オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
日が暮れた夕飯時、桐間家の食卓には食器が2人分並んでいた。
「なにこれ……こんなのただの同棲じゃん……」
「男としては、これ以上ないほどのご褒美ですね」
「良いのか…… ? 俺の人生あげるくらいはしないと釣り合わないでしょ……」
「いいんですよ。それより、早く食べてください。冷めちゃいますから」
シャロに促され、手を合わせてから白ご飯を一口。
温かいご飯を食べた安心感で、また涙が出て来た。
「コーラ先輩って、本当によく泣きますよね」
「ご、ごめんね……。恵まれた環境にいるなって思ったら……ありがたさと申し訳なさでつい……。いつもありがと……」
「ふふっ、なんですかそれ」
向かい側に座るシャロが、光良の前髪を撫でる。
その目は母親みたいだった。
「お礼、なにしたら良いかな…… ? 」
「大丈夫です。もう貰っているので」
「お、お世辞は良いからさ ! な、なにかさせてよ ! 」
「奴隷みたいな勢いですね……。本当に貰ってるから大丈夫ですって」
「た、例えば ? 」
「こうやって一緒にいてくれる事とか。1人暮らしの夜って結構寂しいんですよ」
安心しきった目で味噌汁を啜るシャロ。
光良からするとそんな事で良いのかと、なおさら疑問が深まってしまう。
「納得できないって顔してますね」
「まぁ……はい」
「本人が言ってるんですから信じてください。それとも、先輩の中の私ってそんなにガメつい子なんですか ? 」
「ぜ、全然そんなことは ! 」
これ以上奉仕を迫ったら失礼になる。
言外にそう語られ、光良もやっと溜飲を下げた。
シャロへの奴隷精神も晴れ、澄んだ心で味噌汁を啜る。
「考えっぱなしで気がつかなかったけど、なんか外騒がしくない ? 」
「そうですね……明日、少し様子を見に行きましょうか」
強盗でも出たのかとお互い不安になってしまう。
気のせいなのを願いたいが、窓の外に巨漢の黒服が写っている気がした。
──
翌朝、光良とシャロは普通に目覚めた。
黒服が強盗に入ってくるわけでもなく、兎を密猟したりするわけでもなく。
「なんなんですかね、あの人たち……」
「うーん……なんか、見覚えがあるような、ないような……」
「なにしたらあのタイプの人達から恨みを買えるんですか……」
「わかんない……」
薄っすらと、どこかすごい豪華な場所で見た記憶が蘇る。
「あー……思い出した。あれ、リゼのガードマン達だ」
「リゼ先輩の…… ! ? 」
「とは言え、こんな大胆な事をする人たちじゃ……リゼパパに怒られるし」
「ということは…… ? 」
「謀反、だな。リゼパパ隊の訓練って厳しいから、嫌気がさしてストライキをされたのかも」
「り、リゼ先輩は無事なんですかね……」
シャロがポロっと口にした言葉が、なんとなく引っかかった。
確かに、人質にするならリゼが手っ取り早い。
光良がストライキの主犯なら、絶対リゼを人質に取るだろう。
「ちょっと、リゼに話聞いてくるか。ちょうど前に家への裏道を教えて貰ったし」
「わ、私も行きます ! 」
「シャロちゃんはお留守番してて」
「なんでですか ! 私だってリゼ先輩のこと──」
「いや、普通に壁登ったりするからさ。最低でも5mくらいあるよ ? 」
「ぐっ…… ! お、お留守番でお願いします…… ! 悔しい…… ! ! ! 」
プルプルと握りこぶしを震わせるシャロ。
そんな漢気を預かり、光良は朝の街を駆けた。
◇
野を越え、谷を越え、贔屓にしてるお店の屋根を越え、光良は天々座家の屋敷にやって来た。
いつ見ても大きい……と、この街随一の大きさに圧倒されてしまう。
「確か……この辺りに手頃な出っ張りが……」
外壁の隅を軽く叩くと、一箇所だけ音の響き方が違う場所があるのだ。
そこが見えにくい凸になっており、ここから足をかけて壁を登れる。
「よしよし……侵入成功」
ここまで来れば確定演出。
光良は大急ぎでリゼの自室へと向かった。
「お、おじゃましま〜す」
開いた窓から部屋に入ると、なにやらパソコンで作業をしているリゼがいた。
やけに切羽迫った顔をしている。それほどまでに酷いストライキなのだろうか。
「っ ! ? 誰だ ! ! ! 」
「ま、待って待って待って ! 俺だよ ! 俺 ! ! ! 」
「……光良…… ? 」
瞬間、リゼの顔がパァっと明るくなった。
光良が思っていた以上に、リゼは追い詰められていたようだ。
「フッ、助けに来たぜ……」
鼻をかきながら、洒落臭くポーズを決める。
光良を見つけたリゼは、涙ながらの笑顔で駆け寄って来て──
「フンッ ! ! ! 」
──光良の顔面を、思いっきりぶん殴った。