オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
出会いの日から数日経ったある日の朝。
心愛が慌てた様子で光良の部屋にやって来た。
あまりの慌てように光良も身を引き締めながら、心愛に事情を訪ねた。この慌て具合は誰かが病床に伏したか、大量のゴキが出たかのどっちかである。
「学校に遅刻しちゃうよ!!! 」
そういう事らしい。面白そうなので誤解を解かず一緒に慌てた。
「チノちゃん!学校に遅れそうだからパンだけ貰うね!」
「えっ、あの……学校って──コウさん……?」
「遅れちゃうのぜー」
「……あぁ、そういう……。ほんとにコウさんは……」
最後に智乃にサムズアップを見せたあと、光良は心愛と共にダッシュで駆けていった。智乃は頭を抱えた。
◇
ラビットハウスを出て5分ほど立っただろうか。学校に遅れないよう全速力で走り、光良すら置いてけぼりにする速度で街を駆け抜けた心愛。
「ここ……どこ……?」
結果、迷った。
「うぅ……こーくーん……」
弱気な声で助けを求めてはみるが、どこからも返事は返ってこない。
「ううん、ここを乗り越えてこそのお姉ちゃんだよ!まずはこーくんを見つけないとね」
なんとか姉魂で自分をふるい立たせ、迷子の光良を探す方針にシフトした心愛。
ひとまず手頃な棒をその辺で拾い、行き先を占ってみる。
そして、延べ棒の示すへ歩き続けた結果、心愛は初めて見る公園へと辿り着いた。
「おぉ……!兎がいっぱいだー……!」
ティッピーのようなご飯スタイルな兎はいないけど、それでも兎パラダイスな事には変わりない。
迷子の傷心を癒やすついでに兎と戯れた。一匹、また一匹、心愛は兎をモフり、抱き寄せ、追っていく。
「おいでー、おいでー。うちの羊羹はウサギさんも食べれる特別製よ〜」
最後には、羊羹で兎を釣っている少女に辿り着いた。
「あら〜?可愛い女の子」
兎のついでに連れたとでも言いたげに、羊羹をフリフリする少女。
その甘いを嗅いだ瞬間、心愛の腹からきゅるる〜と可愛い音が鳴った。
「……食べる?」
「食べる!」
彼女は、餌付けされた。
「おぉ、この羊羹すごい美味しい……!」
「ふふっ、ありがとう。自信作なの」
「えっ。これ、千夜ちゃんが作ったの?」
「私のお家、和菓子屋をやっていてね?今度お店で出す試作品なのよ」
「おぉ……かっこいいね」
「それほどでも〜」
鼻高々に胸を張る千夜。謙遜も何もない少女だった。
「それで、ココアちゃんはどうしてここに?その制服、坂の上の高校よね?登校日は明後日だったはずだけど」
「えっ」
「あら〜、間違えちゃったのね〜」
「ど、どうしよう千夜ちゃん!こーくんも一緒に連れてきちゃった!」
「あらまぁ……」
慌てふためく心愛を見て、おそらくお連れの人も似た者同士なのだと判断した。
とはいえ、顔もわからぬ相手のために千夜が出来る事と言えば、心愛の不安を宥めることくらいしか……
「うぅ……こーくん今どこにいるかなー……結構目立つから近くにいればすぐ見つけられるんだけど……」
「あら、有名人さんなのね」
「有名人っていうより、なんて言えば良いんだろ……ふしんしゃ?人に変身する狐みたいな雰囲気なんだ。目がきりってしてて、背が高くて、髪の毛を後ろで結んでて」
「……そうなのね〜」
心愛の話を聞き、だいたい察しがついてしまった千夜。
そしておそらくだが、相手は今めちゃくちゃ慌てている。心愛に合わせて遊んでいたら見失なってしまったのだ。きっと血眼になって探しているだろう。
「ほ、ほんとにどうしよう……こーくんを迷子のままにしたら、きっと怪しさのせいで警察に捕まって、一生折の中に……」
「うふふ、大丈夫よ。この街の人は皆良い人だから、そんな事にはならないわ」
「で、でも〜!」
涙目になりながら、なんとも失礼な光良評を披露する心愛を横目に、千夜はメールにて『大事な娘は預かった。返してほしくば兎公園にこい』とメッセージを送信。
そのあと5秒で『助かった』と返信が返ってきた。どうやら相当焦っていた事が伺える。
5分後、めちゃくちゃに汗をかいた光良がそこにいた。
「ぜぇ……ぜぇ……良かった……見つかった……」
「こ、こーくん、大丈夫……?」
「だ、大丈夫。ちょっと走り回ってただけだから……」
「良かったぁ……」
「見つかって良かったわね。じゃっ、あとは若いお二人で〜」
「ち、千夜も、ありがとね……。こ、今度なにか、おれい……お礼するから……」
「楽しみにしてるわね」
愉快そうな目をしながら去る千夜を見送りつつ、光良は心愛は背中をさすられながら息を整えた。
「じゃあ、俺達も帰ろうか……」
「うん、そうだね…………ん?帰る?」
「どしたの?」
「こーくん、もしかして今日が学校に行く日じゃないって知ってたの?」
「そうだけど……それがどうかした?」
「止めてよ!私を!」
「面白そうでつい」
「も〜!こーくんのバカ!」
「いて、いて……」
さっきまで光良の背中を撫でていた手で、心愛はバシバシと肩を叩いてくる。可愛いふくれっ面を見せながら。
「ごめんって。ホトちゃんの言う事なんでも聞くから許して?ね?」
「……ほんとになんでも聞いてくれるの?」
「生まれてこの方、俺は嘘をついたことがない」
「じゃあ、これからはココアって呼んで」
「そんなので良いのか?」
「皆は名前呼びなのに、私だけ苗字呼びなのはなんだか寂しいよ」
「まあ、ここあがそれで良いなら」
なんとも緩いお願いだと拍子抜けしながら、光良は心愛と共にラビットハウスに帰って行った。