オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
まったくもうほんとにコウさんは……。昔からあんな調子で人をからかって……いや、別に嫌でもないし嫌いでもないのですが……恥ずかしいというか。
「智乃よ、そろそろコウの様子を見に行ったらどうだ?あの心愛という少女だけでは手に負えないじゃろう?」
「それもそうですね。ココアさんと不仲にでもなられたら困りますし、助けに行きましょう」
あの人っていつもそうなんですよ。なんというか人をからかうのが好きで、よく嘘をついたりいたずらをしたりします。
もちろん人を傷つけるような嘘は言いません。ただ、見た目が怪しさ全開だからよく誤解をされてしまいまして。
なのでおそらく、今現在はココアさんに警戒する猫のような態度を取らせているはずです。
「あっ、チノちゃん!絆創膏ってどこにあるか知ってる!?」
「えっ、絆創膏って……あぁ、コウさんですか。一体今度はなにをしたんですか?」
「リゼの下着姿を見たら何故かげんこつを貰ってしまった」
「当たり前です」
「いやでもいつもは見せびらかして来るのに」
「見せびらかしてなんかない!!!」
「おーけーおーけー、まずはその拳銃をしまおう。拳ならいくらでも受け入れるから」
リゼさん、顔がものすごく赤いです。いつもは男女の壁なんか気にせずにコウさんと仲良くしているのに。あれですかね、思春期。
「とりあえず、コウさんはちゃんとリゼさんに謝ってください。リゼさんだって一端の乙女なんですから」
「うぅ……ごめんなさい……。許して……見捨てないで……」
「きゅ、急にしおらしくなるなよ……調子狂うだろ……」
リゼさんは歳上なのですが、いつもこうやってコウさんの手玉に取られます。しかも満更でもなさそうです。年下に弱いのでしょうか。
「え、えっと……これで解決、かな?」
「はい。いざこざが終わったならさっさと仕事を始めますよ。リゼさんとコウさんは倉庫に豆を取ってきてください。いつものでお願いします」
「チノちゃん!私は何すれば良いかな!」
「まずはメニューを覚えてください」
カフェの店員としては初歩の初歩ですが、ココアさんはちゃんと覚えられるでしょうか。
「わ、わぁ……文字だけだ……」
ダメそうですね。
「こ〜く〜ん〜!」
「あっ、ちょっ……ココアさん──」
コウさんとリゼさんのいる倉庫の方に行ってしまいました。
心愛さん、真っ先に頼りに行くのがコウさんなんですね……。リゼさんでも私でもなく、コウさん。
「智乃?どうしたんじゃ?不機嫌顔が極まっておるようじゃが」
「別に……」
仲良くなっているのは嬉しいですが……なんですかね、この気持ち。私も思春期なのでしょうか。
──
それから十分も経たずして皆は戻ってきました。
相変わらずリゼさんもコウさんも力が強くて羨ましい。私はコーヒー袋を一袋運ぶだけで大力の半分を持っていかれるのに。
「ココアさん、メニューは覚え終わったんですか?」
「バッチリだよ!コウくんに教科書貰ったから!」
「なんですかそれ」
「?……ほら、メニューとその写真と作り方が載ってるの。チノちゃんも持ってる〜ってこーくん言ってたよ?」
「初めて見ましたが……コウさん?」
「いやだって、暗記って見栄えと面白さが命だし、ここのメニュー表ってちょっとだけデザが地味だから……」
「地味じゃないです。硬派なだけです」
むぅ……なんだかコウさんにダメ出しをされると胸がムカムカします。
この店はコウさんと一緒に作ったと言っても過言ではないのに。
少なくとも、ここの半分はコウさんの成分で出来ています。
「お、怒らないで?ほら、チノちゃんの好きなホットケーキ焼いてあげるから……」
「怒ってません。あと、子供扱いしないでください」
「うぅ……反抗期……親の心子知らず……」
「子じゃないです」
まったく、コウさんはほんとに……。
「あはは……こーくん、皆に怒られてるね……」
「悪いことしてないのに……」
「悪いことはしてるんじゃないかな……」
「甘いコーヒーだけが俺の味方だよ……。リゼ、ラテアートお願い……いつもの狐のやつ……」
「はいはい……しょうがないなぁ……」
やっぱり皆、なんだかんだでコウさんの事が好きなんですよね。好きだからこそ喧嘩するし、コウさんも謝る時だけは素直ですから。
「ほら、出来たぞ」
「おぉ……ありがとー。そして会いたかっぞー……マイラブリーフレンドコンタロー……」
「名前付けてるんだ……」
「こいつ、ラテアートに話しかける時だけは素直なんだよ」
「皆と話す時も素直ですけどー?」
「コウラに相談事をされた覚えとか、私にはないけどな」
「えー?なになに?優しくしてくれるの?」
「調子に乗るな」
「『ツンデレだコーン』ってコンタローが言ってる」
「次からは自分で作れ」
「ちゃんとしなきゃダメだよ、こーくん」
「こんこーん……」
……なんだか、全然普通に馴染んでますね。というか、コウさんのフォローが出来るくらいには、心愛さんもコウさんと仲良くなってる。
───
今日もいつも通り仕事が終わって、片付けをして、ご飯を食べて、テレビを見ながらぐでーっとして。
「はい、ちーちゃん。お疲れ様」
「どうしてパンケーキを?」
「ごめんなさいの意。はしゃぎすぎちゃったから」
「……気にしてたんですか」
「あれ、ちーちゃんはあんまり気にしてない感じ?懐が深くて助かるよ」
「私が何年コウさんと一緒にいると思っているんですか」
コウさんが作ってくれた狐の形のパンケーキ。
理由はわかりませんが、昔からパンケーキはこの形で作ってくれます。味も昔から変わらない。
皆が言うところの、お母さんの味というものでしょうか。
「あっ、あーんでもする?」
「反省してるんですか?」
「こーん……」
「……ふふっ、しょうがないコウさんですね。はい、一口どうぞ」
「おっ、珍しい」
そのまま何のためらいもなく食べてしまいました。間接キスとか気にしないんですかね。
確かに私も……まあ、少ししか気にしませんが。
「なにか悩みがあるなら聞こうか?」
「なんですか藪から棒に」
「いやー、あーんなんて普段のちーちゃんじゃ絶対しないから」
「別に何かあるわけでは──いえ、ココアさんと馴染めるかどうかは気にしていました。最近のコウさんはお痛が過ぎて、友達の一人も出来やしないですし」
「べっつにー?喋り友達なら百人いますしー」
「それはただのクラスメイトでは?」
「こーん」
「あっ、逃げましたね」
ふふっ、相変わらず友達作りには苦労しているようです。
「もう一口、食べますか?」
「今日はやけに俺に甘いじゃん。貰える優しさは貰っておくけど」
「そうですね、なんででしょうか」
たまにはサービスをしておかないと可愛そうですし。それにアメとムチは大事だって昔読んだ本に書いてありました。
「ん?ちーちゃん?じっとこっち見てどうしたの?」
「いえ、べつに」
……でも、そうですね。
なんとなくですが、今日はコウさんを取られたようで寂しかったのかもしれません。現にこうして一緒にいるといつも以上に安心してしまいます。
「なにかあるなら言って良いんだよ?」
「真面目な話は口についた食べかすを拭いてからにしてください」
「えっ、はっず。どこらへんについてる?」
「そこから上、もう少し上です。」
「ここら辺?」
「もう少し下ですかね。はい、気持ち下に」
「ねぇ、これほんとに口についてる?ほとんど顎じゃない?」
「はい。付いてます。あっ、もう少し左……それで少しだけ右に……あぁ、行き過ぎです。もう少し左……いえ、やっぱり右」
「あとどれくらいで取れそう?」
「最後にBAを押して貰えれば」
「いたずらやんけ……!」
やっぱり、コウさんで遊ぶのは楽しいですね。
人をからかう割に騙されやすい。昔から変わらないコウさんが気にしてる悩みのタネ。
そして今までずっと、私が見てきたコウさんの長所。
「綺麗に引っかかりましたね。可愛かったですよ?」
「明日を楽しみにしておくんだな……」
「ふふっ、こんこん」
「パクリやないか」
「パロディーです。人聞きの悪いことを言わないでください」
かわいい……。コウさんは怒るとオーラが縮むんです。ちっこくて、ティッピーが怒った時みたいな大きさになります。
「魔性じゃのぉ……」
おじいちゃんがなにか言ってますが、多分また放置されてることに怒っているだけなので、あとで構ってあげましょう。