オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
土曜バイトのリゼが出勤して最初に見たのは、髪がボサボサの光良だった。
「お前……どうしたんだそれ……」
「愛しのちーちゃんからお泊りをせがまれて、ここに一泊したんだ。色々あってこうなった」
「端折りすぎだ。気になるから全部話してくれ」
「ここあの提案で3人一緒に寝ることになったんだけどさ。朝起きたら、寝ぼけたここあが俺の髪を食べてた」
「戻らないのか ? 」
「これでも大分戻した方」
『これはこれで面白い』とサムズアップを見せる光良を横目に、店の奥からチラチラとこちらを盗み見る心愛。
リゼは呆れた目を向けた。
「ココア……」
「違うのリゼちゃん !!! こーくんの頭、昔寝る時に抱いてたぬいぐるみの匂いに似てて……! 本能が……!!! 」
「いや、流石に限度があるだろ……。普通なら殴られてるぞ」
「うぅ……ごめんなさい……」
「リゼも食べる ? 」
「脳みそまで食べられたのか ? 」
「ひどない ? あと怖っ」
顔を真っ赤にしながら弁明する心愛。どうやら自分でも恥ずかしいことをしたと思っているらしい。
光良は光良だった。
「相変わらずの芸人魂だな」
「唯一の取り柄なので。それに、リゼも今日は面白そうなの持ってるじゃん ? 何そのリュック」
「学校の教科書だよ。もうすぐテストだし」
「あ〜、テストね。はいはい、テスト。頑張ってね〜」
テストと聞き、そそくさと逃げ出す光良。
刹那、逃げる光良の肩をリゼが掴む。
「お前……まさかまた赤点を」
「いやいやいや ! 全然まったくこれっぽっちも ! リゼのおかげで平均点を踏ん張れていますから !!!少なくとも高校上がった小テストは全部合格 !!! 」
「なら、その大ぶりな反応はなんだ ? 言ってみろ」
「いえ、なにも ! 」
汗をダラダラ垂らし、拭けない口笛を吹く光良。
あまりの怪しさに、リゼは光良を羽交い締めにする。よその人が見たら誤解を招きそうな光景だ。
「こんにちは〜。やってる〜 ? 」
「あっ、千夜ちゃん ! いらっしゃい ! シャロちゃんも ! 」
「こんにちは。それで……どういう状況 ? 」
「えっとね……」
カクカクシカジカ、心愛は事の発端を語った。
「はぁ……コーラ先輩、正直に話した方がいいですよ。テスト1週間前なのに何も勉強してないって」
「なんだと ? 」
「ヤダヤダヤダ ! ! ! リゼの家に連行されるのやだ ! 地獄の軍隊ゼミはヤダ !!! 」
「おまっ……それが高校生の姿か !!! 」
「うわーん……! 」
ガチ目にボロボロと泣き出し、男子高校生とは思えない無様を晒す光良。
「そうやってサボりまくった結果、受験の時に地獄を見ただろ」
「地獄を見せたのはリゼじゃないか……! 俺のプランなら今頃合格点ギリギリで受かってたはずなのに……! 」
「そういう甘えた考えが死を招くんだ。戦場じゃ生きていけないぞ」
「アイアム、ノットソルジャー ! ベリーベリーピースヒューマン ! ファッキューブートキャンブ ! 」
今までの2人からは考えられないほどのヒートアップ。
「あれ、なんて言ってるの…… ? 」
「『俺は平和主義者だ。お前みたいなクソを煮詰めたようなエセ軍人に負けたりなんかしない』ってところかしらね」
「ほう、言うようになったじゃないか」
「そこまで言ってない…… ! ! ! 冤罪誤訳だ ! ! ! ! 」
誰か助けてー……と、情けなく泣きながら、光良はどんどんリゼに喧嘩を売っていく。
「今日のリゼちゃん……なんか当たりが強いね……」
「出会った頃はあれが普通だったらしいわよ」
「そうなの !? 」
「コーラ先輩が言うにはね」
まさかリゼと光良が不仲スタートだったとは。
思わぬ情報に心愛は息を飲んだ。なんだか目の前の光景が、不良映画の喧嘩シーンに見えてくる。
「騒がしいですね……。コウさん、今度は何をしでかしたんですか ? 」
「主文あとまわしで俺のところに来ないで……?」
「なら、リゼさんが犯人だと」
「俺が……犯人だよ……!!! 」
「やっぱり」
信用のしの字もない。もう流す涙は残っていなかった。
「光良に勉強を教える時が来たぞ」
「あぁ、そういう事ですか」
「助けてちーちゃん ! このままだと俺、ちーちゃんと離れ離れになっちゃう ! 」
「チノからも何か言ってやってくれ。なに言っても逃げようとするんだ」
リゼに言われ、智乃はため息を吐きながら考える。
なにか、光良に聞きそうな言葉はないか。
「……なら、一緒にしますか ? 図書館にでも行って」
「えっ、する !!!! 」
リゼの羽交い締めをぬるりと抜け出し、どこに隠していたのか勉強道具が入ったであろうカバンを持ち出す光良。
「今日は店をお休みにします。皆で勉強会をしますよ」
「えっ、デートじゃないの…… ? 」
「次のテストで全教科百点だったらしてあげますよ」
「ほ、ほんとに ? あのちーちゃんが、俺と……デート…… ? 」
宇宙猫になったあと、光良はリゼのもとに向かい床に頭を擦り付けた。
「お願いします、リゼ大佐 ! 俺を…… ! 天々座ブートキャンプにぶち込んでください ! もう逃げないので ! ! !」
「いや、普通に図書館行った方が良いだろ」
「あれー……? 」
やる気を出したらリゼが萎えた。
どうやら、勉強をするならどこでも良かったらしい。
何のために土下座をしたのか、光良は今一度尊厳について振り返った。