バスを乗り継いで、聖地ベナレスに到着した。
ホル・ホースに利用されたネーナさんも一緒だ。彼女はこの街に住む貴族の娘さんだそうで、ここでお別れになる。
道中、ポルナレフは延々と君は騙されてる、目を覚ませと説得してたけど、反対されるとかえって燃えあがったりしないかなぁ?段々とあんな奴は忘れて自分にしないかと口説きモードになってたけど。
ジョースターさんが、大きくなったできものを病院で診てもらうことになった。
ジョースターさんは1人で大丈夫だと言うけど、単独行動はやっぱり危険だよね。一緒に行くと言うと、ジョースターさんもちょっとだけ嬉しそうだった。
腕のできものは手術で切除することになった。あー、塗り薬でどうにかなるレベルじゃなかったんだ。病院きて正解だ。
処置室の前で待つ事にしたけど――なんだろう。なんとなく嫌な予感がする。今までの旅で、ここで襲撃されるの⁉︎があまりに多かったからかな。……医者がスタンド使いと入れ替わってるとかさ、ありそう。
こっそりドアを開けて中を覗く。
ジョースターさんは切除するのを直視したくないんだろう、顔を背けて目を閉じている。メスを持った医者が、静かにジョースターさんの腕に触れていた――普通の処置だ。考え過ぎだったかな。
――考え過ぎじゃなかった!ジョースターさんの腕のできものが医者からメスを奪って切りつけようとしてる!
「危ない‼︎」
お医者さんをジョースターさんから引き離して、とっさにできものを引っ叩いた。床にメスが落ちる――うわ、刺されなくてよかった。
「よくも邪魔したわね、このクソアマ!パパも酷いじゃないの、あたいを捨てようだなんてさ!」
――シャベッタアアアア‼︎‼︎
声にならない悲鳴が出た。喋った⁉︎ 今、できものが喋った⁉︎
お医者さんも腰を抜かしたまま逃げ出した。…誰だって逃げるよ、これは。
「な…なんだこいつはッ⁉︎」
「あたいが『
やっぱりスタンド使いの攻撃だった。
そして人面瘡、エンプレスから殺害予告いただきました!
でもこれ、どうすればいいんだ。医者が切除しようとしたってことは、スタンド使い以外にも見える物質一体型、でも一体になってるのはジョースターさんの腕だ。
部屋の外が騒がしくなってきた。医者が逃げたせいで、警備が駆けつけてきたみたいだ。
「とりあえず、ここを出るぞ!」
「はい!」
応急処置で腕に布を巻いて病院を出た。
「仕方ない、こりゃあ切り離さんと。ポルナレフのところに戻るぞ」
うん、ポルナレフなら寄生された部分だけをキレイに切ってくれるだろう。……麻酔なしで。うう、あんまり考えたくない。
ホテルに向かうその途中、突然布を巻いたエンプレスが叫びはじめた。
「ナニするのこのエロじじい!離してよ!誰か助けて!誰かーッ‼︎」
「「えッ」」
ギョッとして顔を見合わせる。なんてこと言うんだ、コイツ!
人が集まってきている。このままじゃジョースターさんがとんでもない誤解を受けちゃう。
「こ、こいつ、黙らんかッ!」
「キャ――ッ!助けてェ‼︎」
「ま、マズイ!晶くん、わしから離れてくれ!」
「は、はい!」
駆け寄ってきた人たちに大丈夫か、何かされたのかと心配された。ありがとうございます、でも誤解なんですー!
そうこうする間に、ジョースターさんを見失ってしまった。近くの建物を登って上から探して見よう。まだそんなに遠くに行ってないはず――いた!
……なんか、エンプレスが大きくなってない?手が生えてる…あ、食べかけの鶏を捨てた。
どうしよう、近づいたらまたさっきの繰り返しになっちゃう。ポルナレフを探して連れてくればいい?
迷っている間も走り続けるジョースターさんが、道路脇に置いてあったドラム缶に腕を突っ込んだ。真っ黒ななにか――コールタールだ。
やがて固まって動けなくなったエンプレスを、ジョースターさんの荊が引きちぎった。うわー、お見事です!
「ジョースターさん!」
建物から降りて駆けよる。
「おお、見てたかね、晶くん。このわしにかかればこんなもんじゃ!」
ジョースターさんは闇雲に走ってたわけじゃない。ハーミットパープルでコールタールのありかを割り出していたのだそうだ。流石だ。とっさによくそんなこと思い付くなぁ。
「それにしても、エンプレスの本体はどこにいたんでしょうね?」
「うむ、それほど遠くない場所にいたのは間違いないが……どのみち、しばらくは再起不能だろう」
「ホテルに戻りましょう」
「ああ、全く年寄りを走り回らせおって!」
いや本当、お疲れ様です。
「なにか甘いものでも食べたいですねえ」
「ならアフタヌーンティーなんかどうじゃ?食べたことあるかの?」
「食べたことないです。わー、楽しみ!」
ウキウキ気分でホテルに戻ると、出迎えたのはうなだれたポルナレフだった。どうしたの?ネーナさんにこっ酷くフラレでもしたの? 元気だしなよ! 一緒にケーキでも食べる?