オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
夏休みに突入したからか、客層がガラリと変わったラビットハウス。
普段売れるメニューは余り、売れないメニューがどんどん捌けていく。
「今日は女児先輩がいっぱい来るな。プリカフェの映画でもやってるのか ? 」
「中学生を女児と言わないでください。立派な大人なんですから」
「そう ? 俺もここあもこんなに子供なのに ? 」
「あなた達が外れ値なんですよ。リゼさんを見習ってください」
「ここあー、俺たちイレギュラーチルドレンなんだって」
「おぉ……なんだか大人な響き……」
「なにカッコよく脚色してるんですか」
お互いにかっこいいポーズで並び立つが、仕事をしろと智乃に叱られてしまった。
「光良ー、狛犬ラテ20個入ったぞ」
「俺の手だけじゃ間に合いませんけど ? 」
「作れるのは光良だけだろ。キャンセルしてくるか ? 」
「やってやるよ…… ! ! ! 」
「それでこそソルジャーだ」
腕がはち切れんばかりの勢いでメニューを捌き、光良の腕に疲労がたまってゆく。
気を抜いたらすっぽ抜けそう。そんな幻覚が腕に芽生えた。
「コンたろ〜 ! ! ! いる〜 ! ? 」
「どしたん、そんな慌てて。今ちょっと手が離せないから口だけになるぞ」
「防災ポスター、なに書けば良いか分かんないんだよ〜 ! 」
「俺を見ろ。過労で死にかけてるから。労災も立派な災害だぞ」
「おぉ、すごい…… ! スラスラ書ける ! 」
「店名は伏せといてね。労基が来るから」
完成したマヤの絵には千手観音が描かれたいた。
「コンたろー、私にも狛犬ちょうだい」
「ちょいとお待ちを。今両手にフライパン持ってるからさ」
「大盛況だな〜。コンたろーがいっぱい外まわり ? したからか ? 」
「ちーちゃんの采配で外行ってたから、ちーちゃんの功績だね」
「すごいなー 、私なんて全然子供なのに」
「俺もちーちゃんに子供って言われたよ。お揃いだな」
「なんか、大丈夫な気がして来た ! 」
元気の出たマヤにラテアートの一つくらいは届けたいところが、今の光良の手では出来なかった。
なぜ、今日に限ってこんなに客足が多いのだろうか。
「なあなあ、コンたろー。あの飛び出てるラテアート、私にも作れないかな。こう見えて結構器用なんだぞ ? 」
「うーん……じゃあ、これ。レシピあげるから作ってみてよ。家の台所貸すからさ」
「おー…… ! ちのー! 台所借りるよー ! 」
OKのハンドサインが智乃から出たので、マヤは香風家の台所に消えた。
「あれ、手が空いちゃった」
同時に、光良の手元にあった労災が解決した。
「ちーちゃん、ちょっとマヤっちの様子を見に──」
「なに言ってるんですか。すぐ忙しくなるんですから持ち場を離れないでください」
「ご、5分休憩ということで……」
「……マヤさんに変なことしないでくださいね」
「しないよ ! ティッピーの肉を賭けても良い ! 」
「マヤさんと一晩明かした人に言われましても」
「も、もしかして怒ってる…… ? 」
「……別に。ほら、さっさと行ってください。休憩に入ってから2分は経ちましたよ」
ぐい、ぐい、と背中を押され、光良は強制的に店から退場させられる。
見間違いかは分からないが、智乃の頬が膨れていた気がした。
「マヤっちー、進捗どう ? 」
「見ろ、コンたろー。完璧おぶぱーふぇくとだ ! 」
「おぉ……これは紛れもなくパーフェクト完璧……」
なぜか狛犬から狐になっているが、マヤのラテアートは店で売れるレベルの出来だった。
「これは……儲かるな。ちょっと手伝ってみる ? 」
「良いの ? チノの許可がいるんだろ ? 」
「大丈夫だ。給与を俺から天引きすれば押し通せる。それに、今は猫の手も借りたい状況だからな」
「おぉ……日やといバイト……。大人だ……」
「そうと決まれば早速制服の調達だな」
二人はドタドタと子供みたいに走りながら店に戻った。
ひとまず、制服カラーは紫が似合いそうだったので、リゼの予備をマヤに貸与した。
あとはYシャツの予備なのだが、なぜかどこを探しても見つからなかった。
「ちーちゃん ! Yシャツの予備を──あっ、メグちゃん。いらっしゃい」
「こんにちはー。すごい忙しそうですね~。マヤちゃんも……あれ、ラビットハウスの制服 ? 」
「日やといだよ ! メグもやろ ! 」
「わ、私は大丈夫だよ〜 ! む、難しそうだし……迷惑かけちゃうかもだから……」
「そっか〜。うん、無理やりは良くないからな」
「話を戻して……ちーちゃん、 Yシャツの予備ってどこにある ? 」
「そんな急に言われましても……。今あるのは私の予備しか」
「それじゃダメなの ? 」
無垢に問いかけた光良を前に、智乃はそっと虚無の目で自分の胸を撫でた。
「マヤさんの方が、大きいので──」
「よしっ ! この話おしまい ! ! ! ! マヤっちには俺のYシャツ貸すよ ! ちょっと待ってて ! ! ! 」
逃げるように自分の家に向かい、学校のYシャツを持って帰って来た光良。
早速マヤのYシャツ合わせに全力を注ぐ。予想通り、調整してもブカブカだった。
「おぉ……なんか、コンたろーのパワーを感じる。似合ってるかな ? 」
「似合ってる似合ってる。オーバーソウルみたいで可愛いよ」
「多分それオーバーオールだよ」
「おじさん、おしゃれに疎くてな〜。がっはっは」
ケラケラ笑いながら、光良はマヤを厨房に送り出した。
事が一段落しても、智乃の顔には影が落ちたまま。
なんと声をかけたら良いものか。
「あー……ちーちゃん ? ほら、揉めば育つって言うし」
「セクハラで訴えますよ」
「理不尽……」
思いのほか元気そうだったので、タジタジになりながらも光良は胸をなで下ろした。
「……コウさんも男性ですし、やっぱり大きい方が好きなんですか ? 」
「生き様フェチだから体型はそんなにかな。旦那と子供をまとめて叩き上げるかーちゃん系とか好きなんだ〜。かっこいいし」
「そうですか。なら、まぁ……大丈夫です」
「元気出たなら良かったよ」
逃げるような早足で、智乃は光良の元を離れた。
智乃がなぜ元気になったかはあやふやな光良だが、無事問題が全部解決したので気にしない事にした。
「あっ、ごめんメグちゃん。Yシャツ預けたまんまだったね。間違えて2枚持って来ちゃってさ。いやー、男のYシャツなんて持たせちゃってごめんね──」
「あ、あああ、あにょ……あの ! やっぱり私もお手伝いしたいです ! ! ! せ、制服も貸してください ! ! ! 」
「おぉ……ここあ教官のような気迫……」
なぜか俄然とメラメラ燃えていたメグに押され、光良は流れるままにメグも雇ってしまった。
「あ、あと、制服っておにーさんと同じ色の物を借りれたりは……」
「俺の予備しかないし、サイズ合わないよ…… ? 」
「だいじょぶです ! お願いします ! ! ! 」
少し理性を失いかけている気がするメグを前に、光良は訝しみながらも要求にすべて答えた。
一体、なにがメグをそこまで突き動かすのだろうか。