オラ!ご注文のキツネうどんだ!!!   作:コントラポストは全てを解決する

15 / 15





大変 ! 姉が来た !

 朝にしては忙しないドタドタした足音で、心愛は一階に下りて来た。

 

「ち、チノちゃん ! こーくんってどこにいるかな !? 」

「露店の出店で、今は駅の方にいますよ。コウさんがどうしたんですか ? 」

「おねーちゃんが来る ! 」

「はい ? 」

「おねーちゃんが来るの ! 」

 

 壊れた機会のように「こーくん」と「おねーちゃんが来る」を繰り返し鳴く心愛。

 

「おねーちゃんが来るとして、コウさんにどうしろと……」

「なんか、こう……私が頼りがいのあるおねーちゃんってところを見せられるように、一緒に作戦を考えたくて……! 」

「その言葉が出てくる時点で、もう作戦を立てるのは無理ですよ」

「そこをなんとか…… ! 」

 

 心愛がお姉ちゃんに憧れていた事を今になって思い出す智乃。

 ありのままの自分を受け入れろとしか言えなかった。

 

「リゼちゃんも何かないかな !? わたしの頼れるところ ! 」

「心愛の頼れるところ……明るくて、ドジで、茶目っ気のあるところ……とか ? 」

「そ、それって、おねーちゃんに見える……?」

「いや、全然」

「うわーん !!! 」

 

 この世の終わりと言わんばかりに、心愛は膝から崩れ落ちた。

 

「というか、なんで心愛はお姉さんにおねーちゃんな所を見せたいんだ ? 」

「妹扱いされちゃうから……」

「いや、妹だろ……」

「そうだけどそうじゃなくて ! 」

「見栄を張りたいって事ですか ? 」

「そう、それ ! 」

「それで良いのか…… ? 」

 

 姉に頑張っているところを見せたい的な物 だと各々で察し、なんとか力になれないかと智乃とリゼは考えてみる。

 

「じゃあ、トラブルを起こして、それを心愛さんが解決する感じで……」

「と、トラブルって…… ? 」

「プロパンガスの大爆発とか……」

「み、皆が危ないからダメ…… ! 」

「姉でも無理だろ、それは……」

 

 一同は今朝の新聞に載るラビットハウスを幻視した。

 

「あとは……お客さんまで全部ヤラセで演技するとか」

「それだ…… ! 千夜ちゃんとシャロちゃんを呼ぼう ! あと、メグちゃんにマヤちゃんも ! 」

「そうと決まれば演技の練習だな。お姉さんはいつ来るんだ ? 」

「えっとね──」

 

 心愛が携帯を取り出すと同時、カランカランと店のベルが鳴った。

 

「いらっしゃいま……せ……」

 

 出迎えようとした智乃は言葉を失う。

 

 そこには、フランパンみたいな笛をピロピロ吹く心愛似の女性と、サンドイッチを両手で貪る光良がいた。

 

 

 ◇

 

 

「お、おねーちゃん ? 」

 

 想像の5倍は早く、心愛の下に姉が来訪した。

 しかし、姉を見るはずの目は、姉本人ではなくその手にある笛を見ていた。

 

「それ、なに…… ? 」

「フランスパンリコーダー」

「フランスパンリコーダー ? ? ? 」

 

 名前を聞いても訳がわからない。

 見栄などすっとび、心愛の頭の中はハテナでいっぱいになった。

 

「なにそれ……」

「あら ? 店で作ったフエラムネみたいなフランスパンって、コーくんが言ってたんだけど」

「コウさん……また店名義で変な物を売りましたね……」

「変な物とは失礼な。フエラムネをでっかくしてパンにしただけだぞ。デカさは強さ ! 故に王道商品」

「誰が買うんですか……」

「1本800円で500本焼いて完売したぞ。はい、帳簿」

「うちのコーヒーより売れてる……」

 

 売上表を受け取った智乃は複雑な気持ちになった。

 

「それより ! なんでこーくんがおねーちゃんと一緒にいるの !? 」

「いや、完売して『今日からパン屋でもやろうかな〜』とか調子に乗ってたら、モカに決闘を持ちかけられて──えっ、待って、モカって年上だったの ? モカ先輩じゃん」

「成人済みよ〜」

「まっ ! ? リゼ ! リゼ ! ちょっとモカさんに甘やかされて ! 」

「変な願望をアタシに向けるな ! 」

「そうカッカしないの。よしよ〜し」

「あ、ちょ、撫でるな……撫でないでください…… ! 」

「うぉ〜 !!! すげー !!! リゼが年下みたいだー ! ! ! ! ! 」

 

 真性の姉に逆らえないリゼを前に、光良は目を輝かせる。

 数秒後、光良の頭にたんこぶが出来た。

 

「じゃなくて ! 決闘ってなに !? 」

「なにって言われても、決闘は決闘で。こんな遊びのパンをパンとは認めないーって、モカさんが」

「年甲斐もなく、パン屋の血が騒いじゃった」

「ちなみに今も決闘中」

「どうかな〜 ? 本物のパンの味は ? 」

「パン屋のパンとしか。モカさんの方はどう ? 俺のフランスパンリコーダー」

「音が出る以外、普通のフランスパン」

 

 お互いにモッモッモッとパンに夢中になるが、勝敗は付きそうになかった。

 

「1回戦は引き分けだね。2回戦 ! 保登屋スペシャルアンパン ! ふっふっふ、コーくんにフランスパン以外の手札はないでしょ ? 」

「甘いぜモカ姉 ! トラップカードオープン、こだわりバターの潤滑油 ! 」

「これは ? 」

「ほら、リコーダーってつなぎ目に油指すじゃないですか ? 組み立て易くするための。あれです」

「あ〜 ! あったあった ! 懐かしい〜」

「ちなみにフランスパンリコーダーもバラせますよ」

「そうなの !? 」

 

 カポッとバラしたフランスパンのつなぎ目に、バターを塗って齧り付く。

 懐かしさと面白さに顔を綻ばせるモカの隣で、光良は和やかに微笑んだ。

 

「惹かれましたね ? 俺のパンに」

「あっ。待って ! 今の無し ! 番外戦術はノーカン ! 」

「パンにバターを塗るのが番外戦術なら、朝食からパンとバターは消えちゃいますね〜」

「も〜 ! ! ! 」

「オーヒョッヒョッヒョ〜 ! 」

 

 ポカポカ殴ってくるモカのパンチを受けながら、光良はフランスパンをピロピロ鳴らして煽り散らかした。

 

 そんな光景を、場外から見せつけられるラビットハウス原産組。

 

「なんか、普通にココアさんの姉ですね」

「言うほど慌てなくて良かったんじゃないか ? 」

「……ちがう」

「心愛…… ? 」

 

 拳を握りしめ、プルプルと身体を震えさせる心愛。

 

「おねーちゃんは、誰かに揶揄われたりなんかしない…… !!! 」

 

 光良に弄ばれる姉を見て、心愛は解釈違いを起こしていた。

 

 

 ◇

 

 

 話がややこしくなるため、光良にはパンの追加販売という名目で店を出ていって貰い、ラビットハウス組で心愛とモカの面談を始めた。

 

「あはは、ココアに会える〜って思ったら昂ぶっちゃって。ごめんね ? 」

「むぅ……おねーちゃんが遊ばれてると、なんだか悔しくなるよ……」

「そうだったんだ……ごめんなさい。コーくんから、ココアはよくやってるって聞いたから。肩の荷が降りちゃって」

「こーくんが…… ? 」

 

 光良の事だ。社交辞令で話をしたのはなんとなく分かる。

 が、それでも何を話したのかなんとなく気になった。

 

「コーくん、言ってたよ ? 『ここあと一緒にいると楽しくて、いつも元気を貰える』って」

「……そっか」

「あら ? 浮かない顔してる。ウソじゃないよ ? 」

「ううん、そうじゃなくて。私、いつもお皿を割っちゃったり、たまにメニューを作り間違えたりしてるから」

「うんうん、それで ? 」

「それでね、こーくんはいつも助けてくれるんだ。メニューを覚えるのも付きっきりになってくれたり、教科書まで作ってくれたりして。お皿を割った時は、ケガしてないかーって真っすぐに心配してくれる」

「コーくんの過大評価ってこと ? 」

「うん……。私、結構ダメダメなんだ」

 

 そこまで話すと、想像通りと言うようにモカは笑った。

 

「コーくんもね、ココアと同じことを言ってた。お皿は割るし、メニュー表はとんちんかんになるし、コーヒーをたくさん運ぶ時は周りが見えなくなるとか、色々」

「うっ……耳が痛い……」

「けど、そういうところも全部面白くて、『こんなおねーちゃんがいたらなぁ……』 って、物欲しそうな目をしてたの」

「こーくんが…… ? 」

「うん、コーくんが」

 

 パン決闘の合間に随分と真面目な話をしていたもんだと、外野のリゼと智乃は場違いな事を考えてしまう。

 

「そこまで分かったら、心配事なんてもう全部吹っ飛んじゃった。だから、目いっぱいこの街を楽しんでたの」

「そ、そうだったんだ……」

 

 光良がそこまで自分を見てくれていた事に、心愛は少し照れくさくなってしまう。

 

「顔、ニヤけてるよ ? 」

「えへへ……なんか、久々に人に甘えられた気がして」

「コーくんも結構ドジっ子なんだね」

「そうじゃないけど、なんだか……私がついてなきゃって時が多くて」

「うふふ、理想の弟なんだね」

「うん ! あっ、取っちゃダメだよ ? 」

「どうしようかな〜。連絡先も交換しちゃったし」

「おねーちゃん ! ! ! 」

 

 思わずテーブルから身を乗り出してしまう心愛。

 勢いのあまりコーヒーが零れそうだ。

 

「こーくんは私の弟だよ ! 」

「心愛の弟ってことは、おねーちゃんの弟でもあるわね」

「うっ……。じゃ、じゃあ……! こーくんに選んで貰おうよ ! 」

「良いよ〜」

 

 仁義なき弟争奪戦が幕を明けたのだった。

 

 

 ◇

 

 

 グラビティを感じ店に入るのを躊躇っていた光良だが、意を決して店のドアを明けた。

 

「こーくん ! ! ! 」

「はい」

「私とおねーちゃん、どっちの弟になりたい ! ? 」

「えっ、なに ? 輪廻転生の話 ? 」

 

 主語がなさ過ぎて、光良も素で混乱してしまった。

 どっちを選んでも殺されることになるわけだが、選ぶしかないのだろうか。

 余談だが、光良は八百万の神教である。あと昆虫パティシエ教。

 

「おねーちゃんがこーくんを取ろうとしてるの ! 」

「人聞き悪いな〜。おねーちゃんはコーくんの意思を尊重するよ」

「えーっと……弟が婿の隠語とかじゃなくて、シンプル姉にするならどっちかみたいな話 ? それでバトルしてたとか」

「そうだよ ! 」

 

 大方話の趣旨が見えて来たため、光良は真面目に考えてみる。

 

「ど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な──」

「こーくん ! ! ! 」

「うそうそ ! 冗談だから ! 振り上げた腕を下ろして……」

 

 話題の割に真面目に議論していたらしい。

 甘く見ていた光良は、真面目な顔で怒られた。

 

「うーん……とはいっても、今は二人から姉味を感じないしなー。子供みたいだ」

「「えっ」」

「たった今から俺が二人のおにーちゃんね。よしよーし、可愛い妹たちよ〜」

 

 面白そうなので、どちらも選ばず話をそらした。

 

「めっちゃ顔赤いやん。やらかしたか ? 」

 

 照れているのか怒っているのかは分からないが、二人はすごいコンビネーションでラッシュを披露した。

 確かに心愛はモカの妹だし、モカは心愛の姉だった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ご注文はうさぎです!Re(作者:新生兎丸)(原作:ご注文はうさぎですか?)

高校入学を機に木組みの家と石畳の街に引っ越してきた芹沢 ジン。下宿先を探して道に迷う途中、ラビットハウスという名の喫茶店を発見する。そのラビットハウスこそジンの下宿先であった。そこで働くことになったジンは、騒々しくも不思議な人達に囲まれ日常を過ごすことになる。▼        ↓↓↓↓↓↓  ▼ 注意事項:こちらと同名の作品がハーメルンで投稿されて…


総合評価:208/評価:9.2/連載:36話/更新日時:2026年06月22日(月) 19:46 小説情報

ジム巡り?コンテスト?そんなことより観光だ!(作者:そじゅ)(原作:ポケットモンスター)

前世は普通のオタク社会人だったのに、なぜかこの世界に生まれ変わっちゃった……って、ポケモンはやったことないんですけど!?▼父の研究に付き添って各地を転々とする中で、ポケモンたちの可愛さに毎回理性が飛んでしまう。▼「んぎゃわいいいいいい!!」ってまた理性が飛んで、あ、意識が…▼バトルは二の次、ポケモンたちと一緒に楽しく過ごすのが一番!▼せっかくのポケモン世界に…


総合評価:1096/評価:7.64/連載:12話/更新日時:2026年04月11日(土) 18:00 小説情報

直葉「お兄ちゃーん、あの人に手を出されたー。」キリト「お前を〇す」(作者:狩宮 深紅)(原作:ソードアート・オンライン)

性懲りもなくまた書きに来ました。▼ちょっと重めで策士な直葉ちゃんのSSです。▼内容は…。まあ、タイトルの通りです。▼時系列は本編終了後を想定しています。


総合評価:3544/評価:6.36/連載:13話/更新日時:2026年04月05日(日) 02:00 小説情報

転生オリ主は綾紬芦花を幸せにしたい(作者:天戸 蒼香)(原作:超かぐや姫!)

「超かぐや姫!」、面白い! 最高!▼でも舞台裏で泣いてる綾紬芦花も幸せにしたい!▼そんなオリ主が超かぐや姫の世界に転生したから、芦花を幸せにするために原作介入!▼……するも、そんな上手くはいかない話。▼でも芦花も含めてちゃーんとハッピーエンドにするよ、作者が保証しちゃう!▼※百合の間に男が挟まることになります


総合評価:4206/評価:7.9/完結:48話/更新日時:2026年08月08日(土) 07:26 小説情報

シン・ワカメライダー。(作者:ひつまぶし太郎)(原作:Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ )

▼これは、偽物でワケあり合法ショタの間桐慎二が魔法少女物の裏で全力で救済した妹に食われたり、サーヴァントに主従逆転おねショタされたりする話。▼ツンデレのシスコンで小さくて可愛いシンジの明日はどっちだ。▼


総合評価:2240/評価:8.61/完結:10話/更新日時:2026年05月24日(日) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>