オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
エンディング後のアフターストーリー的なやつです
智乃パパことタカヒロさんに婚姻の件を話したら、2つ返事でOKを出してきた。
いや、2つ返事で決めちゃダメなやつでは……と、光良は婚約から1日経った今でも不満を積もらせる。
「鍵、ありがとね。それとごめん。せっかく住んで良いよって言ってくれたのに」
「良いのよ。ハッピーエンドを迎えたならそれが一番」
「そうです。それに、やっぱりチノちゃんの隣にはコーラ先輩がいないと」
攻め立てないで光良を受け入れてくれる2人。
本当に良い友達を持てて良かったと、光良の目尻に涙が溜まる。
長居しすぎても迷惑になるので、ササッと甘兎庵を後にした。
「昨日、随分あっさりと本音を打ち明けたなと疑問に思っていましたが……なるほど、保険をかけていたと」
ニコニコ笑顔で光良を責め立ててくる智乃。
「私に嫌われればハーレムだったのに。ごめんなさい」
「拗ねないで欲しいな。それに、2人はずっと友達だし、なにより前からこんな感じじゃん ? 」
「コウさんの友達は、半分くらい恋人なので不安になるんですよ」
「どうどう……。ほら、俺はちーちゃん一筋だから」
「言葉だけじゃわかりません」
これ見よがしにチラチラ見てくるので、光良は少し屈んで智乃の方を向く。
交際……婚約してから分かった事だが、智乃は意外と情熱的だった。
「さてと、用事も終わったし帰ろっか」
「コウさんの家に行きたいです」
「お茶菓子切らしてるから、それ買ってからでいい ? 」
「ドラッグストアに行きましょう」
「そういうのは、ちーちゃんが高校生になってからって約束したでしょ」
「コウさんサイズなら、今の私でもいけますけど ? 」
「傷ついた…… ! すごい傷ついた…… ! ! ! 」
「冗談です」
情熱的だし、お年頃だからかそういうことにも興味しんしんだ。
このまま家に言ったら襲われかねないので、光良は智乃の家へと帰った。
「おかえり ! 用事終わった ? 」
「あぁ、終わったよ。ここあは何してたんだ ? 」
「掃除 ! これこからはこーくんもここに住むし、心機一転って事で ! 」
「なんか悪いな。ずっと世話になりっぱなしで」
「気にしないで ! 私、小姑だから ! 」
誇らしげに胸をポンと叩く心愛。
どうやら、姉が進化して小姑になったらしい。
姉の上という扱いらしく、本人はえらく気に入っている。
「あっ、そうだ ! さっきリゼちゃんから連絡が来たよ ! 」
「遊びに来るのか。準備しないとな」
光良が言うと同時に、ラビットハウスの入り口からまばゆい光が差し込んで来た。
「な、なんだこれは……。新婚ドッキリか…… ? 」
しばらく経つと、明かりは収まり……そこには、『ハッピーウエディング』と書かれたデッカいケーキがあった。
「良かった。もう帰ってたか」
「あの……リゼ大佐 ? これは一体……」
「ウエディングケーキだが ? 婚約と婚姻で使うんだろ ? 」
「たぶんそれを使うのは十年くらい後かなーって……」
「えっ、そうなのか ? 」
珍しくリゼがボケている。
「リゼちゃん、やるね……」
「言ってる場合ですか……。これ、食べ切れるんですかね…… ? 」
「いざとなったら、光良とアタシで全部食べるから大丈夫だろ」
「巻き添えにしないで ? 」
「トレーニング、楽しみだな」
「ヤダー ! ! ! 」
にこやかスマイルでリゼはデブ道へと誘って来た。
「なんだよ、中学の時に『もしもの時は一緒に逃げてやる』って言ってくれたじゃないか」
「それはもっとこう……望まぬ婚姻とかそういうのを想定していてだな…… ! ! ! 」
「リゼさんにまで手を出していたんですか。本当に節操のない人ですね」
「違うのちーちゃん ! これは青春の1ページ的なアレで ! 」
「青春に恋は付き物ですからね」
「違うの待って話を聞いて…… ! 」
プイっとふくれっ面でそっぽを向いてしまった智乃を前に、光良は全力で謝意の土下座をカマした。
「うぅ……お願い……嫌わないで……。ちーちゃんに嫌われたら俺生きていけない……」
「私に嫌われたかったのでは ? 」
「嫌われたいけど拒絶されたいわけじゃなくて……」
「筋が通ってないですね」
「そこをなんとか ! 」
女王のような素振りで、光良の手綱を振るう智乃。
なんだかもう鬼嫁を超えてSM嬢だった。
「チノちゃんの笑った顔って、あんな怖かったっけ……。リゼちゃん、あれはどういう気持ちなの…… ? 」
「劣情、だな」
「え、えっちなやつ…… ? 」
「支配とか、愉悦とか、そういうやつ」
「チノちゃんがあぶのーまるに……」
愛しの妹が変態に堕ちていく様に心愛は震える。
しかし、これも小姑の責務だと強い心で受け入れた。
「チノー、あんまり光良をいじめるなよー」
「い、いじめてなんかいません ! ただちょっと、浮気の臭いがしただけで……」
「その手に持ってる紙は ? 」
「示談証込みの婚姻届けですが」
「脅しで書かせて、チノは満足できるのか ? 」
「そ、それは……。でも、コウさんは優良物件らしいので……」
どうやら嫉妬と不安で身についたSM嬢らしい。
「いくら優良物件でも、光良がチノを乗り捨てるわけないだろ。光良だぞ ? 」
「シャロさんかメグさん辺りに取られる気がします……」
「ないない。まず、光良にその気がないんだから。本人に聞いてみるか ? 」
先程まで光良がいた床に目を向けると、そこには誰もいなかった。
どこに行ったのかと思えば、ウエディングケーキの前でなにやら盛り上がっている様子。
よく見れば、マヤとメグ、千夜とシャロと大所帯になっているではないか。
「えー、協賛のリゼからお祝いのケーキをいただいたので、今からテッペンのクソデカハートチョコを賭けてじゃんけん大会しま~す ! ! ! 」
「うおー !!! チョコだ〜 ! 」
「あの、コーラ先輩 ? それ貰って大丈夫なヤツなんですか ? 」
「良いのよシャロちゃん。本人が言ってるんだから」
「よだれ垂れてるわよ……」
「お、おにーさんのウエディングケーキ…… ! おにーさんごと盗れないかな……」
「め、メグちゃん落ち着いて……。こーくんは食べられないよ……」
リゼが説教をしている間に、会場が出来上がってしまったらしい。皆燃えている。
「それじゃあ ! 最初はグー ! ──」
いつも通りの騒がしさにあてられ、リゼも智乃もさっきまでの話を忘れた。
◇
「負けたッ ! ! ! ! 準決勝まで行ったのにッ ! ! ! 」
「なんで主催がトーナメントに出てるんですか……」
右腕を震えさせて、悔しさに打ちひしがれる光良。
「くっ……副賞のちょっとデッカいイチゴが乗った部分しか取れなかった……」
「十分では……」
「うん ? コンたろーもチョコ欲しかったのか ? ほら、半分あげるよ。皆にあげてたから半分の半分くらいだけど」
「マヤ姉貴 ! ! ! 」
「ほら、チノも。というかこれ、元々コンたろーとチノのやつだったんだろ ? 」
「ウエディングケーキだし、皆で食べた方が良いじゃん ? 」
「気が早いウエディングケーキですけどね」
優勝賞品を分け与えたあと、マヤは皆の元に戻っていった。
皆気を使って、光良とチノを2人きりにしてくれている。
「コウさん、目の下にクリームがついてますよ」
「その手には乗らんぞ。またコナミコマンドを使ってくる気だろ」
「同じネタを何回も使うわけないじゃないですか。ほら、危ないので目をつぶってください」
「あえて乗ろう」
今度は顔に落書きでもされるのかと思った瞬間、唇に柔らかいものが当たる。
驚きのあまり目を開いてしまった。
「……あれ、指 ? 」
「ふふっ、引っ掛かりましたね」
「結局いたずらやんけ ! 」
「同じネタは使わないと言っただけです」
「あ〜、ドキドキした〜……」
「コウさんもやりますか ? ほら」
そういって、目をつむった顔を見せてくる智乃。
もうそれはただのキス待ち顔では ? なんて思いながらも、智乃の唇に生クリームを当てるだけに留めておいた。
「むっ……生クリーム……? てっきりキスでもしてくるのかと──」
目を空けた瞬間、間近に光良が迫る。
3秒、4秒、5秒と、長いキスだった。
「じ、時間差なんて卑怯な……。しかも、ちょっとえっちなやつ……」
「お返し〜」
「てぃ、TPOをわきまえてください ! 皆さんがいるのに…… ! 」
ドキドキが抑えられない智乃が周りを見ると、観衆と言わんばかりに皆がこちらを見ていた。
「ほ、ほら見たことですか ! 恥ずかしい……」
「あー……良いんじゃないか ? チノも光良も仲良しって事で」
「そうそう〜。こういうのも思い出になるからね〜」
「千夜 ? その動画データ、後でちゃんと消しなさいよ ? 」
「こ、こーくんも大胆だね……」
「わ、わたしも〜……」
「コンたろーは純愛派だよ」
三者三葉で慰めてくれた。時々動向の怪しい人がいたけど。
なにはともあれ、これで全てが決着し、2人はハッピーエンドを迎える事ができた。
──
後日、千夜から買ったキスのデータがバレ、ケジメをつけさせられた。
反省の意思として、手打ちうどんを作ることに。それが許す条件らしい。
パン作りで余った小麦粉をひたすら捏ね続け、うどんを作った。
光良の腕は死ぬ勢いで悲鳴を上げている。
「オラ ! ご注文のキツネうどんだ ! ! ! 」
「それが反省してる人の態度ですか ? 」
「ごめんなさい……。もう、うどんは捏ねたくないです……」
「よろしい」
狐賀光良、十六歳。嫁の尻に敷かれる一般的な狐ウェイトレス。
ウェイトレスなのに、うどん職人に浮気をしてしまった。
ご愛読ありがとうございました。
『オラ ! ご注文のキツネうどんだ ! ! ! 』はこれにて閉幕になります。
評価付与とかしてもらえたら嬉しいです。
コンポス先生の次回作にご期待ください。