ゲの字、人の世に生を受ける   作:ばぐひら/Baguhira

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ガチャ爆死!!!



6話 表裏

 

レフとの出会いは今から結構昔だ。それこそ私がまだヒーローとして駆け出しだったからの付き合いだし、私の最初のサイドキック(相棒)でもあった

 

 

『ん?君……筋肉凄いな、ボディービルダー?あぁいや……そんだけ強いならヒーローに向いてるだろうからヒーローを目指してみるのを勧めるよ、初対面で勝手ながらね』

 

 

初めて会ったときにボディービルダーと勘違いされたのは笑ったなあ、その後直にヒーローだって弁明した

 

レフは不思議な奴だった。私のワン・フォー・オール(個性)の詳細を、私から言ってもいないのに口からポロっと言ったときは問い詰めた。なんでもレフの個性の影響でつい、なんだとか。彼の個性、魔術は汎用性が高い個性だ。確か昔にルーン魔術という系統の魔術を使っているのだと言っていた、言葉に意味を持たせ、刻み、その言葉に宿らせた現象を引き起こす。詳しくはよく分からなかったが、大体そんな感じらしい。最初は魔法とよく間違えたけどレフから「魔法と魔術は似て非なるもの」と口酸っぱく言われた、私が魔法みたいだと比喩したときには真顔で違うと否定されてしまったな

 

レフは目が良かった、人をよく観察してからその得た情報を元に人によって適切な態度を取る。八方美人?とんでもない、彼は「他人を不快な思いにさせたくない」一心でそうやってたんだ。レフは私には口が少し悪かったが、それでも人の良い奴だった、良い奴だった、善人だった

 

そんなレフを過去一度、ヒーローに誘ったこともある。ただ断られてしまったよ。なんでも「私にヒーローは似合わない」だとさ。代わりにサイドキックならやってやってもいいと言われて手を挙げてお願いした。勿体ない、私は君ほどヒーローに向いてる人間をそう見たことがないというのに、自分はそう思っていないんだから。それも本心から

 

レフはロンドンの時計塔という組織に所属していた。時計塔についてはよく知らない、公安さえもろくに内情を知り得ていないといえばその情報の無さが際立つだろう。でもレフが所属している組織だ、それだけで信頼できた。そんな私にレフがある日珍しく少しだけ自分の身の上話をしてくれたことがあった、嬉しかった。「口外するなよ」と言われたから口にチャックをつけて、今も誰にも言わずにいる

 

レフは優秀で、有能で、頼り甲斐があって、信頼があって、不思議で、優しい、ヒーローになるべき男だった

 

そんなレフだからこそ、私は全幅の信頼を寄せていた

 

そうして最近雄英に勤めることになったときには、気がついたらレフも雄英に居たな。なんでも「俊典が教師?できるわけないだろうそんな、心配だから私も来た」だと。ド直球だったが事実その通りだったので何にも言えなかった、良くレフとグラントリノから「お前は教えるのに向いてなさすぎ」と言われていたし、そのせいで緑谷少年に教えるとき少し自信がなかったのは内緒だ

 

 

『はぁ……またか俊典』

『あ、あーいやぁ…あはは』

『……お前はNo.1ヒーローのくせして要らんところで抜けている、カバーする私の身にもなってくれ』

『ゴメンよレフ』

『いや、もういい……随分と世話の焼けるヒーローだな』

 

 

そう言って苦笑した。なんやかんや言って、私をいつもフォローしてくれた。そんな心優しく頼もしい彼だからこそ、私は友として鼻が高かった、親友として誇らしかった

 

 

 

 

「レフ………?レフッッッッッ!!!」

「おいおいおいおい……こっちは無視かよヒーロー」

 

 

視界の先には腹に風穴が空きピクリとも動かない友の姿。その傍らには全身に手を着けた異質な青年と思わしきヴィラン、その更に奥には怯えた様子の教え子。少し視線を傾けると相澤くんが脳が剥き出しの大男に身動きを封じられ、そのまま腕を折られている現場が見えた。入り口の付近にはヒーロースーツが大破し大怪我を負った13号

 

張り詰めた何かが私の中で切れた音がした

 

 

 

 

こちら観戦局ゲーt間違えた統括局ゲーティア、絶賛惨事を眺めている

 

 

『レフッッッ!!!』

『こっちは無視かよヒーロー!ッガハ!!』

『死柄木弔!!!ッグホォ!?』

『お、オール……マイ、ト………!』

『……お喋りか?油断しすぎだぜヴィラン』

 

 

驚愕と衝撃に襲われたオールマイト、そんなオールマイトを煽る死柄木弔だが、それが彼の怒りの琴線に触れたか、超スピードで顔面を手で掴み地面へ押し付ける。死柄木弔は反応できずにそのまま地面へと頭蓋を強打し、苦痛の声を上げた。そんな死柄木弔を黒霧が助けようとするが直にオールマイトの拳に吹き飛ばされる、相澤消太をいたぶっていた脳無も同様、オールマイトの拳を腹にモロに喰らい大きく吹き飛ばされる

 

明らかにオールマイトがブチギレている。原作でもキレてはいたがここまでではなかった、つまり、十中八九で(レフ・ライノール)の死が原因、だろうな

 

 

『がぁぁクソが!不意打ちとかヒーローがすることじゃねぇだろうが!!』

『不意打ち上等、それでヴィランを豚箱にぶち込むことができるならな。大丈夫か君たち』

『え、あぁ…お、オールマイト』

『オールマイトぉ!』

『ケ、ケロ…』

『…すまない君たち、少し離れていてくれ。それと、どうか気負わないで欲しい』

『ッ………』

 

 

あぁ、良い。オールマイトが、平和の象徴が、討つべきヴィラン相手に正義ではなく仇討ちの心持ちで向かい合っている。ヒーローの金の卵達が、緑谷出久(主人公)が、庇われ目の前で命を落とした大人を前に表情をゆがませる――

 

 

実に唆られる

 

 

………なんだ、そんな目で見つめるなフラウロス(・・・・・)

 

 

「……いや、なんでもない、なんでもないとも統括局(本体)

 

 

先程まで視点先に点在していた筈のフラウロスが俺の事を咎めるような戒めるような、それでいて諦めるような、そんな様々な感情が折重なった複雑な視線を向ける。先程まで死闘を演じていたフラウロスが何故この場にいるのか?視点先には激昂したオールマイトがいるが、その視界端にレフ・ライノールの死体が今でも進行形でしっかりと写っている。ではそのレフ・ライノールの死体は偽物なのか?いや、誤りだ。そこに居るフラウロスは確かにフラウロスであり、そして視点先に在るレフ・ライノールの死体もまた確かにレフ・ライノールの死体なのだ

 

早い話、我々は同一性の同接生命。フラウロスが、またはレフ・ライノールという人物が同時に点在してはならない理由にならず、理屈足り得ない。まぁつまるところ「人の理解の範疇に収まり切る訳がなかろう」というだけの話だ

 

 

「にしても、な。まさか俊典があそこまで取り乱すとは……はは、ハハハハハハ!!私も案外と私という存在を俊典の心に刻み込めていたのかな?」

「知らん、知らんが………いい仕事をしてくれたなフラウロス、展開的に盛り上がる」

 

 

原作では突然のヴィランの襲撃。敵に未来の死柄木弔(ラスボス)黒霧(最強対策兵器)黒霧(ワープホール)と数百単位の犯罪者がいたにも関わらず死者0名という偉業(奇跡)を成した。だが今ではレフ・ライノールという死者(ぎせい)が出て、俺の知る原作から明確に乖離していく

 

俺が見たいのは必然(正義が勝つ話)ではなく。泥臭く、血みどろで。奇跡(輝かしい刹那の物語)が見たい。その為に必要な犠牲なら許容しよう、それが例え我らの命であったとしても

 

ふとフラウロスが口を開く

 

 

「統括局、ロマニはどうしている?」

「ブエルは………あぁ、今は『マギ☆マリ』のブログ更新を見て阿鼻叫喚としているな」

「ロマニ……」

 

 

A組ヒーロー科と教師達の奮闘の際(原作イベント時)、皆各々が死力を尽くして活躍している同時刻。ブエル(ロマニ・アーキマン)はというと、自室に備え付けられたパソコンにて新たに更新されたマギ☆マリを開きながら悠々自適に過ごしていた

 

フラウロスは、あぁ、何かなんとも言えない目をしていた

 

 

「ん、どうやら向こうで動きがあったようだぞ」

 

 

視点先ではオールマイトと脳無の激しい攻防が巻き起こっている。弱体化したとはいえオールマイトの攻撃を耐えるように作られた脳無が強いのか、はたまた脳無相手に接戦を繰り広げるほどにオールマイトが弱っているのか。まぁどちらもだろう

 

 

『ヒーローはいつだって命がけ!ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか?』

『!?』

『更に向こうへ!Plus Ultraaaaaaa(プルス ウルトラァァァァァァ)!!!

 

 

まぁ原作通りとでも言うべきか、脳無はオールマイトの一撃により大きく吹き飛ばされUSJの天井をも貫通、されど減速の見られない脳無は最終的に空の彼方へと吹き飛ばされていく。ヴィラン対ヒーロー。その戦いは、ヒーローの勝利で幕を閉じたのだ

 

 

「相変わらずの馬鹿力だなオールマイトは」

「俊典はその馬鹿力一つで平和の象徴へと上り詰めたからこそ、馬鹿力という一点においてはこの世の全ての上に立っているからなぁ…」

 

 

まぁ流石はオールマイト、と言うことだな

 

 

「それで、私はこれからどうするのだ統括局(本体)

「フラウロス、お前は次まで待機だ。案ずるな、存外早くに出番がまた回って来るさ」

 

 

そう、それまでフラウロスは待機だ。今回は

 

自然と口角が上がっていくのがわかる。レフ・ライノールやロマニ・アーキマンは本来ならば存在し得ない人物(いぶつ)、だがそれだけに飽き足らず本筋を、この世界の決定路線であった起こり得た未来へのほんの僅かな干渉

 

【もしこの場に、レフ・ライノールが居たならば】

 

結果、相澤消太は原作程の怪我もなく。死柄木弔と緑谷出久の戦闘シーン(いざこざ)もなく。オールマイトや金の卵(生徒たち)の心にヒビを入れ。奇跡のような生還を辿った1-A組には死者1名という事実が刻まれた

 

最早、時を待つばかりでなく。賽は投げられてしまった

 

 

「なぁフラウロス、これから面白くなる――いや、面白くするぞ。我らが目的、悲願(謎の第三勢力ムーブ)の為に」

「あぁ…そうだな」

 

 

フラウロスもニヤリと笑う、その視線は別時空(惨事)へと。コイツは少々人間臭い部分があるが、それでも根は魔神(我々)だな。友の歪んだ顔を見て、そこまで悪辣な笑みを浮かべるのだから

 

 

「光帯を廻せ。魔神どもよ、凝固せよ、臨界せよ、凝視せよ、現界せよ」

 

 

レフ・ライノールの死は始まりの狼煙だ。漸くらしく活動しようではないか

 

さあ見ていろ、貴様等(せかい)の度肝を抜いてやる

 

 

 

 

「……ロマン君、レフは」

「残念だけど、うん………」

 

 

医務室から出てきたロマン君に話しかけるが、暗い表情で現実を叩きつけられる

 

 

「そう、か……そうか…………ッ」

 

 

握りこぶしが強く握りしめられる。ロマン君の事だ、普段はのほほんとおちゃらけた彼だがこういう時に巫山戯ない事は重々承知だ、出来る事を、打てる手を全て打っただろう。彼は医療という分野においてトップに上り詰める事が出来る程に才能と確かな技術がある。そして私はそんな彼の医者としての腕は大層信頼している、そんな彼が無理だったと、そう言ったのだ。それはつまり助かる手段が完全に無に等しいことだと言うことを示している

 

レフが死んだ

 

その事実が重く肩にのしかかる。この業界、ヒーローはヴィランを相手取ることもあるからこそ殉職することも珍しくはない。レフはヒーローではなかったが、お人好しな彼の事だ、人助けのためにヴィランと対峙することもあるだろう

 

今回は、それが起こっただけ。いつか来たるその最悪が、今回友のもとへと来ただけ

 

 

「あぁ…Shit(クソ)ッ!アイツが、レフが、その身を挺して生徒たちを庇っている間、私は呑気に何をしていた?」

「……落ち着いて下さいオールマイト、少し、外の空気を吸ってきたらどうですか?」

「…すまないロマン君」

 

 

ロマン君はレフと最も親しい友人だった、レフがよくロマン君と会って話していたのも知っている。だが、だからこそ心苦しい。友を失い苦しいだろうに、悲しいだろうに、それでも私を案じてくれているから

 

私はロマン君に言われた通りに外に出る。生徒たちは各々と帰宅し、もう生徒たちは見かけない。外はもう日が落ちかけていて、嫌に夕焼けが眩しく感じる

 

 

『世話の焼けるNo.1ヒーローだな本当』

『おい俊典、ロマニから良い饅頭を貰ったんだ(盗んだんだ)、一緒に食べないか?』

『最近は教授だなんて言われ始めてな…まぁ、悪い気はしないが……』

 

 

その日私は、一人の親友を失った

 

 

「あ、の…………オール…マイト」

「っ…緑谷少年」

 

 

放心していた為に声をかけられるまで気がつかなかったために少し驚いた。声をかけられそちらへ向くと、そこには緑谷少年が居た。その瞳は少し影を差しており、いつもの活気は感じられない

 

 

「レフさんは、どうなりました?」

 

 

そう、言葉を零した




◆ゲーティア(ゲの字)
ワクワク・ドキドキ

◆レフ・ライノール(フラウロス)
原作レフより人間臭いレフ・ライノール。曰く「優しいお人好し(オールマイト談)」。だがやはり根は魔神(ゲの字)、曇ったオールマイトを見て満天の笑み

◆ロマニ・アーキマン(ブエル)
この世界に何故かマギ☆マリがあった、見事にハマった。今回レフの死体(本物)をアレコレした

◆オールマイト&緑谷出久(生徒たち)
被害者

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