The Blank Card   作:カナヤン

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運命の車輪

 

テレビでしか見たことないような悪路を走っている。舗装されてないってだけじゃあない。道幅が狭いしガードレールも無い。

断崖絶壁の山肌を縫うように続くあの道――。

対向車が来るたびにドキドキものだ。

もうすぐインドの国境を越えて、パキスタンに入る。混沌渦巻く、何もかもがエネルギッシュなインドともお別れだ。

 

「俺はもう一度インドへ戻って来る、アヴドゥルの墓をきちっと作りにな」

 

ポルナレフが静かに呟き、みんなもしばし沈黙する。

………。……わかってる、わかってるけど!ポルナレフは嘘つくの下手だしすぐ顔に出る、本当のこと伝えたら敵に秒でバレそうだよね。でもだんだん良心が痛むんだよ!アヴドゥルさん、早く戻って来て!

 

ポルナレフがノロノロ運転だった前の車を乱暴な運転で追い越す。おいおい、こんな悪路でそういうのよくないよ!

 

「げえッ!」

 

突然、ポルナレフが叫んで車を止めた。外を見ると、シンガポールで別れたアンちゃんがいた。なんでこんなところに⁇

 

「やあ、また会っちゃったね!乗せてってくれる?」

 

結局、ヒッチハイクをしていた彼女を乗せることになった。あのまま置いていって碌でもない人間に出くわしたら、どんな目に遭うかわからない。

もっとも、私たちと一緒に行くのも危険そのものだ。次の街に着いたら今度こそお別れだ、彼女のためにも。

シンガポールで父親に会うというのは、やはり嘘だった。大人になる前に世界を旅してみたかった、と。あんまり人のこと言えないけど、家族が心配してるんじゃないかな。

すごい度胸だけど、危ないよ。世の中変態野郎はどこにいるかわからないんだから。

 

うーん、それにしても、アンちゃんは完全に空条先輩に恋する目をしてるなぁ。シンガポールで別れるまで、何回も先輩に助けてもらってるし、無理もない。

……こんな人に危機を救ってもらったらその後の人生狂いそうだよね。

空条承太郎、罪な男だ。

 

先程追い越した車がひどい煽り運転をしてきた。ほらー、怒らせちゃってたじゃないか。

っていうか、ここで喧嘩売る!? この道幅で!?

道を譲って先に走らせるとまたもノロノロ運転。このドライバーもよくやるなぁ。今度は追い越せとサインを出している。

キレたポルナレフが再び追い越そうとしたが、

 

「うわぁああ――ッ‼︎」

 

対向車線にはトラックが迫っていた。

 

「リミナルスフィア!」

 

車体がふわりと持ち上がり、トラックの屋根すれすれをすり抜ける。

あ、危ないな!

なんてことするんだよ、本当に!

普通なら、こっちもトラックも無事じゃ済まないじゃないか。今の、本当にギリギリだったよ。

ごめんよ、トラックの運転手さん。幻でも見たと思って忘れてくれ。

 

「うわぁ。リミナルスフィアがなかったら俺たちぐしゃぐしゃだったぜ」

「どこじゃ!あの車はどこにいる!」

「どうやら走り去ったらしいな。どう思う。今の車追手のスタンド使いだと思うか?…それとも、ただの悪質な難癖野郎だと思うか?」

 

酷いなんてものじゃない運転だったけど、スタンド使いとは限らない。とにかく注意深く進むだけだ。

もう一度仕掛けてきたら誰であろうとぶちのめすと気合いを入れるジョースターさんたち。こっちがスタンド使いじゃなかったら死んでるところだし、これは仕方ないかも。

 

 

走ることしばし、茶屋がある場所についた。休憩を兼ねて車を止めた。

サトウキビジュースなんて初めて飲む。あっっまい!旅に出てから初めて口にするものは色々あったけど、甘いものの基準が日本と違うんだよね。とにかく甘い。

 

「や、奴だ!!あの車がいるぞ!」

「えっ?」

 

いつの間にかさっきの車が止まっている。店の主人に誰の車か聞くが、誰のものかはわからないらしい。

すごい剣幕で問い詰めたから、この中にドライバーがいてももう出てこないだろうなぁ。怖いもん。

業を煮やした先輩たちがこの場にいる全員を殴ると言い出した。ちょ、ちょっと待ったぁあ――‼︎

 

「えっ?お、おいッ!無茶なっ承太郎!やめろ!ジョースターさんあなたまでッ!やりすぎです‼︎」

 

君だけだよ、花京院くん!この人たち止めて‼︎

 

「殴る対象が違うでしょ!」

「え?柏木さん?」

「どうしろってんだ、柏木」

「あの車をボコボコにすればいいじゃないですか!」

 

それもそうかとそちらに向かう先輩たち。心なしか花京院くんの視線が痛いな? ブルータス、お前もか、みたいな顔しないでくれ。無実の人たち殴るよりいいじゃないか。

 

岩でもぶつけようかと思ったが、スタープラチナがあっけなく車を破壊した。相変わらずすごい力だ。サイドミラーは吹き飛び、フレームは歪み、元の形もわからなくなっている。ここまで壊せば修理も無理だろう。

 

「お、おい、どうしたんだ⁉︎」

 

店の中で誰か倒れたらしい。さらに、壊れた車が縮み始めた。

 

「やはりスタンド使いだったのか」

「船のあいつと同じタイプだな」

 

倒れた男を確認すると、スタンドからのダメージだろう、当分の入院は間違いなしの怪我だ。腕だけムキムキの変わった体型だった。

 

「あいつ、名乗りもなしに終わったのう」

「こちらが無傷で済んで何よりでしたね」

「やれやれだぜ」

 

お店のお客さんたちもね。躊躇なく殴りにいったからね、この人たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

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