初めまして、僕は緑谷出久です。色々と言いたいことがありますが取り敢えず――
「もう二度とそんな個性の使い方はしないこと、これ絶対遵守!いいね?」
「え、あ、いやでも」
「い い ね ?」
「はい」
「はぁ…そいつの言ってることは本当にその通りだからね。アンタ、そんな使いかたをぽんぽんしてたら後遺症が残るよ」
「いいかい緑谷くん、自分大切に!だよ!」
医者の御二人に詰められています
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「はい、君たちの担任の相澤消太です。君たちが静かになるまで8秒もかかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
「「「担任!?」」」
「まぁまぁ、8秒で静かになったならいいじゃないか相澤くん」
イモムシのような寝袋から出てきた男性――相澤消太――は、なんと僕たちの担任教師だったようで、クラス中がどよめく。そんな相澤先生の隣にはシルクハットの似合う緑色のタキシードを着た男性が居る
「えっと、そっちの…相澤先生?は分かりましたけど、じゃあそっちの方は一体…?」
「言われてますよ」
「おや、そうだね。私はレフ・ライノール、ヒーロー科1年A組の特別顧問さ。君たちとは今後とも関わりがあると思うから宜しく頼むよ」
そう言って頭を下げるレフさん。優しそうな表情と紳士的な口調が印象に残る人だ。どうやら2人ともが僕たちA組に関わる教員だったようだ
「さて早速で悪いがお前達……
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「個性把握テスト?」
「ガイダンスは?入学式は!?」
誰かがそう首を傾げ、声を上げる
「ヒーロー科にそんなことやってる暇はないよ。雄英は自由が売り文句、それは
相澤先生はそう言い放つ。確かに雄英は自由が売り文句としてはいるけれども…
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学時代から個性禁止の体力テストはやっていた筈だ………全く、国は未だ画一的な記録を取って平均を作り出している。実に非合理的だな、それもこれも――」
「おいおい相澤、愚痴は辞めてくれよ。グチグチしてても生徒たちが着いてけないからね」
「あぁ…それもそうか、まぁその事は追々…」
……なにか聞いちゃいけないことでも聞いちゃったかな僕たち。なにか語っている時の相澤先生、表情が死んでたんだけど………まぁ、なにも見なかったし聞かなかったことにしておこう
「んじゃ爆豪、中学の時ソフトボール投げの最高記録は?」
「67m」
かっちゃんは個性を抜きにしても身体能力が高い。中学生の全国平均を越える数値がその証拠で、個性有り無し関係なくかっちゃんは凄い。かっちゃんがそう言うと、相澤先生が計測用のボールを渡す
「よしやってみろ」
「よし…んじゃァ………死ねェ!!!」
(((死ね…?)))
皆と心が重なった気がした
かっちゃんが個性を使い爆破させ、その飛距離を更に伸ばす。爆風に煽られたボールは遥か曲線を描き遠くへと飛ぶ。相澤先生が見せた結果には700mの文字。クラスが盛り上がる
「個性把握テスト、なるほど……先生方に一任されていると言うわけか!」
「楽しそう!!」
「個性全力で使えんのかよ!流石だぜ雄英!!」
「楽しそう……お前ら、この三年間をそんな心構えで過ごすつもりか?」
「よし、なら成績最下位は除籍にするとしよう」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
こうして、地獄の個性把握テストが行われた
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「不味い……」
そうして個性把握テストが終わり、僕は悲観していた。何故なら僕が最下位だったからである
いやまぁ分かってたよそのくらい、僕はオールマイトの個性を受け継いだからなんとか受かれたけど、他の皆は自分だけの力で合格を勝ち取った凄い人たちだから。いくらオールマイトの個性を受け継いだからって僕が短時間努力しただけじゃ追いつけないことくらい分かってる
でも、そんなブルーな気持ちは相澤先生の一言で離散する事になる
「因みに除籍は嘘な、やる気を出させるための合理的虚偽ってやつ」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
「少し考えればそのくらい分かりますわ…!」
えっ嘘?ゴーリテキキョギ?
「成る程、コレが雄英…!」
「いや関心するとこじゃないだろ」
相澤先生の一言でクラス全体が浮き足立ち騒ぎ出す中、先生の隣に立っていたレフさんが僕に近づいてくる
「おめでとう緑谷くん。いやぁホントに、除籍宣告されなくて良かったね」
「え?いやでもさっき合理的虚偽って……」
「いやいや、相澤はやると言ったらやる男だよ。実際、除籍する気だったろうし……ね?去年だってクラス丸ごと除籍したんだから」
「え゙」
レフさんが何気なく放ったひと言に凍りつく
「それでも除籍を撤回したってことは…君に見どころを感じたわけだ」
「見どころ、ですか?」
「君が最後に見せたあれだよ、きっとね」
「何してるんだレフさん、戻ってきてくださいよ。アンタやる事あるでしょ。それに緑谷、早く着替えてこい」
「おや、呼ばれたか。じゃあ私はこの辺で……君は、医務室に行ってくるといい」
相澤先生に呼ばれ、レフさんはこちらに手を軽く振って相澤先生の方へと歩いていった。多分だけど、あれはレフさんなりの優しさなのかもしれない
最下位になった僕への、分かりづらいけれど、励ましてくれたのかもしれない。まだ今日会ったばっかりの初対面だけど、レフさんは優しい人なんだ。そう思った
僕は去っていくレフさんに感謝を告げると、言われた通りに医務室へと向うのだった
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「………失礼しまーす」
がらがら、と扉をスライドさせる。中は医務室独特の消毒液のような匂いが広がり、テーブルの場所には背の低いおばあちゃん――リカバリーガール――と白衣を着た青年が座っていた
「ってあーー!ようやく来たね緑谷くん!ほらちょっと怪我したところ見せて!」
「え、あ、え、え???」
青年が僕に気がつくと急いで駆け寄り、指を素早く素早く手当てしていく。その動作に一切の淀みもなく、遅れもなく、そこには紛れも無いほどの医者としての技量の高さがあった
ものの数分もすれば完璧な処置が終わった
「……………うん、もう良いかな」
「あの、貴方は…」
「あれ、そう言えば名乗ってすら居なかったかな!?まぁ取り敢えず自己紹介。僕はロマニ・アーキマン、しがない普通のお医者さんだよ」
「お前さんが普通だと、他の医師たちが泣き叫ぶだろうねロマン」
リカバリーガールが近づいてそう言い放つ。白衣を着た青年――ロマニ・アーキマン――さんは不思議そうに「そうかなぁ」と頬を掻く
「何故か皆からDr.ロマンと略されていてね、君も気軽にロマンと呼んでくれていいとも」
「えっと…じゃあロマンさん?」
僕がそう呼ぶと本人は満足そうな笑みを浮かべる
「えっと、ありがとうございました」
「いいさ、医者の役目だからね。今回はリカバリーガールの個性を使うほどの怪我じゃなかったからいいものの…怪我は控えるように」
「あ、はい」
有無を言わせない迫力を感じ、僕はすぐに頷く。その答えに納得したのか、ロマンさんはまたにこやかな笑顔に変わる
そうして、僕は気になったあることを口にする
「聞きたいんですけど……なんで僕の名前知ってたんですか?」
「そりゃ、ロマンがアンタの行動を見てたからさ」
「え?」
どうやらリカバリーガールが言うには、僕らの個性把握テストをロマンさんは見ていたらしいのだ。そこで僕が個性を使ってボールを投げて自身の個性に肉体が耐えきれず指を痛めたのを知っていて、それで僕が医務室に来るのを待っていたというのだ
「僕としてはその場で治療したかったけど、そこは相澤くんの判断に任せたよ。もし本当にヤバくなったら急いでここに連れてくるだろうし。ってか、僕は君のその個性の使い方に少し言いたいことがあるんだよね」
「え」
「さて、緑谷くん。
ちょっと時間ある?
あるよね???」
見るからに僕怒ってます、という表情をしながら、僕の肩にぽんと手を置くロマンさん。そうして、流れるように説教へと移行した
――数十分後――
「もう二度とそんな個性の使い方はしないこと、これ絶対遵守!いいね?」
「え、あ、いやでも」
「い い ね ?」
「はい」
思わず反論しそうになるが圧により黙らされる。説教開始から数十分ほど経過しており、そろそろ足が痺れてきた。途中から正座させられてたから、慣れてない正座は足に来るものがある
「はぁ…そいつの言ってることは本当にその通りだからね。アンタ、そんな使いかたをぽんぽんしてたら後遺症が残るよ」
後ろから呆れたようにリカバリーガールがそう言う。まさしく正論なので何も言えない、ロマンさんも「全くだ」と言わんばかりだ
「いいかい緑谷くん、自分大切に!だよ!」
改めて注意される。その目には怒りと優しさが溢れていた。怒りは僕が自爆覚悟で個性を使うのに躊躇が無さすぎるから、優しさは単に僕を案じてくれているから
そんなこんなで、長かった説教が終わったのだった
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こちらゲーティア、こちらゲーティア。フラウロスよ、フラウロスよ、こちら管制局である。応答せよ、応答せよ
神殿の玉座にて座りながら、瞼を閉じる。意識を外へと飛ばし、念話をフラウロスへと送り続ける。特に意味は無い。ある程度念話を飛ばしているとフラウロスから苦情が飛んでくるので、ここが引き時と念話を辞め、フラウロスと視点を同期して過去を観る
私はゲーティアと成った者。原作開始とブエル、フラウロスからの連絡により知ったので、今現在普段よりも楽しく覗き見をしている者である
フラウロスの過去視点を見てみれば、そこには遥かな過去の記憶に埋もれた残骸の欠片、私の知る原作、その場面がありありと映し出されていた
あれが
我が理想、我が運命。元の私、魔神王ゲーティアを打ち倒した
緑谷出久、我々がこの世界で見定めた我が運命
『まだッ…やれます!!!』
『コイツ…!』
自身でも抑えが利かない超パワー。肉体が力に打ち負け、力を使うたびに自身の肉体を損傷する諸刃の剣
相澤消太は言った。力を使えば動けなくなると。敵1人を倒して木偶の坊になるヒーローだと。その言葉を噛み締めしかし抗い、「そうではない」と示してみせた
なんという頑なさ、なんという、強い渇望だろう
「素晴らしい…!」
あぁ、だからこそ。我々を阻むに相応しい
オールマイトも良いだろう、だがあれは既に死に体だ。それに彼には
他のヒーロー、その卵、まだ見ぬ光もあるだろう。だがしかし、緑谷出久、彼を我々は見込んだのだ
既に種は撒いた。あの者の計画に乗じるのも癪だが、それが一番カッコイイから仕方の無いこと。計画は手筈通りに進んでいる。今のところ想定外はない、全て予定調和だ。それに、私の出る幕はまだ先ではある。だからこそ今をこの
私は、黒幕であるのだから
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「……で、ここは…あー、はい、コレでお願いします」
「……………」
「そしたらここで……どうかしましたかレフさん」
「あ、あーいやなんでもないよ相澤、うん、なんでもない」
「?」
職員室にて、生徒名簿とそれぞれの生徒たちの書類、授業カリキュラム、その他諸々……それらの書類整理を私と相澤の二人で行っていた。相澤が何度か話しかけてきたが、それを虚ろに曖昧に返事を返す。そんな私を、不思議そうに見てくる。すまない相澤、だが
〘こちらゲーティア、こちらゲーティア。応答せよ、応答せよ!こちら統括局ゲーティアである、魔神柱フラウロス、応答せよ〙
〘…あのホントに煩いのですが
〘いや、要件はこれっぽっちもない〙
〘……………っ!っ!!!〙
「不調ですか…?取り敢えず何かあるんなら婆さんかアーキマンさんとこに行きます?折角なんで付き添いで着いてきますよ」
「いや……いい、いいんだ相澤、本当にいいんだ………ヤバくなったら自分で行ける、それよりも今日付けで終わらせないと行けない仕事がまだ残っているだろう…?」
「あーいやまぁ…」
〘フラウロス、折角だ、しりとりでもしようじゃないか。ではまず私から……
〘初めはりんごからではないのかこういうのは!?というか今は業務を全うしている為、できれば後にしてくれると助かるのですが!〙
〘ならこちらから念話で勝手に話し続けよう、なに、気にするな〙
〘だからァ!この際私以外なら誰でもいい!そうだロマニにでもちょっかいかけに行け統括局!!!〙
「……………っ!っ!!!」
「………?」
そうして私は案の定集中することができずに定時まで終わらせられず、残業が確定したのだった
◆緑谷出久
レフとロマニの事を「優しい人」だと認識した主人公。恐らくこれから原作以上の苦難が待ち構えているであろう被害者
◆ロマニ・アーキマン(ブエル)
医者としての責務を全うしました
◆レフ・ライノール(フラウロス)
よく統括局からのいたずら電話に困らされている。弄りやすい性格をしているが、それと同時に弄り甲斐もあるのでゲーティアも辞めることはない
◆ゲーティア(ゲの字)
出番が来るまで観客席から観戦。暇な時はフラウロスを突付けばいいと考えている