オラ!ご注文のキツネうどんだ!!!   作:コントラポストは全てを解決する

10 / 10
食器バイキング。略してショッキング

 

「えっ !? こーくん、今日も出かけるの !? 」

 

 ラビットハウスが開店する三十分前。

 店中に心愛の声が響いた。

 

「ごめんな、最近任せっきりで。外せない用事があってさ」

「大丈夫だけど……今日は何してくるの ? また学校まで出張とか ? 」

「いんや、今日はただのプライベートな用事。俺ん家の食器を買いにね」

「そういえば、こーくんってどこに住んでるの ? 夜は気づいたらいなくなってるし」

「道路の向かいに、レンガ建ての倉庫みたいな建物があるじゃん ? あれ」

「ほんとにチノちゃんとお隣さんなんだね。良いな〜」

「ここあはここに住んでるだろ」

「ロマンだよ ! ロマン ! 」

 

 鼻息をフンスフンスと鳴らしながら、心愛は光良の境遇を羨んでくる。

 

「良いな〜、お隣さん。お泊り会とか出来るし、家の中からメールで連絡とかも……ロマンチックだなー」

「うちに住むか ? 」

「大丈夫 ! わたしは香風家の人間だから ! 」

「勝手に籍を置かないでください。それに、昨日ホームシックになってパンを貪っていたのはどこの誰ですか」

「うぐっ……。ち、チノちゃんが添い寝してくれれば、寂しさも吹っ飛ぶんだけどなー……」

「しません」

「そこをなんとか ! 」

 

 チラ、チラ……っと、これ見よがしに智乃にアプローチをしかける心愛だが、あえなく撃沈し倉庫へと駆り出された。

 

「コウさんも、あんまり店を空けないでくださいね。ココアさんがいるからって」

「あはは……いやー、人手があるってだけで安心しちゃってさ。明日からちゃんとするよ」

「本当に頼みますよ。コウさんがいないと……」

「も、もしかして……寂しいとか ? 」

「いえ、店が普通になるので。なにか、違和感というか」

「俺、いない方が良くない…… ? 」

「必要ですよ。自営業は個性がなきゃやっていけないので」

 

 まさかの装飾品扱い。

 智乃が鬼嫁からブラックプレジデントに進化してしまった。どう見ても暗黒進化。

 

「うぅ……酷い……」

「時間、大丈夫なんですか ? 欲しいお皿、売り切れちゃうかもしれませんよ」

「うぅ……行ってきます……」

「はい、行ってらっしゃい」

 

 例えようがないほどのどんより顔で、光良はトボトボと店を後にした。

 

 光良を見送ったあと、少し俯いたままカウンターへと足を運ぶ智乃。

 光良がいてもいなくても、店の営業はやらなければならない。

 

「素直じゃないのぉ……」

「別に……拗ねてるわけじゃ……」

 

 ぷくーっと膨れる智乃の頬。

 頭の上という兎目線でもよくわかる。

 心なしか、皿を拭く手つきも少し荒かった。

 

「ち、チノちゃん !!! ごめんなさい ! またお皿割っちゃった ! 」

 

 そんな不機嫌な智乃の元に、ドタドタと忙しなく走る心愛が現れた。

 また、皿を割ったらしい。そろそろ割った枚数が二桁に行きそうだ。

 

 このままでは、店のお皿が足りなくなってしまう。

 

「新しいの、買いに行きましょうか」

「チノちゃん、なんで嬉しそうなの……? も、もしかして、怒りがピークに……」

「早く準備してください。今日は午前休にします」

「うぅ……ごめんなさい……」

「おねーちゃんがいつまでもクヨクヨしないでください」

「えっ !? おねーちゃん !? もう一回言って !!! 」

「置いて行きますよ ? 」

「チノちゃ〜ん…… ! 」

 

 半べそをかいた心愛をお供に、智乃は食器屋目掛けて歩き出す。

 頭の上から「本当に素直じゃないのぉ……」なんて声が聞こえた気がした。

 

 

 ◇

 

 

 カップル用プレートと書かれた、半分に割れた皿に目をつけた。

 なんとなくの使用感を感じるため、光良は手に持って確かめてみる。

 おそらく、良い感じの皿だ。

 

「シャロちゃん……! 」

「買いませんよ」

「ちぇ〜。これなら共用感出て良いと思ったのに」

「そもそも、お皿の体裁を成してないじゃないですか」

 

 お出かけ相手のシャロには却下を貰い、カップルプレートは無事商品棚に戻された。

 

「というか、今日はお互いに食器を買いに来ただけなんですから。共用なんて気にしなくて良いんですよ」

「いや〜、バラバラで買ったらスタンプカードがそれぞれにしかつかないしさ。まとめて買ったらスタンプ2倍」

「それ、私か先輩のどっちかのスタンプが付かなくないですか ? 」

「常連のよしみで特別だよっておばちゃんが言ってた」

「それを先に言ってください」

 

 瞬間、シャロの目が節約の主婦が如く燃え上がる。

 

「さっきのカップルプレートを買ったら、追加でスタンプ5個くれるってさ」

「カップルじゃないので遠慮しておきます」

「え〜。でもほら、割れた半分を体につけて、お皿が刺さったみたいに出来るし」

「何に使うんですか」

「肝試しとか…… ? 」

「先輩もピンと来てないじゃないですか。あと、買わない物をあんまりベタベタ触らないでください」

「手厳しい……」

 

 相変わらず母親のように小言を垂れてくるシャロ。

 スーパーのパック寿司を触っていた幼き日を思い出してしまう。

 

「はぁ……しょうがないですね。私を説得出来たら買っても良いですよ」

「ほんと !? 男に二言は無しだからね ! 」

「こっちは女ですけどね」

 

 そうして、ゴング代わりと言わんばかりに入店ベルの音が響いた。なんて気の利いたベルだろうか。

 

「そうだねー、やっぱりカップル用だから仲良しさが前面に──」

「店をほっぽって女の子をすけこますとは、随分と偉くなったんですね──コウさん」

 

 レビュー用の営業スマイルで固まったまま、硬い動きで店の入り口へと顔を向ける。

 そこには、見たことない怖い笑顔で笑ってる智乃がいた。

 

「ち、ちち、違うんだちーちゃん ! これは別にナンパしてるとかじゃなくてね ! 」

「なら、そちらの方はどなたなんですか」

「ほら、前に話した友達のシャロちゃん ! カップの貸し借りしてる友達 ! 」

「は、はじめまして。桐間紗路です。先輩にはいつもお世話になっていて……」

「ご丁寧にどうも。香風智乃です。うちのコウさんがいつもご迷惑をかけているようで、すみません」

「だからね ? ほら、違うでしょ !? 」

「なにも違わないじゃないですか」

「違うよ !?!?!? 」

 

 智乃の不機嫌が加速した。

 訳もわからず、言い訳のような弁明が長々と続く。

 ペラペラとまくし立てるような早口は、光良の見た目と合わさり怪しさ全開だ。

 

「コウさんなんて知りません」

「うわーん !!!! 」

 

 KOのゴングが如く鳴る店のベル。

 ……っと、思ったら、光良はそそくさと店に戻ってきた。

 

「スタンプカード、シャロちゃんに預けとく……」

「は、はぁ、わかりました。あの、ハンカチいりますか ? 涙、すごいですよ…… ? 」

「武士に情けは不要……!!! 」

「千夜みたいなこと言ってる……」

 

 光良はもう一度悲しみにくれ、全力ダッシュで店を出て行った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

英雄になれない元勇者(作者:ダンまち=スキー)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

異世界に召喚されて邪神を討ち滅ぼした勇者。▼しかしそんな彼を待ち受けていたのは元の世界に帰れないという最悪の結末。家族にも友人にも会えず絶望していた彼に対し、それを哀れんだ女神が提案したのは、本来なら存在したナニカが失われた不完全な世界への転生。▼主人公(ベル・クラネル)の存在しない世界で主人公(ベル・クラネル)と同じ容姿を与えられた元勇者は、英雄を目指し迷…


総合評価:6311/評価:8.21/連載:26話/更新日時:2026年06月01日(月) 09:10 小説情報

ようこそ最強ゲーマーのいる教室へ(作者:現魅 永純)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼ 空のいない白▼ 白のいない空▼ 二人で一人ではない、たった一人で両翼を宿す存在。▼ 空間認識能力・動体視力・演算能力・記憶力・心理掌握───etc.▼ 人に許された数多の能力を、人には許されざる領域でその身に宿し産まれ落ちた。▼ 何者にでもなれた才禍の怪物は、知らぬ誰かをなぞる様にゲームの世界へ魅入られた。▼


総合評価:6490/評価:8.7/連載:14話/更新日時:2026年08月07日(金) 12:00 小説情報

いつからここが尸魂界だと錯覚していた? (作者:yvrararara)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

「私が天に立つ(※友達たくさんできるかな。)」▼現代日本で平凡な生活を送っていたはずが、目を覚ますと『BLEACH』の絶対的ラスボス・藍染惣右介(5歳)に転生していた。▼霊力も斬魄刀もない『よう実』の世界で彼に与えられたのは、完璧な肉体と頭脳、そして普通の言葉が勝手にラスボス風ポエムに変換される理不尽な呪いだった。▼※Geminiを利用して加筆修正しています…


総合評価:15960/評価:8.4/連載:135話/更新日時:2026年08月07日(金) 21:59 小説情報

転生ハンターがダンまちをモンハン世界だと間違っているまま黒竜を狩る話(作者:シャリ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

さてはミラボレアスだなオメー


総合評価:22371/評価:8.79/完結:9話/更新日時:2026年08月05日(水) 19:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>