしている少女を抱き抱えながら攻撃を回避するとそのまま転がって安全な場所まで退避する。

 

「ご、ごめんなさい!あ、ありがとうございます。」

「礼を言う暇があんなら早く逃げろ!」

 

少女にそう言った俺は再び武器を刀に変えてグリフォンと相対する。この間合いならやつを倒せる!・・・ん?なんだ?

 

「とりぁあー!!」

「おい!やめろ!」

 

力無い声が聞こえ、振り返ると少女がグリフォン目掛けて槍を振り上げながら駆け出した。

 

あの馬鹿!死にてぇのか!?

 

案の定、攻撃が通じるどころか硬い羽毛によって槍は見事に折れてしまった。言わんこっちゃないな。

 

「えっ!?折れた!?わあっ!」

 

グリフォンに突き飛ばされこちらまで飛んでくる少女を俺は振り払って地面に倒した。

 

「邪魔をするな!」

 

そう怒鳴り声を上げ、グリフォンに再び顔を向けると勢いよく駆け出して刀に炎を纏わせる。

 

こうなったら一気に決めるしかねぇ!

 

「焔緋(ほむらび)!」

 

炎を纏った刀でグリフォンの右翼に袈裟斬りすると翼は見事に分かれ辺りに鮮血とグリフォンの雄叫びが広がる。・・・よし!トドメだ!

 

地面を滑りながら後退し、俺は刀を鞘に収めると炎のオーラを身体に纏って巨大な竜の幻影を創り出した。

 

竜騎士が唯一使える能力【画竜点睛(がりょうてんせい)】である。

 

「我が祖先、炎竜ファフニールよ!悪しき魔物を焼き尽くせ!!」

 

ファフニールの幻影はそれに呼応するかのように大きな口を開け、グリフォンを炎で包み込むとその巨大な身体は一気に塵となって消えるのだった。

 

「やっと落とせたな。」

 

消滅したグリフォンを見て、俺は依頼を確認すると【討伐】の文字が浮き出て経験値が入る。

 

冒険者はこうやって魔物を倒し、経験値を手に入れて強くなる。経験値が溜まるとカテゴリーが上がり、更に強くなることが出来るのだ。

 

パーティだと経験値が分割されてしまうが俺の様に一人であれば経験値を全部自分のものに出来る。リスクはあるが俺にとっちゃもう慣れっこだ。

 

「よし、ギルドに戻るか。」

「あっ!ちょ、ちょっと待ってください!」

 

依頼を完了し、ダンジョンから引き上げようとすると少女に呼び止められる。コイツ、まだ居たのか。

 

「なんだ?」

 

俺は少女をギロッと睨むと彼女は怯むことなく意を決して尋ねてきた。

 

「どうしたら貴方みたいに強くなれますか?」




登場人物紹介
アイン
所属スート:スペード【水属性】
職業:騎士
カテゴリー:Ⅰ
好物:パン、ブラートヴルスト(ソーセージ)、ポテトサラダ
イメージカラー:青
モデル国:ドイツ
本作のヒロイン。年は16歳。明るく努力家であるがいつもドジして失敗している。おっちょこちょいな一面もあり何もない場所で何故か転ぶこともしばしばある。この性格が災いしてか未だにパーティに入れず一人で自分と同じカテゴリーのゴブリンを倒す日々を過ごしているがなかなか成長せずにいる。

青を基調とした現実世界でいう中世ドイツの騎士のような恰好をしており、華奢な容姿に相応しくない無機質な鎧とマントに身を包み、やや大き目な盾と槍を扱う。腰には伝説の聖剣バルムンクを装備しているが上手く扱えず鞘から抜くことができたりできなかったりする。

祖父が凄腕の冒険者であり、その祖父のような冒険者になる事を夢見ている。
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