「………はぁ、なぜ私がこんな…」
私はレフ・ライノール。知っての通りだと思うが、細かく言えば
そんな私だが、今は雄英の校門付近に立っている。分かりやすく言えば護衛、子供たちの安全の為に私を此処に配属したのだとか。メンドイ事この上ない
アレか?私もロマニの様に無個性で通せば良かったのか?だが仕方ないだろう、ロマニはその医学の知識と腕前で雄英に勤めることができるが、私はロマニの様に特筆した何かが有るわけでもない、歴史、薬学、天文学に精通してはいるがそれは雄英の教師で事足りる。だからこそ特別臨時教師という形でここに来ているのだ。個性【魔術】と偽り申請を受けた、俊典にも昔そう説明してしまった、どうしようもないだろう
「……ん…あれは」
そんな事を考え耽っていると、少し離れたところでもじゃもじゃ緑髪の少年が転びかけ、それを茶髪の女子が個性を使い助けているところを目撃する。恐らく、いや間違いなく彼がこの世界の中核にして主人公の緑谷出久だろう。そして助けた女子は麗日お茶子か
更に少し良く見渡してみれば、
ふむ、原作のヒーロー科A組の生徒たちだ。その顔ぶれに少々気持ちが高ぶる
緑谷出久。彼は主人公だ。そして、我らの計画の特大被疑者であり、同時に最大の役者である
我々の目的には演者が必要だ
我々の目的には舞台が必要だ
我々の目的には演出が必要だ
緑谷出久とは一般的な人間性とまともな感性を持ち合わせておらず、完成されたヒーロー像の生き写しのような人間だ。彼は誰にでも手を伸ばす、見返りを求めず自分を棄てて人を助けられる人間性。かのオールマイト信者ステインが認める程の、恐ろしいヒーロー適正を持つ少年
だからそこ目をつけた
我らが目的は【謎の第三勢力ムーブをする】というなんとも馬鹿らしく阿呆らしい幼稚なものだが、それでも心躍るのは確かだ。本来の私ならば鼻で嗤ってしまうのだろうな、つまり、それ程の根深くに転生者の者の意思が有るのだろう、それととてつもなく強い意思が。その転生者というのは随分と拗れている変わり種の人種だったのだろう、
第三勢力とは。第一勢力、第二勢力が居なければ話にならない。前提を、土台を設定するのだ。第一勢力を緑谷出久筆頭に原作のヒーロー達。第二勢力を死柄木弔率いるヴィラン連合軍へと
「本体の計画では…私の使い時は随分と早いようだ。では私の役割は、それまでに彼彼女らと深い信頼関係を築いて置くことだな」
だが心配することもないだろう、何せヒーロー科に選ばれる者たちだ、コミュニケーション能力が高く、適応力が高く、極めて善性の人種の集まりだ
そんな子たちを騙し、裏切ると言う事実に少し心が痛むが。それでも私はやり遂げる
“「なぁレフ、君嘘つくの向いてなさすぎないかな?原作だとあんなにやってたのに君と来たら……わっかりやすい嘘に誤魔化し方!表情で丸わかりだから直しといたほうがいいぞぅ?」”
ふと、ロマニに言われた言葉が頭によぎる
………そうだな、その時が来た時の為に、今から演技の練習でもしておくとしようかな
――
「おい、おーいレフ!」
「…っと。おや、ロマニじゃないか」
「何やってるんだい校門で、もう試験生は皆帰ったぞ?君がなかなか帰ってこないから様子を見に来たら…」
ロマニの呼び掛けに気が付くとあたりは日が落ちかけていて、空が夕暮れの色に染まっている。どうやら随分と長い時間考え込んでいたようだ
「君考え始めると長いよねぇ、思考加速なり思考分割なりすればいいのに……」
「人らしく人間らしく、それが私のモットーでね。それに、純粋に考えることが好きなんだよ私は」
そう返せば、ロマニは呆れた表情をする
「まぁいいよ、うん。あーそうだ。レフ、根津校長が呼んでたから言ってくるといいよ」
「そうかい?」
「そうそう、それで僕はお前を探してたんだからな?」
はて、私が呼ばれるとは何があったのか
疑問はあるが、取り敢えず私はロマニに言われた通りに校長室へと足を運ぶのだった
■
「実技総合結果、出ました」
「おぉ、まさか救助P0で1位とはなァ!」
雄英の教師達が集まってモニターを食い入るように見ている。そこには実技試験の各受験者の獲得Pがポイント順に表示され、1位に名を残しているの受験者の名前は爆豪勝己。敵Pと救助Pの合計で評価されるのだが爆豪勝己は救助Pが0にも関わらず1位を獲得している。それは贔屓目なしに見ても凄いことで、側にいた
「それと対照的に…敵P0で8位」
8位には緑谷出久という名前がある。原作通りに上手くやってくれたみたいだ
「
「ロマン、まぁお前はそう言うだろうな」
「まぁ医師の端くれとして彼のやり方は異議を申し立てたいんだけど!」
「自分ヲモ壊ス超パワー、カ…痛々シイナ」
「でも、そういうこと含めて相澤くんにはお願いしたいんだよね」
「アーキマンさん………ハァ、やっぱり俺の受け持ちですかコイツら」
「その通りなのサ!追々クラスは決めていくが、この1位の子と8位の子は相澤くん、やってくれるね?」
うん、原作通り相澤くんが担任のA組になったね。良かった良かった
「………アレ?ねぇロマン君、レフ知らない?」
「レフ?」
そんな時、オールマイトが声をかけてきた。そう言えばさっきからレフ居ないな
「あ、そう言えばレフくんは朝に外の警備に当たらせてたのサ!でももうとっくに約束した時間過ぎてるから……帰ってないところを見ると、また何処かで黄昏ているんじゃないかな?ロマンくん、探してきてくれないかい?」
「僕?」
「そうなのサ!ついでにレフくんに校長室で待ってるようにも伝えておいてくれたまえよ!HAHA!」
■
「……で、なんの用事だったんだいレフ」
「あー、そういや呼ばれてたんだっけか!」
先程の描写から暫く経って今現在。僕とレフ、それに相澤くんとひざしくんは職員室にて集まっていた
「いやなに、私もとうとうヒーロー科に関わることになるらしい」
「それって」
「ヒーロー科1年A組、その特別顧問として随時対応しろだとさ。全く、要するに雑用じゃないか。まぁ相澤、不本意だが宜しく頼むよ」
どうやらレフはA組に配属されたらしい。元々普通科を中心に広く様々な講義を行っていたが、それが功を制したのかもしれない。生徒たちから「教え方がスムーズで分かりやすい」「聞くと結構何でも知ってる、博識」「どんな生徒にも笑顔で接してくれるいい人」と好評で、最近ではレフ教授なんて呼ばれ方もされ始めた。レフがそう呼ばれてるって知った時は笑ったね
「………そうですか、お互い頑張りましょう」
「おいおい愛想悪いぞ消太!にしても相変わらず面倒くさがりだなァレフさんも!!」
「レフがそうなのはいつもの事じゃないかいひざしくん?」
相澤くんは相変わらずの態度だけど、レフはいつも通りだ。レフは面倒くさがりというか何というか、自分が想定していない事態を自分で処理する事が嫌いなだけだ
「それはそれで腹が立つぞロマニ」
ぼそりと聞こえた返しが聞こえないように耳に蓋をする
「あの〜…ロマンさん、そのひざしくんって言い方………そろそろ辞めてもらえません…?」
「え?なんで、いいじゃない自分の名前なんだし」
「………ッス」
「はぁ…お前アーキマンさんに頭上がらねぇのにそんなんで行けるわけないだろ山田」
「イレイザー!?お前こそ山田呼びはヤメテ!」
ひざしくんの突然のお願いに何故かと問えば、少し落ち込んだ様子で返事を返された。それを見た相澤くんが呆れて返す
「やっぱりひざしくんは面白……弄りがい………うん、面白いよね!」
■
「最下位だった者を除籍処分としよう」
「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」
■
「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」
「なに言っちゃってんの相澤くん!?」
「あんまり大きな声出さないで下さいよオールマイト」
「うわびっくりした!え、ロマン君!?」
時間は飛んで現在は入学式。相澤くんのガイダンスをすっぽかした体力測定を、建物の影から隠れて覗き見している
「え、いつからいたの?」
「ついさっきですよオールマイト」
まさか気が付かなかったのだろうか。まぁ弱ってるし仕方ないではあるけれど、弱体化が予想以上に酷いその様子に少しだけため息が出る
オールマイトはヒーロー側の最大戦力だし、これは調整が必要かな
「なんでいるのさロマン君」
「僕はあの緑谷という子が医師として心配で、それと相澤くんが来てないから見ておいでと根津校長から言われまして。それとしてオールマイトは何故?」
「緑谷少ね………ゴホン!相澤くんが居なかったからさ、私もロマン君と同じく気になっちゃったのさ!」
オールマイト誤魔化しが下手だなぁ!どっかの誰かさんを思い出しちゃうじゃないか*1
「ねぇオールマイト、緑谷くん、今のところいい記録は出せてないみたいですね」
「え!?あ、あぁそうだね!因みになんで緑谷少年を名指しで言ったか聞いてもいいかな?」
「だって明らかに緑谷くん目当てでしょ貴方、さっきから緑谷くんの一挙手一投足にソワソワしてるし……似たような個性ですし共感でも湧きました?」
「あー、うん………ソダネ」
そこではっきり否定しないから勘繰られるんだぞNo.1
「お前の個性を消した」
「そうか…見た人の個性を消す!アングラ系ヒーロー、イレイザーヘッド!」
「よく知ってますねぇ緑谷くん、相澤くんって全然メディア出ないから知ってる人少ないのに」
「うん…緑谷少年のヒーローの知識は凄いからね、いや本当に」
緑谷くん、わざわざヒーローの特徴とか個性とか戦い方とかをノートにまとめてたりするからそこら辺のヒーローオタクと一線引く凄さしてるよね。その観察眼は素直に尊敬するよ
「SMASH!!!!!」
緑谷くんのその掛け声と共に、途轍もない突風と共にボールが遥か遠くまで飛んでいく。遠目でよく見えないが、確か腕じゃなく指に力を纏って投げてた筈。それでも激痛なのは確かだろうに、やはり恐ろしいまでに精神が強靭だ、ただの学生のメンタルじゃない
「Ou……マジかよ緑谷少年!!!」
「まだッ…やれます!!!」
「コイツ…!」
相澤くんもそんな緑谷くんに驚いた様子。側にいたオールマイトも唸っている
ただ、そんな盛り上がってるところ悪いけど、僕は医者として彼のやり方を認めるわけには行かない
「はぁ…」
もう自分の認識以外で自分を魔神柱だと思えなくなってきた。流石に
「無理しすぎないでほしい」「どうか怪我なく終わってほしい」「もっと自分を大事にしてほしい」
これらは間違いなく僕の本音だ。そして、
敵対する。それは
ただ、まだその時じゃない。それだけ
「ねぇ見たかいロマン君!緑谷少年ってば凄いだろ!」
オールマイトを見ると、何故か緑谷くんのやった事で胸を張っている。自分が育てた後継者なのは分かるけど、子供かな?そんな自慢してたらバレるでしょ……あ、だから轟くんとかにも勘付かれてたのか。爆豪くんは……緑谷くんが勝手に暴露しただけだから………師弟揃って何してるんだろ
「うん、凄いですねぇ彼」
「………何してんですかあんたら、暇なんですか?」
「え、相澤くん!?」
「あ、相澤くん、お疲れ様〜!」
相澤くんが来てた。どうやらもう体力測定は終わったらしく、生徒たちは各々着替えに戻った後だった。オールマイトは相澤くんの除籍発言に詰め寄っている
「でも除籍しなかった、ってことは、彼らに光るものを感じたんだろ?」
「まぁ………ギリギリですけどね」
「相澤くん、緑谷くんのところに行ってくるよ。彼の指心配だし」
「あの婆さんだけで大丈夫でしょう」
「まぁ念の為、それと彼のやり方に医者として1つ文句をね!」
「あぁ……」
そうして医務室へと向かった。そしてしっかりリカバリーガールと一緒にお説教をした
◆レフ・ライノール(フラウロス)
ヒーロー科1年A組に配属決定!やったね、これで色々関われるぞ!本人は面倒臭いことは大部分ロマニに押し付けようとしてたのに自分がその立場になりそうで嫌嫌。嘘がとても下手らしい
◆ロマニ・アーキマン(ブエル)
魔神柱としての己がほとんど残ってない悲しき獣。原作初期のロマニ・アーキマンに達観を合わせて性格を少し黒くしたような性格をしている。本来のブエルは結構ゲーティア寄りな性格をしてたりする
次回はデクの視点になるかも