ゲの字、人の世に生を受ける   作:ばぐひら/Baguhira

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筆が乗ってる


5話 襲撃

 

「ヴィラン!?この雄英に!?馬鹿だろ!!!」

「いや、ここは雄英だぞ?こんな簡単に侵入できてるのが先ずおかしいんだよ、それに侵入したってのに警報の一つもありゃしねぇし教師たちの救援が来るわけでもねぇ。電波は途絶されてるし、相手にそういう個性持ちがいんだろ」

 

 

轟焦凍が語る。話しながら、懐から取り出した連絡用機器らしい物を指でタップしているが、ソレは一切の無反応を貫いている。電波を遮断か、確かにこの文明社会においては襲撃時になによりも効果的な一手だ

 

 

「馬鹿だが阿呆じゃねぇ、きちんと計画を立てて何かしらの目的を持って行動してる」

「上鳴、お前の個性で連絡試せ!他の者も使える連絡手段を試せ!」

「先生達は!?」

「…あいつらを片付ける」

「でも、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは…」

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

 

そう言い、ヴィランの大軍へと単身突撃をする相澤。ヴィランが一人で攻めてきた相澤を見て分かりやすく舐めた態度で応戦するが、それらの有象無象を捕縛布を巧みに使い単純な体術で捻じ伏せていく

 

その様子に焦りを感じたのか一部のヴィランが個性を使って抗おうとするが、相澤に見られた途端に個性が使かえなくなる。そんな異常事態を正しく理解するまもなく、相澤は鎮圧していく

 

 

「テメェ!」

 

 

ヴィランがバットを持って振りかざしてくるが、振りかざされたバットを捕縛布を使い防ぎ、更に捕縛布でバットを絡め取り上空へ。ヴィランが目線で追ったところを見計らい即座に捕縛布を使い捕縛、息つく間もなく捕縛したヴィランを武器の要領で他のヴィランへと投げつける。陣形が崩れたところを殴る蹴るで制圧、常に一定の距離を取るヴィランは個性による牽制も忘れない

 

当にプロヒーローと言っても差し支えない戦闘技術、生徒たちは驚嘆の声を上げる

 

 

「凄い!他対一が先生の得意分野だったんだ!」

「な、なぁ…これ全部先生に任せりゃいいんじゃね…?」

 

 

しかし、現実はそう甘くない

 

 

「隙ありィ!」

「ッ!」

 

 

イレイザーヘッドは対面戦闘における戦闘能力は一般人と相違ない、あくまでも個性を封じた奇襲による即時確保を主としたヒーロー。他対一なんて以ての外、個性は戦闘能力に直結するものでは無いから結局最後は生身の戦闘能力に勝敗が左右される

 

そんな複数人との正面戦闘に圧倒的に向いていない相澤相手に、いくら有象無象の寄せ集めと言えど何度も時間をかければ集中の途切れがある

 

完全なる意識の外、避けられない攻撃

 

そこに私は待ったをかける(・・・・・・・)

 

 

――(アンサズ)

「ギャッ!あッつゥァァァァァァァァァ!!!燃え、燃えて、燃え、燃!!!」

「おい大丈夫か!?早く噴水入れ!鎮火しろ!」

 

 

火球がヴィランへと着弾し、大きく燃え広がる。燃える痛みに耐え兼ねたヴィランの悲鳴が木霊し、他のヴィランが噴水へと押し込み火は消え事なきを得る

 

私は杖をヴィラン共へと向けていて、杖の先には幾何学模様の魔法陣(シジル)が浮かび上がっている

 

 

「やはり、ルーン魔術は便利なものだな」

「レフさん、助かった」

「なに、私も援護するから好きに制圧するといい」

 

 

ルーン魔術は便利だ。効果はシンプル、発動は簡易、こと機能的で戦闘での使い勝手が良い。先程の――(アンサズ)もそうだ。火のルーン。まぁこれも只人が使えば死体すら満足に燃やし尽くせない火力しか出ないがな

 

因みにだが、流石に威力は抑えている。本気を出したらヴィランは兎も角生徒たちにまで被害が及ぶのでね

 

 

「テメェ!スカしてんじゃねぇ!」

「よくもやりやがったな!!」

「テメェも死ねやァァァァァァ!」

 

 

此方が攻撃をした為に、私も攻撃対象に加えられたのだろう。ヴィランが複数人私目掛け攻撃を仕掛けてくる。それぞれが手首が回転しドリルのようになっていたり、鋭利な金属の牙が生えていたり、無数の棘のような腕を持っていたりと様々である。どれもこれも近づくのは危なさそうである

 

 

――(ガンド)

「「「カッ……!?」」」

 

 

ので、撃ち落とす。かの遠坂の娘のガンドは岩をも砕く威力を誇っていたが、本来のガンドは呪いの類。負を遠隔で押し付ける魔術だ。現に、撃ち落とされたヴィラン達は肉体が痺れて動けなくなっている

 

 

「て、テメェ…何しやがった!?」

「ん、おや…」

 

 

ガンドで一通り一掃できたと思ったが、一人だけガンドの効きが悪いヴィランがいる。呪い…いや、状態異常に耐性がある個性とかかな?

 

 

――(ソウェル)

「なッ、炎の檻!?」

 

 

ヴィランの周囲を囲うように炎で形成された檻が出現する。そして動きを封じたところで――(アンサズ)を打ち込み沈黙させる

 

 

「さて次だ………――(アンサズ)

「ふん!残念だったな!俺は熱に耐性があるんだよ!近づきゃこっちのモノ!」

 

 

炎をものともせずに突進をしてくるヴィラン。確かにある程度の耐性を獲得しているようだ、威力を弱めた――(アンサズ)程度じゃ止められないか。ヴィランは目の前まで来て腕を振り上げる

 

 

――(カノ)

「は?………グブゥフォァァァァァ!?」

 

 

振り上げられた腕が振り下ろされるが、それを軽く躱して自身の腕にルーンを刻む。そうして拳を腹へと叩き込み、衝撃で声を荒げている男を殴り飛ばした

 

 

「格闘ができないとでも?舐められたものだね私も」

 

 

実際、遠距離からバンバン攻撃し続けてたらそう勘違いするのも無理はないか

 

 

「レフさんもつえぇぇぇ!!!」

「先生達つっよ!」

「イケイケー!」

 

 

背後方面から生徒たちの応援が聞こえてくる。全く、さながらヒーローショーか何かか?

 

 

「あぁ…?んだよ、つかえねぇなおい………黒霧、ノルマは達成してこい」

 

 

相澤と半数程の数を制圧した頃合い、奥にいる死柄木弔が黒霧に向かって何かを語り掛ける。そうして黒霧は個性を使用し姿を消す。確かワープホールだったか、行き先は………生徒たちの元

 

 

「始めまして、ヒーローの卵達」

「なっ!」

「我々は(ヴィラン)連合、僭越ながら今回このヒーローの巣窟へと入らせて頂いたのは……オールマイト(平和の象徴)に息絶えて頂きたく」

 

 

生徒たちを守る為、13号が指のカプセルを外し個性を使おうとしたその時、黒霧を爆発と拳が襲う。爆発が爆豪勝己、拳が切島鋭児郎

 

 

「おっと、危ない危ない……やはり子供といえど優秀な金の卵………」

「ッ!」

「効いてねェ!?」

「危ない!離れなさい二人共!」

 

 

爆豪勝己と切島鋭児郎の攻撃を受けた筈の黒霧きダメージは見られない。その事に気を取られている二人に13号は離れるように指示を出す。13号の個性は殺傷力が高すぎるあまり、二人が射程の邪魔になっているのだ、今13号は行動が出来ない

 

 

「私の役目は……散らして嬲り殺す!」

「ッチ!」

 

 

黒い靄が生徒の過半数を飲み込む。そうして瞬きの間、黒い霧に飲み込まれた生徒たちが消失した

 

 

「皆さん!さっきのは一体…」

「ふむ…少々予定以上に取りこぼしましたか」

「……あれ、何で俺ら」

「今、何か身体がぐぃーんって!」

「よくわからんが助かったのか!!」

 

 

今残っているのは13号、飯田天哉、麗日お茶子、瀬呂範太、芦戸三奈、障子目蔵。黒霧は此処の出入口方面で留まり続けている、援軍を呼ばせないためだろう

 

 

「すまない!片手間であのタイムリミットでは、コレほどしか助けられなかった!」

「っ!助かりましたレフさん!」

 

 

そう、本来ならばあれはワープホールでワープさせられていただろう彼彼女ら。私は矢避けのルーンならぬ危険回避のルーンを即座に刻み込んだ、その為に黒霧のワープホールを回避することができたのだが

 

……原作では無かった展開だ(・・・・・・・・・・・)、だからこそ咄嗟の判断だったが……これは…バタフライエフェクトか?

 

そうして、そんな黒霧に向かい13号が個性を発動させる。彼女の個性はブラックホール。世間ではヒーロー活動としては瓦礫などを除去するのに使っているため、災害救助に向いてるヒーローという印象だが、其の実個性の殺傷力が高すぎるあまりヴィラン相手に個性を使えない程に凶悪な個性なのだ。並大抵のヴィランでは抵抗できず塵になるだろうし、並大抵のヴィランでなくとも火力の一点で見れば彼女と正面戦闘は避けるべきだ

 

しかし、今回は相性が悪かった

 

黒霧は自身と13号との間にワープホールを作り出す。そして、もう一つの出口として機能するワープホールを13号の背後に設置する

 

 

「なっ…カハッ」

 

 

13号が倒れる、自分自身の個性により体の大半を塵にしてしまったのだ。至急手当てが必要だろう怪我を負ってしまった、もう13号はまともに戦闘は困難極まるだろう

 

 

「おい13号!」

「いいのかぁ…?よそ見して」

「ッ!!!」

 

 

13号の身を心配した相澤は、ヒーローとしては正解だ。だがその隙をヴィラン()が見逃すかというもの、死柄木弔が相澤へと接近し手の触れる距離まで近付いている

 

 

「っ!」

「おっとぉ!流石だぜイレイザーヘッド、良い反応だ………にしても、個性を無効化する個性……いいもん持ってんなぁ…!」

――(ガンド)

「んで、お前なんだよ」

「はは、生憎ヴィラン相手に名乗る名は持ち合わせていなくてね」

 

 

死柄木弔の怪訝な目線がこちらへ向う。まぁ確かに私はヒーローではないからな、雄英も然程私の情報を持っているわけではない、彼目線から見て私という人間は一番不気味だろう

 

私はロンドンにある時計塔という特殊個性学会所属、ということになっているからね。時計塔というのも我々管制塔バルバトスが人間社会に馴染むために設立した機関だし、無駄に不信感を与えぬために世間一般への情報規制はしっかりしてる。それに国の上層部に入り込んだ同胞が上手く誤魔化しをしているから例えプロヒーローであっても、公安であったとしても時計塔を調べる許可は降りない。つまり、だ。時計塔、引いては時計塔所属であるレフ・ライノールという人間に関する情報は一切がブラックボックスであるというわけだ

 

あの男(オール・フォー・ワン)も碌な情報を掴んでいないだろうし、内通者がいたとしても私の情報は得られない

 

 

「……マジでなんなんだよお前」

「ヒーロー免許は持ってるよ?でなけりゃ個性使用もままならない…まぁヒーローでは無いけどね」

「いやお前さ………コッチ側の人間だろ、なんでソコにいんだよ」

「……さて、何のことやら」

 

 

もうこの頃から洞察眼は冴えているな。まさか私の本質に気づくとは

 

 

「はぁ…まぁいいや、ところでヒーロー?本命は俺じゃない」

「な、ぐふっ……!」

――(アンサz)…ガフォ!!!」

 

 

私が何も答えないことに苛立ちを覚えたのか、背後で待機させていた脳無に命令し私と相澤を殺すように仕向ける

 

近くにいた相澤から狙われた。相澤も脳無のスピードに反応こそ出来ていたが腕でのガードごと砕かれる。そして私も同じくして殴り飛ばされる

 

 

「はっははははははは!そいつは対平和の象徴の改人、脳無だ!イレイザーヘッド、いくら個性が消せるっても何の意味もない、圧倒的な力の前じゃただの無個性だ」

 

 

死柄木弔の高笑いが響く。だが言う通り、脳無は強いだろう、僕のヒーローアカデミアという作品全体でみても、この脳無を正面から打ち破れるものは数少ない

 

 

「今ッ…俺は確かに個性消した………素でオールマイト並かよ…!」

「へぇ……それマジかい相澤、なんの冗談だい?」

「冗談だったらよかったですね…!ッ!!!」

 

 

軽口を叩く暇も無く、脳無が直ぐ様襲い掛かってくる。相澤は捕縛布を脳無相手に仕掛けるが、その純粋な力で捻じ伏せられる。十八番の捕縛布が使い物にならないと知ると格闘戦しか残っていない相澤は、しかし脳無相手に接近戦は不利だと分かっているからこその手詰まり。原作でもそうだが相性が悪いな

 

だが原作と違うところは私が居ることだ。だからこそ相澤はまだ五体満足で居られている。どうやら脳無は対オールマイトと言うだけありショック吸収に超再生を持っているが、呪いに関して言えば耐性はゼロだ

 

 

――(ガンド)

「ッ!!!」

「また、まただ!……なんなんだよお前は!」

「死柄木弔」

「あぁ?」

 

 

そこへ黒霧が死柄木弔の横へと表れる

 

 

「13号は仕留めましたが、生徒1名に逃げられました」

「は?いやいやいや…はぁ……黒霧、お前がワープホールじゃなきゃ殺してたよ…!」

 

 

おぉ、どうやら原作通りに飯田天哉が助けを呼びにいけたのだろう。これで少し経てば雄英に勤めるプロヒーロー達が……何より俊典(オールマイト)が来る

 

 

「流石にプロヒーロー数十人相手じゃ勝ち目ないからなぁ……あーあ、ゲームオーバーだ。帰るか」

 

 

今までの気迫が全て嘘のようにそう軽く言い放つ死柄木弔

 

 

「でもその前に……平和の象徴としての矜持を」

 

 

死柄木弔の目線は、水難ゾーンへと

 

 

「へし折って帰ろう!」

 

 

 

 

「……凄い」

 

 

思わずそう呟く。目の前では相澤先生とレフさんがヴィランを相手取っているのだが、そのどれもがプロの戦いだ。あの脳みそが剥き出しの大男、物凄く速いし強いし硬い。相澤先生とレフさんの攻撃を受けてもびくともしてない。もう片方の身体に手を着けているヴィランの動きも速い、僕も反応できるかできないかって速さで動いてた

 

分かってしまう、自分たちが向かっても足手まといにしかならないことが。だからこそ此処から動けない

 

すると、手を着けているヴィランの側に黒い霧を纏ったヴィランが表れ、何かを告げた

 

 

「あーあ、ゲームオーバーだ。帰るか」

「…!」

「な、なぁ緑谷、今帰るって言ってたよな?」

 

 

側にいた峰田くんが聞いてくる。うん、僕もそう聞こえた。本当に帰ってくれるのならそれに越したことはない、捕まれられないのは残念だけれど、今はそんなこと言ってる場合じゃないことくらいわかる。先生達でも勝つことができないレベルのヴィランなんだ、それに分断された他の皆も無事か分からない、四の五の言ってはいられない

 

 

「でもその前に……平和の象徴としての矜持を」

 

 

手を着けているヴィランが、此方を見た気がした

 

 

「へし折って帰ろう!」

「え」

 

 

そのヴィランは、ほんの瞬きの間に僕らに手が届く場所にいた

 

速っ――

 

 

“ずちゃっ”

 

 

「は?なんでお前ここにいんの?」

「は、はは……何で、だろうね?」

「え…?」

 

 

赤い飛沫が飛び散る

 

僕らとヴィランの間に、先程まで戦っていた筈のレフさんが居る。それに胸元から腕が生えて――

 

 

「あー、もういいわお前」

「カフッ……!」

 

 

ヴィランがレフさんの胸元に突き刺さっている腕を引き抜き、もう片方の手で首を絞め上げる。するとレフさんの首がパキパキと乾いた音が鳴り、皮膚が剥がれ落ちていく

 

 

「死ね」

 

 

「もう大丈夫!何故って?」

 

 

瞬間、声が響く。声がした方を見れば、そこには首に巻いたネクタイを引き千切りながら彼が居た

 

 

「私が来た!」

「……コンテニューだ」

 

 

その時、オールマイト(平和の象徴)が現着した

 

 

 

 

嫌な予感はしていた。その自身の直感にも似たそれ故に、柄にもなく彼を心配したものだ

 

 

「会いたかったぜ?平和の象徴、オールマイト…」

 

 

ただ漠然と、大丈夫だと蓋をした。己の心配なぞ、本当にそれは要らぬ心配なのだと

 

飯田少年から連絡を受けて、直に飛び出した。だがそこまで生徒たちの心配はしていなかった。何故ならそこには彼が居たから。彼なら余程のことがあっても生徒たちを守り抜ける筈だと信頼していたから

 

 

「どうした、顔色悪いぞヒーロー」

 

 

ヴィランの足元を見やる、そこには

 

 

「レフ………?」

 

 

己の最も信頼を寄せている親友が。その肉体に風穴を開けて血溜まりを作り、倒れ伏していた

 

 

 




◆オールマイト(八木俊典)
何?生徒たちが襲われてる?今行くぞ!って来たら見るからに死んでそうな親友を発見

◆緑谷出久
自分を気遣ってくれた優しい先生が目の前で自分を庇って死んだ、精神ダメージ高め

◆レフ・ライノール(フラウロス)
レフ・ライノールとして活動しているときは別に得意じゃないけど基本的にルーン魔術しか使わないようにしている人。自分はオールマイトのことを気の合う友人として思ってるけどオールマイトからは親友だと思われてる、微妙なスレ違い。なんか死んだくさい
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