オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
図書館へやって来た光良一行。
光良はリゼに捕縛され、なぜか付き合ってくれたシャロと一緒に、みっちりと勉強を仕込まれていた。
「こーくんって、勉強が苦手そうには見えないんだけどな」
「別に苦手ではないですよ。手を抜くだけで」
「手を抜く……? なんで ? 」
「さぁ ? ただ、昔から『勉強なんていつでもできるし、今はラビットハウスの力になりたいんだ』とか何とかよく言ってました」
「良い理由に聞こえるけど、リゼちゃんはなんで厳しくしてるんだろ」
「昔は細かい事情を知らなくて、『出来るのに手を抜く人』って思ってたらしいです。だから、性根を叩き直してやるーって」
「誤解、解けたんだ。よかった〜」
「色々ありましたからね」
少し遠い目で語っているのは心愛の見間違いか。光良が遠くにいるので、おそらく見間違いだろう。
「光良さんってチノちゃんにゾッコンよねぇ。何度か甘兎庵に来ないかヘッドハンティングしてたんだけど、ぜーんぶ『ラビットハウスがあるから』って断られて。ラビットハウスとチノちゃんって同じ意味でしょ ? 」
「そんな事してたんだ……」
「油断も隙もあったものじゃないですね……」
「うち、いつも人手不足だから」
「言ってくれればココアさんをあげたのに」
「チノちゃん !? 」
「冗談です」
マジな空気感が漂っていた事に突っ込むべきか悩む心愛。
大好きな妹の人身売買を止めるべきか、受け入れるべきか。
「心愛ちゃんもありね」
「そ、そうかな ? こーくんに比べたら頼りがいとか色々ない気が……」
「良いのよ。可愛い女の子はそこにいるだけで良いんだから」
「こーくんが可愛くないみたいな……」
「コウさんを可愛いと思ってるんですか……? 」
「そんな信じられない物を見る目で見なくても……」
化け物を見る目でドン引きされてしまった。
てっきり、皆も同じ考えだと心愛は思っていたのだが。
「ほら、余裕そうに見えてよく慌てるところとか、撫でると気持ちよさそうにしてくれるところとか」
「それ、ずっと続けてるとメグさんみたいになりますよ。今すぐやめてください。本当に」
「だ、大丈夫だよ。そんな気持ち感じたことないし……」
「メグさんもそう言って……結局ああなったんです……! 」
図書館なので声は抑えつつ、それでも精一杯の講義を智乃は披露した。
噂をすれば、リゼ達の方にメグの影が混ざって──
「えっ、メグさん……? 」
「やっほー、チノ。って、どうしたんだ ? おばけ見た時みたいな顔して」
「ま、マヤさんまで……。どうして……? 」
「いや、二人で勉強しに来たんだけど、コンたろー達を見つけてさ。こっそり行って驚かしてやろーかなって。メグはあっちに行っちゃったけど」
言霊か否か、厄介なものを引き寄せてしまった。友達相手に使う表現じゃないけど。
「そういえば、メグがどうとか言ってたけど、何話してたんだ」
「メグさんの気持ち……マヤさんは知ってますか ? 」
「気持ち……? 」
「メグさんが、コウさんを好きってことです。異性として」
「そうなの……!? 」
マヤらしい反応。
いつもと変わらない。慌ただしい日常の中のオアシス。智乃の癒やしの一つである。
「えー、コンたろーってモテるのか。ちょっとざんねん」
割とそうでもなさそうだった。
「ま、マヤさん……? 」
「あぁ、違う違う。いつもコンたろーがモテないって愚痴ってるから、相手がいないなら貰ってあげようかなって思ってただけ」
「残念というのは……? 」
「ほら、コンたろーといるの楽しいし」
「な、なるほど……。安心しました……」
正直安心していいのか分からないが、智乃のキャパではこれ以上は処理できないので、安心という体で片付けた。
「でも、やっぱコンたろーってモテるんだなー。デリカシーが兄貴と違うし、ゆうりょーぶっけん? ってやつか」
「こ、コウさんが優良物件……? 」
「チノちゃんが震えてる……」
「世間との評価のギャップで拒絶反応が出ているんだわ」
今にも倒れそうな智乃の背中を心愛はそっと撫でた。
これは、扱いを間違えたら確実に吐く。
「こ、こーくん、呼んでこようか……? 」
「俺がどうかしたの ? 」
「うわぁ !?!?」
「おっ、芸人みたいなリアクション」
恋愛というデリケートな話題をしているところに、話題の張本人が登場。
危うく椅子から転げ落ちるところだった。
「なぁなぁ、コンたろーってこの中だと誰が一番好き ? 」
「今はリゼ。勉強を教えてくれたから。 これでちーちゃんとのデートは確約されたようなものだぜ ! ! ! なーはっはっは !!!! 」
調子に乗った光良の高笑いが響く。
図書館だからとリゼにチョップを貰っていた。
「そんなにすごかったんだ。リゼちゃんの勉強」
「めちゃくちゃ分かりやすかった。鬼だったのはリゼじゃなくて天々座家の使用人だったんだ……! 」
「へぇ〜 ! 」
「や、やめろ ! 期待の眼差しで見てくるな ! 」
「いよっ、花の高校二年生。俺達16歳の希望の星 ! 」
「やめろ ! 変な音頭を取るな……! 」
「いよー ! 」
「心愛も乗るな ! 」
太鼓持ちをする光良と心愛を前に、顔が赤くなるリゼ。
このままこれが続くのかと思ったら、不意に心愛が固まった。
「リゼちゃんって年上だったの ! ? ! ? 」
「今更……? 」
心愛の中で衝撃の事実が走る。
「うふふ、仲睦まじいわね〜」
「うちでは毎日あんな感じですよ」
「羨ましいわ。やっぱり、一人くらい貰っても」
「コウさんとココアさんとリゼさん以外なら良いですよ」
「無の取得ね」
「千夜さんって、たぶんコウさんの影響を受けてますよね」
「うふふっ、染められちゃった。エロスね」
ジトーっと智乃の目が千夜に刺さる。
光良に染められてるのか、それともこっちが染めているのか、正確な事は千夜にも分からない。
「でも、染められてるって言えば、やっぱりシャロちゃんかしら」
「仲良いですよね。付き合ってるのかと思うくらいには」
「あらあら」
面白くないと言った表情。智乃も存外光良ラブなのが伺える。
「さてと、俺の勉学も極まったことだし打ち上げして帰るか。たまにはラビットハウス以外のカフェに行きたいなー」
「ダメです。許しません。コウさんはうち以外の店でごはんを食べないでください」
「流れるようにすごい縛りを付けて来たな……。敵地潜入って事でなんとかならない ? ちゃんと経費申請するし」
「なんですか、うちの何が嫌なんですか ? 」
「うぅ……久々の鬼嫁……身体に染み渡る……」
「コンたろーって意外とヘンタイなんだな」
「こういうの、ギャップって言うんだよ〜」
「メグは心が広いんだなー」
「えへへ〜」
完全にお開きモードの雑談に入ったため、各々帰り支度を始めた。
ただ、合流してからずっと静かだったシャロが気にかかり、光良はそっと声をかける。
「シャロちゃん ? 大丈夫 ? 大勢で疲れたとかならコッソリ抜け出そうか……? 」
家系のあれこれでバイト三昧のシャロのことを考えると、終始無言は流石に心配を超えて不安になってしまう。
「こ……」
「こ ? 」
口をパクパクさせて光良に何かを伝えようとしていた。
どうやら、光良への秘めた想いで頭がパンクしていたようだ。
はて、その実態とは。
「コーラ先輩って同い年だったんですか ! ? ! ? ! ? 」
「過去一デカい声出たね」
ずっと年上と勘違いされていたのは光良も知っていた。面白そうだからこうして今日まで黙っていたわけだし。
しかしまさか、ここまでのショックに繋がるとは。