オラ!ご注文のキツネうどんだ!!!   作:コントラポストは全てを解決する

17 / 29






女子会、それは戦場。女子会、それは激しい競争。女子会、それは惚気。

 珍しくフリーな時間を手に入れたとかで、光良は朝一で家を出ていった。

 光良がいないラビットハウス。思いのほか馴染めるものだと心愛は感心する。

 

「コンたろー ! 実習で先生がめっちゃ褒めてくれたー ! ! ! ……って、あれ ? 」

「マヤちゃん、もう少し優しくドアを開けないとだよー。こ、こにちはー」

 

 兄貴の自室に飛び込むようなノリで、マヤはラビットハウスに入店して来た。

 

「いらっしゃいませ。まだ開店してませんけども……」

「ごめんごめん。興奮しててつい。それより、コンたろーって今日は休み ? 」

「はい。隣町に行くと言っていたので、帰るのは夕方頃だと思います」

「そっか。なら、今日はゆっくり出来そう」

「も〜、それだとおにーさんが落ち着きがない人みたいに聞こえるよ〜 ? 」

「コンたろーって私と同類だからな〜」

 

 反応に困る返事にチノは苦笑いしか返せなかった。

 光良が子供な事には同感だが。

 

「あっ ! せっかくだし恋バナしよ ! 恋バナ ! 」

「こ、恋バナ……って、誰の恋を話すんですか ? 」

「チノとか ? 誰かいないの ? 好きな人ー」

「わ、わたしは別に……」

「えー、じゃあ、ココアは ? 」

「私もいないかな〜」

「リゼは ? 」

「な、ない……生まれてからずっと……」

「そっか〜。じゃあ、メグだけだな〜」

「へっ ! ? 」

 

 唐突に初恋を暴露され顔が赤くなるメグ。ぼのぼの汗が止まらなかった。

 

「なあなあ、コンたろーのどこが好きなんだ ? やっぱ一緒にいて楽しいところ ? 」

「そ、そんな急に言われても〜 ! 」

「私にも聞かせてください。コウさんと何があって今の関係になったのか」

「か、関係なんて……まだ付き合ってないのに〜……」

 

 ノートを広げるチノを気にも止めず、メグはひたすらに顔を赤くしていた。

 

「でも、そうだなー。今思うと、きっかけは一目惚れだったのかも」

「一目惚れ……そんな素振りはありませんでしたけど」

「最初は『ちょっとカッコいい人だな〜』ってくらいの気持ちだったからね〜。でも、それから仲良くなっていく内に、なんとなーく好きになっていって」

「店に通い詰めるほどにですか ? 」

「えへへ〜、おにーさんの顔を見てないと落ち着かなくなっちゃって〜」

「なんか、アニキの漫画で見た危ない薬みたいだな〜」

「ひ、ひどいよ〜」

「ごめんごめん」

 

 ケラケラ笑うマヤと、マヤをポカポカ叩くメグ。なんともほのぼのした光景だった。

 それに比べて、チノのノートは物騒な情報でいっぱいだ。

 シャロとの浮気、千夜との逢引、ココアとの姉弟プレイ、極めつけのクスリの三文字。

 

「それで、結局の決め手は何だったんですか ? 」

「なんだろね〜 ? やっぱり、マヤちゃんが言ったみたいに、一緒にいると楽しいからなのかな〜 ? 」

「なら、私もコンたろーに恋してるのか ? 」

「どうなんだろうね〜 ? おにーさんといてドキドキする〜 ? 」

「一緒にデッカいチョウチョを捕まえた時とかにする ! 」

「恋だ〜 ! 」

「メグさん違います。それは少年のワンパク精神です」

 

 危うく恋の基準がおかしくなるところだった。

 

「えー、なら……一緒にデッカいキャンディーを作った時に、それがこっちに倒れて来て、コンたろーが庇ってくれた時とか。これは恋だろ。めっちゃドキドキしたぞ ? 」

「吊り橋効果では ? 」

「 いや、でも、ムカデのキャンディーがグアーッ ! って来て、コンたろーが私の肩をギュッてして……めっちゃドキドキしたんだぞ ? 」

「生存本能の類かと」

「恋って難しいんだな~」

「ちなみにそのキャンディって、どれくらいのサイズなんですか ? 」

「チマメ隊が縦に並んだくらい ? 」

「おっきいね〜」

「写真あるよ ! 」

 

 マヤの携帯には、大層リアルなムカデが写っていた。

 飴の前でツーショットをしている光良達が小さく見える、そんな遠近法を克服したキャンディー。

 

「そういえば、一緒にこれ食べてる時もドキドキしたよ ! 」

「それは絶対恋だ〜 ! 」

「良いんですかメグさん。競争相手になるかもしれないんですよ」

「大丈夫〜。略奪愛も嗜んでるから〜。チノちゃんも遠慮しなくて良いからね〜」

 

 何も大丈夫ではない嗜みのせいで、光良を好き認定されている事に智乃は突っ込めなかった。

 

「やっぱり、チノもコンたろーが好きなんじゃん」

「べ、別に、好きとかじゃ……」

「それに、学校だとよくコンたろーの弁当がーとか、頭撫でてきて子供扱いがーとか、よくコンたろーのこと話してくるし。グチ風ノロケ ? って言うんだろ、こういうの」

「ラブラブだよね〜。けど、あんまりつっけんどんな態度だと、おにーさんが可哀想だよ〜 ? 」

「それは……まぁ、分かってますけど」

 

 素直になれない自覚はありつつも、やはり光良の前だと智乃はツンツンしてしまう。

 思い返していたら、今日くらいは光良に優しくしても良いような気がして来た。

 

「ただいま〜」

「あれ、こーくん ? まだお昼だよ ? 」

「千夜から急なヘルプの連絡が来てさ。ちょっくら捌いてそのまま帰って来た。みんなは何してたの ? あっちでちーちゃん達がしてるのは何の会議 ? 」

「恋バナだぞ。光良の彼女候補の選定」

「お見合いでもさせられるのか…… ? 」

 

 少し身構えた光良の前に、マヤが軽い足取りで走ってくる。

 

「なーなー、コンたろー ! 私、コンたろーのこと好きかもしれない ! 友達じゃなくて恋の方で ! 」

「おー、それは良かったな〜。なら、マヤっちにはこれを進呈しよう」

「これなに ? スーパーで売ってる指輪の飴 ? 」

「スーパーで売ってる指輪の飴に偽装した小豆バー。硬さはダイヤモンド再現」

「お〜 ! 指輪って薬指にはめるんだよな ! 」

「ちょい待ち、俺が付けたる」

「お姫様みたいだな〜」

 

 片膝をついて、いかにもな雰囲気でマヤに指輪をはめる光良。

 気づいたらマヤの隣にメグがいた。忍を感じる。

 

「はい、メグちゃんも。狐だからドレスじゃなくて白無垢になっちゃうかもだけど」

「は、はは、はい……! わ、わたしはどっちでも、だいじょーぶです…… ! 」

「そう ? 前にドラマのウエディングシーンに見入ってたから。良かったよ」

「も、も〜、いつの話をしてるんですか〜。ずっと前の事なのに……えへ、えへへへ……」

 

 アイスより先に溶けてそうなメグの顔。

 喜んで貰えたようで何よりだと、光良はアイスを齧るマヤ達にほっこりした。

 ハムスターみたいだ。

 

「フッ……やはり時代は小豆……ちーちゃん ! 小豆でコーヒー作ろうぜ ! ラビットハウス爆盛新商品タイムだ ! 」

 

 キラキラした目で稼ぎの匂いを語る光良だが、とうの智乃はユラユラとこちらに向かって歩くのみ。

 

 なんだか、テンションが低い。

 

 いや、違う……大きすぎて気づかなかったが──これは、グラビティ。

 

「な、なんて強い重力なんだ…… ! もはや、ブラックホールの領域…… ! リゼ、これは一体 ! ? 」

「残当、だな」

「お店は任せて ! 二人でやるの慣れたから ! 」

「立派なおねーちゃんを持てて俺も鼻が高いよ」

 

 同僚2人に見送られ、光良は無言の智乃に引っ張られていく。

 そして、いつも通り2階へと連れて行かれた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。