ゲの字、人の世に生を受ける   作:ばぐひら/Baguhira

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偽典ソロモンを見て突如書きたくなったものを書き留めたやつ


1話 我はゲーティア、謎の第三勢力系転生者ゲーティアである

 

「よし、あらかた処置は済んだし、後は様子見かな」

「ありがとうございます、先生!」

 

 

俺がそう言うと、目の前の青年は「次は気をつける様にね」と心配した様に微笑む。包帯が巻かれた腕をなぞり掌の開閉を繰り返し行ってみるが、少し痛む程度で動かせない程でもない。やはり流石だと、目の前の青年の治療の腕に頷く

 

 

「あぁ、まだ完治してないんだから……ほら、それくらいの動作ならいいけど過度な動きは控えるように!これは僕個人…ここ医務室のトップとしての命令だ」

「分かってますよ!そういうところは厳しいよねロマン先生ってば」

「当たり前だよ、僕は医者だからね!」

 

 

ロマニ・アーキマン、ここ雄英高校の医療に携わる教員、職員の中で特務医療者に位置する先生。通称ロマン。日本医学界におけるちょっとした有名人で、民間病棟施設カルデアのトップ、本人の医師としての腕も確か。本人は無個性だけど、その医学の知識と腕前でこの個性社会で頭角を現している凄い人………俺の認識はそんな感じ

 

実際は結構ゆるくて穏やか、俗に言うゆるふわ系な青年。優しそうで中性的な顔立ちに、ヘタレとノンデリとゆるふわを合わせたような性格をした人物。完全に青年だけど、実年齢は30代前半なんだとか

 

 

「それじゃあ、ありがとうございました!」

「あぁ、うん、気をつけてねー……っと待った!」

「どうしました?」

「さっき君のこと相澤くんが探してたよ」

「え」

 

 

 ■

 

 

彼が肩を落として医務室のドアから出ていく。まぁ彼は特段問題を起こす様な性格でもないし、相澤くんも彼のその性格を評価してたから、余程の事もなければ大丈夫だとは思うけれど

 

 

「ふぅ……」

 

 

彼の足音が離れていき、やがて聞こえなくなる。そこで、僕は周囲にサーチを掛けて(・・・・・・・・・・・・)人がいないことを確認する(・・・・・・・・・・・・)。どうやら周囲に人は居ないようだ

 

さて、僕はロマニ・アーキマン、ただの平凡な医者…というわけじゃないけれど、あの魔術王と同質の、あのロマニ・アーキマン(・・・・・・・・・・・)じゃない。(魔術王)ではなく、(カルデアに生きたロマン)でもなく。単にロマニ・アーキマンの殻を被った者だ

 

そもそも、雄英高校とロマニ・アーキマンって単語が混同してる時点で察せるよね、うん。ここは僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)の世界で、僕はFate/Grand Orderのロマニ・アーキマンで。小説とかだとクロスオーバーのタグでも付くのかな

 

でも正確には、僕は…いや、僕たちは。個にして全、全にして個。ロマニ・アーキマンではない

 

魔神王ゲーティア、魔神柱、その片割れである。本来の()の名はソロモン72柱、管制塔バルバトス、序列10位、ブエル。この身体は変容により変化させただけだ

 

 

「ロマニ、今大丈夫かい?」

「ん?」

 

 

その時、声をかけられた為に思考を中断しそちらに意識を割く

 

そこには濃い緑のシルクハットとタキシードに身を包んだ、ぼさぼさと赤みがかった特徴的なもみあげを持つ男――レフ・ライノール――が立っていた

 

 

「レフじゃないか、どうかしたのかい?あ!この前言ってたもみじ饅頭の事かな、遂に買えたのかい!?あのメッチャクチャ並んで運が良くて買えるかどうかの超人気店シュガーのもみじ饅頭!」

「いや実は私が並んだ時には既に売り切れていてね、代わりと言ってはなんだが栗饅頭を買ってきたんだ。よかったら食べるかい?」

 

 

ほら、と言い手に持つ袋を揺らすレフ

 

レフ・ライノール。ロンドンの時計塔という施設から来て、特殊教科担任を担う紳士男だ。そう、あのレフだ。GrandOrderにて最大の裏切り者、その名レフ・ライノール・フラウロス。そう、知ってると思うが彼も同じく魔神柱だ。そして、序列64位、フラウロスその人だ。まぁ中身は僕と変わらず本体(ゲーティア)の写し身だ。僕ら(我ら)72柱は、各々が人の姿に擬態することができる。だけど、僕や彼の様に極一部だが、その性質を変化させ適応し、性格や癖、仕草、思想、理念などを自身の望む人間へと姿を変えるものがいる。つまり、僕や彼は根本は魔神柱であり本体(ゲーティア)の写し身ではあるが、その在り方は魔神柱と似ても似つかない訳だ

 

あ、そう言えば……「元を辿れば同じく本体(ゲーティア)だし、見方を変えたら血の繋がった兄弟じゃない?」と、この前レフに言ってみたらなんとも言えない顔をされたなぁ、余談だけど

 

 

「良いのかい?ならお言葉に甘えるとしようかな、あぁお茶でも出そうか。レフは珈琲でいいかな」

「ああ、君の淹れる珈琲は美味いからな」

「よく言うよ全く、君の淹れたやつの方が美味いじゃないか」

 

 

そう言いながら、僕はお茶と珈琲を淹れてレフと向かい合うように座る

 

 

「ん、美味しいねこれ!」

「だろう?俊典のオススメさ」

「俊典…あぁ、オールマイトね。やっぱり慣れないな彼を本名…しかも下の名前で呼ばれると、直に気づけない」

 

 

レフはオールマイト…八木俊典がオールマイトとしてのヒーロー活動をし始めたあたりからの知り合いだ。気の知れた仲、という美味しいポジションに居る

 

 

「…絆されてないよね?」

「まさか、彼には友情を感じてはいるがそれはそれ……我々の大望は、私たちがどれほど変容し、変化したとしても変わりはしない。根底に根付いているからね」

 

 

それは良かった、と返し、医務室に【立ち入り禁止】の札をぶら下げる

 

 

「それで?レフ、何があった?」

「察しが良くて助かるよロマニ、原作の私(レフ・ライノール)が出し抜かれる訳だ」

「辞めてくれ、僕は確かにロマニ・アーキマンだけど原作の彼(ロマニ・アーキマン)ではないんだし」

 

 

レフはそんなことはないと言うが、彼は自分の全てを投げ棄てて人類の未来を選び取った。文字通り全てを棄てて。それは彼の人間性からして選び得ない筈の選択だったのに、彼はそれを選択した。僕にはとても真似できるとは思えない

 

 

「さて、では報告だ。君を通じて統括局(ゲーティア)にも繋げてくれ。2時間ほど前、ヘドロ事件が起こった」

「っ!それホントか!?」

 

 

僕は思わず席を立つ。そんな僕に苦笑し、レフが座るように促してくる。だが許してほしい、だって、何年待ったと思っている?10、20?まだ足りない。100、200まだまだまだ。何千年という長い時間を待ったんだ、僕らは

 

 

「ホントだとも、なぁロマニ、始まるよ」

 

 

原作が

 

 

 

 

戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)。宇宙の極小モデル、我が工房、時間から隔絶した虚数世界に浮かぶ概念宇宙。私の魔術回路から作られた小宇宙。その玉座にて、私は腰を下ろしていた

 

管制塔バルバトスから随時送られる情報に、その思考を割きながら。ブエルからの情報を受け取り終わり、私はしみじみと、改めて実感をした。この世界を、この“僕のヒーローアカデミア”という敷物(テクスチャー)が張られたこの世界を

 

ある時、我らは目覚めた。と言っても元々は個であったが。魔神王ゲーティア、Fate/Grand Orderの一章、人理焼却を成した人類悪の1つ。私はそう誕生した。初めは大変だった、その初めは私にも自我の混濁があった。そもそも、私は転生者だ。この世界、僕のヒーローアカデミアを知り、この肉体の元、出典であるFate/GrandOrderを知る個人。曰く平凡な精神性を宿した転生者だった

 

初めのうちはそれは酷く喜んでいた。新たな生を、推しであったFateのゲーティアで歩むことができると歓喜した。分割した我々(魔神柱)は、今ではかつての事を思い出すのは難しいだろうがな。はっきりと記憶しているのは私のみだろう

 

私が誕生したその時代には、この世界のソロモンが居た。Fateのソロモン王ではなく、古代イスラエルの第3代の王。私を生み出した者。王たる機構ではなく、神に定められた人の王、只人の王。彼は優しく、貪欲で、人並みの積を背負っていた。だからこそ我らは、彼に仕えると決めたのだ

 

初め、ソロモンが作ったのはゲーティア()であった。後に私とソロモンは(ゲーティア)の自我を72へ分割し、各名を与え、ソロモン72柱を作り出した。故に我ら。あの時は人手が足りぬからと作ったが、結果的に良しである

 

そうしてある程度過ごし分かったが、この世界はどうやら型月世界では無いようだ。魔力はある、魔術もある、魔術回路もある、魔獣もある、神秘もある、神獣もある、使い魔もある。だが、それだけ。ここはFate、そのどれにも当てはまらない世界だった。そも、私もソロモンも千里眼を持っていなかったし、ソロモンの万能の指輪はただ神秘が込められた指輪だし、ダビデも緑髪でもなければ軽薄で終わってる性格でもなかった。まぁこっちのダビデはせいぜい性格が少し悪いな程度だ

 

そうして、この世界は型月ではなく。そして平穏な生活に私は、私たちは、満足していた。あぁ、柄にもなく、いい日々だったと言えるだろう

 

しかし、ソロモンは人の王。その生を終えるのは早かった。我らは孤独となった。使える者が居ない使い魔など意味の無い木偶の坊、何の価値があるのだろう

 

意外にも、私はソロモンに絆されていたようだ。それも自分が認識できないほど深く。全く、私はそこまでチョロい男だったかと、数十年の年月で変わってしまった価値観を眺めた

 

戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)へと籠り、世界を見た。本来のゲーティアならば繰り返される悲劇、惨劇、人の死を嘆き、憐憫を抱くだろう。だが私はゲーティア本人ではない。そのようなものを見たとして「あぁ、可哀想に」とは思うがそれ以上も以下もない。なんてったって自分ではないのだから、そこまで感情移入できる訳が知りたい

 

そうして、数千年の時が流れた。戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)へと籠り、他の魔神柱もそれに追随したが、一部魔神柱はこの玉座を離れ、地上の人間社会へと身を投じた。フラウロスを筆頭にパイモン、ブエル、グシオン、シトリー、ベレト、レラジェ、エリゴス、カイムと言った管制塔バルバトスに統合されていた者たちだ。特に咎める事柄でもない為に、好きに生きよと野に離した私だが、それでも私も元は人類を見守る魔術式。人の世に興味がないと言えば嘘になる。彼らの得た情報を一部取得し、人の世を知る事を暇つぶしとして過ごしていた

 

だがそんな時間を過ごしていた時、転機が訪れた

 

今からだいたい200年程の前、世界に発光する赤子が産まれた。当時、私含む我々は酷く混乱したものだ。何せこの世界に神秘はあれど現代に魔術師は居らず、神代をもってして魔術師達は衰退の一手を辿り、僅か100年あまりでその姿を消した。つまり、残存する魔術はこの人間世界から消え去ったことを意味する。そこに発光する赤子、それが魔術ではないと来たのだ、驚くのは当然だろう

 

そこからは早かった。発光する赤子の様に、何かしらの特異性を持つ人間が増え始めた。彼彼女らの増え方は凄まじく、僅か100年程で世界人口の過半数を占めるに至った

 

とある魔神柱によれば、そんな特異性を持って産まれる者たちの特異性を個性と呼んでいるとか

 

【個性】

 

酷く聞き覚えのある単語だ。あぁ、私たちは、私はよく知っている。個性、それは僕のヒーローアカデミアという作品の設定だった筈だ

 

ここは、この世界は、僕のヒーローアカデミアの世界であったと?

 

そう気づいた時に、私にある1つの意思が強く流れ込んできた

 

謎の第三勢力ムーブでエンジョイしたい

 

恐らくは私の元の精神性、その意志の残りカスのようなものなのだろうか。不思議と私自身驚くほどに馴染んだそれは、ゲーティアとしての私と元の転生者としての精神性とで混ざり合った(・・・・・・)

 

結果

 

「………そうか、ハハ、そうだな……そうだ、意味もなく生き続けるのもつまらない。私には魔神王(ゲーティア)のような大義もありはしない、ならばこそ私のこの生涯、娯楽として投じてみるのもいいのかもしれん!フフフハハハハハハ!」

 

 

……こうなった。これが今の私だ

 

 

「原作が、原作が始まったのだ、遂に!長く生きた私の生の中で、最も長い200年だった!」

 

 

故に、私は歓喜する。主人公の舞台となる雄英高校にはロマニ・アーキマン(ブエル)レフ・ライノール(フラウロス)が入っている。内側から支えるもよし、裏切りとして曇らせるもよしだ。柄にもなく心躍る

 

 

「魔神王の称号は捨てよう、意味が無い」

 

「我はゲーティア!謎の第三勢力系転生者ゲーティアである!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




◆ゲーティア(ゲの字)
ゲーティアとしてヒロアカに転生。転生者だが、漠然とした“自分は転生者だ”という自覚があるだけで、長く過ごす内にゲの字に精神性が殆ど引っ張られた。しかし、突如として降り立った天啓により転生者の元々の精神性が息を吹き返し、今のゲの字の人格と転生者の人格が混ざった。転生者は謎の第三勢力大好き勢、Fateもヒロアカも知ってる

◆ロマニ・アーキマン(ブエル)
ソロモン72柱、魔神柱の内一柱のブエル。変容により肉体と精神性をロマニに変化させ馴染ませたことでほぼロマニ。ただ元々はゲの字から派生した分裂人格なので根本に謎の第三勢力大好き転生者の思想が根付いている

◆レフ・ライノール(フラウロス)
普通にレフ。見た目も性格もレフ、ロマニとは良き友人関係。ロマニ同様、根本に謎の第三勢力(以下略)

◆ソロモン王
この世界のソロモン王。魔術でゲの字と72柱を作った凄い魔術師。Fateのソロモンより人間味溢れてるいい性格をしている。千里眼も万能の指輪も無いが、この世界で魔術王を名乗っても文句の言われようのないほどの実力者。普通に寿命でポックリ逝った、享年126歳
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