時系列はバラバラです。
【ポルナレフをよろしく】
※帰国前
「イギー、うちの子になってくれてもいいんだよ?」
「アウ」
イギーはジョースターさんと一緒にニューヨークへ行く。ホリィさんのことがあるから、ひとまずは日本に来るけど。
「早くいい義足ができるといいね。ガムばっか食べてないでさ、ちゃんとご飯も食べなきゃダメだよ。元気で長生きしてほしいからね」
「フンッ」
「オメー、そのクソ犬とよく話してるよなあ。言ってることわかんのか?」
「イギーはこっちの言うことは大体わかってるじゃん。イギーの言ってることはこちら側が推測しなきゃ。愛だよ、愛」
「けっ、そーいうモンかねえ」
イギーを撫でながら、ポルナレフを見上げた。
「ポルナレフはフランスへ帰るんだよね?」
「ああ、とりあえずは故郷へな」
「……イギーがポルナレフと一緒に行ってくれたら安心なのにな。イギー、ポルナレフをお願いできる?」
「アギ」
「おい、そこはイギーをお願いじゃあねーのかッ」
だってさ。イギーの方がしっかりしてるんだもん。
【偏った知識】
※旅の間のどこかで
「フランス…パリ…ベルサイユ…」
「お、何だ晶、俺の祖国に興味あるのか?」
「あ〜、旅行行ってみたいなって。いいよね、フランス! ベルサイユ宮殿とかプチ・トリアノンとか見てみたい」
「よく知ってるな、晶。パリ以外も良い場所いっぱいあるぜ」
「パレ・ロワイヤルとかバスティーユ広場とか」
「…柏木さん、それってもしかしてベルばら?」
「花京院くん、しっ!」
秒でバレた。
「……アントワネット以外のフランス王妃の名前は?」
「……」
知らない。ついでに言うと、フルネームで知ってるスウェーデン人はハンス・アクセル・フォン・フェルゼンだけだ。
オスカルの生まれた国っていうだけでも行ってみたいところだよ、フランスは。
「文句があるなら――」
「ベルサイユにいらっしゃい、ですか」
「名作だよね」
「なんの掛け合いだよ、それ」
え? オスカルは架空の人物だろって?
いるんだよ、私の心の中にな! ああいう気高い人になりたいの!
【温度差】
※帰国後
いかにいい感じの言い訳を用意しても、正座で説教は免れなかった。
心配をかけたのは重々承知している。甘んじて受けるしかない。
頭の中で延々とDIOに蹴りを入れつつ、やっと解放された。……足が、足が……!
これからさらに学校の補習、山ほど出る課題、追試と戦わねばならない。
しおしおになって家を出る。今日はホリィさんのお見舞いだ。……外出の許可が出ただけでもマシと思うしかない。
空条家へ向かう途中で花京院くんと合流した。
「なんだかげっそりしてませんか?」
「予想通りっていうかそれ以上にみっちり叱られた……
花京院くんは平気そうだね?」
「思ったよりもね。……僕はこれまで親しいと言える人がいなかったから……今の僕を見てむしろ安心したみたいです。
……なんだか裏切られたみたいな顔してませんか?」
してるに決まってるでしょ! 叱られ仲間だと思ってたのに!
裏切ったな、私の気持ちを裏切ったんだ!
ズルいよ!
「ちょ、どこへ行くんですか!」
「花京院くん家」
「え」
花京院くんのお母さん! この人、お腹に穴開いたんですよ! 無茶しないようにもっとがっつり叱った方がいいですよ!
「…待ってくれ、余計なこと言わないでくれるかい」
ハイエロファントグリーンが私を捕まえた。……こんなガチ捕獲をしなくてもいいじゃないか。
「実はね、吸血鬼を退治してきたって言ってみたんだ」
「えっ…どうなりました?」
「本当のこと言いなさいって」
「…………」
【特技】
※旅の間のどこかで
「……暇だな」
「まあ、こういう時もあるよね」
移動の手続き、諸々の準備で今日は早めの時間にホテルをとった。たまにはのんびり過ごすのもいいんだけど、みんなちょっと時間を持て余している。
「お前ら、なんか特技とかないのか」
「雑な話題を振ってくるなよ、ポルナレフ」
「急に言われてもね〜。あ、
「オメー、そりゃあスタンドじゃあねーか! ズルだろ!」
えー、スタンドはダメなの? うーん。
「……じゃあ、瞬間芸、ギョウザ」
耳をギョウザにしてみせる。
「く、くだらね〜ッ!」
ポルナレフが吹き出した。笑ったんならいいじゃないか。
「花京院はなんかあるか?」
「さくらんぼの軸を口の中で蝶々結びにできる、かな」
「マジで⁉︎ すごい!」
「晶、特技ってのはこういうのを言うんだぜ」
「そんなこと言うならポルナレフは? なんかないの?」
「アレができるぜ! ナイフゲーム」
映画とかで見たことある、広げた指と指の間を素早く突いていくアレだ。
「却下。見てる方が怖い」
「万が一があったらどうするんだ、やめとけ」
「そんなヘマはしねーけどなァ。……承太郎、さっきから黙ってるけどよ。お前はなんかないワケ?」
「……タバコとジュースを用意しな」
「おっ、なになに?」
先輩の口角が上がった。
5本のタバコに火がつけられ、その後の光景にみんなの驚愕の声が響いたのだった。
ス、sugeeeeee‼︎‼︎!
【スタンド談義】
※帰国前
つくづく思うに、スタンドって無茶苦茶だよね。
「相手を子供にしたりさ」
「魂を抜いたり」
「夢の中に取り込んだりもあった」
「…おい、それはいつの話だ」
「「あ」」
そういえばまだ『死神』のスタンド使いのことを話していなかった。
「お前ら、そういうことはさっさと言え」
先輩がそう言ってため息をついた。ごめんって。あの後も怒涛の展開だったし、素で忘れてた。
「ダービー弟って自分のスタンドは兄のとは違うとか言ってたけど、魂を抜くなんて結局似たような能力じゃない?」
「弟の方が気色悪かったがな」
「そういえばこの中では両方見たのは先輩だけでしたね」
「僕の魂を入れる人形を用意してましたからね」
「えっ。……全員分作ってあったの?」
「それは分かりませんけど……承太郎のことは最初から狙っていたようですからね、承太郎の人形は確実にあったんじゃあないですか?」
「手作りなんだよね?……うわ、キモ」
「まったくな」
兄の方のコインも暗黒の機関車トーマスみたいで気持ち悪かったんだけど。
「あっちはまだマシだったな」
「……例えがヒドい」
【内緒話】
※帰国前
「少々よろしいですか?」
私を呼び止めたのは、SPW財団の人だった。見覚えがある。旅の途中でお世話になった1人だ。
「はい、なんでしょうか?」
「お預かりしたこれをお返しします」
その人が手に持っていたのは、一通の手紙だった。目を見開く。すっかり忘れていた。
「これが無用のものになって本当に良かった」
「……はい、本当に。嫌なことを頼んですみませんでした」
その人は手紙を渡すと、会釈して去っていった。
「なんですか、それ?」
「うわッ」
ふいに背後から声をかけられて、ちょっとびっくりした。気配を消すのはやめてください。
「見てたの、花京院くん。……んー、まあ、いいか。……遺言、みたいなもの」
「……!」
花京院くんの顔が強張った。あ、やっぱりまずかったかな。
「いや、まあ、念のためって言うか、一応さ。ほら、結局は必要なかったし!」
言い訳めいた言葉は早口になってしまった。
「いいえ……僕も実は同じことをしていました」
思わず、まじまじと顔を見つめた。
「えっ……それって」
「ふふ…念のため、ですよ」
「……まあね」
そう返されたら、なにも言えないじゃないか。
手に持った手紙を見る。誰にも読まれないように、燃やしてしまおうか。
「これは承太郎たちには言えませんね」
「それはもちろん。内緒だよ……ちなみに、どんなこと書いた?」
「柏木さんは?」
「……秘密」
「僕もです。まあ……そんな大したことは書けませんでしたが」
「私も」
大したことどころか、書けたのはたった一言。他になにを書いても嘘になりそうだったから。
――ありがとう、そして、ごめんなさい