オラ!ご注文のキツネうどんだ!!! 作:コントラポストは全てを解決する
光良の目の前に、呆れた目を向けるブロンドウェーブの女の子がいた。
「それでさ〜、ここあが情報量の多さで知恵熱出しちゃって」
「いつも突拍子がなさすぎんですよ、コーラ先輩は。千夜から聞きましたけど、そのココアって子、普段は前に出るタイプの元気な子なんですよね ? その子を疲れさせるって相当ですよ」
「だからあの日からちょっと冷ややかな目で見られるのか〜。流石に嫌われたかな ? 」
「知りません」
「冷た〜い。リゼにはあったかいのに」
「リゼ先輩は良いんですよ」
贔屓だなんだとブーブー言いながら、土産に持ってきたケーキの半分を口に運び紅茶をキメる。
「今さらだけど、半分貰っちゃって悪いね。シャロモンって甘いもの好きだったでしょ ? 」
「流石にクワガタモチーフのケーキはちょっと……。しかも翅……」
「店だと結構売れたんだけどね。部位売りだったから、場所によっては法外な価格バランスしてたはず」
「売れたんですか、これ……」
主に子供が熾烈な顎取合戦をしていた。その後、顎の量産までしたのだ。
「それにしてもすごいですね。翅の模様とかリアティがありすぎて、キモいと言わざるを得ないですし。土ぼこりの部分とか何使ったんですか ? 」
「ティラミスの上の粉」
「聞かなければよかった……。もうティラミスの事まともな目で見れない……」
「おいでよ、昆虫パティシエ教。次の題材は商売繁盛月間でムカデだよ」
「今作りましたよね ? 」
「集まり自体はある」
「この街にですか ? 」
「この街にだね」
バチコリ疑う視線を向けられる光良。
信用のシの字もない。
「入会する ? マヤっちは昨日入会してくれたよ」
「いつか怪しげな団体になりそうなので遠慮しておきます」
「昔なら目を輝かせて着いてきたのに。あんなに好き好き言ってたシャロたそはどこに行っちゃったんだ」
「これだけ一緒にいれば嫌でも目が覚めますよ」
「好き好きなのは否定しないんだ」
「否定する体力がないだけです」
「素直じゃないなぁ」
紅茶をズズズッと飲み干したあと、カップを洗って帰り支度を始める。
「車とか気をつけてくださいね」
「すぐそこなんじゃよ」
「出会った頃、ウサギの行列に轢かれましたよね」
「それくらいでケガするほどヤワじゃないさ」
「トラブル体質だって事を言ってるんですよ。ほんとに気をつけてくださいね ? 」
「はいはい」
「『はい』は一回までです ! 」
「はーい」
お母さんかと突っ込みたくなるしつこさに辟易しながら、そそくさとシャロ家を出た。
愛の重い後輩を持つと苦労するものである……光良の携帯に電話が掛かってきた。出ないでおく。
──
帰宅したら智乃がめちゃくちゃ塞ぎ込んでいた。
リゼと心愛に話を聞く限り、人の声が聞こえないほど落ち込んでいるらしい。
どうやら、とんでもない厄介客が来たようだ。
光良製半殺しめんぼうを使うべきか否か。
「ちーちゃん ? どうしたの ? 」
「すみません、コウさん……。コウさんが大事にしていたカップ、無くしてしまったかもしれません……」
「そりゃ大変だ」
智乃の頭をそっと一撫でしたあと、食器棚の確認してみる。
見たところ、光良が使う食器に欠品はなかった。
「?……普通に全部揃ってるじゃん」
「えっ……だ、だって、コウさんがよく使う、あの綺麗な金縁のマグカップが──」
「あぁ、あれかー。それなら今はシャロちゃん家にあるよ」
「……はい ? 」
俯いていた智乃が顔を上げる。
その目には元気が戻り……元気以外に何か黒いモヤが生まれていた。
「どういう事ですか ? 」
「共有資産的な ? 3カ月くらい使ったら相手に貸して貰って、また半月使ったら相手に返す」
「なんでそんな事を ? 」
「前にシャロちゃんとの出会いを話したじゃん ? 譲り合いバトルが云々ってやつ 。その譲り合いバトルの景品がこのカップなの。バトった結果期間を決めて貸し借りする方針になったんだ。ちなみに今回が初交換」
「そんな話、聞いてませんけど。この間の家族会議の時だって……隠してたんですか ? 」
「いや、勝負の行く末は聞かれなかったから」
智乃の目がどんどん座っていき、終いには懐から例の尋問ノートを取り出した。
「ちーちゃん ? 俺の腕なんか引っ張っちゃってどうしたの ? 添い寝 ? 甘えたくなっちゃった ? 流石にこんな明るい時間からは恥ずかしいな〜、なんて──ちーちゃん ? なんで無言なの ? えっ、ちょっ……怖いんだけど……」
だんだんと焦りを見せる光良が、階段の軋む音と共にどこかへ連れて行かれた。
一部始終を見ていた心愛はジト目になり、リゼは合掌で光良の無事を祈る。
「リゼちゃん。あの痴話尋問ってこんなハイペースで来るの ? 」
「いや、いつもは二カ月に一回くらいなんだが……間が悪かったのかもな」
「コウくんって、なんであんなにモテモテなんだろうね」
「あれはモテてるんじゃくて、人を弄んだツケを払ってるだけだぞ。コーヒー、淹れるか ? 」
「うん、お願い……」
パン屋にいた頃には見せなかった疲れた顔を披露しながら、心愛は染み渡るコーヒーに心を癒した。