一人(ソロ)を好む竜騎士とドジっ娘騎士がパーティを組む!?   作:ジャック・オー・ワンタン

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第5話:芽生える絆

「・・・何の用だ?」

 

俺はいつもの態度を取り戻し、バジルを睨む。コイツに関しては本当にめんどくせぇ。さっさと失せやがれ。

 

「何の用って・・・決まってるじゃないの。お前を勧誘しに来たんだ。」

「懲りねぇ奴だな。何度聞かれても俺はテメェとは組まねぇぞキザ野郎。」

「随分強気だねぇ。俺一応、アンタより格上なんだけどさぁ。」

 

バジルの言葉に思わず舌打ちをする。結局こいつも求めてんのは強さじゃねぇか!”アイツ”と全く同じだ。俺にトラウマを植え付けたアイツと!!

 

「ま、待ってください!!」

 

するとアインが俺とバジルの間に入って両手を広げた。

 

「ダ、ダメです!ジークさんは私とパーティを組んでるんです!だ、誰にも渡しません!」

 

その言葉に俺は眉を上げる。しかし、バジルは先程とは打って変わり冷たい目線で見下ろすと彼女はやや怯んでしまい、微かに華奢な身体を震わせた。

 

「なんだお前。・・・あぁ、一生ゴブリンを倒してる冒険者ってアンタか?・・・お前がコイツと?もっとマシな嘘を付けないの?」

「う、嘘なんかじゃありません!」

「へぇ?だとしたらお前、見る目無いよ。こんな雑魚さっさと・・・」

 

バジルが”雑魚”と言った瞬間・・・俺はそれに反応するかの如く素早い動きでアインを退かせると奴のみぞおちを刀の頭(かしら)で勢いよく殴った。

 

不意を突かれた馬鹿(バジル)は殴られたみぞおちを抑えながら情けない声を上げて蹲ると痛みに悶絶して身体を震わせた。・・・何、座ってんだ?

 

俺はこれだけで終わらず無言で奴の首元を掴むとそのまま片手で締め付けて追い打ちをかけた。ギルドにはバジルの苦しむ声が響き渡り、誰もが有名な冒険者が圧倒されている様を目撃して恐怖を覚えていたがそんなことは俺に関係なかった。

 

「雑魚が・・・なんだ?もう一回言ってみろ?あぁ?誰に向かって雑魚って言ってんだ?」

「・・・あぐっ・・・ま、待て、わ、悪かった・・・うぐううっ!?」

 

謝るバジルの首元を容赦なく更に強く握り締める。コイツにはこれくらいの灸をすえた方がいいが・・・やっぱ今、ここで首を落とすか?そう思いながら片方の手で刀に手を掛けた瞬間。

 

「ジークさん!もうやめてください!もう・・・いいんです!私、気にしてないので!」

 

お前はなんでそんなに優しい奴なんだ。必死に止めてくるアインの言葉に免じて俺はバジルを開放すると奴は咳き込みながらずれ落ちた帽子を拾って後ずさりする。

 

「命拾いしたな。次、その面を見せたらお前の首がどうなっても知らねぇぞ?」

「ひっ・・・ひいいい!わ、悪かったって!!悪かったぁぁぁ!!!」

 

恐怖に満ちたバジルは慌てて駆け出し、逃げるようにギルドから出て行った。これで流石に懲りただろう。次は本当に無いがな。

 

「どうして・・・」

 

するとアインの声が聞こえ、彼女に振り向いた瞬間、驚愕する。彼女は今にも泣きそうな顔でこちらを見つめていた。

 

「どうしてあんな怖い事したんですか?」

「お前を・・・馬鹿にされたからだ。」

 

あぁ、なんでこんな時に本音は軽く出ちまうんだ。一人(ソロ)で活動してから初めてかもしれない。誰かを馬鹿にされて本気で怒ったのは。今まで俺は他人に関心が無かった。他人なんてどうでもよかった。

 

でも今、俺はコイツを馬鹿にされて怒った。アインに関心があるから怒ったんだ。なんでだろうな?こんなロクでなしの為に怒る必要はねぇのに・・・馬鹿にされたことが許せなかった。

 

「ジークさん・・・。そんな事の為に・・・」

「お前は事実を言ったんだ。それを根拠もないのに嘘と決めつけてお前を馬鹿にしたアイツが悪い。それだけだ。」

 

彼女にそう答えて歩き出す。

 

「ダンジョンに行くぞ。アイツを本当の意味で見返す為に俺はお前を強くしなきゃいけねぇ。だから気合入れてやれ。お前には・・・俺が付いてるからよ。」

「・・・はいっ!」

 

パーッと笑顔を見せ、目を輝かせたアインはぎこちないながらも少し逞しくなった足取りで俺の後を付いてくる。

 

ありがとよ。こんな俺に付いてきてくれて。そう心中で呟くと俺は密かに口元を上げた。

 

どうやら楽しくなりそうだ。コイツとの冒険は。

 

◇◇◇

 

ノルドタウン北東部にある洞窟ダンジョン【ノルド洞窟】。ここに入った俺とアインは今回の目標を倒すべく進んでいた。

 

今回倒す敵はカテゴリーⅢ級ビッグ・オークである。グリフォン程ではないが俺達よりも頭抜けてデカいオークの個体だ。

 

「経験値は1500、報酬は5万ポンド。おい、お前の経験値はあとどれ位だ?」

「えっと・・・2250です。」

 

アインから残りの経験値を聞いて俺は深く頷いた。カテゴリーⅠの最大経験値は3000、このビッグ・オークを倒したら俺と経験値を分けて750。つまりコイツとの戦闘でアインのカテゴリーは昇格する。・・・にしてもここまで良く経験値を貯めたものだ。

 

「よし、ビッグ・オークはカテゴリーⅢエリアにいる。その階層まで向かうぞ。」

「は、はい!・・・ってわあっ!」

 

アインは歩き出した瞬間、またも何も無い地面で派手に転んでしまう。・・・おいおい、またかよ。

 

「お前なぁ・・・なんでそんなに転ぶんだ。」

「ご、ごめんなさい〜わざとじゃないんです!」

「はぁ・・・怪我してないか?」

「あ、はい!大丈夫です!」

 

彼女の手を取り立ち上がらせた瞬間、妙に地面が揺れていることに気付く。・・・地震?いやこれは足音か?辺りを見渡しながら警戒した瞬間・・・洞窟の奥から丸々太った緑色の巨人が太い棍棒を手に現れる。コイツだ!コイツが今回の標的、カテゴリーⅢ級魔物(モンスター)ビッグ・オークだ!

 

「あ、うわあぁ・・・」

「狼狽えんな!!武器を構えろ!」

 

ビッグ・オークの巨大さに足元がすくんだアインを一喝する。・・・戦え!アイン!お前は爺さんの様な強い冒険者になるんじゃなかったのか!?

 

◇◇◇

 

 私はビッグ・オークを見上げた瞬間。恐怖のあまり思考が停止し、身体が動かなくなる。大きい、強そう、あんなのに勝てっこない。そんな自分の声が脳裏に聞こえてくる。・・・無理だよ。あんな大きな巨人なんか倒せないよ。カテゴリーⅠの私なんかじゃ誰にも・・・

 

「アイン!!!!」

 

自分の名を呼ぶ声で我に返り、声の主を見るとジークがこっちを見ながらビッグ・オークを引き付けていた。

 

「しっかりしやがれ!!お前には俺が付いてるって・・・言っただろッ!!!」

 

その言葉にハッとする。そうだ・・・私には。ジークが居るんだ!!勇気を・・・勇気を出すんだ!私!!

 

意を決して顔を上げると震える身体を動かして身構える。私は・・・戦える!!恐れちゃダメだ!!お祖父さんの様な強い冒険者に・・・

 

「私はなるんだ!!!」

 

刹那、私の腰から眩い光が放たれ、辺り一面を照らし始める。思わず腰に顔を向けるとお祖父さんの形見の剣が白く輝いていた。

 

「なんだ?」

 

ジークとビッグ・オークもまた光に反応して私を見る。お祖父さん!これって!!・・・今ならコイツを鞘から抜けるかもしれない!!

 

息を呑み、持っていた盾と槍をその場に投げ捨てると剣に手をかけ、力を入れる。

 

お願い!抜けて!!

 

その願いに呼応するかの様にあんなに硬かった剣はすんなり鞘から抜けるとまばゆい光沢を放つ刃を露にして私の手に納まるのだった。




登場人物紹介
バジル
所属スート:クラブ【風属性】
職業:銃騎士
カテゴリー:Ⅶ
好物:ガレット、キッシュ、フォアグラ等の高級料理、ブルゴーニュワイン
イメージカラー:緑
モデル国:フランス
カテゴリーⅦ級の冒険者パーティ【フォーカード】を率いる冒険者。年は30歳。自信家で自分やメンバーの腕を信用しており、その腕で多くのモンスターを倒してきた。全てのジョブをパーティに集めることを目標にしており、世界でも希少な職業「竜騎士」に属するジークを勧誘するが断られてしまう。

緑を基調とした現実世界でいう17世紀のフランス銃士の様な格好をしており、緑色の羽付き帽子がトレードマーク。連射性の高いマスケット銃を巧みに扱い、銃剣を付けて接近戦もこなす。
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