The Blank Card   作:カナヤン

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DIOの館

 

どこまでも続く長い廊下。どう見ても普通じゃあない。

幻覚か、それとも別の何かだろうか? 怪しすぎて迂闊に足を踏み入れられない。

 

何かが近づいて来る――人間だ。床を滑るようにというか、少し浮かんで水平に移動している。

……なんか私のスタンドと似てる? 

見る間にこちらへ近づき、ピタリと止まった。

 

すぐにでも挑もうとするポルナレフにトランプのカードを投げつけた男は、ダービーと名乗った。

ダービーの弟、テレンス・T(ティー)・ダービーだと。

 

兄を再起不能にした私たちへの報復をするのかと思いきや、これっぽっちも恨んでいないと言う。

 

「兄は兄、私は私。DIO様をお守りするだけでございます。それに兄とは年齢が10歳離れています。ま……、それなりに兄を尊敬しておりましたが、兄とは世代が違うのでございます。

兄はイカサマとかペテンで勝つという古いタイプの物の考え方をしておりました。彼が勝てるのは、古いタイプの人間。もしくは素人だけでございます。

DIO様もそれにお気づきだったようで、私の方を執事としてそばにおいてくださったのです」

 

尊敬していたと言う割には、その声には熱がない。

DIOに気に入られるってことは兄よりも悪党って事なんじゃないの?

 

「いかがなされました? 私との勝負を……お望みですなら……、さ……館の中へ……」

「気取った喋り方は兄弟そっくりじゃん」

「全くだな」

「みんなうっかり入るなよ! この廊下は幻覚の罠と考えるべき……」

「俺たちは魂の奪いっこしているヒマはねえ……とっととDIOに会わせな」

 

その時、ダービーがスタンドを出した。みんなが身構える。真正面からってタイプは珍しい。

本体は隠れているとか人質を取るとかが多いからだ。これまでもずっと、相手はこちらを知っているけど、私たちは誰がいつ襲ってくるかもわからなかった。

これ以上ないほど不利だ。……よくここまで来られたものだ。

 

「失礼ですが私のスタンドは…兄のスタンドとはタイプが違います」

 

やたらと兄を引き合いに出すやつだな。かなり意識しているんじゃないの?

ダービー兄のスタンドは、言葉のやり取りが発動のキーになっていた。もしも、スタンドのタイプが似ているなら、会話する事そのものが危険かもしれない。

 

「最初は誰です? 誰が私の相手です?」

「面倒くせえ! 承太郎、ブチのめしちまいな」

 

先輩がスタープラチナを出すと、

 

「賭けよう……スタープラチナの私への第一撃はまず『左腕』を繰り出す」

 

ダービーの言葉にみんなハッとする。「賭け」で全員を追い込んだあいつを連想させられたからだ。

 

「第一攻撃はまず左腕のパンチ。賭けよう(ビット)

「承太郎! なんでもいいッ! お前のパワーで殴れば同じことだッ! やっちまえ! 

早くうてッ! 承太郎ッ!」

 

ポルナレフの言葉とほぼ同時に繰り出したスタープラチナの攻撃は右腕のパンチ。だけど、ダービーはそれを避けた。

あれを避けられるの⁉︎

ダービーのスタンドがスタープラチナの腕を掴んでいる。

 

「残念残念…今の賭けは私の負けでございましたな。

私も兄と同じで賭けは好きなのですが、どうも弱くて。フフフ。お詫びに、とっておきの世界へお連れしましょう」

 

その言葉と同時に、ダービーの足元に穴が開いた。外からの光が届いているはずなのに、塗り潰したように、底の見えない黒だった。

 

「しまったッ! やはりこの幻覚の廊下は罠だった。

引きずり込むために……」

「承太郎ッ!」

法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)!」

 

引きずり込まれた先輩を、ジョースターさんと花京院くんのスタンドが掴まえた。

先輩を引っ張り出そうとしたが、逆に2人も穴に引きずり込まれてしまった。

 

「ジョースターさん、花京院ッ!」

「待て2人ともッ! 追うのは危険だッ!」

 

思わず駆け寄ろうとするが、アヴドゥルさんに止められた。

閉じていく穴からジョースターさんの声が聞こえる。

 

「アヴドゥルゥゥゥ、聞こえるかァァァ、アヴドゥルゥゥゥ」

「ジョースターさんの声だ! 落ちながら喋っているッ!」

「10分経ってわしらから何の合図もなければァァ………

館に火を放てッ! いいな……アヴドゥル…ゥゥ」

「ジョースターさんッ!」

 

穴は3人を飲み込んだまま、元の通りに閉じてしまった。

 

「そんな……」

 

そんなこと、できるわけないじゃないか!

 

 

 

 

 

***

 

そして、長い長い10分が経った。

 

「ジョースターさんが待てと言った10分がたった。

ポルナレフ、晶。突入する前にひとつだけ言っておきたい。

私は、もしこの館の中でお前たちが行方不明になったり負傷しても()()()()()()()()()()

 

一瞬、顔を見合わせた。

 

「イギー、お前もだ。冷酷な発想だが、我々はDIOを倒すためにこの旅をしてきた……

お前たちの方も、もし私がやられたり……お前たちとはぐれても……私を助けようとしないことを約束しろ。

自分の安全を第一に考えるのだ……。ひとりを助けようとして全滅してしまうのは避けなくてはならない」

 

これまでだったら決して言わない、思わないことだ。

……できるだろうか、私に、この人たちに。

 

「ああ、わかったぜ……アヴドゥル」

「……はい」

 

3人の手が、重なった。

 

「生きて出てこれたら豪勢な夕飯をおごれよ」

「アヴドゥルさんおすすめのお店でね」

「イギーにもな」

 

ポルナレフがこちらに視線を向けた。

 

「晶、オメーは…」

「お前は残れとか言っても聞かないからね」

「…だろうな。まったく、仕方のねえやつだ」

 

ポルナレフが苦笑する。勘弁してよ、もう。

 

「よし、入るぜッ! アヴドゥル! 晶! イギーッ」

 

先頭を行くポルナレフが、シルバーチャリオッツで床を確認しつつ進む。さっき先輩たち3人を飲み込んだ床の様に、急に穴が開くかもしれない。

 

館の中は、迷宮だった。広大な広間がどこまでも続いている。あちこちに階段が伸び、その先にも回廊が見える。

これが幻覚なら、私たちの感覚そのものが狂わされているんだろうか? 

 

「おいアヴドゥル、どうする? 延々続いて見えるぜ」

「全く果てが見えませんね」

「うむ。ジョースターさんは館に火を放てと言ったが……こんな遠大な迷路では火を放つのは、こっちが危険だ……。それより『魔術師の赤(マジシャンズレッド)』!」

 

アヴドゥルさんが生物探知機の炎を出した。

これなら、死角だらけのこの空間でも隠れていられないだろう。

 

「ジョースターさんたちは地下に向かって連れ去られた…。下へ向かおう」

 

階段へ足を進めてすぐ、炎が何かに反応した。

 

「早くも炎に反応だ。左前方に何かいる!」

「なに!」

 

壁や柱、階段の後ろ…どこに隠れている?

周りを見渡した次の瞬間、イギーの『愚者(ザ・フール)』が、柱の中に隠れていた男を切り裂いた。

 

「おいおい! 何だ、この男は?」

「周りを見てみろ、ポルナレフ」

「ああっ! この館の迷路がッ! 消えている!」

 

さっきまで無限に続いていた迷路が普通の間取りに戻った。

 

「どうやらこの幻覚を作っていたスタンド使いだったらしいな……。あっという間だが、イギーがやっつけたぞ」

「これでやっとまともに館の中を歩けますね」

 

そうは言ってもかなり広い館だ。ジョースターさんたちとも早く合流できるといいんだけど。……無事で、いてくれるよね。

 

「ポルナレフッ‼︎ 晶ッ! イギーッ! 危ないッ!」

 

アヴドゥルさんの叫びに、咄嗟に――横へ落ちるように移動した。

 

「ぐあぁァァァッ!!」

 

直後、悲鳴が上がる。

 

「ア、アヴドゥル! 大丈夫かッ⁉︎」

「う、うぅ……ッ……!」

「アヴドゥルさん!…足が……‼︎」

 

アヴドゥルさんの、右足の膝から下が、無い。

血が噴き出した。

自分の目で見ているものが、信じられない。

 

一体何が……何が起こったの⁉︎

 

「ぐ、うう、……『魔術師の赤(マジシャンズレッド)』!

 …………ッ!!!!」

 

肉の焼けるいやな臭い――アヴドゥルさんは、傷口をスタンドで焼いた。

出血を止めるためとはいえ、なんてことを……!

崩れ落ちそうになったアヴドゥルさんを、慌てて支えた。

……痛みで、アヴドゥルさんの体が震えている。

 

「ふん……まさか……かわすとはな。本当ならお前たち全員を仕留めていたものを」

 

何もなかったはずの空間に、スタンドが浮かんでいる。

 

「テメーがアヴドゥルをッ!」

「私の口の中はどこに通じているのか自分でも知らぬが暗黒の空間になっている……吹っ飛ばしてやったのだ。

次はお前らだ……DIO様を倒そうなどと思い上がった考えは……正さねばならんからな……」

 

スタンドの口の中から男が顔を覗かせた。

 

「ひとりひとり、順番に順番に、このヴァニラ・アイスの暗黒空間にバラまいてやる」

「テメー、よくも……よくもアヴドゥルの足をォォーーーッ‼︎」

 

ポルナレフの叫びとともにシルバーチャリオッツがヴァニラ・アイスに剣を突き立てる。

その凄まじい剣捌きで、壁や柱まで切り裂かれた。

 

「チクショオォー、手ごたえはあったが…や…殺ってねえーッ。あっという間に小さくなって空間に消えやがったッ! 本体もスタンドも空間に消えやがったッ!」

 

ポルナレフはアヴドゥルさんを見つめた。その、無くなってしまった右足を。

 

「自分の身を第一に考えるんじゃあなかったのか⁉︎

助けないんじゃあなかったのか⁉︎……嘘つきめ…」

「ふ、ふふ……、そうだな……理屈じゃあないんだ…こういうのは……。つい動いてしまう……」

「アヴドゥルさん……」

 

そう、やっぱりそうなんだ。この館を出るなら、全員でだ。誰も欠けさせたくない。

その為には考えなくては。ヴァニラ・アイスを倒す方法を。

 

「あいつ……ヴァニラ・アイスは、急に現れたみたいだった……。イギーの鼻にもアヴドゥルさんの炎にも探知できなかった」

「瞬間移動でもしてるってのかッ。そんなヤツをどうやって捉える! クソッ!」

 

ポルナレフが屈んだその上をなにかが削り取っていった。

 

「……!!」

 

今、ちょっとずれていたらポルナレフの頭は無くなっていた。血の気が引いているのがわかる。

何なんだよ、これ!

 

「……イギー、この部屋に砂煙を立ててくれ。分かってきたぞ」

 

アヴドゥルさんの言葉でイギーのスタンドが砂煙をたて、うっすらと視界がくもった。

――はっきり見える。一抱えほどのなにかが、砂煙を削り取っていく、その軌跡が。

それに向けて壁の欠片を投げつけると、跡形もなく消えた。

 

「あの状態だとこちらの攻撃は通らないようだな」

「じゃあなんだって真っ直ぐ向かって来ねえんだ?……空間に入ってるとこっちの様子はわからねーのか……」

「ああ、当てずっぽうに動いているんだろう……そうでなければ、我々は全滅していた」

 

話しながらも軌跡を見失わないように目で追っている。

しかし、床を突き抜けどこかへ消えてしまった。

 

「マズい! 床と天井に気をつけろッ!」

「……多分、大丈夫。みんな近くに来て!」

 

イギーを抱き上げ、スタンドを出して集中する。

 

……飛行機の中でやった、あの感覚に近い。

重力をかける対象を選り分けるために、周囲の位置を精密に把握した時の――あの感覚。

周囲に何があるかを意識の中で掴む――その一部が、突然“抜け落ちた”。

 

「――来た!」

 

全員まとめて水平移動した途端、床から天井へ、さっきまで立っていた場所をヴァニラ・アイスのスタンドが通過していく。

 

「危ねえッ! なんであいつが近づくのがわかったんだ⁉︎」

「スタンドの効果範囲にあったはずのものが(・・・・・・・・・)無くなった(・・・・・)から。……“そこにあった空間ごと削られる”感じ。だから分かる。不意打ちはさせないよ」

 

集中してなきゃいけないし神経へずるからしんどいけど、言ってる場合じゃない。

避けることはできる。でも、それだけじゃ勝てない。あいつが空間から出たところを狙わないと。私じゃその一瞬に決定打を当てられない。……このままではジリ貧だ。

もしも避け損なったらそれだけで終わり。消耗を考えたら、長くは持たせられない。

 

「この部屋は視界を遮るものが多い……もっとひらけた場所へ移動しよう……。あいつが空間から出る隙を狙わなくては」

 

アヴドゥルさんの指示に私たちは頷いた。

 

「ああ……なんとか作戦を立てよーぜ!」

 

上の階に向かう。その間もヴァニラ・アイスは壁や天井を突き抜けながら追って来る。

当たったら防御不可能なんて、理不尽すぎるスタンドだ。今はイギーの立てる砂煙で軌跡が見えるけど、一瞬も気が抜けない。

 

あいつは、時々こちらの様子を見ているんだろう、確実に追って来ている。

走りながら、ポルナレフは抱えたイギーに何かを頼んでいる。

 

「何か思いついたの?」

「ああ、上手くヤツを誘き寄せられればいけるぜ!」

 

 

大きな窓が幾つもある広間、今は床や壁には穴が開き、あちこち崩れて瓦礫が散乱している。

外から差し込む光で部屋に漂う砂煙がよく見える。その中を削り取りながら進むヴァニラ・アイスの軌跡も。

二手に別れて身を潜め、様子をうかがう――作戦が上手くいけばあいつの油断を誘えるだろう。

 

ヴァニラ・アイスが空間から出たスタンドから外を確認している――今だ!

 

「騒がしいな……ヴァニラ・アイス……」

「DIO様‼︎ お気をつけくださいッ! そこらにやつらが隠れています」

 

イギーのスタンドが作った砂の偽物……写真で見たDIOによく似ていた。どこまで騙せるだろうか?

ヴァニラ・アイスがスタンドから本体を出し、偽DIOに背中を向けている。後ろから偽DIOが腕を振り上げた瞬間、ヴァニラ・アイスが偽物の腕を切り飛ばした。

マズい、ばれた!

イギーがさらに砂の像で攻撃を仕掛けるが、再びスタンドに潜り込んだヴァニラ・アイスの暗黒空間がそれを砕く。隠れていたポルナレフとイギーが慌てて身をかわした。

ヴァニラ・アイスはイギーを追っている――殺される、イギーが!

 

「よくも! このクソ犬がッ! 私にDIO様の『姿』(・・・・・・・・)破壊させたな(・・・・・・)ァああっーーッ!」

 

ヴァニラ・アイスは、素手でイギーを殴り飛ばした。小さな体は吹き飛び、壁に叩きつけられる。

――えっ? スタンドを使わない?

 

よりによってこの私に(・・・・・・・・・・)よくもッ(・・・・)! 砂の偽者だろうと(・・・・・・・)DIO様をよくも私に(・・・・・・・・・・)攻撃させたな(・・・・・・)ァーーーーッ‼︎」

 

倒れたイギーにヴァニラ・アイスが走り寄る。怒りに歪んだ狂気の顔で。

こいつ……‼︎

 

「蹴り殺してやるッ! このド畜生がァーーーーッ」

「テメー、イギーに何してくれてんだよ!!」

 

ヴァニラ・アイスをスタンドで弾き飛ばす――重力のベクトルを窓の外へ叩きつけるように。ヴァニラ・アイスは窓を突き破って落ちて行く。すぐに戻って来るだろうけど、今のうちにイギーを……

 

「……あれ?」

 

崩れていく。

 

日差しに触れた瞬間、ヴァニラ・アイスの体が――。まるで固められていた灰が砕けるように。

呆然としながら、それを見つめる。

 

「まさか……太陽で……?」

「こいつ……DIOと同じか」

「ヤツと同じ呪われた命……吸血鬼だったとは……」

「自分がそうだって分かってなかったのかな……窓のある部屋なのに普通にしてたよね」

 

残った灰も風に飛ばされていく。

それが、恐るべきスタンド使いヴァニラ・アイスの、あまりにあっけない静かな最期だった。

 

へたり込みそうになるが、そんな暇はない。

 

「イギー! イギー、大丈夫⁉︎」

 

大丈夫なわけない、あんなに思いきり殴られて叩きつけられたんだから。

そっと抱き上げる。あちこちから血を流し、ぐったりしている……骨も折れているかもしれない。

 

「…………ウゥッ」

 

アヴドゥルさんが小さい呻き声をあげた。壁に背中を預けて座り込んだその顔は、真っ青だ。

傷口を焼いたから出血を抑えられているけど、放っておいていい怪我じゃない。すぐにでも治療しないと命に関わるだろう。

 

「アヴドゥル……お前はここまでだ。イギーと一緒に戻れ」

 

ポルナレフが静かな声で言った。

 

「何をバカな…ッ! ……いや…………、今の私では足手まといだな……。ここまで来たのに…すまない」

「お前が最初の警告をしてなけりゃ、俺たちは全員死んでたぜ。あとは任せろ。晶、2人を館の外に連れて行け。安全なところまで」

「分かった。すぐ戻って来る。……待ってて。……置いてかないでよ!」

 

イギーをアヴドゥルさんに渡し、彼を助け起こす。傷に響かないようにそっと宙に浮かび、窓から外へ出た。

 

館の敷地の外、小さな路地に降りる。

 

「ここまでで大丈夫だ……本当にすまない。皆を……頼む。

……だが……もしもどうにもならないなら、逃げてもいいんだぞ。生きていればなんとかなるものだからな」

 

こんな酷い怪我しているのに、痛いなんてものじゃないだろうに、言葉にするのは仲間の心配ばかりだ。

 

「アヴドゥルさん、……ありがとう。…また後で。おすすめのお店、考えといてくださいね! ……行ってきます」

 

アヴドゥルさんが抱えたイギーをそっと撫でて立ち上がる。またね。必ず、また会おう。

 

再びDIOの館へ向かう。振り返らずに。

 

 

先程の広間に戻る――ポルナレフが、いない。

待っててって言ったのに!……敵に襲われた?もしかしたら、DIOに?

嫌な動悸がする。広間から伸びる階段を見ると――いた!

 

「ポルナレフ!」

「気を付けろッ! DIOの野郎だ!」

 

思わず息を飲んだ。見上げた先――階段の頂に、男が立っている。――これが、こいつが、DIO。

こいつを倒してホリィさんを助けるために、50日近い旅をして来た。

金髪に赤い瞳。整った顔立ちの若い男の姿をしている。

空条先輩やジョースターさんとほぼ同じ背格好……首から下はジョースターさんの祖父、ジョナサン・ジョースターさんの体を乗っ取ったものだからだ。

 

「君とは初めましてだな、お嬢さん。よくここまで無事にたどり着いたものだね。聞いているよ――実に優秀なスタンド使いだそうじゃないか。

先程ポルナレフには振られてしまってね。

どうかな? その若さで死に急ぐこともあるまい。

この私に仕えないか? 大抵の望みは叶うと約束しようじゃあないか」

「晶!」

 

いっそ優しいと言っていい物腰で語りかけてくる。

労わるように。まるで親しい友人にするみたいに。

そう感じさせることにゾッとする。

ついさっき、アヴドゥルさんとイギーは死にかけたというのに。

――違う。錯覚を断ち切るように、目をぎゅっと閉じて、開いた。もしも何も知らなかったら、少しは揺らいでいたかもしれない。

 

でもさ。ここまでで出会ったこいつの部下たち。

人でなし揃いだったよ。行き着く先があんなのなら――目の前のこいつみたいな怪物になるってことなら、

 

「真っ平ごめんだね。寝言は寝て言え」

「おや、嫌われてしまったかな? 

……全く度し難い。理解に苦しむが、自殺願望があるというなら止めはすまい」

 

気配が変わった。背筋が粟立つような冷たい気配――

DIOのスタンドが姿を現した。これが、『世界(ザ・ワールド)』……! 

 

「クソッ! 来るなら来やがれ!」

 

ポルナレフも私も、ほぼ同時にスタンドを出して身構える。

 

その時、壁が砕け、太陽の光が差し込んだ。

光を背に現れたのは、

 

「先輩、花京院くん、ジョースターさん!」

 

ダービーに分断されていた3人だった。

強張っていた体から力が抜ける。

みんな無事だ……生きてた。……本当に、良かった。

 




アヴドゥルとイギー、DIOの館から生還。

補足: オリ主のスタンドは、集中すると周囲の状況を正確に把握できます。
例えるならHUNTER×HUNTERの『円』のような感覚に近いです(同じジャンプ作品のイメージで伝わりやすいかなと)。
本文でちゃんと書けってやつですが。
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